ER+HER-早期乳がんの長期予後予測、治療前18F-FDG PET/CTのSUVmaxが有用/日本癌治療学会

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 乳がんで最も頻度の高いER陽性HER陰性早期乳がんは、10年以上の長期にわたって再発を来すことが知られており、近年は遺伝子検査などによる予後予測が行われている。今回、東京女子医科大学の塚田 弘子氏らによる研究で、治療前18F-FDG PET/CT (以下、PET/CT)での原発巣SUVmax値(maximum standardized uptake values)およびリンパ節転移個数が長期無再発生存期間(RFS)の予測因子であり、原発巣SUVmax値は長期全生存期間(OS)の単独予測因子であることが示唆された。第58回日本癌治療学会学術集会(10月22~24日)で報告された。

 PET/CTは乳がん診療において2~5年程度の短期予後予測には有用との報告があるが、10年以上のRFSやOSとの相関は示されていない。本研究は、2007年1月~2010年5月に東京女子医科大学病院で治療が開始された原発性乳がんのうちcStage II以下かつER陽性HER陰性浸潤性乳管がん340例を対象とし、患者/腫瘍背景、治療前PET/CTのFDG集積がRFSおよびOSに与える影響をCox回帰比例ハザードモデルで評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・観察期間中央値121ヵ月(16~159ヵ月)、再発は32例(9.4%)、死亡は17例(5.0%)であった。
・単変量解析から、RFS予測因子の候補としてBMI、原発巣SUVmax値、浸潤径、pStage、深達度、リンパ管侵襲、核異型度、リンパ節転移個数、術後化学療法の有無が挙がり、OSの予測因子の候補としてBMI、原発巣SUVmax値、pStage、脈管侵襲、核異型度、リンパ節転移個数が挙がった。
・多変量解析の結果、RFSについては原発巣SUVmax値(ハザード比[HR]:1.47、95%CI:1.29~1.67、p<0.001)およびリンパ節転移個数(HR:1.30、95%CI:1.06~1.60、p=0.011)が独立した予測因子で、OSについては原発巣SUVmax値(HR:1.38、95%CI:1.18~1.61、p<0.001)が独立した予測因子となった。

 塚田氏は、「PET/CTにおけるSUVmax値は腫瘍活動性や増殖能との相関が報告されており、高値を示す腫瘍は増殖速度が高いことから再発を来しやすく、OSにも影響を与えているものと考えられる」とし、さらに本研究の結果から「SUVmax値は5年以降の生存率にも強く関連する」と考察している。

(ケアネット 金沢 浩子)


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進行TN乳がん1次治療へのペムブロリズマブ+化療、日本人解析結果(KEYNOTE-355)/日本乳癌学会

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 手術不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療として、化学療法とペムブロリズマブ併用の有効性を評価するKEYNOTE-355試験の全体集団における中間解析結果が2020年のASCOで発表され、PD-L1陽性(CPS≧10)患者でPFSの有意な改善が示されている。今回その日本人集団解析の結果を、国立病院機構大阪医療センターの八十島 宏行氏が第28回日本乳癌学会学術総会で発表した。

・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例(日本人87例)
・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例(61例)
・対照群:プラセボ+化学療法 281例(26例)
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるPFSとOS
[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性

 日本人サブグループ解析の主な結果は以下のとおり。

・2019年12月11日データカットオフ時点で、国内26施設から日本人87例が組み入れられ、ペムブロリズマブ群に61例、化学療法単独群に26例が無作為に割り付けられた。
・使用された化学療法のレジメンはタキサン(23%)、ゲムシタビン/カルボプラチン(77%)、であった。
・カットオフ値CPS≧10のPD-L1陽性患者における28例のPFS中央値は、化学療法単独群5.6ヵ月に対してペムブロリズマブ併用群11.7ヵ月、ハザード比(HR)が0.52(95%CI:0.20~1.34)で、1年後無増悪生存率も44%とペムブロリズマブ群で有意な延長を認めた全体集団と大きな乖離のない結果であった。
・カットオフ値CPS≧1のPD-L1陽性患者における66例のPFS中央値は、化学療法単独群5.6ヵ月に対してペムブロリズマブ併用群7.6ヵ月、ハザード比(HR)が0.62(95%CI:0.35~1.09)であった。
・ITT集団における87例のPFS中央値は、化学療法単独群5.6ヵ月に対してペムブロリズマブ併用群7.7ヵ月、ハザード比(HR)が0.64(95%CI:0.38~1.07)と全体集団と大きな乖離は認めなかった。
・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、ペムブロリズマブ併用群では85.2%、化学療法単独群では84.6%に発現。これは全体集団(68.1% vs. 66.9%)と比較すると高い傾向であったが、化学療法単独群でも同頻度で発現していることから、日本人集団では化学療法による影響が強くでているのではないかと推察された。
・Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)は、ペムブロリズマブ併用群の4.9%に発現し、化学療法単独群では発現していなかった。有害事象・頻度ともに全体集団と同様であり、日本人特有のirAEは発現していない。

 なお、米国・FDAでは現在審査中であり、本邦においても、2020年10月12日に承認申請が行われている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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乳がん術前/術後化学療法時の頭皮冷却が毛髪回復を早める/日本乳癌学会

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 乳がんの術前/術後化学療法時に脱毛抑制のためにPaxman Scalp Coolingシステムで頭皮冷却した後の毛髪回復状況を長期間、前向きに調査した結果から、化学療法時の頭皮冷却は脱毛を軽減するだけでなく、毛髪の回復を早め、さらに永久脱毛をほとんどなくす可能性が示唆された。国立病院機構四国がんセンターの大住 省三氏が第28回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 本研究の対象は、Paxman Scalp Coolingシステムによる術前/術後化学療法時の脱毛研究に参加し、頭皮冷却を1回以上受け、予定していた化学療法を完遂し、脱毛状況の評価が可能だった乳がん患者122例。最後の化学療法後1、4、7、10、13ヵ月時の頭髪状況について、客観的評価(5方向からの撮影写真を医師と看護師2名で評価)でのGrade(0:まったく脱毛なし、1:1~25%脱毛、2:26~50%脱毛、3:>50%脱毛)および主観的評価(患者にかつらまたは帽子の使用を質問)でのGrade(0:まったく使っていない、1:時々使用、2:ほとんど常に使用)で分類した。全例での評価のほか、頭皮冷却を全サイクルで完遂した患者79例(A群)と、途中で頭皮冷却を中止した43例(ほとんどは1サイクルで中止)(B群)の結果を比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・122例での客観的評価における各時点でのGradeは10ヵ月時までは改善がみられたが、その後は改善がみられなかった。13ヵ月時に回復していない症例(永久脱毛と定義)は9例(7.8%)であった。
・122例での主観的評価における各時点でのGradeは、客観的評価と異なり10ヵ月時と13ヵ月時の間でも改善がみられた。しかし、13ヵ月時でも19例(16.5%)はかつらあるいは帽子を使用していた。
・A群とB群を客観的評価で比較すると、観察期間中、終始A群の脱毛の程度が有意に軽く、また回復も早かった。13ヵ月時に永久脱毛がみられた症例はA群で2例(2.6%)に対し、B群では7例(18.4%)と有意差が認められた。
・主観的評価の比較でも、A群のほうが終始、かつらあるいは帽子を使用していた症例の割合が低く、頻度も低かった(4ヵ月時と7ヵ月時で有意差あり)。
・1ヵ月時点で客観的評価がGrade3だった症例のみに限定しても、A群はB群より回復が速い傾向にあり(4ヵ月時と10ヵ月時で有意差あり)、化学療法中に脱毛が起こっても頭皮冷却を続ける意義は大きいと考えられる。一方、同じ症例(1ヵ月時点で客観的評価がGrade3)で主観的評価の経時的な結果を比較した場合、両群間で差はみられなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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HER2+進行乳がんへのT-DXd、第I相/第II相試験の併合解析と日本人解析/日本乳癌学会

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 抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、DS-8201)のFirst-in-human第I相試験であるJ101試験および非盲検国際多施設共同第II相試験であるDESTINY-Breast01試験において、承認用量で投与されたHER2陽性乳がん患者での併合解析と日本人集団におけるサブセット解析を行った結果、奏効率(ORR)は全体で58.3%、日本人集団で64.7%と日本人で高い一方、血液毒性の頻度が日本人で高い傾向であったことが示された。島根大学医学部附属病院 先端がん治療センターの田村 研治氏が第28回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 第I相J101試験でのORRは59.5%(95%CI:49.7~68.7)、第II相DESTINY-Breast01試験では60.9%(同:53.4~68.0)と高い値が報告されている。今回、これらの試験において、HER2陽性進行乳がん(T-DM1に抵抗性あるいは耐容不可)で承認用量(5.4 mg/kg、3週ごと)を投与された患者の併合解析を行い、さらに日本人集団におけるサブセット解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・併合解析の対象患者は235例(第I相:51例、第II相:184例)、年齢中央値は56.0(範囲:28~96)歳、人種はアジア人と白人がほぼ半数ずつであった。
・前治療レジメン数の中央値は6コース(範囲:2~27)で、そのうち69.8%にペルツズマブの前治療歴があった。データカットオフ(第I相:2019年2月1日、第II相:2019年3月21日)時点で120例(51.3%)が治療継続中で、投与期間中央値は7.4ヵ月(範囲:0.7~30.4)であった。
・中央判定によるORRは、全体で58.3%(95% CI:51.7~64.7)であり、DOR中央値は16.9ヵ月(同:9.5~NE)、CRは4.3%、無増悪生存期間中央値は13.9ヵ月(同:10.9~NE)であった。
・日本人(51例)のサブセット解析では、ORRは64.7%(95% CI:50.1~77.6)、CRは5.9%であった。
・治療下で発現した有害事象(TEAE)は日本人で100%、全体で99.6%にみられた。日本人では薬剤関連の中止・中断例が多く、肺炎が4例、間質性肺疾患(ILD)が3例にみられた。
・主な有害事象を日本人と全体で比較すると、日本人で好中球減少症(全Grade:60.8%)、貧血(同:58.8%)が高い傾向がみられたが、多くはGrade2以下でマネジメント可能であった。
・ILDは、全体では9.4%(22例)に発症し、2.1%(5例)が死亡した。日本人では発症が19.6%(10例)と頻度は高かったが、Grade3以上はいなかった。

 田村氏は、「T-DXdはHER2陽性乳がんにおいて高い治療効果がある一方で、ILDなどの有害事象については重要なリスクと理解し、注意深いモニタリングと適切な治療が必要」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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アバター活用など、がんチーム医療教育に新たな取り組み/J-TOP

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 一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクトによるジャパンチームオンコロジープログラム(J-TOP) は、The 4th Team Science Oncology Workshopとして、従来3日間で行ってきたオンサイト・ワークショップを、オンラインに変更し、Part 1からPart 3までの3つの期間に分けて実施する。

 がん医療で、専門分野に加え必要なスキル、リーダーとして求められる資質、患者満足度の高い医療を提供するためのチームの有機的な動きなどを学ぶ。

日時および内容
・Part 1:2020年11月21日(土)、22日(日)(AM 8:00〜)4時間程度
ICE breaking skill、MBTI、コアバリューなどチーム医療において必要なスキルセットの知識習得。 加えて、項目ごとの小グループワーク。

・Part 2:2021年1月23日(土)(AM 8:00〜)4時間程度
チームが出来上がる過程、どの段階で何をしなければならないのかを“Tuckman model” の理論に基づいて学習。

・Part 3:2021年3月27日(土)(東京にて開催)Avatarを使用したオンライン・オンサイト融合ワークショップ
Avatarin社の協力で同社が開発した「avatar MICE」を活用し、オンラインとオンサイトの融合したハイブリットなワークショップ。

(ケアネット 細田 雅之)


【参考文献・参考サイトはこちら】

The 4th Team Science Oncology Workshop

参加申し込みはこちら

Avatarin ワークショップ

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進行乳がんにおける内分泌療法+BVへの切り替え、患者報告アウトカムの結果(JBCRG-M04)/ESMO2020

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 進行・再発乳がんに対する標準的化学療法は、病勢進行まで同レジメンを継続することだが、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)や倦怠感などの用量依存的な影響が問題になる場合がある。今回、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性進行・再発乳がん患者に対して、1次化学療法のパクリタキセル(wPTX)+ベバシズマブ(BV)療法から、内分泌療法(ET)+BVの維持療法に切り替えた場合の患者報告アウトカム(PRO)について、化学療法継続と比較したところ、身体的健康状態(PWB)と倦怠感を有意に改善し、重度のCIPNを防いだことが示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、福島県立医科大学の佐治 重衡氏が報告した。

 本試験は、わが国における多施設共同非盲検無作為化比較第II相試験のJBCRG-M04(BOOSTER)試験。主要評価項目である無作為化から治療戦略遂行不能までの期間(time to failure of strategy:TFS)については、wPTX+BV群8.87ヵ月、ET+BV群16.82ヵ月で有意に延長した(ハザード比:0.51、95%信頼区間:0.34~0.75、p<0.001)ことを、2019年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で同氏が報告している。

・対象:ER陽性HER2陰性進行・再発乳がん患者に対して、1次化学療法としてwPTX+BV療法を4~6サイクル施行後、SD以上の効果が認められた患者
・介入群:wPTXを休薬しET+BVに置き換え、規定イベント後にwPTX+BVを再導入する群(ET+BV群)
・対照群:wPTX+BV継続治療群(wPTX+BV群)
・評価項目
[主要評価項目]TFS
[副次評価項目]全生存期間、無増悪生存期間、安全性、PROなど
※PROの評価は、無作為化時および無作為化後2ヵ月、4ヵ月、1年、2年に、FACT-B、EQ-5D、患者用末梢神経障害質問票(PNQ)、HADS、cancer fatigue scale(CFS)を使用

 主な結果は以下のとおり。

・1次化学療法が奏効した125例について、wPTX+BV群63例、ET+BV群62例に割り付けた。
・mixed-effect models for repeated measures(MMRM)を用いた解析では、FACT-Bのtrial outcome indexに有意差が認められ(p=0.004)、PWBの平均変化は2ヵ月後(p=0.015)および4ヵ月後(p=0.028)に、ET+BV群がPTX+BV群より有意に優れていた。
・CIPNについては、1年後における重度の運動神経障害の割合がET+BV群でwPTX+BV群よりも低かった(5.1% vs. 26.1%、p=0.017)。
・CFSでも有意差が認められ(p=0.048)、そのうち精神的倦怠感のスコアの平均変化は、2ヵ月後(p=0.006)および4ヵ月後(p=0.010)でET+BV群がwPTX+BV群より有意に優れていた。

 佐治氏は、「化学療法継続で蓄積毒性が懸念される症例において、ET+BVの維持療法は健康関連QOLの点で1つの選択肢となるだろう」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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9日から開催の日本乳癌学会学術総会、注目トピック

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 COVID-19感染拡大の影響により延期されていた第28回日本乳癌学会学術総会が、10月9日(金)~31日(土)にWEB開催される。9月17日にプレスセミナーが開催され、総会会長を務める岩田 広治氏(愛知県がんセンター 副院長・乳腺科部長)、事務局長を務める澤木 正孝氏(同乳腺科医長)らが見どころについて紹介した。

開催スケジュール
10月9日(金)~31日(土) 完全WEB開催(共催セミナーのほか、パネルディスカッションや教育講演のオンデマンド配信などが期間を通じて閲覧可能)
10月9日(金)~18日(日) LIVE配信
10月13日(火)~15日(木) 厳選口演(LIVE)

厳選口演の注目トピック

 厳選口演では、応募総数1,938演題の中から採用された51題(2.6%)が発表される。それぞれLIVE配信後に、後日オンデマンド配信が行われる予定。澤木氏は、全13セッションの注目トピックについて解説した。ここでは、外科/薬物/放射線療法の各トピックを抜粋して紹介する。

・厳選口演1:外科療法[10月13日(火)9:30~10:30]
 全乳房切除から部分切除、腋窩郭清からセンチネルリンパ節生検へとさらなる手術縮小を目指した研究成果が発表予定。

・厳選口演2:オンコプラスティックサージェリー・乳房再建[10月13日(火)11:00~11:45]
 両側同時再建、部分再建、内視鏡手術での再建の工夫やNSMの新たな適応基準など。

・厳選口演6:薬物療法1[10月14日(水)9:30~10:45]
 進行乳がんに対するwPTX+BV導入療法後のホルモン維持療法の有用性(JBCRG BOOSTER試験)
 転移再発乳癌におけるパクリタキセル+ベバシズマブ導入化学療法後のホルモン療法+カペシタビン併用維持療法
 乳癌周術期化学療法時の脱毛軽減目的での頭皮冷却後の毛髪回復状況を調べた前向き研究結果

・厳選口演7:薬物療法2[10月14日(水)11:00~12:00]
 HER2陽性転移性乳癌におけるT-DM1治療直後の薬物療法の有効性:KBCSG-TR1917観察研究
 転移性HER2陽性乳癌に対するT-DM1後の治療の臨床効果に関する多施設共同コホート研究(WJOG12519B)
 HER2陽性進行乳癌患者を対象としたDS-8201のfirst-in-human第1相試験及び第2相試験(DESTINY-Breast01)における併合解析及び日本人サブセット解析

・厳選口演8:薬物療法3[10月14日(水)13:00~13:45]
 ホルモン受容体陽性乳癌の術後内分泌療法におけるS-1の併用効果(POTENT試験)
 Pembrolizumab+Chemotherapy vs Chemotherapy in Metastatic TNBC:KEYNOTE-355 Japanese Subgroup Data
 NTRK fusion陽性乳がんにおけるエヌトレクチニブ:3つの国際共同第1/2相試験の統合解析

・厳選口演13:放射線療法[10月15日(木)14:15~15:30]
 本邦乳癌患者に対する小線源を用いた乳房部分照射における観察期間中央値5年の治療成績と再発形式の特徴
 早期乳癌に対する乳房温存手術+術中放射線部分照射:10年の結果
 早期乳癌に対する炭素イオン線治療の臨床試験の経過

今年のESMOでの発表を徹底議論

 10月12日(月)16:00~18:00には、9月に開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)での乳がん領域の注目トピックについて議論する緊急特別企画がLIVE配信される(後日オンデマンド配信予定)。
・セッション1
 1)Impassion 131:TN 1st line, PD-L1+でAtezo+Nab paclitaxelのfinal OS
 2)Impassion 130:TN 1st lineでAtezo+weekly Pがnegative data
 3)ASCENT study:TN late lineで、Satizumab govitecan(SG)のP3 dataの発表
・セッション2
 4)Impassion 031:TN neoadjuvantで、Atezoを加えて、pCRが有意にアップ
 5)PALLAS study:Palboのadjuvant study negative data
 6)MONARCH E study:Abemaのadjuvant positive data

WEB上で“直接議論できる場”複数、ZOOMでオフ会も

 本来、本総会はAichi Sky Expoにおいて7月に開催予定であった。医師だけでなく、患者さんも含め全員で最新情報を共有・議論したいという意図から、通常のようにいくつもの会場を設けず、「2つのメイン会場を中心に、できるだけ仕切りを設けず、広い場所のいたるところで人が集まり議論をするというイメージで計画していた」と岩田氏。完全WEB開催となったが、その利点を生かして、演者や海外の先生方と直接議論・交流ができるような場がいくつか設けられている。

・Meet the Expert[10月14日(水)、15日(木)8:00~9:00、16:00~17:00]
 7名の先生と学会参加者が少人数で直接交流できる。※9月23日より若干名の追加登録開始。締切の可能性あり。

・ポスターツアー[10月14日(水)、15日(木)9:00~11:00]
 68名の先生が“ツアーコンダクター”となり、各6演題を厳選し、参加者とともにポスターの閲覧・演者との議論を行う初の企画。※9月23日より若干名の追加登録開始。締切の可能性あり。

・オフ会(ZOOMで飲み会)[10月12日(月)~15日(木)20:30~22:00]
 岩田会長は毎日参加予定。MC数名は毎日交代で行われる。

第28回日本乳癌学会学術総会

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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パルボシクリブ+フルベストラント、内分泌療法感受性のHR+/HER2-進行乳がんでPFS延長(FLIPPER)/ESMO2020

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 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)、内分泌療法感受性の閉経後進行乳がん患者に対する一次治療として、CDK4/6阻害薬パルボシクリブとフルベストラントの併用療法が、フルベストラント単剤療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した。スペイン・Hospital del MarのJoan Albanell氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で第II相FLIPPER試験の早期解析結果を発表した。

 第III相PALOMA-3試験において、内分泌療法抵抗性の患者に対するパルボシクリブ併用療法の有効性が示され、標準治療となっている。FLIPPER試験は、de novo症例または5年以上の術後内分泌療法を完了してから>12ヵ月後に再発した閉経後HR+/HER2-進行乳がん患者を対象とした、国際多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験。

・対象:de novo症例または5年以上の術後内分泌療法を完了してから>12ヵ月後に再発した、HR+/HER2-乳がん患者(閉経後女性、再発後の治療歴なし、ECOG PS≦2)
・試験群:以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付け
パルボシクリブ併用群:28日を1サイクルとし、パルボシクリブ(125mgを3週投与、1週休薬)+フルベストラント(500mgを1サイクル目のみ1日目と15日目、以降1サイクル毎1回投与) 94例
プラセボ群:28日を1サイクルとし、プラセボ+フルベストラント(500mgを1サイクル目のみ1日目と15日目、以降1サイクル毎1回投与) 95例
・層別化因子:内臓 vs.非内臓転移、de novo vs.再発転移
・評価項目:
[主要評価項目]1年時のPFS率(RECIST1.1による治験責任医師評価)
[副次評価項目]PFS中央値、OS、客観的奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・2016年2月~2019年1月、189例が無作為化された。
・年齢中央値は64歳、60.3%が内臓転移を有し、45.5%がde novo症例。両群のベースライン特性はバランスがとれていた。
・主要評価項目である1年時のPFS率(追跡期間中央値28.6ヵ月)は併用群83.5%(80%信頼区間[CI]:78.5~88.5) vs.プラセボ群71.9%(80%CI:65.8~77.9)。ハザード比[HR]:0.55、80%CI:0.36~0.83、p=0.064で、事前に設定された境界値(HR:0.6、検出力:80%、両側検定α=0.2)を満たした。
・副次評価項目であるPFS中央値は、併用群31.8ヵ月(80%CI:30.3~33.4) vs.プラセボ群22ヵ月(80%CI:18.5~25.1)であった(HR:0.52、80%CI:0.39~0.68、p=0.002)。
・1年時のPFS率を層別化因子ごとに解析した結果、内臓転移を有する患者(併用群81.8% vs.プラセボ群69.6%[HR:0.55、p=0.1397])およびde novo症例(90.5% vs.60.2%[HR:0.20、p=0.004])において併用群で有意な改善がみられた。
・ORRは、併用群68.3% vs.プラセボ群42.2%[オッズ比[OR]:2.9、p=0.004])。CBRは、90.4% vs.80.0%[OR:2.3、p=0.048])であった。
・頻度の高いGrade2/4の非血液毒性は、倦怠感(併用群12.8% vs.プラセボ群5.3%)、下痢(併用群3.2% vs. 2.1%)であった。
・頻度の高いGrade3/4の血液毒性は、好中球減少症(併用群68.1% vs.プラセボ群0%)、白血球減少症(26.6%vs.0%)およびリンパ球減少症(14.9% vs.2.1%)であった。好中球減少症や治療に関連した死亡例の報告はなかった。

(ケアネット)


【参考文献・参考サイトはこちら】

FLIPPER試験(Clinical Trials.gov)

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乳がんアジュバント、アベマシクリブ+内分泌療法が予後改善(monarchE)/ESMO2020

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 再発高リスクのホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)乳がんに対する術後療法としての、アベマシクリブと内分泌療法薬の併用は、内分泌療法薬単独よりも、有意に無浸潤疾患生存期間(iDFS)を延長することが示された。日本も参加した、この国際共同のオープンラベル第III相monarchE試験の結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、英国・The Royal Marsden NHS Foundation TrustのStephen R. D. Johnson氏より発表され、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年9月20日号に同時掲載された。追跡期間中央値15.5ヵ月でのアベマシクリブの2年間投与が終了している症例が12.5%で、70%以上が投与中という状況での中間解析。

・対象:HR+/HER2−の初発乳がん、遠隔転移なし腋窩リンパ節転移陽性の症例(閉経状況問わず)、術前/術後の化学療法は許容
・試験群:標準的内分泌療法+アベマシクリブ150mg×2/日投与。アベマシクリブは最長2年間投与(Abe群:2,808例)
・対照群:標準的な術後内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、LH-RHアゴニストなど。薬剤は主治医選択)を5年間以上施行(ET群:2,829例)
・評価項目:
[主要評価項目]iDFS
[副次評価項目]遠隔無転移生存期間(DRFS)、全生存期間(OS)、安全性、患者報告アウトカム、薬物動態

 主な結果は以下のとおり。

・選択された内分泌療法薬は、タモキシフェンが30%程度(うちLH-RHアゴニスト併用が7~8%)、アロマターゼ阻害薬が68%程度(うちLH-RHアゴニスト併用が14~15%)であった。
・iDFSのハザード比(HR)は0.747(95%信頼区間[CI]:0.598~0.932)、p=0.0096でAbe群が有意に予後を延長していた。2年iDSは、Abe群92.2%、ET群88.7%であった。事前に規定されたすべてのサブグループ解析でも、Abe群で優位性が確認された。
・DRFSのHRは0.717(95%CI:0.559~0.920)、p=0.0085でAbe群が有意に予後を改善していた。2年DRFSは、Abe群93.6%、ET群90.3%であった。
・Abe群では有害事象のため16.6%がアベマシクリブの投与を中止し、ET群での薬剤投与中止は0.8%だった(Abe群での下痢による投与中止は4.8%)。
・Abe群で倦怠感、下痢、好中球減少、悪心などが多く発現し、関節痛やほてりはAbe群で少なかったが、その安全性プロファイルは既報のものと齟齬はなかった。
・間質性肺炎はAbe群で2.7%、ET群で1.2%、発熱性好中球減少症はそれぞれ0.3%と0.1%未満に発現した。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Jonston SRD, et al. J Clin Oncol. 2020 Sep 20. [Epub ahead of print]

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早期TN乳がんの術前療法、アテゾリズマブ+化療でpCR改善(IMpassion031)/Lancet

提供元:CareNet.com

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する術前補助療法として、アテゾリズマブ+化学療法(nab-パクリタキセル/ドキソルビシン/シクロホスファミド)の併用は、プラセボ+化学療法と比較して病理学的完全奏効(pCR)率を有意に改善し、忍容性は良好であることが明らかとなった。米国・ダナ・ファーバー/ブリガム&ウィメンズがんセンターのElizabeth A. Mittendorf氏らが、13ヵ国75施設で実施された国際共同無作為化二重盲検第III相試験「IMpassion031試験」の結果を報告した。早期TNBCに対する術前補助療法では、アントラサイクリン/シクロホスファミドやタキサンベースの化学療法が推奨されている。一方、PD-L1陽性の転移があるTNBC患者では、アテゾリズマブ+nab-パクリタキセル併用が無増悪生存期間や全生存期間の改善に有効であることが、IMpassion130試験で示されていた。Lancet誌オンライン版2020年9月20日号掲載の報告。

化学療法へのアテゾリズマブ追加の有効性をプラセボと比較

 IMpassion031試験の対象は、未治療で組織学的に確認されたStageII~IIIのTNBC患者(18歳以上)で、化学療法+アテゾリズマブ(840mg、2週間隔、静注)群または化学療法+プラセボ群に、ステージ(IIまたはIII)とPD-L1発現(<1%または≧1%)で層別化して1対1の割合で無作為に割り付けた。いずれも、nab-パクリタキセル(125mg/m2、毎週、静注)と併用投与を12週間行った後、ドキソルビシン(60mg/m2、2週間隔、静注)およびシクロホスファミド(600mg/m2、2週間隔、静注)との併用投与を8週間行い、手術を実施した。手術後は、アテゾリズマブ群ではアテゾリズマブ1,200mgを3週間隔(静注)で11回投与し、プラセボ群は経過観察を継続した。

 主要評価項目は、無作為化された全患者(ITT集団)およびPD-L1陽性患者(PD-L1発現≧1%)におけるpCRとした。

 2017年7月7日~2019年9月24日の期間に、333例が無作為に割り付けられた(アテゾリズマブ群165例、プラセボ群168例)。カットオフ日(2020年4月3日)時点で、追跡期間中央値はアテゾリズマブ群が20.6ヵ月(IQR:8.7~24.9)、プラセボ群が19.8ヵ月(IQR:8.1~24.5)であった。

アテゾリズマブ+化学療法で、PD-L1発現状態にかかわらずpCR率が17%有意に増加

 ITT集団におけるpCR率は、アテゾリズマブ群が58%(95/165例)(95%信頼区間[CI]:50~65%)、プラセボ群が41%(69/168例)(95%CI:34~49%)で、アテゾリズマブ群が有意に高かった(群間差:17%、95%CI:6~27、片側p=0.0044[有意水準p<0.0184])。

 PD-L1陽性患者におけるpCR率は、アテゾリズマブ群が69%(53/77例)(95%CI:57~79%)、プラセボ群が49%(37/75例)(95%CI:38~61%)であった(群間差:20%、95%CI:4~35%、片側p=0.021[有意水準p<0.0184])。

 術前補助療法期において、Grade3/4の有害事象は両群で差はなく、治療関連の重篤有害事象はアテゾリズマブ群37例(23%)、プラセボ群26例(16%)で認められた。両群で各1例、Grade5の有害事象である死亡(アテゾリズマブ群:交通事故、プラセボ群:肺炎、ともに治療とは関連しない)が報告された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Mittendorf EA, et al. Lancet. 2020 Sep 18. [Epub ahead of print]

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