neratinib併用、HER2陽性乳がんでPFS延長(NALA)/ASCO2019

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 HER2陽性の転移・再発乳がん患者の3次治療における、HER1/2/4阻害薬neratinib+カペシタビン併用療法とラパチニブ+カペシタビン併用療法との比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表された。これはオープンラベルの第III相無作為化比較試験である。

試験デザイン
・対象:中央判定で確認されたHER2陽性の転移・再発乳がん患者で、前治療として抗HER2療法を2ライン以上受けている患者(症状のない脳転移症例も許容)
・試験群:neratinib240mg/日(経口)+カペシタビン750mg/m2×2回/日(経口)の併用療法(NC群)
・対照群:ラパチニブ1,250mg/日(経口)+カペシタビン1,000mg/m2×2回/日(経口)の併用療法(LC群)
 neratinib/ラパチニブは連日投与、カペシタビンは2週間投与後に1週間休薬、これを1コースとして繰り返し投与
 NC群では1コース目にロペラミドを投与
・評価項目:[主要評価項目]中央判定による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)
[副次評価項目]主治医判定によるPFSと奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、脳転移治療までの期間、安全性、患者報告QOL

 主な結果は以下のとおり。

・621例が登録され、NC群に307例、LC群に314例が割り付けられた。
・中央判定によるPFSについて、12ヵ月PFS率はNC群29%、LC群15%であり、ハザード比(HR):0.76(95%信頼区間[CI]:0.63~0.93、p=0.0059)と統計学的な有意差をもってNC群のほうが良好であった。
・OS中央値はNC群24.0ヵ月、LC群22.2ヵ月であった(HR:0.88、95%CI:0.72~1.07、p=0.2086)。
・ORRはNC群33%、LC群27%(p=0.1201)で、CBRはNC群45%、LC群36%(p=0.0328)、累積の脳転移発生率はNC群22.8%、LC群29.2%(p=0.043)であった。
・DOR中央値は、NC群8.5ヵ月、LC群5.6ヵ月であった(HR:0.50、95%CI:0.33~0.74、p=0.0004)。
・両群の治療関連有害事象(TRAE)発現状況はおおむね同等であったが、Grade3以上の下痢がNC群24%、LC群13%とNC群で高率であった。しかしTRAEによる治療中止の割合はNC群10.9%、LC群14.5%とNC群で低かった。

(ケアネット)


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NALA試験(Clinical Trials.gov)

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CDK4/6阻害薬ribociclib、進行乳がんのOS延長/NEJM

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 HER2陰性ホルモン受容体陽性進行乳がんの治療において、標準的な内分泌療法にサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)阻害薬ribociclibを併用すると、内分泌療法単独に比べ、全生存(OS)期間が有意に延長することが、韓国・ソウル大学校病院のSeock-Ah Im氏らが実施したMONALEESA-7試験で示された。研究の成果はNEJM誌オンライン版2019年6月4日号に掲載された。本試験の早期解析では、ribociclib追加によって、主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間の延長が確認されており、今回は、プロトコルで規定された主要な副次評価項目であるOSの中間解析の結果が報告された。

上乗せ効果を検証するプラセボ対照無作為化試験

 MONALEESA-7は、国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験で、2014年12月~2016年8月に患者登録が行われた(Novartisの助成による)。

 対象は、年齢18~59歳、HER2陰性、ホルモン受容体陽性で、局所領域再発または転移を有する進行乳がんであり、全身状態(ECOG PS)が0~1の患者であった。

 被験者は、ribociclib(28日を1サイクルとし、1日1回600mgを21日間経口投与、7日間休薬)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。両群とも、内分泌療法として、ゴセレリン(3.6mgを各サイクルの1日目に皮下注)の投与を受け、非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(レトロゾール2.5mgまたはアナストロゾール1mg)もしくはタモキシフェン(20mg)を1~28日目に1日1回経口投与された。

 672例が登録され、ribociclib群に335例、プラセボ群には337例が割り付けられた。

死亡リスクが29%低減、後治療中のPFSも良好

 OS解析のカットオフ日の時点で、ribociclib群は116例(34.6%)、プラセボ群は57例(16.9%)が治療を受けていた。フォローアップ期間中央値は34.6ヵ月であった。ribociclib群は83例(24.8%)、プラセボ群は109例(32.3%)が死亡した。

 ITT解析では、ribociclib群はプラセボ群に比べOS期間が有意に延長し(評価不能vs.40.9ヵ月)、42ヵ月時の推定OS率はそれぞれ70.2%および46.0%と、ribociclib群で死亡リスクが29%有意に低減した(死亡のハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.54~0.95、log-rank検定のp=0.00973)。

 アロマターゼ阻害薬の投与を受けたサブグループ(495例)における42ヵ月時の推定OS率は、ribociclib群が69.7%と、プラセボ群の43.0%に比べ有意に良好で、ITT集団の結果と一致していた(HR:0.70、95%CI:0.50~0.98)。タモキシフェンのサブグループ(177例)では、両群間に42ヵ月時の推定OS率の差は認めなかった(71.2% vs.54.5%、0.79、0.45~1.38)。

 ribociclib群の219例と、プラセボ群の280例が試験治療を中止し、それぞれ151例(68.9%)および205例(73.2%)が後治療を受けた。後治療レジメンは、化学療法単独(ribociclib群22.4%、プラセボ群28.6%)および内分泌療法単独(22.4%、20.4%)が多かった。42ヵ月時に、化学療法による後治療を開始していなかった患者の割合は、ribociclib群がプラセボ群よりも高かった(65.8% vs.49.0%、HR:0.60、95%CI:0.46~0.77)。

 42ヵ月時に生存または2次治療中に病勢が進行しなかった患者の割合(後治療中のPFS率)は、ribociclib群がプラセボ群に比し有意に高かった(54.6% vs.37.8%、HR:0.69、95%CI:0.55~0.87)。

 有害事象の発現状況は、初回解析時と一致していた。主なGrade3/4のとくに注目すべき有害事象は、好中球減少(ribociclib群63.5%、プラセボ群4.5%)、肝胆道毒性作用(11%、6.8%)、QT間隔延長(1.8%、1.2%)だった。

 著者は、「全生存および病勢進行後のアウトカムは、臨床的意思決定において重要な要因であるため、今回の早期治療ラインの結果は患者にとってきわめて重要である。後治療中のPFS解析では、1次治療と2次治療を通じたribociclibの有益性が示された」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Im SA, et al. N Engl J Med. 2019 Jun 4. [Epub ahead of print]

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HER2陽性乳がん術前療法、T-DM1 vs.HPD(PREDIX HER2)/ASCO2019

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  HER2陽性の乳がん患者を対象とした、術前療法としてのトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と、トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセル併用(HPD)療法との比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJonas C. S. Bergh氏より発表された。これはオープンラベルの第II相無作為化比較試験である。

試験デザイン
・対象:HER2陽性、リンパ節転移陽性および/または腫瘍径20mm以上を有する乳がん患者
・試験群:トラスツズマブ エムタンシン3.6mg/kg(T-DM1群)
・対照群:トラスツズマブ(皮下注製剤)600mg/body+ペルツズマブ840mg/body+ドセタキセル75mg/m2 or 100mg/m2(HPD群)
 両群ともに、3週間隔で6コース投与
 ペルツズマブは、2コース目以降は420mg/body
 両群ともに、腫瘍縮小効果がない場合や、許容できない副作用発現の場合は治療途中でのクロスオーバー投与を許容
 手術後はトラスツズマブ(皮下注)+エピルビシン+シクロホスファミドの術後療法を実施(ホルモン受容体(HR)陽性の場合はホルモン療法も)
・評価項目:[主要評価項目]病理学的完全奏効率(pCR率)
[副次評価項目]無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)、安全性、QOL、乳房温存率など

 主な結果は以下のとおり。

・2014年12月から2018年10月の間に、本試験に202例が登録され、197例が解析対象とされた。
・pCR率はT-DM1群45%、HPD群47%で、両群間には統計学的な有意差は検出されなかった(p=0.359)。
・また、HER2陽性/HR陽性のグループにおいては、pCR率はT-DM1群36%、HPD群36%であった(p=0.929)。
・さらにHER2陽性/HR陰性のグループにおいては、pCR率はT-DM1群59%、HPD群67%であった(p=0.502)。
・Grade3/4の有害事象について、肝毒性はT-DM1群で6%、HPD群で1%、発熱性好中球減少はT-DM1群3%、HPD群26%、下痢がT-DM1群0%、HPD群14%、発疹がT-DM1群0%、HPD群3%で発生し、忍容性はT-DM1群のほうが良好であった。

(ケアネット)


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PREDIX HER2試験(Clinical Trials.gov)

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ribociclib、HR+/HER2ー閉経前乳がんでOS改善(MONALEESA-7)/ASCO2019

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 閉経前のホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がん患者を対象にした、ribociclib+ホルモン療法の第III相二重盲検無作為化比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、米国・UCLA Jonsson Comprehensive Cancer CenterのSara A. Hurvitz氏より発表された。本内容は、NEJM誌2019年6月号に同時掲載されている。

試験デザイン
・対象:閉経前のHR陽性/HER2陰性の進行乳がん患者で、進行乳がんに対するホルモン療法歴なし、あるいは2ライン以上の化学療法歴のない患者
・試験群:ribociclib 600mg/日(経口)+ゴセレリン+アロマターゼ阻害薬またはタモキシフェン(Ribo群)
・対照群:プラセボ+ゴセレリン+アロマターゼ阻害薬またはタモキシフェン(Pla群)
 ribociclibおよびプラセボは3週間連日投与、1週間休薬の28日間隔で投与
・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・672例が登録され、Ribo群335例、Pla群337例に割り付けられた。PFSの結果は2018年に報告されている。
・追跡期間中央値34.6ヵ月時点(データカットオフは2018年11月30日)における今回の解析では、OS中央値はRibo群では未到達、Pla群で40.9ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.712、95%信頼区間[CI]:0.535~0.948、p=0.00973)。このp値は、事前の解析計画で設定されていた値を下回っており、Ribo群の優越性を示している。また、割り付け後42ヵ月のOS率はRibo群では70.2%、Pla群で46.0%であった。
・化学療法の後治療への移行までの期間の中央値は、Ribo群で未到達、Pla群で36.9ヵ月であった(HR:0.596、95%CI:0.459~0.774)。
・投薬期間中央値はRibo群で約2年、Pla群で約1年であった。その後さらに15ヵ月の追跡を実施したが、新たな安全性プロファイルは報告されなかった。Grade3以上の有害事象として報告されたのは、好中球減少がRibo群63.5%、Pla群4.5%、肝機能障害がRibo群11%、Pla群6.8%などであった。

(ケアネット)


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Seock-Ah Im, et al. N Engl J Med. 2019 Jun 4.[Epub ahead of print]

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MONALEESA-7試験(Clinical Trials.gov)

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適切な乳がん補助化学療法のためのガイド情報が明らかに/NEJM

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 乳がん患者において、21遺伝子アッセイに基づく再発スコアに臨床的な再発リスク層別化の予後情報を加味すると、治療による恩恵効果が高い閉経前女性の特定が可能であることが示された。米国・アルベルト・アインシュタイン医学校のJoseph A. Sparano氏らが、21遺伝子アッセイの有用性を検証したTrial Assigning Individualized Options for Treatment(TAILORx試験)の副次的解析結果を報告した。乳がん患者への補助化学療法の必要性は、臨床病理学的因子とオンコタイプDXによる再発リスクを確定するための21遺伝子アッセイに基づく再発スコアによって判断できる可能性が示されていたが、再発スコアに臨床的な再発リスクのレベル情報を追加する意義については明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2019年6月3日号掲載の報告。

腫瘍径とグレードに基づき臨床リスクを層別化、遺伝子再発スコアと併用して評価

 研究グループは、TAILORx試験に参加したリンパ節転移陰性のER陽性かつHER2陰性乳がん患者9,427例を対象に、臨床的な再発リスクを腫瘍の大きさ・組織学的悪性度(グレード)に基づき、低臨床リスク(腫瘍径3cm以下・Grade I、2cm以下・Grade II、1cm以下・Grade III)と高臨床リスク(低臨床リスクに該当しない場合)に分類。これら臨床リスクの影響について、Cox比例ハザードモデルを用いて遠隔再発のハザード比を算出して評価した。

 遺伝子再発スコア(スコア範囲0~100:高値ほど予後不良もしくは化学療法の潜在的ベネフィットが大きいことを示す)は、低リスク(0~10)、中間リスク(11~25)、高リスク(26~100)で評価した。

  被験者9,427例のうち、低臨床リスクは70.2%、高臨床リスクは29.8%。年齢分布の比率も類似していた(50歳超は68.6%、50歳以下は31.4%)。なお、初回ホルモン療法について、50歳未満の閉経前女性患者の大部分がタモキシフェン単独療法を受けていた。

臨床リスク分類の併用は有用

 再発スコアが中間リスクでホルモン療法単独症例の場合、低臨床リスクに対する高臨床リスクの遠隔再発ハザード比は2.73(95%信頼区間[CI]:1.93~3.87)であり、中間リスクでホルモン療法+化学療法例の場合は、同遠隔再発ハザード比は2.41(95% CI:1.66~3.48)であった。また、再発スコアが高リスクでホルモン療法+化学療法例の場合、同遠隔再発ハザード比は3.17(95%CI:1.94~5.19)であり、再発スコアが中間リスクまたは高リスクのいずれにおいても、臨床リスク分類が遠隔再発の予後因子であることが示された。

 50歳未満のホルモン療法単独症例では、9年遠隔再発率(推定)は、再発スコア低リスク症例では臨床リスクにかかわらず5%未満(≦1.8±0.9%)であったが、再発スコア中間リスクで低臨床リスク症例では4.7±1.0%であった。また、高臨床リスクの場合は再発スコアが中間リスク以上において、9年遠隔再発率が10%を超えた(再発スコア中間リスクのホルモン療法単独症例で12.3±2.4%、再発スコア高リスクの化学療法併用例で15.2±3.3%)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


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Sparano JA, et al. N Engl J Med. 2019 Jun 3. [Epub ahead of print]

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乳がん化学療法、望ましいアントラサイクリンは?

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 アントラサイクリン系抗がん剤の心毒性は古くから知られており、抗腫瘍効果との兼ね合いがよく話題に上る。中国・上海中医薬大学のZhujun Mao氏らは、乳がんに対するアントラサイクリン系薬の有用性はなお議論の的であり結論が得られていないとして、無作為化臨床試験のネットワークメタ解析を行った。その結果、心毒性と抗腫瘍効果を考慮すると乳がんの化学療法に適したアントラサイクリン系薬は、ドキソルビシンリポソームまたはエピルビシン+デクスラゾキサンであることが示されたという。Oncology Research and Treatment誌オンライン版2019年5月17日号掲載の報告。

 研究グループは、乳がんに対するアントラサイクリン系薬の心毒性と有効性を評価する目的でネットワークメタ解析を行った。PubMed、Embaseおよびコクラン・データベースを用い、2018年8月までに発表された論文を検索し、アントラサイクリン系薬の心毒性と有効性を検討した無作為化臨床試験19件(乳がん患者計3,484例)を特定した。

 ドキソルビシン、エピルビシン、ドキソルビシンリポソーム、ドキソルビシン+デクスラゾキサン(DD)およびエピルビシン+デクスラゾキサン(ED)の5つの治療戦略に関する研究を適格として解析した。

  主な結果は以下のとおり。

・直接比較のメタ解析では、エピルビシン、ドキソルビシンリポソーム、DDおよびEDは、ドキソルビシンと比較して心保護作用が有意に優れており、オッズ比はそれぞれ1.64、3.75、2.88および3.66であった。
・奏効率は、ドキソルビシンリポソームが最も高く、次いでドキソルビシン、エピルビシン、EDおよびDDの順であった。
・ベネフィットとリスクのバランスが最も好ましいのはEDで、次いでドキソルビシンリポソーム、DD、エピルビシン、ドキソルビシンの順であった。

(ケアネット)


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Mao Z, et al. Oncol Res Treat. 2019 May 17. [Epub ahead of print]

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ER陽性乳がん、AKT阻害剤capivasertib+フルベストラントへの期待(FAKTION)/ASCO2019

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 エスロトゲン受容体(ER)陽性かつHER2陰性の進行・再発乳がん患者を対象にした、AKT阻害剤capivasertibの二重盲検・プラセボ対照の第II相無作為化比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、英国・マンチェスター大学のSacha J. Howell氏より発表された。

試験デザイン
・対象:閉経後のER陽性かつHER2陰性の進行・再発の乳がん患者で、前治療としてのアロマターゼ阻害薬(AI)が無効となった患者
・試験群:capivasertib 400mg×2/日(内服)+フルベストラント500mg(筋注)day1投与(Capi群)
・対照群:プラセボ+フルベストラント500mg day1投与(Flu群)
 両群とも28日ごと病勢進行や許容できない有害事象の発現があるまで投与
・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)「副次評価項目」全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率、安全性、PI3KCA変異またはPTEN過剰発現患者におけるPFS

 主な結果は以下のとおり。

・2015年3月~2018年3月に140例が登録され、Capi群に69例、Flu群に71例が無作為に割り付けられた。
・全症例を対象としたITT解析ではPFS中央値はCapi群で10.3ヵ月、Flu群で4.8ヵ月であった(HR:0.58、95%CI:0.39~0.84、p=0.004)。
・OS中央値はCapi群で26.0ヵ月、Flu群で20.0ヵ月であった(HR:0.59、95%CI:0.34~1.05、p=0.071)。
・ORRはCapi群で41%、Flu群で12%であった(p=0.002)。
・PI3Kシグナル活性グループ(59例:42%)におけるPFS中央値はCapi群9.5ヵ月、Flu群5.2ヵ月(p=0.064)、PI3Kシグナル非活性グループ(81例:58%)ではCapi群10.3ヵ月、Flu群4.8ヵ月(p=0.035)であった。
・Grade3以上の有害事象は、下痢(Capi群14%、Flu群4%)、皮疹(Capi群20%、Flu群0%)、高血糖(Capi群4%、Flu群0%)であった。

(ケアネット)


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日本のAYA世代がん患者が終末期ケアに望むこと

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  2018年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省)が改訂され、本人が望むエンドオブライフ・ケア(EOLケア)がいっそう推進されているが、国立がん研究センター 中央病院の平野 秀和氏らは、日本のAYA世代(思春期・若年成人、15~39歳)のがん患者が、どのようなEOLケアを選好するのか、初となる調査を行った。同センターによれば、日本のAYA世代では、年間約2万人ががんの診断を受けているという。Journal of Pain and Symptom Management誌オンライン版2019年5月8日号掲載の報告。

 研究グループは、多施設共同で行っているAYA世代がん患者に対する総合的ながん対策の在り方に関する研究調査(経験やニードの実態をアンケート等で調査)の一環として、EOLケアの選好について評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・AYAがん患者計349例(AYAがん患者213例、AYAがんサバイバー136例)について、評価した。有効回答率は86%(296/344例)であった。
・「予後を知りたい」との選好が53%(180/338例)、「治癒不能ながんで、かなりの毒性があり効果は限定的だが対症療法的な化学療法を受けたい」との選好が88%(301/341例)、「EOL期には自宅で積極的な緩和ケアを受けたい」との選好が61%(207/342例)であった。
・多変量解析で、「予後を知りたい」という選好は、小児世代以外で正の関連が認められた(OR:3.05、p=0.003)。また、化学療法既往とは負の関連が認められた(OR:0.23、p=0.009)。
・「治癒不能ながんで、かなりの毒性があり効果は限定的だが対症療法的な化学療法を受けたい」という選好は、積極的ながん治療を受けている状態と正の関連がみられた(OR:1.74、p=0.03)。
・「EOL期には自宅で積極的な緩和ケアを受けたい」という選好は、不安と正の関連がみられた(OR:1.72、p=0.04)。
・著者は、「これらの所見は、医療従事者が日本のAYA世代がん集団のEOLケアに関する選好を、よりよく理解するのに役立つだろう」とまとめている。

(ケアネット)


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Hirano H, et al. J Pain Symptom Manage. 2019 May 8. [Epub ahead of print]

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ASCO2019現地速報 乳がん

|企画・制作|ケアネット

2019年5月31日から6月4日まで開催されたASCO2019の乳がんトピックを、昭和大学乳腺外科 中村 清吾氏が現地シカゴからオンサイトレビュー。


レポーター紹介

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中村 清吾 ( なかむら せいご ) 氏
昭和大学医学部 乳腺外科 教授


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「乳腺外科医事件」裁判の争点 【後編】

提供元:CareNet.com/企画:協和企画

 手術直後の女性患者への準強制わいせつ罪を問われた執刀医が、逮捕・勾留・起訴された事件。一審では無罪判決が言い渡されたが、検察は控訴し、争いは現在も続いている。この事件に関しては、ネットを中心として被害者とされる女性に対するバッシングと、医療者に対するバッシングがそれぞれ見られる。しかし、本件では「麻酔(注:本件ではプロポフォールやセボフルラン、笑気等が使用されていた)の影響で幻覚を体験した可能性がある」 として無罪判決が下されており、事件の本質からすると、女性も医師もある意味で被害者といえる。

 担当弁護人の1人である水沼 直樹氏に、実際に法廷で論じられた2つの争点について、前・後編で解説いただく本企画。前編に引き続き、今回は術後せん妄の有無についての裁判の経過と、このような事案を防ぐために考えられる医療安全対策を取り上げる。

後編:術後せん妄か否かをめぐり、何が争点となったのか

1.麻酔薬による術後せん妄の可能性

 本件の良性腫瘍摘出術では、麻酔薬としてプロポフォール200mgのほか、笑気ガスとセボフルランを継続的に投与し、鎮痛薬としてペンタゾシン5mg、坐薬等を投与していました(患者:30代前半、体重約50kg)。

 患者には、せん妄の準備因子の1つである脳の器質的障害は認められませんでしたが、誘発因子の1つとされる疼痛については、患者が術後に痛みを訴えています。また、直接因子とされる手術侵襲や上記の麻酔薬、オピオイド(ペンタゾシン)の使用も本件ではあります。

 弁護側証人は、乳房手術は全身麻酔後の覚醒時せん妄リスクが高い(オッズ比:5.19)と報告1)されていることを証言し、また、検察側証人がせん妄の可能性が低い理由の1つとして若年者であることを挙げたことに対し、せん妄の発症には必ずしも年齢による有意差があるわけではないと証言しました。実際に、小児麻酔においても術後せん妄が問題となり2)、学会等でも取り上げられていることも言及しています。

 麻酔薬と性的幻覚の症例報告は世界中にあり3)、プロポフォールについていえば、同薬により生々しい性的幻覚を見たという症例が世界中で報告されています4-7)

2.医師のDNAが患者の乳房に付着する可能性

 執刀医は、手術前に病室で患者の両胸を触診し、術前マーキングを実施していました。また、手術室内でも再度触診し、上級医と術式確認をしながら切開部を狭めるため再マーキング(デザイニング)を行っています。これらの際、医師は通常どおり素手で触診しました。

3.裁判所の判断

 患者が痛みを訴えていたことや術後にバイタルチェックを受けたこと等の記憶が無いこと、専門家の証言等を総合した結果、患者が「せん妄状態に陥っていた可能性は十分にあり、また、せん妄に伴って性的幻覚を体験していた可能性が相応にある」と判断しました。

 また、現場に臨場した警察官が、左胸以外の他の部分からも付着物を採取していれば、何らかの事実が判明でき真相解明につながった可能性がある、という旨が述べられました。

 さらに、検察官は医師が術前に撮影した写真(顔と胸が写っている)を根拠に、医師に性的興味があったと指摘しましたが、これらの写真は、すべてデザイニングされた写真でした。裁判所は、医師が医学的な目的以外で撮影したとはいえないと判断しました。詳細については、拙稿となりますが『医療判例解説 Vol.079』8)にも経緯をまとめています。

4.医療安全対策

 この事件から得られた対策は、3つ考えられるでのはないでしょうか。1つは、患者の回診(とくに女性患者の回診)には、医療者1人で訪室しないことです。あらぬ疑いをかけられたり、また実際に犯行の機会を作ったりせずに済むからです。家族の立ち会いを求めるのも一案です。なお、男性看護師の場合はとくに複雑な問題をはらみますが、せめて術後間もない時期だけでも、男性が1人で訪室しないような工夫をすべきでしょう。

 2つ目は、せん妄の診断基準としてはDSMやICD等がありますが、簡易版のスクリーニングツールも複数あります。CAMは、(1)急激な発症・症状の変動、(2)注意の障害、(3)解体した思考、(4)意識の障害の4項目から構成されるツールで、(1)(2)があり、かつ(3)または(4)があればせん妄と診断するという簡便なツールとなっています。これらを活用し、患者のせん妄を早期に医療機関が把握し、放置しないことが重要です。

 最後に、せん妄の可能性を患者や家族に対して、あらかじめ説明しておくことも重要です。英国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインや、厚生労働省制作の、せん妄に関する啓発動画9)を活用することも一案かと思います


【参考】
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1)  Lepousé C et al. Br J Anaesth. 2006;96:747-53.
2)  Morgan E et al. Plast Reconstr Surg. 1990;86:475-8; discussion 479-480.
3)  Schneemilch C et al. Anaesthesist. 2012 ;61:234-41.
4) Balasubramaniam B et al. Anaesthesia. 2003;58:549-53.
5) Yang Z et al. J Anesth. 2016;30:486-8.
6) Martínez Villar ML et al. Rev Esp Anestesiol Reanim. 2000;47:90-2.
7) Marchaisseau V et al. Therapie. 2008;63:141-4.
8) 医療判例解説Vol.079 . 医事法令社;2019.
9) 厚生労働省委託緩和ケア普及啓発事業企画制作/日本サイコオンコロジー学会企画制作協力.『あれ?いつもと様子が違う=せん妄とは?』


講師紹介

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水沼 直樹 ( みずぬま なおき ) 氏
文京あさなぎ法律事務所 弁護士

[略歴]

東北大学法学部・日本大学大学院法務研究科卒業。
都内で法律事務所勤務の後、亀田総合病院の内部専属弁護士を5年超にわたり務め、現在に至る。
東邦大学医学部非常勤講師、日本がん・生殖医療学会(兼理事)、日本睡眠歯科学会(兼倫理委員)、日本法医学会・日本DNA多型学会・日本医事法学会・日本賠償科学会・日本子ども虐待防止学会、日本麻酔科学会医事法制研究会、オートプシー・イメージング学会(兼アドバイザー)、日本医療機関内弁護士協会(代表)の各会員 ほか。医療系学会や医療機関からの医療安全講演も実施している。


前編はこちら


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