海外研修留学便り【米国留学記(寺田 満雄氏)】第3回

[レポーター紹介 ]
寺田 満雄(てらだ みつお)

2013年  3月 名古屋市立大学医学部医学科 卒業
2013年  4月    蒲郡市民病院(臨床研修医)
2015年  4月    名古屋市立西部医療センター 外科(外科レジデント)
2017年  4月    愛知県がんセンター 乳腺科(レジデント)
2019年  4月    名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野(臨床研究医)
                       名古屋市立大学大学院 医学研究科 博士課程
2019年  6月    名古屋大学 分子細胞免疫学 (特別研究員)(上記と兼務)
2022年10月  名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野(病院助教)
2023年  8月    Department of Medicine and UPMC Hillman Cancer Center
                       (Post-doctoral associate)
2023年  9月    名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野(研究員)(上記と兼務)

ラボでの分業、実際どうやっている?

 よく海外のラボは分業がしっかりされているという話を渡米前に聞いていましたが、実際そのように感じることも多く、その点を中心に実際の研究環境についてお伝えします。Hassane Labは、ポスドクが私を含めて3人、PhD studentが2人、Technicianが2人、バイオインフォマティシャンが1人、あとは実験の方針などを相談できる上司が2人とPIで構成されています。

自宅マンション前の風景。ピッツバーグの冬は雪も多く、寒いです。

 日々、たくさんの臨床試験の検体がラボに運ばれてきますが、それらの処理は基本的にTechnicianが担当しています。腫瘍や生検や手術検体を処理して、scRNA-seqのライブラリー作成までもTechnicianの仕事になっています。これらの行程は非常に時間がかかりますが、ある意味では単純作業なので、Researcherは極力実験などに集中するように、との方針です。

 Researcherは1人が2つほどのプロジェクトを掛け持ちしています。研究の進捗は毎週月曜日にあるResearch meetingで進捗報告をしながら方針を決めていきます(毎週、この準備が非常に大変なのですが…)。基本的には1人で実験をしますが、大きな実験をするときにはラボ中のメンバーが協力して行います。日本でPhD studentだった頃も、実験は1人でやることが多かったこともあり、つい全部1人でやってしまいそうになるのですが、「Mitsuoは人の手伝いはするけど、誰かに手伝いをお願いするのが苦手だから、ちゃんと必要な時は言って」と言われたり…ですが、それぐらいには、お互いの協力体制があるのだと思います。むしろ1人ですべてやることでミスが増える、という認識のようです。

 もう1つ効率化されていると感じたのが、データの管理です。実験データや実験のプロトコル、臨床試験のデータベースなどはすべてクラウド管理をしており、過去データも含め、誰でも確認できるようになっています。またSlackも有効活用されていて、ミーティング以外での情報共有はほぼすべてSlack上で行われています。個人的にはミーティングを重ねるよりも、こちらの方が全体を把握しやすくて好みです(英語が堪能でない私には文章の方が言いたいことも言いやすいし、理解もしやすい)。

大切なのは、“1人で抱え込まずにプロジェクトを進める姿勢”

メラノーマのチャリティマラソンにラボメンバーと家族で参加。

 ラボ内には、scRNA-seqやVISIUM用の機器は揃っていますが、それ以外はどこにでもあるような最低限の機材のみで、ラボのスペース自体は意外と広くありません。施設として特徴的なことは、共通機器が非常に充実していることです。UPMC Hillman Cancer CenterはUniversity of Pittsburghの医療群の1施設です。なかでも免疫学の研究には力をいれており、免疫学だけで1つの研究棟があるぐらいです。実験を行う過程で、さまざまな実験手法や解析手法を用いることになりますが、困った時には共通機器を管理している部門で、機器の使用方法から解析の方法を相談することができます。また、たとえば多重免疫染色を行う際には、染色の条件検討など非常に時間がかかることも多いですが、サンプルと抗体を渡すことで一括して条件検討から染色までを担ってくれる部門もあります。これは非常に助かります。

 このように、ラボ内だけでなく、大学内でも効率的な分業がされていると言えます。自施設内だけでなく、NIHなどの他施設との共同研究も積極的に行っており、1人で抱え込まずに、内へも外へも借りられる手は借りてプロジェクトを進める姿勢が大切だと痛感します。実際問題、やりたいことに集中できる環境というのは、残念ながら日本ではあまり多くはないように思いますので、一番ギャップを感じる部分でもあります。

  


バックナンバー

第1回: 乳腺外科医の自分がメラノーマのTRに強い研究室へ留学を決めた理由
第2回:ほぼ全例で網羅的解析を実施、日本との違いを感じる研究環境
第3回:ラボでの分業、実際どうやっている?

HR+/HER2-転移乳がん、SG+ペムブロリズマブvs.SG(SACI-IO HR+)/ASCO2024

提供元:CareNet.com

 既治療の切除不能な局所進行または転移を有するHR+/HER2-乳がんに対して、sacituzumab govitecan(SG)+ペムブロリズマブを、SG単独と比較した無作為化非盲検第II相SACI-IO HR+試験で、ペムブロリズマブ併用による無増悪生存期間(PFS)の有意な改善は認められなかった。米国・ダナファーバーがん研究所のAna Christina Garrido-Castro氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 SGはトポイソメラーゼI阻害薬(SN-38)をペイロードとする抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)で、その作用機序から抗PD-1抗体との相乗効果が期待されている。

・対象:切除不能な局所進行または転移を有するHR+/HER2-乳がんで、転移後に1ライン以上の内分泌療法歴があるか、術後補助内分泌療法中もしくは12ヵ月以内に進行した患者(活動性脳転移のある患者、トポイソメラーゼI阻害薬ADC、イリノテカン、抗PD-1/L1抗体による治療歴のある患者は除外)
・試験群(併用群):SG(1、8日目に10mg/kg静注)+ペムブロリズマブ(1日目に200mg静注)、21日ごと
・対照群(SG群): SG単独
・評価項目:
[主要評価項目]PFS
[副次評価項目]PD-L1陽性患者のPFS、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、奏効までの期間(TTOR)、臨床的有用率(CBR)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・治療開始した104例(併用群52例、SG群52例)が解析に組み入れられた。
・年齢中央値は57.0歳(範囲:27.0~81.0歳)、40例(38.5%)がPD-L1陽性(CPS≧1)、56例(69.1%)が術前/術後化学療法歴があり、51例(49.0%)が転移乳がんに対する1ラインの化学療法歴があった。
・追跡期間中央値12.5ヵ月(データカットオフ:2024年3月9日)におけるPFS中央値は併用群が8.12ヵ月で、SG群の6.22ヵ月より数字上は延長したが、統計学的に有意ではなかった(ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.51~1.28、p=0.37)。
・OSデータはimmatureであるが、OS中央値は併用群18.52ヵ月、SG群17.96ヵ月で有意な差は認められなかった(HR:0.65、95%CI:0.33~1.28、p=0.21)。
・PD-L1陽性(CPS≧1)患者において、PFS中央値は併用群がSG群より4.4ヵ月長く(HR:0.62、95%CI:0.29~1.36、p=0.23)、OS中央値は6ヵ月長く(HR:0.61、95%CI:0.18~2.04、p=0.42)、どちらも有意ではないが併用群で改善傾向が認められた。
・ORRは、併用群21.2%、SG群17.3%で有意な差はなかった(p=0.80)。また、CBR(p=0.84)、DOR(p=0.31)、TTOR(p=0.68)も有意な差は認められなかった。
・主なGrade3以上のTEAE(治療中に発現した有害事象)は、併用群では好中球減少症(54%)、白血球減少症(23%)、リンパ球減少症(12%)、発熱性好中球減少症(6%)、貧血(6%)、下痢(6%)で、単独群では好中球減少症(44%)、貧血(10%)、悪心(10%)、下痢(8%)、白血球減少症(8%)、疲労(6%)、高血圧(6%)であった。

 Garrido-Castro氏は、「これらの結果は、転移を有するPD-L1陽性HR+/HER2-乳がん患者におけるSG+ペムブロリズマブのさらなる検討を支持している。ADCと免疫チェックポイント阻害薬併用によりベネフィットが得られる予測因子を調査するために、追加の研究が必要である」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

Saci-IO HR+試験(ClinicalTrials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

ASCO2024 FLASH 乳がん

|企画・制作|ケアネット

2024年5月31日~6月4日(現地時間)に開催された世界最大のがん学会、米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)。ここで発表された旬な乳がんのトピックを、がん研有明病院の尾崎 由記範氏がレビュー。


レポーター紹介

尾崎 由記範 ( おざき ゆきのり ) 氏
がん研究会有明病院 乳腺センター 乳腺内科/先端医療開発科


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

転移乳がんへのT-DXd、HER2-ultralowでもPFS延長(DESTINY-Breast06)/ASCO2024

提供元:CareNet.com

 従来のHR陽性(+)かつHER2陰性の転移を有する乳がんのうち、約60~65%がHER2-low(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)、約20~25%がHER2-ultralow(膜染色を認めるIHC 0[IHC >0<1+])とされているため、約85%がトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が有用である可能性がある。米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)において、HR+かつHER2-lowおよびHER2-ultralowで化学療法未治療の転移・再発乳がん患者を対象とした第III相DESTINY-Breast06試験の結果、T-DXdは化学療法群と比較して、有意に無増悪生存期間(PFS)を延長したことを、イタリア・ミラノ大学のGiuseppe Curigliano氏が発表した。

・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験
・対象:転移に対する治療として1ライン以上の内分泌療法を受け、化学療法は未治療の、HR+かつHER2-low(HER2-ultralowも含む)の転移・再発乳がん患者866例
・試験群(T-DXd群):T-DXd(3週間間隔で5.4mg/kg)を投与 436例
・対照群(TPC群):治験医師選択の化学療法(カペシタビンまたはパクリタキセル、nab-パクリタキセル)を投与 430例
・評価項目:
[主要評価項目]盲検独立中央判定(BICR)によるHER2-low集団のPFS
[主要副次評価項目]BICRによるITT集団(HER2-lowおよびHER2-ultralow)のPFS、HER2-low集団およびITT集団の全生存期間(OS)
・層別化因子:CDK4/6阻害薬の使用有無、HER2発現状況、転移がないときのタキサン使用有無
・データカットオフ:2024年3月18日
※内分泌療法:(1)2ライン以上の内分泌療法±分子標的薬、(2)初回の内分泌療法+CDK4/6阻害薬で6ヵ月以内に病勢進行、(3)術後の内分泌療法開始から24ヵ月以内に再発 のいずれか。

 主な結果は以下のとおり。

・866例がT-DXd群とTPC群に1対1に無作為に割り付けられた。年齢中央値はそれぞれ58.0歳(範囲:28~87)/57.0歳(32~83)、IHC 1+が54.8%/54.4%、IHC 2+/ISH-が26.8%/27.4%、内分泌療法抵抗性が29.4%/32.6%、診断時のde novoが30.5%/30.7%、骨転移のみありが3.0%/3.0%、内臓転移ありが86.2%/84.7%、肝転移ありが67.9%/65.8%であった。
・TPC群では、カペシタビンが59.8%、nab-パクリタキセルが24.4%、パクリタキセルが15.8%に投与された。

ITT集団(HER2-lowおよびHER2-ultralow):866例
・ITT集団におけるPFS中央値は、T-DXd群13.2ヵ月、TPC群8.1ヵ月であり、T-DXd群で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.53~0.75、p<0.0001)。
・12ヵ月OS率は、T-DXd群87.0%、TPC群81.1%であった。
・全奏効率(ORR)は、T-DXd群57.3%(CRが3.0%)、TPC群31.2%(0%)であった。臨床的有用率(CBR)はそれぞれ76.6%、51.9%であった。

HER2-low集団:713例
・主要評価項目であるHER2-low集団におけるPFS中央値は、T-DXd群13.2ヵ月、TPC群8.1ヵ月であり、T-DXd群で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を認めた(HR:0.62、95%CI:0.51~0.74、p<0.0001)。
・12ヵ月OS率は、T-DXd群87.6%、TPC群81.7%であった。
・ORRは、T-DXd群56.5%(CRが2.5%)、TPC群32.2%(0%)であった。CBRはそれぞれ76.6%、53.7%であった。
・HER2-low集団のすべてのサブグループ解析においてT-DXd群が良好な結果であった。

HER2-ultralow集団:152例
・HER2-ultralow集団におけるPFS中央値は、T-DXd群13.2ヵ月、TPC群8.3ヵ月であった(HR:0.78、95%CI:0.50~1.21)。
・12ヵ月OS率は、T-DXd群84.0%、TPC群78.7%であった。
・ORRは、T-DXd群61.8%(CRが5.3%)、TPC群26.3%(0%)であった。CBRはそれぞれ76.3%、43.4%であった。

安全性
・新たな安全性シグナルは確認されなかった。
・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)は、T-DXd群40.6%、TPC群31.4%に発現した。T-DXd群で多かったGrade3以上のTEAEは、好中球減少症(20.7%)、白血球減少症(6.9%)、貧血(5.8%)などであった。
・T-DXd群における薬剤関連間質性肺疾患の発現は11.3%で、Grade1が1.6%、Grade2が8.3%、Grade3が0.7%、Grade4が0%、Grade5(死亡)が0.7%であった。

 これらの結果より、Curigliano氏は「本試験によって、T-DXdは、1種類以上の内分泌療法を受けたHR+かつHER2-lowおよびHER2-ultralowの転移・再発乳がん患者の新たな治療選択肢となった」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

なぜハワイにNCI指定がんセンターがあるのか?【後編】(上野 直人氏 / 中村 清吾氏)

 2022年12月に、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターからハワイ大学に移り、ディレクターとしてトランスレーショナルリサーチの拠点づくりに取り組む上野 直人氏に、ハワイのがん診療・研究の現状や米国における位置づけ、今後のがんセンターの展望をお聞きするとともに(前編)、中村 清吾氏(昭和大学医学部)との対談でハワイでの医療者のリクルートや日本人医療者の研修先としてのハワイについてお話いただきました(後編)。

[演者紹介]

上野 直人 (うえの なおと)

ハワイ大学がんセンター ディレクター


中村 清吾(なかむら せいご)

昭和大学医学部乳腺外科
昭和大学病院ブレストセンター長

 


バックナンバー

前編: なぜハワイにNCI指定がんセンターがあるのか?
後編:なぜハワイにNCI指定がんセンターがあるのか?

海外研修留学便り【米国留学記(寺田 満雄氏)】第2回

[レポーター紹介 ]
寺田 満雄(てらだ みつお)

2013年  3月 名古屋市立大学医学部医学科 卒業
2013年  4月    蒲郡市民病院(臨床研修医)
2015年  4月    名古屋市立西部医療センター 外科(外科レジデント)
2017年  4月    愛知県がんセンター 乳腺科(レジデント)
2019年  4月    名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野(臨床研究医)
                       名古屋市立大学大学院 医学研究科 博士課程
2019年  6月    名古屋大学 分子細胞免疫学 (特別研究員)(上記と兼務)
2022年10月  名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野(病院助教)
2023年  8月    Department of Medicine and UPMC Hillman Cancer Center
                       (Post-doctoral associate)
2023年  9月    名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野(研究員)(上記と兼務)

ほぼ全例で網羅的解析を実施、日本との違いを感じる研究環境

 私の所属している研究室は、臨床試験のTranslational research(TR)を得意としています。PIのHassane先生は皮膚科の臨床医でもあり、自施設を中心に行っている医師主導治験の検体をそのまま自分のラボで処理・解析するスタイルが確立されています。毎日のように臨床試験に参加している患者さんからの検体がラボに届きます。検体は血液サンプル、生検や手術の腫瘍検体、便検体が主です。とくに腫瘍検体に関しては、ほぼ全例をシングルセルRNAシークエンス(scRNA-seqもしくはCITE-seq)の解析に回し、網羅的な解析を行っています。また、同時に腫瘍のFFPEサンプルも保存し、多重免疫染色やVISIUM(空間的遺伝子発現解析)も行うことで、空間的な腫瘍環境の解析を網羅的に行っています。

 これらの網羅的解析は、もちろんかなり高額ではありますが、非常に多くの情報量を研究者に与えてくれます。日本では慎重に適応を検討していた高額な解析を、息をするように行う日々に感覚が麻痺しそうです。もちろんTR含め、研究では仮説をもとに計画を立てることが大切であることは言うまでもないことですが、極端な話、今の世界のレベルでは、網羅的な解析を行えば解決してしまうような仮説は「仮説を立てる」の内に入らないのかもしれないな…と感じています。アイデア勝負でこれに太刀打ちし続けることは容易ではありませんので、今は良い経験をさせてもらっていると感じると同時に、危機感を覚えているのも正直な気持ちです。

現在取り組んでいるプロジェクトは

 私自身が担当しているプロジェクトは現在2つです。それぞれ具体的な内容に言及することはできませんが、1つは当研究室でPublishした研究を深掘りするマウス実験が中心のプロジェクト、もう1つは、メラノーマに対して行われた術前化学療法CMP-001(TLR9アゴニスト)+抗PD-1抗体併用療法の作用メカニズムを解明するプロジェクトです。

 前者は、ターゲットとしている遺伝子が明確にあり、その遺伝子のノックアウトマウスおよびコンディショナルノックアウトマウスモデルを用いて研究を行っています。後者は、前述した網羅的な解析からでてきた仮説を検証するプロジェクトです。よく考えれば当たり前のことではありますが、論文が世に出るタイミングでは、それをもとにした「次の研究」はすでに始まっています。もちろんこれらを形にすることは容易ではなく、タフな仕事ではあるのですが、いかに自分たちだけが抱えているオリジナリティのある研究テーマを先行して進めていくかが大切であることを実感します。

  


バックナンバー

第1回: 乳腺外科医の自分がメラノーマのTRに強い研究室へ留学を決めた理由
第2回:ほぼ全例で網羅的解析を実施、日本との違いを感じる研究環境

なぜハワイにNCI指定がんセンターがあるのか?【前編】(上野 直人氏 / 中村 清吾氏)

 2022年12月に、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターからハワイ大学に移り、ディレクターとしてトランスレーショナルリサーチの拠点づくりに取り組む上野 直人氏に、ハワイのがん診療・研究の現状や米国における位置づけ、今後のがんセンターの展望をお聞きするとともに(前編)、中村 清吾氏(昭和大学医学部)との対談でハワイでの医療者のリクルートや日本人医療者の研修先としてのハワイについてお話いただきました(後編)。

[演者紹介]

上野 直人 (うえの なおと)

ハワイ大学がんセンター ディレクター


中村 清吾(なかむら せいご)

昭和大学医学部乳腺外科
昭和大学病院ブレストセンター長

 


バックナンバー

前編: なぜハワイにNCI指定がんセンターがあるのか?
後編:なぜハワイにNCI指定がんセンターがあるのか?

海外研修留学便り【米国留学記(寺田 満雄氏)】第1回

[レポーター紹介 ]
寺田 満雄(てらだ みつお)

2013年  3月 名古屋市立大学医学部医学科 卒業
2013年  4月    蒲郡市民病院(臨床研修医)
2015年  4月    名古屋市立西部医療センター 外科(外科レジデント)
2017年  4月    愛知県がんセンター 乳腺科(レジデント)
2019年  4月    名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野(臨床研究医)
                       名古屋市立大学大学院 医学研究科 博士課程
2019年  6月    名古屋大学 分子細胞免疫学 (特別研究員)(上記と兼務)
2022年10月  名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野(病院助教)
2023年  8月    Department of Medicine and UPMC Hillman Cancer Center
                       (Post-doctoral associate)
2023年  9月    名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野(研究員)(上記と兼務)

乳腺外科医の自分がメラノーマのTRに強い研究室へ留学を決めた理由

 私は現在、2023年よりUPMC (University of Pittsburgh Medical Center)Hillman Cancer CenterのHassane M. Zarour 教授の研究室でポスドク生活を送っています。少しでもお役に立てるよう、できるだけ赤裸々に綴りたいと思います。

 留学前、大学院への進学と同時に名古屋大学の西川研に在籍して腫瘍免疫の研究をしていました。元々は臨床研究がやりたかったため、大学院で基礎研究をやることになった時は、正直、複雑な気持ちもありました。しかし、そこでは免疫学の基本から、臨床検体を用いたTranslational Research (TR)まで多くを学ぶ機会があり、TRに興味を持つことになった大きなきっかけでした。

 

 いつか留学してみたい、とは考えていて(動機に中身がなくてお恥ずかしいですが)、博士課程が終わり、このタイミングを逃したら難しいかな…と少し諦めていた時、西川教授から今の留学先への打診をいただきました。メラノーマのTRに力をいれている研究室です。ポスドクの引き継ぎを探しているとのことで、非常に魅力的なお誘いでした。乳腺外科医である私としては、乳がんの研究をしたいという気持ちがなかったと言えば嘘になりますが、またとないチャンスに、迷いなくお願いしました。これが2023年3月上旬の出来事で、その時「ボスが来週のJSMOで来日するから、会ってみる?」とお誘いをいただきましたが、当直業務のため断念。その後、3月下旬に留学先のボスとの初Webミーティングを経て正式に決まりました。「Yoshi(西川教授)のラボならWelcome」という感じで、少し話をして受け入れの許可をいただき、一瞬で自分の人生が大きく動いた感覚がしました。”上”は”上”で繋がっている…ということを改めて感じた瞬間でもあります。

 実は、それまでもいくつか留学先の打診をいただいたりしていたのですが、種々の理由でご縁がありませんでした。時に、自分で直接ラボにCVを送って連絡をしてみたこともありました。返事があることもあれば、たいてい返事はありません。有名なラボには、頻繁にそのようなメールが来るようです。身も蓋もない話ですが、ちゃんとしたポストで留学するために大事なのは、タイミングとコネだと思います。ポストや予算的にも先方にとって都合がいいタイミングはそう多くはないのだろうと思います。

留学準備の“ライフハック”

 前任者が8月末で退職予定だったため、研究の引き継ぎ期間も含めて約4ヵ月で渡米の準備をする必要があり、本当に大変でした。留学準備ライフハックについては、書き出せばいくらでも記事は書くことができそうですが、ここではかいつまんで紹介します。

J-1 VISA:DS-2019という受け入れ施設から発行される書類がボトルネックになります。これがないとVISAの申請はできません。催促メール – 相手の言い訳メール – ボスをCCに含めて催促メールを繰り返し、最終的にギリギリでボスが事務に怒って、その後一瞬で発行されました。ボスをCCに入れる、がライフハック。最終的にVISAは、渡米の2週間前に揃いました。

アメリカでの住居と車:ピッツバーグに日本人が多く住むアパートがあり、そこの方に紹介いただき日本にいる間に住居と車は契約して渡米しました。電気の契約では、アメリカ名物たらい回し無限ループにハマり、キレそうになったこともありましたが、なんとか契約。

日本の住居:持ち家だったため、留学中にローンも払う財政的余裕はなく、定期借家で貸し出すことに(定期借家は相場よりも安く貸さなくてはならないのですが、背に腹はかえられぬということで…)。

 そのほか、業務引き継ぎ、大学指定の英語資格試験、家財道具処分・実家への輸送、アメリカでの送金方法、保険、携帯電話、インターネット、予防接種、転出届、郵便転送届、各種連絡先変更…etc. あっという間に準備期間の4ヵ月は過ぎ、家族5人(妻、7歳、5歳、2歳)でスーツケース+プラスチックコンテナ 計6個とともにピッツバーグへ向かいました。

  


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第1回: 乳腺外科医の自分がメラノーマのTRに強い研究室へ留学を決めた理由
第2回:ほぼ全例で網羅的解析を実施、日本との違いを感じる研究環境

海外研修留学便り【番外編(山内 英子氏)】後編

[ レポーター紹介 ]
山内 英子やまうち ひでこ

1987年 順天堂大学医学部卒業
1987年 聖路加国際病院外科レジデント
1993年 聖路加国際病院外科医員
1994年 Dana-Farberがん研究所研究助手
1996年 Georgetwon大学Lombardiがんセンター研究フェロー/助手
2001年 Hawaii大学外科レジデント
2004年 Hawaii大学外科チーフレジデント
2005年 Hawaii大学外科集中治療学臨床フェロー
2007年 Moffittがんセンター/South Florida大学臨床フェロー
2009年 聖路加国際病院乳腺外科医長
2010年 聖路加国際病院乳腺外科部長、ブレストセンター長
2017年 聖路加国際病院副院長
2021年 聖路加国際病院理事
2023年 国立がん研究センター理事
     Hawaii大学がんセンター教授/Hawaiiクイーンズメディカルセンター乳腺外科医

聖路加国際病院などでのキャリアを経て、2023年より以前留学していたハワイ大学に再び拠点を移した山内 英子先生に、これまでのご自身の経歴や現在携わっている研究・現地での診療について前後編でレポートいただきます。後編ではハワイでの外科手術の状況や医師の働き方について伺いました。

 

後編:ハワイでの乳がん手術の状況・医師の働き方

 

 前編はこちら


海外研修留学便り【番外編(山内 英子氏)】前編

[ レポーター紹介 ]
山内 英子やまうち ひでこ

1987年 順天堂大学医学部卒業
1987年 聖路加国際病院外科レジデント
1993年 聖路加国際病院外科医員
1994年 Dana-Farberがん研究所研究助手
1996年 Georgetwon大学Lombardiがんセンター研究フェロー/助手
2001年 Hawaii大学外科レジデント
2004年 Hawaii大学外科チーフレジデント
2005年 Hawaii大学外科集中治療学臨床フェロー
2007年 Moffittがんセンター/South Florida大学臨床フェロー
2009年 聖路加国際病院乳腺外科医長
2010年 聖路加国際病院乳腺外科部長、ブレストセンター長
2017年 聖路加国際病院副院長
2021年 聖路加国際病院理事
2023年 国立がん研究センター理事
     Hawaii大学がんセンター教授/Hawaiiクイーンズメディカルセンター乳腺外科医

聖路加国際病院などでのキャリアを経て、2023年より以前留学していたハワイ大学に再び拠点を移した山内 英子先生に、これまでのご自身の経歴や現在携わっている研究・現地での診療について前後編でレポートいただきます。前編では今回ハワイ大学に移られた経緯や、現地での乳がん診療の状況について伺いました。

 

前編:なぜハワイ大学に? ハワイでの乳がん診療のいま

 

後編はこちら