性的マイノリティーの乳がん患者は再発リスクが3倍

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 性的マイノリティー(レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー)の乳がん患者では、シスジェンダー(性自認と生まれ持った性別が一致している人)で異性愛者の乳がん患者と比較して、症状発現から診断までの期間が長く、再発リスクが3倍であることが、米国・スタンフォード大学のErik Eckhert氏らの研究により明らかになった。JAMA Oncology誌オンライン版2023年2月2日号掲載の報告。

 多くの医療機関では患者の性的指向や性自認に関するデータは収集していないため、性的マイノリティーにおける乳がんの診断、治療、予後などの医療格差はあまり知られていない。そこで研究グループは、シスジェンダーの異性愛者と比較して、性的マイノリティーの乳がん治療の質と再発率を調査した。

 対象は、2008年1月1日~2022年1月1日に治療を受けた性的マイノリティーの乳がん患者92例と、診断年、年齢、病期、ホルモン受容体およびHER2発現でマッチさせたシスジェンダーで異性愛者の乳がん患者92例(対照群)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・参加者の診断時の年齢中央値は49歳(範囲:43~56歳)で、性的マイノリティー群はレズビアンが80%(74例)、バイセクシャルが13%(12例)、トランスジェンダーが6%(6例)であった。
・対照群と比較して、性的マイノリティー群では症状発現から診断までの期間が長かった(診断までの期間の中央値:性的マイノリティー群64日vs.対照群34日、補正後ハザード比[aHR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.42~0.99、p=0.04)。
・性的マイノリティー群では、がん専門医が推奨する治療を拒否する割合が高かった(補正後オッズ比[aOR]:2.27、95%CI:1.09~4.74、p=0.03)。
・性的マイノリティー群では、乳がんの再発率が高かった(aHR:3.07、95%CI:1.56~6.03、p=0.001)。

 これらの結果より、研究グループは「シスジェンダーで異性愛者の乳がん患者と比較して、性的マイノリティーの乳がん患者では診断が遅れており、再発リスクが3倍であることが明らかになった。性的マイノリティーでは医療格差があり、さらなる調査が必要である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Erik E, et al. JAMA Oncol. 2023 Feb 2. [Epub ahead of print]

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65歳以上低リスク早期乳がん、乳房温存術後の放射線療法は省略可/NEJM

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 65歳以上の再発リスクが低いホルモン受容体陽性早期乳がん女性患者において、乳房温存術後の放射線療法非施行は、局所再発率の増加と関連していたものの初回イベントとしての遠隔再発や全生存には影響しないことが、英国など4ヵ国76施設で実施された第III相無作為化比較試験「PRIME II試験」の10年時解析で示され、英国・エディンバラ大学のIan H. Kunkler氏らが報告した。著者は、「今回の試験は、乳房温存術を受けたGrade1または2でエストロゲン受容体(ER)高発現の65歳以上の女性では、5年間の術後内分泌療法を受けることを条件に放射線療法を省略できることを示す確かなエビデンスを提供している」とまとめている。NEJM誌2023年2月16日号掲載の報告。

放射線療法なし群とあり群に無作為化、両群とも術後内分泌療法は実施

 研究グループは、T1またはT2の原発性乳がん(最大腫瘍径3cm以下の腫瘍)で乳房温存術を受け、腋窩リンパ節転移陰性、ER陽性またはプロゲステロン受容体陽性、切除断端陰性(1mm以上)で、術前または術後内分泌療法を受けている65歳以上の女性患者(Grade3またはリンパ管浸潤のいずれかを有する患者は除外)を、総線量40~50Gyの全乳房照射を行う群(RTあり群)と行わない群(RTなし群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。標準的な術後内分泌療法として、タモキシフェン1日20mgの5年間投与が推奨された。

 主要評価項目は局所再発、副次評価項目は領域再発、遠隔再発、全生存、乳がん特異的生存などであった。

10年時局所再発率はRTなし群9.5% vs.あり群0.9%、10年OSは80.8% vs.80.7%

 2003年4月16日~2009年12月22日の期間に、計1,326例がRTあり群(658例)とRTなし群(668例)に無作為に割り付けられた。

 10年間の追跡(中央値9.1年)において、累積局所再発率はRTなし群9.5%(95%信頼区間[CI]:6.8~12.3)に対してRTあり群0.9%(95%CI:0.1~1.7)で、局所再発のハザード比(HR)は10.4(95%CI:4.1~26.1、p<0.001)であった。局所再発はRTなし群で多かったが、初回イベントとしての遠隔再発の10年累積発生率は、RTなし群1.6%(95%CI:0.4~2.8)、RTあり群3.0%(1.4~4.5)であり、RTなし群で低頻度であった。

 10年全生存率は、RTなし群80.8%(95%CI:77.2~84.3)、RTあり群80.7%(76.9~84.3)で、両群で類似していた。領域再発率、乳がん特異的生存率についても、両群で大きな差はなかった。

 サブグループ解析の結果、ER高発現集団の10年累積局所再発率はRTなし群で8.6%であり、全体集団より低かった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Kunkler IH, et al. N Engl J Med. 2023;388:585-594.

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乳がんサバイバーの2次原発がん、部位別リスク

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 乳がんサバイバーの2次原発がん(SPC)の発生率が上昇している。そこで、英国・ケンブリッジ大学のIsaac Allen氏らは、乳房以外のSPCリスクについて部位別に系統的レビューとメタ解析を実施した。その結果、多くの部位でSPCリスクが有意に上昇しており、50歳未満で乳がんと診断された女性や、アジア人でよりリスクが高いことが示された。Breast Cancer Research誌2023年2月10日号に掲載。

 著者らは、PubMed、Embase、Web of Scienceで2022年3月までに公表された研究について系統的検索を行った。乳がん後に乳房以外のSPCを発生する複合リスクを評価し標準化発生率比(SIR)を報告した研究を対象とした。年齢、追跡期間、地域を層別化し、複合SPCリスクのメタ解析を行い、また年代ごとに特定部位におけるSPCリスクも評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・前向きコホート研究1件、後ろ向きコホート研究27件を同定した。
・乳房以外のSPCのSIRは0.84~1.84の範囲で、SIR推定値のサマリーは1.24(95%信頼区間[CI]:1.14~1.36、I2:99%)だった。50歳未満で乳がんと診断された場合の推定値は1.59(95%CI:1.36~1.85)で、50歳以上で診断された女性(SIR:1.13、95%CI:1.01~1.36)に比べて有意に高かった(差のp<0.001)。
・SPCリスクはアジア人のレジストリで有意に高かった(アジアにおけるSIR:1.47、95%CI:1.29~1.67、欧州におけるSIR:1.16、95%CI:1.04~1.28)。
・SPCリスクは、甲状腺(SIR:1.89、95%CI:1.49~2.38)、子宮体部(SIR:1.84、95%CI:1.53~2.23)、卵巣(SIR:1.53、95%CI:1.35~1.73)、腎臓(SIR:1.43、95%CI:1.17~1.73)、食道(SIR:1.39、95%CI:1.26~1.55)、皮膚(メラノーマ)(SIR:1.34、95%CI:1.18~1.52)、血液(白血病)(SIR:1.30、95%CI:1.17~1.45)、肺(SIR:1.25、95%CI:1.03~1.51)、胃(SIR:1.23、95%CI:1.12~1.36)、膀胱(SIR:1.15、95%CI:1.05~1.26)で有意に増加した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Allen I, et al. Breast Cancer Res. 2023;25:18.

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BRCA変異陽性転移乳がんへのオラパリブ、1次治療で高い効果(OlympiAD)

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 生殖細胞系列BRCA変異陽性(gBRCAm)HER2陰性転移乳がんにおいて、オラパリブは医師選択の化学療法(TPC)に対し主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間(OS)中央値はオラパリブ群19.3ヵ月vs.TPC群17.1ヵ月(p=0.513)と報告されている。今回、従来の報告より25.7ヵ月長いOSの延長フォローアップ解析結果を、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのMark E. Robson氏らがEuropean Journal of Cancer誌オンライン版2023年2月14日号に報告した。

 OlympiAD試験では、gBRCAmかつHER2陰性で、アントラサイクリン系およびタキサン系薬剤の治療歴を有し、転移疾患に対する化学療法歴≦2ラインの患者を、オラパリブ群またはTPC群(医師の選択によりカペシタビン、エリブリンまたはビノレルビンのいずれかを使用)に2:1の割合で無作為に割り付けて比較検討している。延長フォローアップ期間中、OSは層別log-rank検定(全体集団)およびCox比例ハザードモデル(事前に指定されたサブグループ)を用いて6ヵ月ごとに分析された。

 今回報告された主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値はオラパリブ群18.9ヵ月vs.TPC群15.5ヵ月だった。
・全体集団(302例)におけるOS中央値はオラパリブ群19.3ヵ月vs.TPC群17.1ヵ月だった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.67~1.18)。
・3年生存率は、オラパリブ群27.9% vs.TPC群21.2%だった。
・3年以上試験治療を受けた患者はオラパリブ群で8.8%だったのに対し、TPC群では0%だった。
・転移疾患に対する1次治療(1L)の患者において、OS中央値はオラパリブ群でTPC群よりも長く(22.6ヵ月vs.14.7ヵ月、HR:0.55、95%CI:0.33~0.95)、3年生存率はオラパリブ群40.8% vs.TPC群12.8%となった。オラパリブに関連する新たな重篤な有害事象は認められていない。

 著者らは、今回の追加解析でのOS結果はOlympiAD試験の過去の解析結果と一致していたとし、とくに1Lにおけるオラパリブによる長期生存ベネフィットの可能性を支持するものだとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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Robson ME, et al. Eur J Cancer. 2023 Feb 14. [Epub ahead of print]

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転移を有する乳がんでタキサン再投与が有効な患者は?

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 推奨される抗がん剤をすべて投与された転移乳がん患者において、全身状態が良好であるにもかかわらず病勢進行に苦しむ患者は少なくない。この状況で、タキサンなどの忍容性の高い抗がん剤の再投与が選択肢の1つになる場合がある。そこで、フランス・Centre Georges Francois Leclerc Cancer CenterのManon Reda氏らは、タキサン投与歴のある転移乳がん患者におけるタキサン再投与の有用性について検討した。その結果、とくにタキサンが乳がん経過の早期に効果を示した場合や病勢進行以外の理由で中止された場合に、タキサン再投与が現実的方法として支持された。Breast誌オンライン版2023年2月4日号に掲載。

 本研究では、フランスのがんセンターの地域データベースから、2008~21年に転移を有するER+/HER2-またはトリプルネガティブ乳がんの診断・治療を受けた756例を後ろ向きに調べた。そのうち58例(7.8%)がタキサンを再投与されていた。臨床的特徴、奏効率、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を評価し、タキサン再投与を受けなかった患者と比較した。なお、以前のタキサン治療におけるPFSをPFS1、タキサン再投与におけるPFSをPFS2とし、PFS2/PFS1が1.3を超えた場合に治療ベネフィットがあるとした。

 主な結果は以下のとおり。

・タキサン再投与群は再投与を受けなかった患者群と比較して、有意に年齢が低く、全身状態も良好で、多くの治療を受けていた。
・タキサン再投与群は再投与を受けなかった患者群と比較して、投与1回目の反応が良好で、病勢進行以外の理由による中止割合が高かった。
・タキサン再投与群における客観的奏効率は27.6%、クリニカルベネフィット率は46.6%、PFS中央値は5.7ヵ月、OS中央値は11.6ヵ月だった。
・タキサン再投与群のうち55.2%においてPFS2/PFS1比が1.3を超えた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Reda M, et al. Breast. 2023;68:149-156.[Epub ahead of print]

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がん診断後の急速な身体機能低下はいつまで続く?

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 高齢がん患者の身体機能の推移をがん診断の前後10年にわたって調査したところ、がん患者の身体機能はがん診断後に加速度的に低下し、5年後であっても非がん患者のコントロール群と比べて低いままであることが、Elizabeth M. Cespedes Feliciano氏らによって明らかになった。JAMA Oncology誌オンライン版2023年1月19日号掲載の報告。

 これまで、非がん患者と比較して、がん患者のがん部位や進行度、治療が身体機能へ与える長期的な影響を調べた研究はなかった。そこで研究グループは、がん診断の前後10年間の身体機能を調査するために前向きコホート研究を実施した。

 研究には、一般閉経後女性を対象とした臨床試験である「The Women’s Health Initiative」から9,203例のがん患者(乳がん5,989例、大腸がん1,352例、子宮体がん960例、肺がん902例)と年齢でマッチさせた非がん患者(コントロール群)4万5,358例が組み込まれた。参加者は1993~98年に登録され、2020年12月まで追跡された。がん診断時と1年後のRAND-36項目健康調査(0~100、点数が高いほど身体機能が良好)による身体機能を線形混合モデルを用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・がん患者群のがん診断時の平均年齢は73.0歳(±7.6歳)であった。
・臨床進行度が限局のがん患者の身体機能の低下は、がん診断前はコントロール群と同程度であったが、がん診断後はコントロール群と比較して加速度的に低下し、RAND-36項目健康調査のスコアは年1~2ポイント低下した。
・がん診断の翌年の身体機能の低下は、臨床進行度が領域浸潤のがん患者で最も顕著であった(限局の乳がん患者−2.8ポイント/年[95%信頼区間[CI]:−3.4~−2.3]vs.領域浸潤の乳がん患者−5.3ポイント/年[同:−6.4~−4.3])。
・また、全身療法を受けている患者でも身体機能の低下が顕著であった(何らかの化学療法を受けている限局の子宮体がん患者−7.9ポイント[95%CI:−12.2~−3.6]vs.放射線療法単独の限局の子宮内膜がん患者−3.1ポイント[同:−6.0~−0.3])。
・がん患者の身体機能の低下は診断後の追跡後期に緩徐になったが、5年後であってもコントロール群の身体機能を大幅に下回っていた。

 これらの結果から、研究グループは「本前向きコホート研究において、がん患者群ではがん診断後に加速度的に身体機能が低下し、数年後であってもコントロール群よりも低かった。がん患者には身体機能を維持するための支持的介入が有用である可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


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Cespedes Feliciano EM, et al. JAMA Oncol. 2023 Jan 19. [Epub ahead of print]

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乳がん患者のリアルワールドでのコロナワクチン効果/JCO

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの臨床試験には、積極的ながん治療を受けている乳がん患者が含まれていない。今回、イタリア・ジェノバ大学のMarco Tagliamento氏らが、リアルワールドの乳がん患者におけるワクチン接種の効果を調査したところ、乳がん患者においてもワクチン接種がCOVID-19罹患率および死亡率を改善することが示された。また、欧州におけるオミクロン株流行期の間、乳がん患者におけるCOVID-19重症度は低いままだった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年1月31日号に掲載。

 本研究では、OnCovidレジストリ参加者を対象に、プレワクチン期(2020年2月27日~11月30日)、アルファ-デルタ期(2020年12月1日~2021年12月14日)、オミクロン期(2021年12月15日~2022年1月31日)における乳がん患者のCOVID-19の病態と死亡率を比較した。28日致死率(CFR28)およびCOVID-19重症度を、出身国、年齢、併存疾患の数、Stage、COVID-19診断後1ヵ月以内の抗がん剤治療で調整し、ワクチン未接種患者とワクチン接種(2回接種または追加接種)患者を比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・2022年2月4日までに613例が登録された。
・ホルモン受容体陽性が60.1%、HER2陽性が25.2%、トリプルネガティブが14.6%で、61%が限局/局所進行であった。年齢中央値は62歳(四分位範囲:51~74歳)、31.5%が2つ以上の併存症あり、69%が喫煙歴なしだった。診断時期は、63.9%がプレワクチン期、26.8%がアルファ-デルタ期、9.3%がオミクロン期だった。
・CFR28の解析では、3つの流行期で死亡率は同等だった(順に13.9%、12.2%、5.3%、p=0.182)が、COVID-19重症度は3つの流行期にわたって有意な改善がみられた。アルファ-デルタ期およびオミクロン期のワクチン未接種患者は、プレワクチン期の患者(ワクチン未接種)とアウトカムが同等だった。
・ワクチン接種による解析対象患者566例のうち、ワクチン接種患者は72例(12.7%)、未接種患者は494例(87.3%)だった。
・ワクチン接種患者は未接種患者に比べて、CFR28(オッズ比[OR]:0.19、95%信頼区間[CI]:0.09~0.40)、入院(OR:0.28、95%CI:0.11~0.69)、COVID-19合併症(OR:0.16、95%CI:0.06~0.45)、COVID-19に対する治療の必要度(OR:0.24、95%CI:0.09~0.63)、酸素療法の必要度(OR:0.24、95%CI:0.09~0.67)において改善していた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Tagliamento M, et al. J Clin Oncol. 2023 Jan 31. [Epub ahead of print]

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HR+/HER2+進行乳がん1次治療、ペルツズマブ+トラスツズマブ+AIの長期解析結果(PERTAIN)

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 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陽性(HER2+)の転移を有する/局所進行閉経後乳がん患者における1次治療として、トラスツズマブとアロマターゼ阻害薬(AI)に化学療法を併用/併用せずペルツズマブを追加することにより、無増悪生存期間(PFS)が大幅に改善されたことが第II相PERTAIN試験の主要解析(追跡期間中央値31ヵ月)で示されている。今回、同試験の最終解析結果(追跡期間中央値6年超)を、イタリア・フェデリコ2世ナポリ大学のGrazia Arpino氏らがClinical Cancer Research誌オンライン版2023年1月30日号に報告した。

 PERTAIN試験では、258例が下記2群に1対1の割合で無作為に割り付けられた(導入化学療法は治験責任医師の判断で実施)。
ペルツズマブ群:ペルツズマブ840mg(維持期:420mg)+トラスツズマブ8mg/kg(維持期:6mg/kg)3週間間隔で投与+AI(アナストロゾール1mgまたはレトロゾール2.5mg/日)
対照群:トラスツズマブ+AI
 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、主な副次評価項目は全生存期間(OS)、安全性。

 今回報告された主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値はペルツズマブ群73.2ヵ月vs.対照群71.1ヵ月。
・PFS中央値は、20.6ヵ月vs.15.8ヵ月(層別ハザード比[HR]:0.67、p=0.006)。
・OS中央値は、60.2ヵ月vs.57.2ヵ月(層別HR:1.05、p=0.78)。
・導入化学療法を行わなかった患者において、ペルツズマブによる治療効果が高い傾向がみられた(PFS中央値:26.6ヵ月vs.12.5カ月)。
・全Gradeの有害事象は各群122例で発生し(96.1% vs.98.4%)、Grade3以上の有害事象は72例(56.7%)vs.51例(41.1%)、重篤な有害事象は46例(36.2%)vs.28例(22.6%)で発生した。

 著者らは、最終解析においてもペルツズマブ併用によるPFSベネフィットは維持され、OSは両群間で同等であったとし、化学療法の適応がない患者においてペルツズマブ併用により活性が高まる可能性があると結論付けている。安全性に関する新たな懸念は報告されていない。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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Arpino G, et al. Clin Cancer Res. 2023 Jan 30. [Epub ahead of print]

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乳がん診断後に体重が増加しやすい人は?

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 乳がん診断後には体重が増加することが多い。体重増加の予測因子を同定するため、オーストラリア・Western Sydney UniversityのCarolyn Ee氏らは、オーストラリア人女性における乳がん診断後の体重増加に関連する因子を調査した。その結果、タモキシフェン投与、身体活動の減少、テレビ視聴時やコンピューター使用時の食事の自己効力感の低下が、臨床的に有意な体重増加に関連することがわかった。Breast誌オンライン版2023年1月25日号に掲載。

 本研究では、2017年11月~2018年1月にオーストラリア在住の乳がんまたは非浸潤性乳管がん(DCIS)と診断された女性を対象に横断的オンライン調査した。絶対的な体重増加および臨床的に有意な(5%以上)体重増加の予測因子を、それぞれステップワイズ線形回帰モデルおよびロジスティック回帰モデルを用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・276例のデータを分析した。ほとんどが白人で、92%がStage0~IIIだった。
・絶対的体重増加は、ホットフラッシュ、診断時に更年期への移行期であること、診断時よりも身体活動が少ないこと、テレビ視聴時やコンピューター使用時の食事の自己効力感(self-efficacy)が低いこと、不安や緊張時の自己効力感が高いことと関連していた(F比=3.26、調整R2=0.16、p<0.001)。
・臨床的に有意な体重増加は、タモキシフェン投与(オッズ比[OR]:2.7)、診断時よりも身体活動が少ないこと(OR:3.1)、テレビ視聴時やコンピューター使用時の食事の自己効力感が低いこと(OR:0.82)と関連していた(χ2=64.94、自由度:16、p<0.001)。
・体重増加は、化学療法、放射線療法、アロマターゼ阻害薬の使用、切除リンパ節数、診断時のBMIとは関連していなかった。

 これらの結果から、著者らは「タモキシフェン投与患者には、乳がん診断後の体重増加抑制のための介入、とくに身体活動の維持を目的とした介入が必要である。乳がん診断後の体重管理における食事の自己効力感、とくに食物に注意を向けた食べ方(attentive eating)の役割について調べる必要がある」と考察している。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Ee C, et al. Breast. 2023 Jan 25.[Epub ahead of print]

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一般集団よりも2型DM患者でとくに死亡率が高いがん種は?

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 2型糖尿病の高齢患者のがん死亡率を長期的に調査したところ、全死因死亡率の低下とは対照的にがん死亡率は上昇し、とくに大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮内膜がんのリスクが増加していたことを、英国・レスター大学のSuping Ling氏らが明らかにした。Diabetologia誌オンライン版2023年1月24日掲載の報告。

 これまで、年齢や性別などの人口統計学的要因が2型糖尿病患者の心血管アウトカムに与える影響は広く研究されているが、がん死亡率への影響については不十分であった。そこで研究グループは、人口統計学的要因や肥満や喫煙などのリスク因子が2型糖尿病患者のがん死亡率に与える長期的な傾向を明らかにするため、約20年間のデータを用いて調査を行った。

 対象は、1998年1月1日~2018年11月30日に2型糖尿病と新規で診断され、英国の診療データベース「Clinical Practice Research Datalink」に登録された35歳以上の13万7,804例であった(年齢中央値63.8歳、女性44.6%、白人83.0%、非喫煙者46.9%、正常体重者11.7%、BMI中央値30.6kg/m2)。年齢、性別、人種、貧困状態(複数の剥奪指標ランク)、BMI、喫煙の有無で調整し、全死因、全がん、がん部位別の死亡率を一般集団と比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・2型糖尿病患者119万4,444人年(中央値8.4年[四分位範囲:5.0~12.2年])の追跡で、3万9,212例(28.5%)が死亡した。
・全死因死亡率は、1998年~2018年にすべての年齢(55歳、65歳、75歳、85歳)で減少した。
・全がん死亡率は55歳と65歳で減少したが、75歳と85歳で増加した。また、白人、現在/過去の喫煙者で増加したが、他の人種や非喫煙者では減少傾向にあった。
・全がん死亡率の平均年間変化率(AAPC)は、55歳で-1.4%(95%信頼区間[CI]:-1.5%~-1.3%)、65歳で-0.2%(-0.3%~-0.1%)、75歳で+1.2%(+0.8%~+1.6%)、85歳で+1.6%(+1.5%~+1.7%)であった。また、AAPCが高かったのは、女性+1.5%(男性+0.5%)、最貧困層+1.5%(最富裕層+1.0%)、重度肥満者+5.8%(普通体重者+0.7%)であった。
・一般集団と比較した2型糖尿病患者の標準化死亡比(SMR)は、全死因1.08(95%CI:1.07~1.09)、全がん1.18(1.16~1.20)、大腸がん2.40(2.26~2.54)、肝臓がん2.13(1.94~2.33)、膵臓がん2.12(1.99~2.25)、子宮内膜がん(女性のみ)2.08(1.76~2.44)、胆嚢がん1.36(0.99~1.83)、乳がん(女性のみ)1.09(1.01~1.18)、肺がん1.04(1.00~1.08)であった。

 研究グループは、上記の結果から「2型糖尿病の高齢患者では、全死因死亡率の低下とは対照的にがん死亡率は上昇し、とくに大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮内膜がんが増加していた。高齢者、貧困層、喫煙者における個別のがん予防と早期発見のための戦略が必要である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Ling S, et al. Diabetologia. 2023 Jan 24. [Epub ahead of print]

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