がん患者でのブレークスルー感染リスクと転帰/JCO

提供元:CareNet.com

 米国で最大のCOVID-19症例と対照の全国コホートを運営するNational COVID Cohort Collaborative Consortiumが、ワクチン接種を受けたがん患者のブレークスルー感染リスクと転帰について調査した結果が、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年3月14日号で報告された。がん患者、とくに血液腫瘍患者はブレークスルー感染と重篤な転帰のリスクが高かったが、ワクチン接種患者ではブレークスルー感染リスクが著明に低下することが示唆された。

 本研究では、新型コロナウイルス感染の記録がなく、mRNAワクチンを1回もしくは2回接種し、2020年12月1日~2021年5月31日にブレークスルー感染した患者をNational COVID Cohort Collaborativeを用いて特定した。ブレークスルー感染リスクと転帰について、ロジスティック回帰を使用して分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・ワクチン接種集団においてブレークスルー感染を6,860例に認め、うち1,460例(21.3%)ががん患者だった。
・固形腫瘍および血液腫瘍患者は、がん患者以外と比較して、ブレークスルー感染(オッズ比[OR]:1.12、95%CI:1.01〜1.23およびOR:4.64、95%CI:3.98〜5.38)および重篤な転帰(OR:1.33、95%CI:1.09〜1.62およびOR:1.45、95%CI:1.08〜1.95)のリスクが有意に高かった(年齢、性別、人種/民族、喫煙状況、ワクチンの種類、ワクチン接種日を調整)。
・血液腫瘍患者は、固形腫瘍患者に比べてブレークスルー感染リスクが高かった(調整ORはリンパ腫の2.07からリンパ性白血病の7.25の間)。
・ブレークスルー感染リスクはワクチン2回目接種後、すべてのがん患者で低かった(OR:0.04、95%CI:0.04〜0.05)。また、BNT162b2ワクチン(ファイザー製)よりmRNA-1273ワクチン(モデルナ製)でリスクが低く(OR:0.66、95%CI:0.62〜0.70)、とくに多発性骨髄腫患者で低かった(OR:0.35、95%CI:0.15〜0.72)。
・免疫抑制が強く、骨髄移植を伴う薬物療法は、ワクチン接種集団のブレークスルー感染リスクと強く関連していた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Song Q. et al. J Clin Oncol. 2022 Mar 14;JCO2102419. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

日本人がん患者の心血管疾患、発生しやすいがん種などが明らかに/日本循環器学会

提供元:CareNet.com

 近年、がん患者の生存率向上により治療の副作用の1つである心毒性が問題視されている。ところが、アジア圏のなかでもとくに日本国内のそのような研究報告が乏しい。今回、村田 峻輔氏(国立循環器病センター予防医学・疫学情報部)らが、国内がん生存者における心血管疾患の全国的な発生率に関する後ろ向きコホート研究を行い、不整脈、心不全(HF)、および急性冠症候群(ASC)の100人年当たりの発生率(IR)は、それぞれ2.26、2.08、0.54 で不整脈とHFでは明らかに高く、一般集団と比較してもHFやACSのIRは非常に高いことが明らかになった。本結果は2022年3月11~13日に開催された第86回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies2で報告された。

 本研究では、がん患者の心血管疾患発症に関し「HBCR(Hospital-based cancer registry)を用いてがん患者における心血管疾患の発生状況を説明する」「年齢・性別による発症頻度の違いを比較」「がん患者の心不全予防調査」の3つを目的として、対象者を1年間追跡して各心血管疾患の年間発生率を調査した。2014~2015年のDPCデータから対象のがん患者(乳がん、子宮頸がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、胃がん)の心血管疾患発生状況を、HBCRデータからがん種、病期、1次治療に関する情報を抽出し、不整脈、HF、ASC、脳梗塞(CI)、脳出血(ICH)、静脈血栓塞栓症(VTE)の6つの発生率を調査した。各心血管疾患について、全がん患者、がん種別、年齢・性別のサブグループで100人年当たりのIRと95%信頼区間を算出した。また、各がん種で各心血管疾患のIRを比較、HF発生に対する潜在的な予測因子を調べるためにロジスティクス回帰分析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・本研究の対象者は、2014~15年にがん診療連携拠点病院495施設でがん(乳がん、子宮頸がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、胃がん)と診断された者から外来のみまたは18歳未満の患者を除外した54万1,956例だった。
・患者の構成は、乳がんと子宮頸がん患者では若年者が多く、いずれも1次治療には外科的治療の選択が多かった。一方、肝臓がんと肺がんはいずれも40%超が1次治療として化学療法を実施していた。
・不整脈、HF、およびACSの100人年当たりのIRは、それぞれ2.26、2.08、0.54で不整脈とHFでは明らかに高く、一般集団と比較してもHFやACSのIRは非常に高かった。これは年齢・性別で比較しても明らかであった。
・不整脈とHF、ACSの発生率を年齢・性別でみると、高齢者かつ男性で多かった。
・がん種ごとにIRをみたところ、肺がん、肝臓がん、結腸がん、そして胃がん患者では不整脈の頻度が高かった。
・肺がんと肝臓がん患者ではHFのIRも高く、化学療法や外科的治療が関連していた。その予測因子として、肺がんのオッズ比(OR)は、病期stage2で1.23(95 %信頼区間[CI]:1.08~1.40、p=0.001)、stage3で1.26(同:1.13~1.41、p<0.001)、化学療法で1.48(同:1.36~1.61、p<0.001)、外科的治療で1.15(同:1.02~1.29、p=0.017)、年齢で1.03(同:1.03~1.03、p<0.001)、女性で0.62(同:0.56~0.67、p<0.001)だった。一方の肝臓がんのORは化学療法で1.39(同:1.18~1.63、p<0.001)、放射線治療で0.51(同:0.25~0.92、p=0.041)、外科的治療で1.95(同:1.65~2.32、p<0.001)、年齢で1.03(1.02~1.04、p<0.001)、女性で0.85(同:0.72~1.00、p=0.046)だった。

(ケアネット 土井 舞子)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

「乳腺外科医事件」最高裁判決を受けて~担当弁護人の視点から

提供元:CareNet.com

 手術直後の女性患者への準強制わいせつ罪に問われた執刀医が、逮捕・勾留・起訴された事件。一審では無罪判決となったが、控訴審では懲役2年の実刑判決が東京高裁より言い渡されていた。執刀医側の上告を受けて出された今回の最高裁判決は「東京高裁への差戻し」。弁護人の1人である水沼 直樹氏に、実際に法廷で論じられた争点と今後について解説いただく。

1.事件概要

(1)概要

 本件は、2016年5月、右胸部の良性腫瘍(再発)摘出術を受けた患者Aが、術後約30分間に2度回診に訪れた執刀医Xから、健側の右胸部を舐められたと訴えたことから始まった事件です。科学捜査研究所は、Aの右胸からXのDNA型と一致するDNA(定量値1.612ng/μL)が検出され、またアミラーゼ検査が陽性であったと鑑定しています。

 これに対し、Xは、Aの被害申告は、Aが術後せん妄(覚醒時せん妄)により幻覚を体験したに過ぎない、と逮捕当初から一貫して主張しています。当時の患者がせん妄状態にあり幻覚体験をしたか否か、検出されたDNA定量検査の結果を信用できるかが争われました。

(2)裁判の経緯

 東京地裁では、当時の患者がせん妄により幻覚体験をした可能性があることを主な根拠に、事件そのものがなかったと推認して無罪判決を言い渡しました(詳細は「判決の争点」前編後編を参照)。

 これに対して東京高裁は、DSM-5等により診断した弁護側証人の証言の信用性を否定し、診断基準を使用せずせん妄による幻覚の可能性を否定した検察側証人の証言の信用性を肯定して、懲役2年の実刑判決を言い渡しました(詳細は「控訴審、逆転有罪判決の裏側」前編後編を参照)。なお、東京高裁はDNA定量値については一切証拠調べをしませんでした(詳細は脚注1))。

2.上告での活動

 弁護人は、上告するとともに、10名を超える専門家(大学教授を中心としたDNAの専門家およびせん妄の専門家)の意見書を提出しました。その要旨は、当時のAがせん妄状態にあり幻覚体験していた可能性が高いこと、DNA定量検査は検査原理に反し検査結果に信用性がないこと、鉛筆書きのワークシートが消しゴムで消されたり加筆されたりしており、科学鑑定とは言い難いこと、DNA抽出液が廃棄されているなど再現性がない等の意見が寄せられました(詳細は「判決の争点」前編を参照)。

3.最高裁判決内容

 最高裁は、東京高裁が信用できるとした検察側証人の「見解が医学的に一般的なものではないことが相当程度うかがわれる」として、その証言の信用性を否定しました。他方で、DNAが多量に付着しているとすると、A証言の信用性が肯定できると見る余地もあるため、本件DNA定量検査が検査原理に反して実施されていたことや、標準資料の増幅曲線や検量線が作成されていないことが検査結果にどのような影響を与えるのか、いまだ不明なところがあるため、これを審理する必要があるとして、原判決を破棄し、東京高裁に差戻しました。

4.最高裁判決の評価

 本判決に対しては、さまざまな評価があります(脚注1-2))。しかし少なくとも、一審で検査プロトコルに反したリアルタイムPCRの定量検査の結果に科学的信頼性のないことを専門家が証言しており、新たな証拠調べをする必要性が乏しいと思われます。また、アミラーゼ検査が陽性であったことを示す写真もゲル平板も存在しませんので、アミラーゼ検査が陽性であった証拠は、鉛筆書きされたワークシートの「+」との記載と、鉛筆書きして消しゴムで消したり書き直したりした検査担当者の法廷証言しかありません。

 このような事実関係に鑑みれば、本件については、最高裁は、新たに東京高裁で審理を求めるまでもなくすでに提出されている証拠を基に、破棄自判して無罪とすべきであったと思います(その意味で本判決は不当判決だと考えています)。

 なお、検察官は、控訴審の段階で、検査ノートを鉛筆書きして良いとの書籍等を証拠請求していますが、これらが明らかに科学的常識に反していることはいうまでもありません。

5.今後の動向

 今後は、最高裁が指示した、DNA定量検査の結果である1.612ng/μLの正確性、その意味合い等について、東京高裁で審理されることとなります。そして、その結果を前提に、せん妄状態にあり幻覚体験をしたことが疑われるAの証言がどこまで事実として認定できるのか、すなわち被害体験が事実であったといえるのかどうかを、新たな裁判官で構成された東京高裁が判断することになります。

◆脚注

1)令和4(2022)年2月19日付東京新聞26面では、元東京高裁部総括判事の門野 博弁護士が『「まだ、科学鑑定で有罪にできる道がある」と検察側に助け舟を出したような印象だ。今回の事件ではDNA型鑑定に使われた試料が廃棄され再鑑定ができない上、実験記録が鉛筆で書かれるなど、捜査の過程に不備がある。科学的証拠の有罪の根拠とするには理論に寸分の緩みもあってはならず、最高裁がこの問題点に言及しなかったのは残念だ。』と述べたと報道されている

2)江川 紹子氏著『“手術後わいせつ事件”の最高裁判断に江川紹子が疑義…「疑わしきは検察の利益」でよいのか』では「最高裁は、肝心の点で判断を避け、結論を先送りして、高裁に委ねた。最高裁が役割を放棄した以上、高裁は司法の責任において、司法における「科学的な証拠」とは何か、という問題に正面から向き合ってほしい。」と述べている


講師紹介

水沼 直樹 ( みずぬま なおき ) 氏

東京神楽坂法律事務所 弁護士、東邦大学医学部・埼玉医科大学医学部国際医療センター・鳥取大学医学部 非常勤講

[略歴] 東北大学法学部・日本大学大学院法務研究科卒業。
都内で法律事務所勤務ののち、亀田総合病院の内部専属弁護士として5年超にわたり勤務したのち,本件弁護を受任したため同院を退職し,現在に至る。
日本がん・生殖医療学会(兼理事)、日本睡眠歯科学会(兼倫理委員)、日本法医学会・日本DNA多型学会・日本医事法学会・日本賠償科学会・日本子ども虐待防止学会、日本麻酔医事法制研究会、日本医療機関内弁護士協会(代表)の各会員ほか。


バックナンバー

6 「乳腺外科医事件」再度の無罪判決と医療現場への示唆

5 「乳腺外科医事件」最高裁判決を受けて~担当弁護人の視点から

4 「乳腺外科医事件」控訴審、逆転有罪判決の裏側~担当弁護人による「判決の争点」解説~【後編】

3 「乳腺外科医事件」控訴審、逆転有罪判決の裏側~担当弁護人による「判決の争点」解説~【前編】

2 「乳腺外科医事件」裁判の争点 【後編】

1 「乳腺外科医事件」裁判の争点 【前編】

早期乳がん診断から10年以降の再発率とリスク因子

提供元:CareNet.com

 早期乳がんの診断から10年以降に発生する晩期乳がん再発についてデンマーク・Aarhus UniversityのRikke Norgaard Pedersen氏らが追跡調査した結果、診断から32年後も再発例を認め、診断時にリンパ節転移4個以上、腫瘍径20mm超、エストロゲン受容体陽性の女性で晩期再発率が高いことが示された。Journal of the National Cancer Institute誌2022年3月号に掲載。

 本研究では、Danish Breast Cancer Groupのデータベースにおいて1987~2004年に早期乳がんと診断されたすべての女性のうち、再発・2次がん発生がなく10年生存した女性(10年無病生存例)について、診断から10年以降、晩期再発、死亡、海外移住、2次がん発生まで、もしくは2018年12月31日まで追跡した。患者特性および腫瘍特性で層別し、晩期再発について1,000人年当たり発生率および累積発生率を算出した。また、Cox回帰を用い、競合リスクを考慮して晩期再発の調整ハザード比を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・早期乳がんと診断された3万6,924例のうち、10年無病生存例は2万315例だった。
・そのうち2,595例は、最初の診断から10~32年後に再発し、発生率は1,000人年当たり15.53(95%CI:14.94~16.14)、累積発生率は16.6%(95%CI:15.8~17.5%)だった。
・腫瘍径20mm超、リンパ節転移陽性、エストロゲン受容体陽性の女性では、累積発生率および晩期再発のハザードが高かった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Pedersen RN, et al. J Natl Cancer Inst. 2022;114:391-399.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

日本人女性における生殖細胞系列バリアントと乳がんリスク(HERPACC研究)

提供元:CareNet.com

 乳がんの約5~10%は遺伝性で、乳がんの易罹患性に関わる遺伝子における生殖細胞系列の病的バリアント(GPV)に起因する。関連研究の多くは欧米で行われており、日本人集団についての情報は少ない。またGPV評価において、環境因子とゲノムワイド関連研究(GWAS)で同定された一塩基多型(SNPs)による交絡を考慮した研究はない。愛知県がんセンターの春日井 由美子氏らは、9つの遺伝子におけるGPVと乳がんリスクとの関連を包括的に評価するためにケースコントロール研究を実施。Cancer Science誌オンライン版2月25日号に報告された。

 本研究は2001年1月~2005年12月に愛知県がんセンターにおける病院疫学研究プログラム(HERPACC)の参加者(日本人女性)が対象。乳がん症例とその対照者(がんの既往なし)は、年齢(±5歳)と閉経状態で1:2の割合でマッチングされた。9つの遺伝子(ATMBRCA1BRCA2CDH1CHEK2PALB2PTENSTK11、およびTP53)におけるGPVと乳がんリスクとの関連は、潜在的な交絡因子で調整したロジスティック回帰モデルを用いて、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)で評価された。

 主な結果は以下のとおり。

・乳がん症例629例、対照1,153例が評価対象とされた。
・乳がん症例では計25例でGPVを保有していた(4.0%、95%CI:2.6~5.9)のに対し、対照では計4例がGPVを保有していた(0.4%、95%CI:0.1~0.9)。
・乳がんに対するオッズ比は全GPVで12.2 (4.4~34.0、p=1.74E-06)、BRCA1/2では16.0 (4.2~60.9、p=5.03E-0.5)だった。
・GPVを有する乳がん症例の割合は、40歳未満で6.7%と最も多く、9遺伝子にGPVがある症例は、GPVがない症例(中央値52歳)よりも若年(中央値48歳、p=3.60E-02)で診断されていた。
・60歳未満の年齢層では、全GPVおよびBRCA1/2で乳がんリスクとの間に有意な関連が認められた。

 研究者らは、環境因子やGWASで同定されたSNPsに関係なく、GPVと日本人女性の乳がんリスクとの関連が認められたとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Kasugai Y,et al. Cancer Sci. 2022 Feb 25. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

がん治療中の薬剤性間質性肺疾患、診断・治療における専門家の推奨/JCO

提供元:CareNet.com

 抗がん剤は薬剤性間質性肺疾患の主な原因であり、原因薬剤としてブレオマイシン、エベロリムス、エルロチニブ、トラスツズマブ デルクステカン、免疫チェックポイント阻害薬などが挙げられる。薬剤性間質性肺疾患の特定と管理は難しく、抗がん剤によって引き起こされる間質性肺疾患の診断と治療に関する具体的なガイドラインは現在存在しない。今回、イタリア・IOV-Istituto Oncologico Veneto IRCCSのPierfranco Conte氏らの学際的グループが、公表文献と臨床専門知識に基づいて、がん患者の薬剤性間質性肺疾患の診断と治療における推奨事項を作成した。ESMO Open誌2022年2月23日号に掲載。

 主な推奨事項は以下のとおりで、薬剤性間質性肺疾患の診断・治療における多職種連携の重要性を強調している。

・診断手順の重要な要素は、身体検査と丁寧な病歴聴取、バイタルサイン(とくに呼吸数と動脈血酸素飽和度)の測定、関連のある臨床検査、スパイロメーターと一酸化炭素肺拡散能による呼吸機能検査、CT/画像診断である。
・薬剤性間質性肺疾患の臨床症状やX線画像は、肺炎や間質性肺疾患と類似していることが多いため、感染性の原因を除外または確認するための微生物検査や血清学的検査を含む鑑別診断が重要である。
・ほとんどの場合、薬剤性間質性肺疾患の治療には、抗がん剤の投与中止と短期ステロイド投与が必要である。薬剤性間質性肺疾患の再活性化を防ぐためにステロイドをゆっくり漸減する必要がある。
・Grade3~4の薬剤性間質性肺疾患の患者は入院が必要で、多くの場合、酸素吸入と非侵襲的人工呼吸が必要である。侵襲的人工呼吸については、がんの予後を考慮して決定する必要がある。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Conte P, et al. ESMO Open. 2022 Feb 23.[Epub ahead of print]

スピロノラクトン、がんリスクはある?

提供元:CareNet.com

 スピロノラクトンの使用とがんリスクに関連はあるのか。米国・マイアミ大学ミラー医学部のKanthi Bommareddy氏らは、メタ解析(452万8,332例のデータを包含)で関連を調べ、がんリスク増大との関連は認められず、前立腺がんについてはリスク低下との関連が認められたことを示した。著者は、「しかしながら、エビデンスの確実性は低く、若年者や、にきびあるいは多毛症を有するなど、多様な集団を対象としたさらなる検討が必要である」と述べている。

 スピロノラクトンは、もともとは心不全、高血圧症、浮腫の治療薬として承認されたが、にきび、化膿性汗腺炎、男性型脱毛症、多毛症の治療に適応外使用されるのが一般的となっており、米国FDAから腫瘍発生に関連する公式の警告が発せられている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年2月9日号掲載の報告。

 研究グループは、スピロノラクトンによる治療を受けた患者において、がんの発症、とくに乳がんと前立腺がんの発症をプールし、解析した。

 発刊から2021年6月11日までのPubMed、Cochrane Library、Embase、Web of Scienceを検索。選択試験の適格条件は、スピロノラクトンを投与された18歳以上の男女におけるがん発生について報告した、英語で書かれた論文とした。

 筆者である2人のレビュアーがそれぞれ試験の選択とデータ抽出を行い、Newcastle-Ottawa Scaleを用いてバイアスリスクを評価。包含試験はランダム効果メタ解析法を用いて統合し、がん発生(乳がんと前立腺がんにフォーカス)を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・7試験が適格基準を満たした。サンプルサイズは1万8,035例~230万例にわたり、被験者は総計452万8,332例で、平均年齢62.6~72.0歳。性別による層別化のない試験では、女性が17.2~54.4%を占めていた。
・全試験ともバイアスリスクは低いとみなされた。
・スピロノラクトンの使用と乳がんリスクに、統計学的に有意な関連性はみられなかった(リスク比[RR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.86~1.22、エビデンスの確実性:とても低い)。
・スピロノラクトンの使用と前立腺がんリスク低下に、関連性がみられた(RR:0.79、95%CI:0.68~0.90、エビデンスの確実性:とても低い)。
・スピロノラクトンの使用と卵巣がんリスクに、統計学的に有意な関連性はみられなかった(RR:1.52、95%CI:0.84~2.20、エビデンスの確実性:とても低い)。
・また、膀胱がん(RR:0.89、95%CI:0.71~1.07、エビデンスの確実性:とても低い)、腎臓がん(0.96、0.85~1.07、エビデンスの確実性:低い)、胃がん(1.02、0.80~1.24、エビデンスの確実性:低い)、食道がん(1.09、0.91~1.27、エビデンスの確実性:低い)についても、統計学的に有意な関連性はみられなかった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Bommareddy K, et al. JAMA Dermatol. 2022 Feb 9. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

HR+HER2-転移・再発乳がん、ベバシズマブ+パクリタキセル導入療法後に内分泌療法+カペシタビン維持療法の戦略で長期のOSを確認/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 ホルモン受容体陽性(HR+)HER2 陰性(HER2-)転移・再発乳がんに対するベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後の維持療法の有効性を検討した国内多施設無作為化第II相試験(KBCSG-TR1214)において、内分泌療法+カペシタビン併用維持療法が内分泌療法単独に比べ無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことがすでに報告されている。今回、この治療戦略の全生存期間(OS)への影響を評価するために、本試験を事後解析した結果について、大阪大学の吉波 哲大氏が第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。

[KBCSG-TR1214試験]
・対象:HR+HER2-の遠隔転移があるか手術適応とならない再発乳がん(PS 0または1)で、転移・再発がんへの化学療法歴が1レジメン以下の患者
・方法:導入化学療法としてベバシズマブ+パクリタキセルを4~6サイクル実施し、病勢進行を認めなかった90例を、維持療法として内分泌療法+カペシタビン(EC群)または内分泌療法(E群)に無作為に割り付けた。維持療法で病勢進行した場合は、ベバシズマブ+パクリタキセル再導入療法を実施した。
・評価項目:
[主要評価項目]維持療法のPFS
[副次評価項目]無作為化からのTime to failure of strategy(TFS)、導入療法からの全生存期間(OS)、再導入療法からのPFSなど

 事前に計画された解析には無作為化に至らなかった26例は含まれておらず、今回は、ベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法を開始した116例(E群46例、EC群44例、非無作為化26例)のデータを解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・116例全例におけるOS中央値は34.5ヵ月(95%CI:28.0~43.2)だった。
・主に病勢進行のため無作為化されなかった26例におけるOS中央値は15.7ヵ月(95%CI:7.75~30.8)で、E群34.9ヵ月(同:23.3~NA)、EC群43.8ヵ月(同:33.7~NA)より短い傾向があった。
・本治療を1次治療で受けた102例のOS中央値は36.0ヵ月(95%CI:29.2~46.2)、2次治療で受けた14例では25.7ヵ月(同:17.6~37.5)だった。

 本解析から、ベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後に維持療法を実施する治療戦略により、導入化学療法での病勢進行例を含めても長期のOSが達成されることが示された。

(ケアネット 金沢 浩子)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブによるEFS、アジア人での解析(KEYNOTE-522)/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象に、術前補助療法としてペムブロリズマブ+化学療法併用を化学療法単独と比較、さらに術後補助療法としてペムブロリズマブとプラセボを比較した第III相KEYNOTE-522試験において、4回目の中間解析までにペムブロリズマブ群が術前補助療法による病理学的完全奏効率(pCR)および無イベント生存期間(EFS)を有意に改善した。今回、本試験のアジア人集団の 4 回目の中間解析結果について、北海道大学/国立病院機構北海道がんセンターの高橋 將人氏が、第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。

[KEYNOTE-522試験]
・対象:治療歴がなく、原発巣の腫瘍径2cm以下でリンパ節転移あり(T1c、N1~2)またはリンパ節転移に関係なく腫瘍径2cm超(T2~4d、N0~2)で、遠隔転移がない(M0)ECOG PS 0/1のTNBC患者
・試験群:術前に化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)+ペムブロリズマブ(3週ごと)、術後にペムブロリズマブ(3週ごと)を9サイクルあるいは再発または許容できない毒性発現まで投与(ペムブロリズマブ群)
・対照群: 術前に化学療法+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群)
・評価項目:
[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS
[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、全生存期間(OS)、PD-L1陽性例におけるpCR・EFS・OS、安全性

 アジア人集団における主な結果は以下のとおり。

・アジア(韓国、日本、台湾、シンガポール)から216 例が組み入れられた(ペムブロリズマブ群136例、プラセボ群80例)。
・データカットオフ(2021年3月23日)時点で、観察期間中央値は39.7ヵ月(範囲:10.0~46.9)、ペムブロリズマブ群およびプラセボ群でEFSイベントは13例(9.6%)および20 例(25.0%)で観察された。
・EFSのハザード比(HR)は、全集団の0.63(95%信頼区間[CI]:0.48~0.82)に対し、アジア人集団では0.35(95% CI:0.17~0.71)だった。
・術前補助療法でpCRを達成した患者と得られなかった(non-pCR)患者に分けて評価した場合、3年EFSは、pCR達成患者ではプラセボ群94.4%に対してペムブロリズマブ群100%、non-PCR患者ではプラセボ群62.8%に対してペムブロリズマブ群77.7%であった。
・安全性プロファイルは、アジア人集団において各レジメンや以前の解析と同様であった。

 高橋氏は、EFSの結果がアジア集団でより有効に見えることについて、「アジア人集団は症例数が少ないので差があるとは言えず、ただ全集団と少なくとも同等の効果が期待できると言える」と述べた。また、non-pCRの場合の術後補助療法におけるカペシタビンの使用については、「ペムブロリズマブにカペシタビンを追加するのか、ペムブロリズマブを中止してカペシタビンを投与するのかは、トランスレーショナルに検討していく必要がある」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-522試験(Clinical Trials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

がん治療のバイオシミラーのエビデンス、先発品より質が高い?/JAMA Oncol

提供元:CareNet.com

 がん治療における3剤の先発バイオ医薬品のバイオシミラーに関する31試験をメタ解析したところ、バイオシミラーの試験のほうが先発品の主要試験に比べ、平均症例数が多く、無作為化、二重盲検化された試験が多かった。また、すべてのがん種で先発品と有効性が同等であることが示された。米国・Brigham and Women’s HospitalのDoni Bloomfield氏らが、JAMA Oncology誌オンライン版2022年2月3日号で報告した。

 本研究では、がん治療における先発バイオ医薬品とそのバイオシミラーにおける有効性もしくは代替指標を比較した英語論文と要旨を、Embase、PubMed/MEDLINE、ClinicalTrials.govで、2021年4月18日まで系統的に検索した。母集団の大きさ、盲検化、無作為化などの試験特性について、バイオシミラーでの試験と先発品の主要試験を比較した。さらに、バイオシミラーとその先発品について、無増悪生存期間などの代替指標に対する相対的変化のリスク比を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・3剤の先発品のバイオシミラーに関する31試験(計1万2,310例)が本研究の対象となった。
・7つのサブグループすべてにおいて、有効性の代替指標に関してバイオシミラーは先発品と差がなかった。
・バイオシミラーの試験は先発品の試験(6試験、1,811例)と比べて、平均症例数が多く(397例vs.302例)、単試験/観察研究より無作為化試験が多く(100%[31/31]vs.50%[3/6])、非盲検試験より二重盲検試験が多かった(84%[26/31]vs.17%[1/6])。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Bloomfield D, et al. JAMA Oncol. 2022 Feb 3.[Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)