ESR1変異を有するHR+進行乳がん、フルベストラント+パルボシクリブへの早期切り替えでPFS改善(PADA-1)/SABCS2021

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 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対する一次治療として、アロマターゼ阻害薬(AI)とパルボシクリブの併用療法で治療中の患者のうち、疾患進行前に血液中で検出されたESR1変異を有する患者は、フルベストラントとパルボシクリブの併用療法に早期に切り替えることで、無増悪生存期間(PFS)の改善がみられた。第III相PADA-1試験の結果を、フランス・Institut Curie and Paris-Saclay UniversityのFrancois-Clement Bidard氏が発表した。

・対象:アロマターゼ阻害薬とパルボシクリブの併用による一次治療中の転移を有するHR+/ HER2-乳がん患者(ECOG PS 0~2) 1,017例
・試験の構成:
[STEP1]組み入れ時、一ヵ月後、その後2ヵ月後おきにリキッドバイオプシーで採取した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)からdroplet digital PCR(ddPCR)を用いてESR1変異の状況を確認
[STEP2]ESR1変異が確認され、その時点で疾患進行のみられない患者(172例)を無作為化:
AI+パルボシクリブ(Pal)併用群 84例
フルベストラント(Ful)+パルボシクリブ(Pal)併用群 88例
[STEP3]AI+パルボシクリブ併用群において疾患増悪後、フルベストラント+パルボシクリブへのクロスオーバーが認められた
・評価項目:
[主要評価項目]STEP2における治験担当医師評価による無増悪生存期間(PFS)、安全性(Grade3以上の血液毒性)
[副次評価項目]クロスオーバー後のPFS、安全性(Grade3以上の非血液毒性、SAE)など

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフは2021年7月31日で、追跡期間中央値は34.5ヵ月(STEP1~3まで0~52ヵ月)。
・STEP2での両群の患者特性は、年齢中央値がAI+Pal群60歳vs. Ful+Pal群62歳、術後AI療法歴を有する患者が37% vs. 34%、ESR1変異発現までの期間12ヵ月以上が65% vs. 61%と両群でバランスがとれていた。
・STEP2の追跡期間中央値は26ヵ月。PFS中央値はAI+Pal群5.7ヵ月に対しFul+Pal群11.9ヵ月とFul+Pal群で有意な改善がみられた(層別ハザード比:0.61、95%信頼区間[CI]:0.43~0.86、p=0.005)。
・安全性について、Grade3以上の血液毒性/非血液毒性いずれも両群で差はみられず、新たな安全性上の懸念も認められなかった。
・STEP2のAI+Pal群のうち、69例がPDとなり、うち47例がクロスオーバーコホートとしてFul+Pal併用療法へ切り替えた(STEP3)。
・STEP3の追跡期間中央値は14.7ヵ月。PFS中央値は3.5ヵ月(95%CI:2.7~5.1)だった。

 Bidard氏はctDNAによるESR1変異のモニタリングはCDK4/6阻害薬との併用療法を最適化するために有用とし、治療中にオプションとしてこの戦略を取り入れていくことがベネフィットにつながる可能性があるとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

PADA-1試験(ClinicalTrials.gov)

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21遺伝子アッセイ、リンパ節転移陽性乳がんの術後化学療法の効果予測は?/NEJM

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 21遺伝子乳がんアッセイ(Oncotype DX、Exact Sciences製)による再発スコアは、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、腋窩リンパ節転移陰性の乳がんにおける化学療法の効果の予測に有用であることが確認されている。米国・エモリー大学Winshipがん研究所のKevin Kalinsky氏らは、今回、リンパ節転移陽性乳がんにおける21遺伝子アッセイの有用性を検討し、再発スコアが25点以下の閉経前女性では、術後の化学療法+内分泌療法(化学内分泌療法)は内分泌療法単独と比較して、無浸潤病変生存と無遠隔再発生存の期間を延長する一方で、同様の病態の閉経後女性では化学療法の利益はないことを示した(RxPONDER試験)。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2021年12月1日号で報告された。

9ヵ国632施設の無作為化試験

 研究グループは、21遺伝子アッセイはリンパ節転移陽性乳がん女性における術後化学療法の利益を予測可能かの検証を目的に、前向き無作為化臨床試験を行った(米国国立がん研究所[NCI]などの助成を受けた)。本試験では、2011年2月~2017年9月の期間に、9ヵ国632施設で参加者の無作為化が行われた。

 対象は、年齢18歳以上で、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、1~3個の腋窩リンパ節転移(Stage N1)を有し、再発スコア(0~100点、点数が高いほど予後不良)が25点以下の遠隔転移のない非炎症性乳がんで、初回手術としてセンチネルリンパ節生検または腋窩リンパ節郭清を受けており、タキサン、アントラサイクリンあるいはこれら双方を含む化学療法レジメンが適応となる女性であった。

 被験者は、化学内分泌療法または内分泌療法のみを受ける群に無作為に割り付けられ、15年間追跡された。

 この試験の主要な目標は、無浸潤病変生存期間に及ぼす化学療法の効果を評価することであり、再発スコアと化学療法の効果の関連が検討された。無浸潤病変生存期間は、無作為化の日から、浸潤病変の初回再発(局所、領域、遠隔)、初発の新規浸潤がん(乳がん、他の種類のがん)、全死因死亡が発生するまでの期間と定義された。副次エンドポイントは無遠隔再発生存などであった。

閉経後女性では術後化学療法を安全に回避可能

 5,018例(年齢中央値57.5歳[IQR:18.3~87.6]、閉経前33.2%、閉経後66.8%)が解析に含まれた。化学内分泌療法群が2,511例、内分泌療法単独群は2,507例であった。事前に規定された3回目の中間解析で、無浸潤病変生存期間に及ぼす化学療法の利益は閉経状況によって異なること(p=0.008)が明らかとなったため、閉経前と閉経後に分けて解析が行われた。

 閉経後女性では、5年無浸潤病変生存率は化学内分泌療法群が91.3%、内分泌療法単独群は91.9%であり、化学療法の利益は示されなかった(ハザード比[HR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.82~1.26、p=0.89)。また、5年無遠隔再発生存率にも、両群間に差は認められなかった(94.4% vs.94.4%、HR:1.05、95%CI:0.81~1.37、p=0.70)。

 これに対し、閉経前女性の5年無浸潤病変生存率は、化学内分泌療法群が93.9%と、内分泌療法単独群の89.0%に比べ有意に良好であった(HR:0.60、95%CI:0.43~0.83、p=0.002)。5年無遠隔再発生存率も同様に、化学内分泌療法群で高かった(96.1% vs.92.8%、HR:0.58、95%CI:0.39~0.87、p=0.009)。閉経前女性では、再発スコアの上昇に伴って、化学療法の相対的な利益が増加することはなかった。

 著者は、「1~3個の腋窩リンパ節転移を有し、再発スコアが0~25点の閉経後乳がん女性では、無浸潤病変生存や無遠隔再発生存を損なわずに、術後化学療法を安全に回避可能であることが示された。対照的に、1~3個の腋窩リンパ節転移を有する閉経前乳がん女性では、再発スコアがかなり低い患者であっても、化学療法の利益が大きいことがわかった」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Kalinsky K, et al. N Eng J Med. 2021 Dec 1. [Epub ahead of print]

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抗TROP2抗体薬物複合体Dato-DXd、TN乳がんでの第I相試験最新データ(TROPION-PanTumor01)/SABCS2021

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 抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd、DS-1062)の固形がんを対象とした第I相TROPION-PanTumor01試験のうち、切除不能なトリプルネガティブ(TN)乳がんにおける安全性と有効性に関する最新データについて、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのIan Krop氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2021)で発表した。本データから、Dato-DXdが管理可能な安全性プロファイルと有望な抗腫瘍活性を示すことが示唆された。

 本試験は進行中の多施設非盲検第I相試験で、進行/転移乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、その他のがんを対象に安全性と有効性が評価されている。今回、TN乳がんコホートにおける更新結果を発表した。

・対象:標準治療後に病勢進行した切除不能なTN乳がん(ECOG PS 0~1)44例
・投与スケジュール:42例はDato-DXd 6mg/kgを3週間ごとに静脈内投与、2例は8mg/kgを投与
・評価項目:
[主要評価項目]安全性、忍容性
[副次評価項目]有効性(盲検下独立中央評価[BICR]による奏効率)、薬物動態など

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフ(2021年7月30日)時点で、44例中13例(30%)が治療を継続し、30例(68%)が病勢進行、1例(2%)が有害事象により治療を中止していた。
・年齢中央値は53歳(範囲:32〜82歳)で、30例(68%)が前治療を2ライン以上受けていた。前治療は、19例(43%)が免疫療法、13例(30%)は別のトポイソメラーゼ阻害薬が結合した抗体薬物複合体(うち10例はsacituzumab govitecan)が投与されていた。
・BICRによる奏効率は34%(確定したCR/PR:14例、確定前のCR/PR:1例)で、病勢コントロール率(DCR)は77%だった。
・別のトポイソメラーゼI阻害薬が結合した抗体薬物複合体による治療歴のない27例のサブグループ解析において、奏効率は52%(確定したCR/PR:13例、確定前のCR/PR:1例)で、DCRは81%だった。
・奏効期間中央値は未到達(範囲:2.7〜7.4+ヵ月)だった。
・治療中の有害事象(TEAE)は、全Gradeが98%、Grade3以上が45%に発現し、治療関連TEAEは全Gradeが98%、Grade3以上が23%に発現した。重篤な治療関連TEAEは5%に発現し、死亡例はなかった。
・発現の多かった有害事象は、悪心、口内炎、嘔吐、倦怠感、脱毛症で、血液毒性と下痢の頻度は低かった。薬物関連の間質性肺疾患は報告されていない。

 なお、本試験におけるHR+/HER2-乳がんコホートについては登録が完了している。ほかにも、TN乳がんに対してDato-DXd+デュルバルマブの有効性と安全性を評価するBEGONIA試験が進行中である。また、HR+/HER2-乳がんに対する第III相TROPION-Breast01試験が開始されており、今後、TN乳がんに対する第III相試験も予定されている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

TROPION-PanTumor01試験(ClinicalTrials.gov)

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新薬elacestrantがHR+進行乳がん2~3次治療でPFS改善、初の経口SERD(EMERALD)/SABCS2021

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 ホルモン受容体陽性/ HER2陰性の転移を有する閉経後乳がん患者への2次および3次治療において、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)elacestrantが、医師選択の標準治療と比較して死亡または疾患進行リスクを有意に減少させ、無増悪生存期間(PFS)を改善した。第III相EMERALD試験の中間解析結果を、米国・Mass General Cancer CenterのAditya Bardia氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)で発表した。

 現在、同患者に対しては主に内分泌療法とCDK4/6阻害薬による治療が行われているが、ほとんどの患者は最終的にこれらの治療に対する耐性を獲得し、その耐性機序の一つとしてESR1変異が考えられている。

 SERDとして乳がん治療で唯一承認されているフルベストラントは筋肉内注射による投与であり、経口SERDとして第III相試験が実施されたのは今回のelacestrantが初。Bardia氏はelacestrantはフルベストラントと比較して吸収が大きく、薬物動態が改善され、ERの阻害が強化されていると説明した。EMERALD試験は多施設共同無作為化比較試験で、北米・ヨーロッパの他アルゼンチン、韓国、オーストラリアなど17カ国228施設が参加。日本からの参加はない。

・対象:ホルモン受容体陽性/ HER2陰性の転移を有し、CDK4/6阻害薬治療後に進行した男性および女性の閉経後乳がん患者(1~2ラインの内分泌療法歴[うち1ラインはCDK4/6阻害薬との併用]と1ライン以下の化学療法歴有、ECOG PS 0/1) 477例
・elacestrant群:elacestrant(400mg/日) 239例
・標準治療群:治験担当医選択によるフルベストラントまたはアロマターゼ阻害薬 238例
・評価項目:
[主要評価項目]ITT集団およびESR1変異を有する患者におけるPFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時点での患者特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はelacestrant群63.0歳vs.標準治療群63.5歳、内臓転移を有する患者は68.2% vs.70.6%、1ラインの化学療法歴を有する患者は20.1% vs.24.4%だった。
・主要評価項目であるITT集団におけるPFS中央値は、elacestrant群2.79ヵ月に対し標準治療群1.91ヵ月となり、elacestrant群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.697、95%信頼区間[CI]:0.552~0.880、p=0.0018)。
ESR1変異を有する患者におけるPFS中央値は、elacestrant群3.78ヵ月に対し標準治療群1.87ヵ月となり、elacestrant群で有意に改善した(HR:0.546、95%CI:0.387~0.768、p=0.0005)。
・ITT集団における6ヵ月時点でのPFS率は34.3% vs.20.4%、12ヵ月時点では22.32% vs.9.42%だった。ESR1変異を有する患者においては6ヵ月時点でのPFS率は40.8% vs.19.1%、12ヵ月時点では26.76% vs.8.19%だった。
・elacestrantによるPFSのベネフィットは、フルベストラントによる治療歴(HR:0.679、 95%CI:0.438~1.029)および内臓転移を有する患者(HR:0.665、95%CI:0.607~0.869)を含む、事前に設定されたほとんどのサブグループにおいて観察された。 一方、アジア人(HR:1.091、95%CI:0.456~2.642)およびその他の人種(HR:1.075、95%CI:0.309~3.580)ではみられなかった。ただし、これらのサブグループは例数が少ない(32例、14例)。
・副次評価項目であるOS中央値は、未成熟なデータではあるが、ITT集団 (HR:0.751、 95%CI:0.542~1.038、p=0.0821) およびESR1変異を有する患者(HR:0.592、95%CI:0.361~0.958、p=0.0325)においてともにelacestrant群で良好な傾向がみられている。
・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)で多くみられたのは悪心(35.0% vs.18.8%)、倦怠感(19.0% vs.18.8%)、嘔吐(19.0% vs.8.3%)、食欲不振(14.8% vs.9.2%)、関節痛(14.3%vs.16.2%)。Grade3/4では、悪心(2.5% vs.0.9%)、背部痛(2.5% vs.0.4%)、ALT上昇(2.1% vs.0.4%)がみられた。TRAEによる治療中止はelacestrant群3.4%、標準治療群0.9%で報告され、両群とも治療関連の死亡は発生していない。

 Bardia氏は同患者に対するelacestrant単剤療法は新しい標準治療となる可能性があるとし、OSの最終結果は来年以降発表される見通しとした。また、より早期の治療ラインにおける有効性および他の治療薬と組み合わせたときの有効性を評価する必要があるとし、脳転移のある患者を対象に、アベマシクリブと組み合わせたelacestrantの有効性を評価する第II相試験が計画されているとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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EMERALD試験(ClinicalTrials.gov)

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TN乳がん1次治療でのペムブロリズマブ、適切なCPSカットオフ値は?(KEYNOTE-355)/SABCS2021

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 手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療において、ペムブロリズマブ+化学療法による治療ベネフィットが期待される患者の定義としてCPS 10以上が適切であることを示唆する、第III相KEYNOTE-355試験のサブグループ解析結果を、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)で発表した。

 本試験では、化学療法+ペムブロリズマブが、未治療のPD-L1陽性(CPS 10以上)の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん患者において、化学療法+プラセボと比べ、有意に全生存(OS)および無増悪生存(PFS)を改善したことがすでに報告されている。しかし、CPS 1以上の集団では有意なベネフィットは示されなかった。今回は、CPS 1未満、1~9、10~19、20以上のサブグループに分けてOSとPFSを解析した。

・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例
・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例
・対照群:プラセボ+化学療法 281例
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS 10以上、1以上)およびITT集団におけるPFSとOS
[副次評価項目]奏効率、奏効期間、病勢コントロール率、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・最終解析時点(データカットオフ:2021年6月15日)で、無作為化~データカットオフの期間の中央値は44ヵ月だった。
・OSについては、報告済みのハザード比(95%信頼区間)は、CPS 10以上で0.73(0.55~0.95)、CPS 1以上で0.86(0.72~1.04)、ITT集団で0.89(0.76~1.05)だった。今回のサブグループ解析では、CPS 1未満で0.97(0.72~1.32)、1~9で1.09(0.85~1.40)、10~19で0.71(0.46~1.09)、20以上で0.72(0.51~1.01)で、CPS 1~9ではペムブロリズマブ群とプラセボ群で変わらず、10~19と20以上ではペムブロリズマブの追加による治療ベネフィットが同等だった。
・PFSについては、報告済みのハザード比(95%信頼区間)は、CPS 10以上で0.66(0.50~0.88)、CPS 1以上で0.75(0.62~0.91)、ITT集団で0.82(0.70~0.98)だった。今回のサブグループ解析では、CPS 1未満で1.09(0.78~1.52)、1~9で0.85(0.65~1.11)、10~19で0.70(0.44~1.09)、20以上で0.62(0.44~0.88)だった。

(ケアネット 金沢 浩子)


KEYNOTE-355試験(ClinicalTrials.gov)

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高齢がん患者への高齢者機能評価介入、治療毒性を低減/Lancet

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 進行がんの高齢患者への介入として、地域の腫瘍医(community oncology practice)に高齢者機能評価の要約を提供すると、これを提供しない場合に比べ、がん治療による重度の毒性作用の発現頻度が抑制され、用量強度の低いレジメンで治療を開始する腫瘍医が増えることが、米国・ロチェスター大学医療センターのSupriya G. Mohile氏らのクラスター無作為化試験「GAP70+試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年11月20日号で報告された。

米国の40施設のクラスター無作為化試験

 本研究は、患者管理上の推奨事項を含む高齢者機能評価の要約を地域の腫瘍医に提供することによる介入は、意思決定の改善をもたらし、高リスクのがん治療による重度の毒性を軽減するとの仮説の検証を目的とするクラスター無作為化試験であり、米国の40の地域腫瘍診療施設が参加し、2014年7月~2019年3月の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]の研究助成を受けた)。

 対象は、年齢70歳以上、高齢者機能評価のドメイン(8項目)のうち、ポリファーマシーを除く少なくとも1つの機能障害がみられ、非治癒性の進行固形がんまたはリンパ腫(StageIII/IV)に罹患しており、4週間以内に毒性作用のリスクが高い新たながん治療レジメンを開始する予定の患者であった。

 参加施設は、高齢者機能評価による介入群または通常治療群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。介入群の腫瘍医には、Webベースのプラットフォームを用いて作成された個別の高齢者機能評価の要約と患者管理上の推奨事項が提供され、通常治療群の腫瘍医には提供されなかった。

 主要アウトカムは、3ヵ月間にGrade3~5の毒性作用(NCIの有害事象共通用語規準[CTCAE]の第4版で判定)が発現した患者の割合とされた。

転倒の発生率も低下

 40施設(腫瘍医156人)のうち、16施設が介入群、24施設は通常治療群に割り付けられた。患者718例が登録され、349例が介入群、369例は通常治療群であった。全体の平均年齢は77.2(SD 5.4)歳、311例(43%)が女性であった。がん種は、消化器がんが34%、肺がんが25%、泌尿生殖器がんが15%、乳がんが8%で、リンパ腫は6%だった。

 ベースラインの高齢者機能評価で機能障害が認められた平均ドメイン数は4.5(SD 1.6)であり、両群間に差はなかった。介入群は通常治療群に比べ、黒人が多く(11%[40/349例]vs.3%[12/369例]、p<0.0001)、化学療法による既治療例の割合が高かった(30%[104/349例]vs.22%[81/369例]、p=0.016)。

 新たな治療レジメン開始から3ヵ月以内にGrade3~5の毒性作用が発現した患者の割合は全体で61%(440/718例)であった。このうちGrade5(死亡)は5例(1%)で認められた。

 Grade3~5の毒性作用が発現した患者の割合は、介入群が51%(177/349例)と、通常治療群の71%(263/369例)に比べて低く、高齢者機能評価による介入は毒性作用のリスクを有意に低減することが確認された(補正後リスク比[RR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.64~0.86、p=0.0001)。Grade3~5の毒性作用のうち、非血液毒性には有意差が認められたが(補正後RR:0.72、95%CI:0.52~0.99、p=0.045)、血液毒性には差がなかった(0.85、0.70~1.04、p=0.11)。

 化学療法は、タキサン系薬剤やプラチナ製剤を含むレジメンが多かった。化学療法のパターンには両群間に差がみられ(p=0.011)、介入群では用量強度の低い併用療法や単剤療法、化学療法+他の薬剤(モノクローナル抗体など)、化学療法以外のレジメンの割合が高い傾向が認められた。通常治療群では、2剤併用化学療法の使用頻度が高かった。

 また、介入群では、1サイクル目の用量強度が標準よりも低い治療を受けた患者が多く(49%[170/349例]vs.35%[129/369例]、補正後RR:1.38、95%CI:1.06~1.78、p=0.015)、3ヵ月間に毒性関連で減量が行われた患者は少なかったが有意差はなかった(43%[149/349]vs.58%[213/369例]、0.85、0.68~1.08、p=0.18)。6ヵ月生存率(補正後ハザード比[HR]:1.13、95%CI:0.85~1.50、p=0.39)と1年生存率(1.05、0.85~1.29、p=0.68)には差が認められなかった。

 さらに、介入群では、3ヵ月以内の転倒の発生率が低く(12%[35/298例]vs.21%[68/329例]、補正後RR:0.58、95%CI:0.40~0.84、p=0.0035)、がん治療レジメン開始前に中止された薬剤の数が多かった(平均群間差:0.14、95%CI:0.03~0.25、p=0.015)。

 著者は、「進行がんや加齢に伴う疾患を有する高齢患者に対し、毒性作用のリスクが高い治療レジメンを新たに開始する場合は、高齢者機能評価とこれに基づく患者管理を、標準治療として考慮すべきである」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Mohile SG, et al. Lancet. 2021;398:1894-1904.

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固形がん患者へのブースター接種、抗体価の変化は?/JAMA Oncol

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 積極的な治療を受けている固形がん患者では新型コロナウイルス感染症により予後が悪化するリスクが高く、また、化学療法を受けているがん患者ではBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer/BioNTech)による体液性応答が低下することが報告されている。今回、イスラエル・Hadassah Medical CenterのYakir Rottenberg氏らが、主に化学療法を受けた固形がん患者でのBNT162b2ワクチンの3回目(ブースター)接種後30日未満の体液性応答を調査したところ、ほとんどの症例でブースター接種後早期に抗体反応がみられたことがわかった。JAMA Oncology誌オンライン版2021年11月23日号に掲載。

 本研究の対象は、Hadassah Medical Centerにおいて化学療法、生物学的製剤、免疫チェックポイント阻害薬、もしくはこれらの組み合わせで治療された固形がん患者で、BNT162b2ワクチンを2回接種していた患者。血液サンプルの採取日の中央値は、ブースター接種後13日(範囲:1~29)で、スパイクタンパク質結合抗体について分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・2021年8月15日~9月5日に37例がブースター接種後に血清学的検査を受けた。2回目接種とブースター接種との間隔の中央値は214日(範囲:172~229)、2回目接種と2回目接種後抗体測定の間隔の中央値は86日(範囲:30~203)だった。
・年齢中央値は67歳(範囲:43~88)で、11例(30%)は転移がなく、19例(51%)は化学療法を受けていた。
・1例(40代、dose-dense AC療法後パクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブによる術後補助療法中)を除いた患者が血清学的検査で陽性だった。さらに、化学療法の有無に関係なく、2回目接種後の反応が中程度または最小だった患者で、ほぼすべての患者が高い抗体価を示し、有意に抗体価が増加した。
・多重線形回帰の結果、2回目接種後の抗体価(p<0.001)と高齢者(p=0.03)がブースター接種後の高い抗体価と関連した。一方、性別、化学療法の有無、3回目接種と抗体検査の間隔との関連はみられなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Rottenberg Y, et al. JAMA Oncol. 2021 Nov 23.[Epub ahead of print]

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がん治療における遺伝子パネル検査、データ利活用の最前線/日本癌治療学会

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 実臨床で得られた診療データをその後の研究に活かしていくという、「データ利活用」の動きが世界中で活発になっている。第59回日本癌治療学会学術集会(10月21~23日)では会長企画シンポジウムとして「大規模データベースを活用したがん治療の新展開――医療データの臨床開発への利活用」と題した発表が行われた。

 冒頭に中島 直樹氏(九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター)が「データ駆動型の医療エビデンス構築の現在と未来」と題した講演を行い、日本の医療データの問題点として「収集後の名寄せが困難(マイナンバーの医療分野利用の遅れなど)」「医療情報の標準化の遅れ」「改正個人情報保護法によるハードル」を挙げた。そして、これらの問題の解決策として2018年に制定された次世代医療基盤法によるデータ収集と連携のプラットフォームに触れ、状況が変わりつつあることを紹介した。

 続いて、谷口 浩也(愛知県がんセンター病院 薬物療法部)が、「産学連携ゲノム解析研究SCRUM/CIRCULATE-Japan Registryの医薬品医療機器承認への活用」と題した発表で、 国立がんセンターを中心とした産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクト「SCRUM-Japan」内の「SCRUM-Japan Registry」プロジェクトにおける、臨床研究データを蓄積し、外部の医薬品メーカーに提供、主に希少疾病の新薬開発における比較対照として活用して承認申請に結びつける取り組みを紹介した。「データの質を保つために参加施設を本体研究より絞り、患者背景の均一化などを工夫してきた。悉皆性の確保、参加施設のモチベーションの維持、コスト負担などが今後の課題だ」とした。

 さらに、河野 隆志氏(国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター=C-CAT)が「保険診療で行われるがん遺伝子パネル検査のデータの診療・研究・開発への利活用」と題した演題でC-CATのデータ利活用の現状を紹介。C-CATには2019年6月~2021年8月までに2万1,030例の遺伝子パネル検査の結果が集積。がん種は男性では肺がんよりも膵臓がんが多く、女性では乳がんと卵巣/卵管がんがほぼ同数などとなっている。「遺伝子パネル検査を受けるのは標準治療終了後の患者さんに限られるため、一般的ながん種別の罹患率とは異なり、悪性度の高いがんが多くなる傾向がある」(河野氏)という。これまで、「診療検索ポータル」という検索サイトを立ち上げ、患者背景ごとに適合する進行中の治験を検索できるようにしてきた。

 さらに今年の10月から「利活用検索ポータル」として、研究・開発目的としてC-CATデータを提供するサイトをオープン。1万8,000例ほどから、がん種や遺伝子変異の種類、薬剤名、奏効率や有害事象などの条件で検索し、詳細なデータを閲覧できる。

 利用者はC-CATによる審査・登録後、がんゲノム医療中核拠点病院、大学等の研究機関であれば無償、製薬メーカーは有償で利用できるようになる。「特定の遺伝子変異の患者データ等の把握が容易になり、治験などが活発になることを期待している。登録は審査が必要となり時間がかかるため、最低限の情報を確認できる『登録件数検索』機能を用意しており、興味がある方はぜひ一度見ていただきたい」(河野氏)とした。

(ケアネット 杉崎 真名)


【参考文献・参考サイトはこちら】

国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター「利活用のページ」

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ナッツ類の摂取と乳がんサバイバーの転帰の関係

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 ナッツ類の積極的な摂取が、全死亡や心血管疾患などの死因別死亡リスク低下と関連するという報告があるが、乳がんサバイバーにおけるがんの転帰との関連はみられるのだろうか。米国・ヴァンダービルト大学メディカルセンターのCong Wang氏らは、乳がんサバイバーを対象に、ナッツ類の消費量と全生存率(OS)および無病生存率(DFS)との関連を分析した。International Journal of Cancer誌オンライン版2021年10月19日号に掲載の報告より。

 本研究では、中国の大規模コホート研究・上海乳がん生存者調査のデータが用いられた。同調査では、乳がん診断後5年時点で、食事摂取頻度調査票を用いた過去1年間の包括的な食事評価が実施されている。ピーナッツ、クルミ、その他のナッツを含むナッツ類の消費量は、1週間当たりの摂取量をグラム数に換算して評価。ナッツ類の総消費量が0g/週を超える患者はナッツ類消費者、それ以外はナッツ類非消費者と定義され、さらにナッツ類消費者は≦中央値(17.32g/週)、>中央値に分類された。ナッツ類の消費量とOSおよびDFSの関連はCox回帰分析を用いて評価された。

 主な結果は以下のとおり。

・診断後5年時点で食事評価が実施された乳がんサバイバー3,449例が対象。食事評価実施後の追跡期間中央値は8.27年で、252例の乳がんによる死亡を含む374例の死亡があった。
・診断後5年の食事評価時点で再発のなかった3,274例のうち、209例で乳がんの再発、転移、または乳がんによる死亡が報告された。
・初回の食事評価からさらに5年後(診断10年後)の評価では、ナッツ類消費者は、非消費者と比較してOS(93.7% vs.89.0%)およびDFS(94.1% vs.86.2%)が有意に高かった(p<0.001)。
・多変量調整後、ナッツ類消費量は用量反応パターンにしたがってOS(傾向のp=0.022)およびDFS(傾向のp=0.003)と正の相関がみられた。ナッツ類消費量>中央値と非消費者の比較では、OSのハザード比(HR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.52~1.05)、DFSのHRは0.48(95%CI:0.31~0.73)だった。
・これらの関連は、ナッツの種類による違いはみられなかった。
・また層別化分析では、総エネルギー摂取量が多い患者とOS(交互作用のp=0.02)および、早期(StageI~II)乳がん患者とDFS(交互作用のp=0.04)において関連性がより明白であることが示された。
・ナッツ類消費とDFSの関連について、ホルモン受容体の状態およびその他既知の予後因子による変化はみられなかった。

 著者らは、長期の乳がんサバイバーにおけるナッツ類の摂取は、より良い生存、とくにDFSと関連していたと結論付けている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Wang C,et al.Int J Cancer. 2021 Oct 19. [Epub ahead of print]

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CDK4/6阻害薬、HER2低発現の進行乳がんでの有効性は?

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 CDK4/6阻害薬はホルモン受容体陽性(HR+)/HER2-進行・再発乳がん(MBC)の1次/2次治療において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間を大幅に改善する。しかしながら、表現型および遺伝子解析では、有効性に関連する予測マーカーは特定されていない。今回、香港・クイーンエリザベス病院のKelvin K. H. Bao氏らは、CDK4/6阻害薬で治療されたHR+/HER2-MBC患者のHER2低発現と予後の関連を調査した結果、HER2低発現例ではCDK4/6阻害薬の有効性が低いことが示唆された。JAMA Network Open誌2021年11月1日号に掲載。

 本研究では、香港・クイーンエリザベス病院において、2017年3月~2020年6月にレトロゾールもしくはフルベストラントとの併用でCDK4/6阻害薬を投与されたHR+/HER2-MBCの患者について調べた。HER2-低発現はIHCスコア1+もしくは2+かつISH陰性とした。また、PFSはCDK4/6阻害薬投与開始日から病勢進行または死亡までの期間とした。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象のMBCの女性患者は106例で、治療時の年齢中央値(範囲)は58.0(23.0~91.4)歳、90例(84.9%)がパルボシクリブ、16例(15.1%)がリボシクリブを投与されていた。54例(50.9%)が1次治療で投与されていた。
・乳管組織型が88例(83.0%)、エストロゲン受容体Hスコア200以上が76例(71.7%)、プロゲステロン受容体陽性が81例(76.4%)だった。
・PFS中央値は、HER2低発現の82例(77.3%)では8.9ヵ月(95%CI:6.49~11.30)で、HER2 IHCスコア0の24例における18.8ヵ月(95%CI:9.44~28.16)より短かった(p=0.01)。
・多変量解析において、治療ライン(2次治療以降のラインに対する1次治療のHR:0.30、95%CI:0.18~0.53、p<0.001)、プロゲステロン受容体(陰性に対する陽性のHR:1.48、95%CI:0.62~3.50、p=0.38)、疾患範囲(骨外に対する骨のみのHR:0.50、95%CI:0.26~0.97、p=0.04)を調整後も、HER2低発現例でPFSが短かった(HR:1.96、95%CI:1.03~3.75、p=0.04)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Bao KKH, et al. JAMA Netw Open. 2021;4:e2133132.

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