取扱い規約とTNM分類は統合可能か?/日本癌治療学会

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 本邦では、臓器別に各学会が作成する取扱い規約が使われてきたが、世界中の日本以外の国で主に使用されるのは国際対がん連合(UICC)/米国がん合同委員会(AJCC)によるTNM分類である。国際的な臨床試験への参加時や、論文投稿時に生じる齟齬への対応策はあるのか。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で、がん研究会有明病院消化器外科の佐野 武氏が、「日本の取扱い規約とUICC/AJCC TNM分類は統合可能か? 」と題した講演を行った。

病期の大部分は翻訳可能、しかし一部が混同

 はじめに佐野氏は、取扱い規約とTNM分類の本質的な違いについて解説。取扱い規約が日本人患者のみを対象に、臓器ごとのルールに則り、病期・病理・治療・効果判定を扱っているのに対し、TNM分類はグローバルな使用を目的に、全臓器共通の原則に則り、臓器ごとの病期のみを扱うものである。両者の目的や枠組みの違いを混同すべきではなく、「TNM分類に従った治療などというものはない。日本の臨床医にとって、取扱い規約は目の前の患者に最も適した診断・治療法を探るための規約であり、独自の分類があることはメリットといえる」と話した。

 問題は、TNM分類への正確な翻訳ができない、あるいは一部が似ているために用語や分類を混同するケースがある点だと同氏は指摘。胃がん領域では、2010年に国内で取扱い規約とガイドラインの改訂が行われ、同時期にTNM分類も改訂が予定されていた。両者を比較すると、例えば“M1”は胃癌取扱い規約では腹腔外転移を表すが、TNM分類では領域リンパ節転移以外の転移すべてを表していた。また領域リンパ節(N)の扱いや、深達度(T)で表す対象としてリンパ管侵襲(Ly)と静脈侵襲(V)を含むかどうか、なども異なっていた。

日本から世界に発信し、UICC/AJCCでの策定過程にコミットすべき

 そこで、胃癌取扱い規約(第13版→第14版)および治療ガイドライン(第2版→第3版)の改訂にあたって、大規模な整理が行われた。最も大きな問題とされたのは、領域リンパ節の扱い。TNM分類では単純に転移リンパ節個数のみを評価するが、取扱い規約では各リンパ節に番号が振られ、どのリンパ節への転移かによってグルーピングし、病期を評価してきた歴史がある。表記としては同じN1~N3が、指し示す内容としては全く異なるものとなっていた。胃癌取扱い規約の第14版では、このグルーピングをなくし、ステージングについてはTNM分類と一致させる方向で改訂を行った。従来のリンパ節番号や肝転移(H)、腹膜転移(P)の考え方は残しつつも、TNM分類に翻訳可能な形に整理されている。

 治療についてはガイドラインに移行させ、紙面上では規約独自のものは黒字、TNM分類と共通のものは青字と区別できるようにした。一方、同時期に行われていたTNM第6版から第7版への改訂過程において、AJCCは食道がんのみのデータに基づいて食道と胃でステージングを統一しようと動いていた。これに対し、日本側は日本と韓国のデータベースに基づく新たな胃がんのステージングを提案し、実際に採用された経緯がある。さらに、国際胃癌学会(IGCA)を通じて、世界中から2万例以上のデータを集めて解析した結果をもって提案した新たなステージングが、取扱い規約第15版およびTNM分類第8版に採用されている。

 佐野氏は「日本が長年にわたり蓄積してきた詳細で正確なデータベースは国際的な分類の改訂にも貢献できるもの」と話し、UICC/AJCCに対する積極的な働きかけも必要であることを強調した。「両者を統合することはできないし、する必要はない」とし、「ただし、ステージングに関しては日本の規約がTNMを受け入れることで国際的な齟齬はなくなるであろう。わが国は、診断、病理、治療の分野で独自性を維持すればよいのではないか」として講演を締めくくった。

初の「領域横断的がん取扱い規約」発刊

 国内に目を向けると、各取扱い規約の間で臓器別に異なる用語・記載法・記載順が採用され、改訂時期もバラバラな状態が続いてきた。国際的・臓器横断的なバスケット試験も増加する中、日本癌治療学会では日本病理学会と共同で、日本におけるがんの病期分類の標準化をめざして、「領域横断的がん取扱い規約 第1版」を刊行した。

 本規約は、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんなど22領域を網羅。病理医や腫瘍科医にとって大きなフラストレーションとなっていた「臓器によって情報の掲載順・掲載方法が異なる」点を改善し、臨床情報→原発巣→組織型→病期分類と記載順と形式を統一している。記号や用語の違いについても、本書における「総則」を冒頭で定義し、それとは異なる点については側注で解説している。また、TNM分類と共通の記述については青字で区別し、適宜側注で解説が加えられて、読み替えができるよう構成されている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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乳がん術後トラスツズマブ、心毒性の影響は?

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 乳がん治療に用いられる分子標的薬トラスツズマブの心毒性の発生頻度や機序などが、ベルギー・ブリュッセル自由大学のEvandro de Azambuja氏らにより明らかにされた。トラスツズマブ関連心毒性の発生率、発生時期、治療完了への影響およびリスク因子について、トラスツズマブ術後補助療法の臨床試験3件のプール解析を行った結果、1年間のトラスツズマブ投与は心イベントのリスクを高めるが、ほとんどは無症候性または軽度の左室駆出率(LVEF)低下であり、トラスツズマブによる術後補助療法は多くの患者にとって心毒性の点で安全な治療と考えるべきであることが示されたという。トラスツズマブ関連心毒性は、HER2陽性乳がん患者においてなお議論の余地があるが、今回の結果を踏まえて著者は、「トラスツズマブ関連心毒性は投与中止の主な原因であることから、さらなる研究を行い、予防と管理の個別化が必要である」とまとめている。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2019年10月11日号掲載の報告。

 研究グループは、大規模臨床試験のHERA、NSBAP B-31およびNCCTG 9831(Alliance 試験)の個々の患者データについてプール解析を行った。

 心イベントの定義は、個々の試験に従った。

 主な結果は以下のとおり。

・3件の臨床試験に登録された計7,445例(トラスツズマブ群4,017例、対照群3,428例)が解析対象となった。
・追跡期間中央値は、10年(119.2~137.2ヵ月)を超えた。
・トラスツズマブ群のほぼ全例(97.4%)がアントラサイクリン併用化学療法を受けた。
・トラスツズマブ群で452例(11.3%)に心イベントが発生した。その多く(351例、8.7%)が軽度症候性または無症候性のLVEF低下であった。
・重度うっ血性心不全は、対照群(0.8%)よりトラスツズマブ群(2.3%)で高頻度であった。
・ほとんどの心イベントはトラスツズマブ治療中に発生し(78.1%)、心イベントは治療中止の主な原因であったが(10.0%)、多くの患者はトラスツズマブ治療を完了した(76.2%)。
・心イベント発生と有意に関連したベースラインのリスク因子は、ベースラインLVEF<60%、高血圧症、BMI>25、年齢≧60、および非白人であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

de Azambuja E, et al. Breast Cancer Res Treat. 2019 Oct 11. [Epub ahead of print]

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新抗体薬物複合体DS-7300、固形がんを対象とした臨床試験開始/第一三共

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 第一三共株式会社(本社:東京都中央区)は、再発・進行性の固形がん患者を対象としたDS-7300(B7-H3を標的とした抗体薬物複合体[ADC])の第I/II臨床試験において、最初の患者への投与を開始した。

 B7-H3は、肺がん、頭頸部がん、食道がん、前立腺がん、子宮内膜がん、乳がんなど様々のがん種において過剰発現しているたんぱく質の一種で、がんの進行や予後の悪化に関係していると言われているが、現在、がん治療を対象に承認されているB7-H3を標的とした治療薬はない。DS-7300は、独自のリンカーを介して新規のトポイソメラーゼⅠ阻害剤(DXd)を抗B7-H3抗体に結合させ、1つの抗体につき約4個のDXdが結合。薬物をがん細胞内に直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えるよう設計されている。

 同試験は、日本と米国における再発・進行性の固形がん患者(頭頸部がん、食道がん、非小細胞肺がん等)を対象とした第I/II相臨床試験で、2つのパートからなる。パート1(用量漸増パート)では、約40例の患者を対象に、DS-7300の投与量を段階的に増やしながら安全性と忍容性を評価し、最大耐用量と推奨用量を決定する。パート2(用量展開パート)では、約120例の患者を対象に、推奨用量での安全性と忍容性を評価すると共に、客観的奏効率、奏効期間、無増悪生存期間及び全生存期間を含む有効性を評価する。

(ケアネット 細田 雅之)


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進行/再発乳がんへのパルボシクリブ、実臨床での有効性と安全性/日本癌治療学会

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 進行/再発乳がんに対するCDK4/6阻害薬のパルボシクリブ(商品名:イブランス)の有効性と安全性を後ろ向き単施設観察研究で検討した結果、実臨床データベースにおいても、内分泌療法耐性の患者にも有効であり、内分泌療法に感受性の高い患者やフロントラインでの使用がより効果的な傾向が示唆された。がん・感染症センター都立駒込病院の岩本 奈織子氏が、第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。

 進行/再発乳がんにおいて、パルボシクリブは内分泌療法に耐性でも有効で、内分泌療法に感受性の高い患者でより有効であり、高齢者にも比較的安全であるとされている。一方、好中球減少の発現率がとくにアジア人で高いことが明らかになっている。しかしながら実臨床におけるアジア人のデータが限られていることから、岩本氏らは、実臨床データよりパルボシクリブの有効性と安全性を検証した。

 本試験は、2017年12月~2018年12月にパルボシクリブ125mg(3週投与、1週休薬)による治療を開始したエストロゲン受容体(ER)陽性/HER2陰性の進行/再発乳がん45例が対象。そのうち、開始用量減量、内分泌治療歴なし、化学療法治療歴2ライン以上、他のCDK4/6阻害薬の使用歴ありの患者を除外した24例のデータを評価した。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は有害事象(AE)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・24例中8例がde novo症例で、9例がPALOMA-3試験の適格基準に適合した。
・年齢中央値は66.5歳(45~86歳)、23例(96%)が閉経後であった。
・再発乳がんに対して化学療法を受けていた患者は21%であった。
・パルボシクリブとの併用薬剤は17例(71%)がフルベストラント、6例(25%)がレトロゾール、1例(4%)がアナストロゾールであった。
・奏効率は9%、クリニカルベネフィット率は32%、病勢コントロール率は55%であった。
・平均追跡期間は11.4ヵ月、PFS中央値は9.8ヵ月(95%信頼区間:8.8~13.8)であった。
・サブ解析では、直近の内分泌療法期間が6ヵ月以下より6ヵ月超のほうが、また65歳未満より65歳以上のほうが、PFSが良好な傾向がみられた。
・好中球減少症は、全Gradeでは100%、Grade3/4では92%に発現した。発熱性好中球減少症(FN)が1例(4%)に認められた。各AEの発現率は65歳以上と65歳未満の患者でほぼ同等であった。
・FNの1例を除く23例(96%)で休薬、19例(79%)が減量していた。2例(8%)がAE(クレアチニン上昇、下痢)で中止していた。65歳以上のほうが65歳未満より減量例が多かった。

 岩本氏は、PALOMA-3試験やTREnd試験などの結果を交えて考察し、パルボシクリブのベネフィットについて、フロントラインでの使用が効果的であること、内分泌療法に対する感受性が有効性の指標となること、高齢者にも忍容性があることの3点を提示した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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遠隔オリゴ転移再発乳がんの予後および予後因子/日本癌治療学会

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 進行乳がん(ABC)のガイドラインの定義によるオリゴ転移がん(OMD)がNon-OMD(NOMD)と比べて有意に予後良好であり、通常の再発乳がんの予後因子である「遠隔転移巣の根治切除の有無」「転移臓器個数」「転移臓器部位」「無病期間(DFI)」「周術期の化学療法の有無」がOMDにおいても予後因子であることが示唆された。がん研有明病院/隈病院の藤島 成氏が第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。

 一部の進行乳がんにおいて長期予後が得られる症例があり、そのような症例としてOMDやHER2陽性乳がんが挙げられる。ABCのガイドラインにおけるOMDの定義は、転移個数が少なくサイズが小さい腫瘍量の少ない転移疾患とされており、その転移個数は5個以下となっているが、転移臓器の個数は定義されていない。OMDの転移臓器の個数は1つにすべきというドイツのグループからの意見もあり、その定義について議論されている。今回、藤島氏らはABCのガイドラインの定義によるOMDの予後を評価し、さらにOMDの予後因子を検討した。

 対象は、がん研有明病院で原発性乳がんの手術を受け2005~14年に遠隔再発を来した患者612例のうち、重複がん、両側乳がん、追跡不能例を除いた437例。ABCのガイドラインに基づき分類したOMDとNOMDの予後を比較し、さらにOMDの予後因子を分析した。脳転移および転移個数5個以下でも根治切除不能と判断した症例はNOMDに分類した。

 主な結果は以下のとおり。

・OMDは133例、NOMDは304例であった。
・再発時年齢中央値、DFI中央値、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体、HER2の発現は両群に有意差はなかった。
・サブタイプ別では全体として両群に有意差はなかったが、トリプルネガティブ(TN)についてOMDが10.5%、NOMDが20.4%と、OMDのほうが少なかった。
・転移部位について、肝転移、肺転移では両群に差はなかったが、骨転移、遠隔リンパ節転移はNOMDよりOMDで少なかった(どちらもp<0.01)。
・再発後の初回全身療法はNOMDで化学療法が有意に多く(p<0.01)、OMDは内分泌療法が有意に多かった(p<0.01)。
・OMD症例の14例(10.5%)に遠隔転移巣の根治切除術が実施されており、14例中13例が1臓器のみの転移であった(肺転移:9例、肝転移:3例、骨転移:1例、子宮・卵巣:1例)。
・追跡期間中央値は40ヵ月(範囲:0~150)、遠隔再発後の全生存期間(OS)中央値は、OMD(76ヵ月)がNOMD(33ヵ月)よりも有意に予後が良好だった(p<0.01)。
・OMDにおけるサブタイプ別のOS中央値は、luminalが92ヵ月、luminal/HER2が126ヵ月と、HER2の59ヵ月、TNの52ヵ月より予後良好な傾向が認められた。
・OMDにおけるOSに関する単変量比例ハザードモデル解析によると、ER陽性(p=0.02)、周術期の化学療法なし(p=0.01)、遠隔転移巣の根治切除あり(p=0.04)、1臓器のみの転移(p<0.01)、DFI 2年以上(p<0.01)、肝転移なし(p=0.04)、サブタイプがluminalもしくはluminal/HER2(p=0.03)が有意な予後良好因子であった。再発時年齢が50歳未満も予後良好な傾向がみられた(p=0.07)。
・多変量比例ハザードモデル解析によると、周術期の化学療法なし(p=0.04)、遠隔転移巣の根治切除あり(p=0.03)、1臓器のみの転移(p<0.01)、DFI 2年以上(p<0.01)、肝転移なし(p=0.05)が有意な予後良好因子であった。
・予後良好因子が2個以下と3個以上で分類すると、遠隔転移後のOS中央値は3個以上が106ヵ月で、2個以下の34ヵ月に比べて有意に予後が良好であった(p<0.01)。

 藤島氏は、「ABCのガイドラインに基づいてOMDとNOMDに分類すると、OMDは有意に予後良好である。しかし、OMD患者の予後は臨床的因子によって異なるため、OMD患者の中でも臨床的因子を考慮した異なる治療戦略が必要ではないか」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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HER2-乳がん1次治療、S-1が標準治療に非劣性(SELECT BC-CONFIRM)/日本癌治療学会

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 HER2陰性の進行・再発乳がん(mBC)に対する1次治療として、S-1が標準治療(アンスラサイクリンを含むレジメンあるいはタキサン)と比較して非劣性であることが示された。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で、大阪市立大学の高島 勉氏が第III相SELECT BC試験およびSELECT BC-CONFIRM試験の統合解析結果を発表した。

 はじめに実施されたSELECT BC試験は、化学療法歴のないHER2陰性mBC患者を対象とした、タキサンとS-1のランダム化比較試験。主要評価項目である全生存期間(OS)は、タキサン群の37.2ヵ月に対しS-1群35.0ヵ月と、S-1のタキサンに対する非劣性が証明された(ハザード比[HR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.86~1.27、non-inferiority test p=0.015)。またHRQoLの比較において、全般的健康(p=0.04)、身体機能(p<0.01)、認知機能(p=0.03)など、経済的困難、疼痛を除くすべての項目でS-1群が有意に優れていた。

 SELECT BC-CONFIRM試験は、同様の患者を対象としたアンスラサイクリンとS-1のランダム化比較試験。本試験はSELECT BC試験との統合解析を前提として組まれている。そのうえで、OSについては、アンスラサイクリン群33.7ヵ月に対してS-1群30.1ヵ月(HR:1.09、95%CI:0.80~1.48、ハザード比の非劣性マージン1.333を超えない確率=90.27%)と報告されている。HRQoLについては、両群で有意な差はみられなかった。今回の発表では、新たに両試験の統合解析結果(主要評価項目:OS、副次評価項目:安全性、HRQoL、PFSなど)が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・SELECT BC試験:618例、SELECT BC-CONFIRM試験:230例の計848例が組み入れられ、それぞれS-1群と標準治療群に無作為に割り付けられた。辞退者などを除き、最終的な解析はS-1群419例、タキサン群286例、アンスラサイクリン群109例について行われた。
・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値がS-1群57.7歳/タキサン群57.6歳/アンスラサイクリン群59.9歳であった。各群3/4がホルモン受容体陽性、1/3が肝転移陽性の患者であった。周術期治療としては、ホルモン療法が約6割、タキサンが3割弱、経口FU剤が1割強で使われていた。無再発期間(DFI)は2~5年および5年以上の患者がそれぞれ約3割を占めていた。
・追跡期間中央値32.7ヵ月において、OS中央値はタキサンとアンスラサイクリンの標準治療群36.3ヵ月 に対しS-1群32.7ヵ月(HR:1.06、95%CI:0.90~1.25)となり、あらかじめ設定された非劣性マージン(1.333)を下回り、S-1の標準治療に対する非劣性が証明された(non-inferiority test p=0.0062)。
・無増悪生存期間(PFS)中央値は、両群ともに11.2ヵ月であった(HR:1.10、95%CI:0.95~1.27)。
・HRQoLについては、S-1とアンスラサイクリンで両群間に差異はなかった(p=0.257)が、S-1とタキサンでは有意差が確認された(p=0.0039)。
・有害事象による治療中止は、S-1群5.7%、標準治療群6.6%で発生した。
・血液毒性としては、アンスラサイクリン群で貧血や好中球減少のGrade3以上が若干多い傾向がみられた。S-1群ではトランスアミラーゼ上昇やビリルビン上昇が多い傾向がみられたものの、ほとんどがGrade1/2であった。
・非血液毒性としては、S-1群では脱毛が少ないことが特徴的であった。タキサン群では神経障害が多く、アンスラサイクリン群とS-1群では食欲不振、吐き気といった消化器毒性が多い傾向がみられた。

 高島氏は、アンスラサイクリン群との比較においてHRQoLについて有意な差がみられなかったことについては、制吐剤の進歩などによりアンスラサイクリン投与中のQoLは比較的良好なのではないかと考察。しかし、同薬は心毒性による用量制限があり、奏効しても長期間使用ができない場合があることを指摘した。経口薬であることによる投与の簡便さと、脱毛や末梢神経障害、浮腫や心機能障害などの苦痛を伴う有害事象が少ないという点にS-1の利点があるとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

SELECT BC試験(UMIN-CTR)
SELECT BC-CONFIRM試験(UMIN-CTR)

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[PR]「転移再発乳がん患者セミナー@鎌倉」開催のお知らせ<BCネットワーク>

「第一回 BCネットワーク 転移再発乳がん患者セミナー@鎌倉 < 乳がんの転移再発の最新の治療法と生活の取り組み方>」を開催致します。是非ご参加ください。


第一回 BCネットワーク
転移再発乳がん患者セミナー@鎌倉
乳がんの転移再発の最新の治療法と生活の取り組み方

日付:2019年12月1日(日)
時間:12:00~16:00(会場は11時にオープン)
会場:鎌倉芸術館(神奈川県鎌倉市大船6-1-2)JR大船駅から徒歩10分
会費:500円 
挨拶:吉田常考先生(外務省医務官)

[第1部:医師講演]
「乳がんの遠隔転移再発をみんなで考えませんか!
司会:土井卓子医師(湘南記念病院かまくら乳がんセンター長)

■転移乳がん患者として15年になりました
講師:患者ストーリー山本員基子(BCネットワーク代表)
■生活・治療を一緒に考え支援する~腫瘍内科の立場から
講師:堤千寿子医師(湘南記念病院・腫瘍内科)
■転移再発乳がんの治療法
講師:高野利実医師(虎の門病院臨床腫瘍内科部長)


参加申し込みは、BCネットワークホームページから
[ https://bcnetwork.org/ ]


オラパリブ+デュルバルマブ、BRCA変異乳がんに有望(MEDIOLA)/ESMO2019

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 BRCA遺伝子変異を有する転移のある乳がん(mBC)に対する、PARP阻害薬のオラパリブとPD-L1抗体のデュルバルマブとの併用療法の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Basser Center for BRCA University of PennsylvaniaのSusan R. Domchek氏より発表された。

 本試験(MEDIOLA試験)は、シングルアームのオープンラベルの国際共同第II相試験である。
・対象:HER2陰性で、生殖系列BRCA遺伝子変異陽性、2ライン以下の前治療歴を有するmBC患者(PARP阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の前治療は許容せず)
・試験群:オラパリブ300mg/回を1日2回投与し、その4週間後からデュルバルマブ1.5g/回を4週間ごとに投与
・評価項目:
[主要評価項目]12週時点での病勢コントロール率(DCR)、安全性
[副次評価項目]28週時点でのDCR、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏功期間(DOR)、PD-L1発現状況
[探索的検討項目]遺伝子発現プロファイルや腫瘍内浸潤リンパ球(TILs)、BRCAの復帰変異などの予後に与える影響

 主な結果は以下のとおり。

・2016年6月~2017年5月に34例が登録され、安全性の解析には34例全例が、有効性の解析には30例(トリプルネガティブ乳がん[TNBC]:17例、ホルモン受容体陽性乳がん[HRBC]:13例)があてられた。
・Garde3以上の有害事象は32.4%、有害事象によるオラパリブの投与中止は3%で、デュルバルマブの投与中止は10%であった。免疫関連の有害事象は35%で、最も高頻度のものは甲状腺機能低下で15%であった。安全性プロファイルは両剤の既報と同様であり、新たなものは見られなかった。
・ORRは、全例では63.3%、TNBCでは58.8%、HRBCでは69.2%であり、前治療歴1ライン以下患者では70%、2ライン以上患者では50%であった。
・追跡期間中央値6.7ヵ月時点での、PFS中央値は全例では8.2ヵ月であり、TNBCでは4.9ヵ月、HRBCでは9.9ヵ月、前治療1ライン以下患者では11.7ヵ月、2ライン以上患者では6.5ヵ月であった。
・DOR中央値は全例では9.2ヵ月、TNBCでは12.9ヵ月、HRBCでは7.2ヵ月、前治療1ライン以下患者では12.9ヵ月、2ライン以上患者では5.5ヵ月であった。
・追跡期間中央値19.8ヵ月時点でのOS中央値は全例では21.5ヵ月であり、TNBCでは20.5ヵ月、HRBCでは22.4ヵ月、前治療1ライン以下患者では23.4ヵ月、2ライン以上患者では16.9ヵ月であった。
・腫瘍細胞(TC)と免疫細胞(IC)それぞれでのPD-L1発現を1%カットオフで見た場合、それぞれのOS中央値は、TC1%以上の患者では23.9ヵ月、TC1%未満では18.8ヵ月、IC1%以上では21.5ヵ月、IC1%未満では16.9ヵ月であった。

(ケアネット)


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がん患者におけるVTEとAF、わが国の実際/腫瘍循環器学会

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日本のがん患者の静脈血栓塞栓症合併率は欧米並み

 固形がん患者の2~8%に悪性腫瘍関連静脈血栓塞栓症(cancer-associated venous thromboembolism:CA-VTE)が合併すると欧米より報告されている。アジア人は白人と比較してCA-VTEの合併率が低いとの報告もあるが、日本人の固形腫場患者を対象としたCA-VTEの合併率の報告は少ない。神戸大学の能勢 拓氏らは、自施設における新規固形がん患者を対象として後方視的に情報を収集し、第2回日本腫瘍循環器学会で発表した。

 対象は2,735例で、観察期間中央値は103日であった。CA-VTEが認められ、合併率は3.3%(2,735例中92例)で、欧米の報告と同等であった。CA-VTE合併例の年齢中央値は70歳で、52%が女性であった。症候ありは47%で、Dダイマー正常値(<1.0μg/mL)は5.4%であった。

 がん種別のCA-VTE合併率は、肺がん12.0%、甲状腺がん5.0%、原発不明がん4.4%、肉腫4.2%、膵臓がん3.8%、乳がん3.8%、大腸がん3.7%、胆道がん3.3%、胃がん3.3%、食道がん2.3%などであった。

固形がん患者のAF並存は約10%、循環器医の介入で予後改善

 がん患者の予後は改善し、高齢化や治療による心血管疾患の予後への影響が無視できなくなっている。心房細動(AF)は頻度が高く、また脳梗塞のリスクなどがん治療へ悪影響を与える。しかし、進行がん患者におけるAFの併存頻度や、予後に与える影響については明らかでない。聖路加国際病院の佐藤 岳史氏らは、自施設における進行固形がん患者を対象に後方視的コホート研究を行い、AF併存の有無、循環器医の介入の有無による予後の違いを比較し、予後不良因子を検討した。

 対象は1,879例、年齢中央値は66歳であった。AF併存患者は、9.9%(186例)であった。がん種別の併存率は、肺・縦隔がん16%、消化器がん10.6%、泌尿器がん10.6%、肝胆膵がん8.1%、婦人科がん7.1%、乳がん3.9%であった。抗がん治療を受けた患者1,349例のうち、AF併存なし患者の生存期間中央値は1.8年、AF併存患者は1.5年で生存期間に統計学的な差はなかった。AF併存群を循環器医の介入の有無で分けたところ、循環器医介入群(75例)の生存期間は1.7年、循環器医非介入群(50例)は1.1年であった。AF併存なしとの3群の多変量解析において、循環器医非介入のAF併存は独立した予後不良因子であった(HR:1.40、95%CI:1.01~1.95、p=0.04)。

(ケアネット 細田 雅之)


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男性乳がん死亡率、女性乳がんより高い?/JAMA Oncol

提供元:CareNet.com

 乳がんは男性患者と女性患者で生存率に差があることが報告されているが、性差が関連する要因について、大規模なデータ解析に基づく知見が示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのFei Wang氏らは全米がん登録コホート研究にて、乳がん診断後の死亡率は、臨床的特徴、治療因子、治療を受ける機会を考慮しても、女性患者より男性患者で高いことを明らかにした。乳がん死の性差を理解することは、がん治療とサバイバーのケアに関する戦略を立てるうえで基本となる。結果を受けて著者は、「死亡率の性差をなくすためには、とくに生物学的属性、治療コンプライアンス、ライフスタイルなど他の要因を特定する必要があろう」と指摘している。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月19日号掲載の報告。

 研究グループは、乳がんの男性患者と女性患者の死亡率を比較し、死亡率の性差に関連する要因を定量的に評価する目的で、National Cancer Databaseを用い、2004年1月1日~2014年12月31日までに乳がんと診断された患者を特定しデータを収集した。解析対象集団は181万6,733例で、2018年9月1日~2019年1月15日に解析を行った。

 主要評価項目は全生存率、副次評価項目は3年および5年死亡率であった。

 主な結果は以下のとおり。

・全181万6,733例中、男性は1万6,025例(平均年齢63.3歳)、女性は180万708例(平均年齢59.9歳)であった。
・女性患者と比較し男性患者は、すべてのStageで死亡率が高かった。
・男性患者では、全生存率は45.8%(95%信頼区間[CI]:49.5~54.0)、3年生存率は86.4%(85.9~87.0)、5年生存率は77.6%(76.8~78.3)であった。
・女性患者では、全生存率は60.4%(95%CI:58.7~62.0)、3年生存率は91.7%(91.7~91.8)、5年生存率は86.4%(86.4~86.5)であった。
・男性患者の超過死亡率の63.3%は、臨床的特徴と過少治療が関連していた。
・性別は、臨床的特徴・治療因子・年齢・人種/民族・治療を受ける機会に関して補正後も、全死亡率(補正後ハザード比[aHR]:1.19、95%CI:1.16~1.23)、3年死亡率(aHR:1.15、1.10~1.21)、5年死亡率(aHR:1.19、1.14~1.23)と有意に関連した。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Wang F, et al. JAMA Oncol. 2019 Sep 19. [Epub ahead of print]

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