2020年のがん診断数は前年比9%減、とくに早期での発見が減少/日本対がん協会

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 2020年のがん診断件数は8万660件で、2019年より8,154件(9.2%)少なく、治療数(外科的・鏡視下的)も減ったことがわかった。おおむね早期が減る一方、進行期は両年で差が少ない傾向となり、今後進行がんの発見が増えることが懸念される。日本対がん協会は11月4日、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)と共同実施したアンケート調査の結果を発表した。

 アンケートは今年7~8月、全がん協会加盟施設、がん診療連携拠点病院、がん診療病院、大学病院など486施設を対象として実施。5つのがん(胃、大腸、肺、乳、子宮頸)について診断数、臨床病期(1~4期、がん種によって0期も含む)、手術数、内視鏡治療数などを聞いた。大規模調査は全国初で、北海道東北、関東、中部北陸、近畿、中国四国、九州沖縄の各地域の計105施設から回答を得ている(回答率21.6%)。

 5がん種の診断数の減少幅は下記のとおり。

・胃がん:2019年1万9,470件→2020年1 万6,868件(-13.4%)
・大腸がん:2019年2 万1,975件→2020年1 万9,724件(-10.2%)
・乳がん:2019年1 万9,528件→2020年1 万7,919件(-8.2%)
・肺がん:2019年2 万3,010件→2020年2 万1,548件(-6.4%)
・子宮頸がん:2019年4,831件→2020年4,601件(-4.8%)

 がんに罹患する人の割合は2019年、2020年でほぼ変わらないと考えられるため、2019年と同じように検診や通院ができていれば発見できたがんが約9%あったと推測される。がん診断数の減少は早期が顕著なため、進行期の発見の増加が心配されるほか、予後の悪化や将来的にはがん死亡率が増加するおそれもある。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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がん種別5年・10年生存率、最新版を公表/全がん協調査

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 11月10日、全国がんセンター協議会加盟32施設の診断治療症例について、部位別5年生存率、10年生存率の最新データが公表され、全部位の5年生存率は68.9%、10年生存率は58.9%だった。部位別にみると、10年生存率が最も高かったのは前立腺がんで99.2%、最も低かったのは膵臓がんで6.6%だった。

 本調査は国立がん研究センターの「施設をベースとしたがん登録情報の収集から活用・情報発信までの効果と効率の最大化モデル構築のための研究」研究班が、全国がんセンター協議会の協力を得て、加盟32施設の診断治療症例について部位別5年生存率、10年生存率を集計したもの。同研究班は、1997年診断症例より部位別臨床病期別5年生存率、1999年診断症例より施設別5年生存率を公表し、2012年からはグラフを描画する生存率解析システム「KapWeb」を開設、2016年からはより長期にわたる生存率を把握するため10年生存率を公表している。

 がん診療連携拠点病院の中のがんセンターなど、限られた施設のデータではあるが、10年生存率を過去と比較できるのは現時点で本調査のみとなっている。また、がん種、病期、治療法などさまざまな条件設定での10年生存率、診断からの経過日数を指定したうえでのサバイバー生存率をグラフ描画できるのは現時点でKapWebのみとなっている。

<データベース概要>
対象施設:全国がんセンター協議会加盟32施設(2021年現在)
収集症例:1997~2013年までに全がん協加盟32施設で診断治療を行った87万6,679症例
集計対象:
[5年生存率]2011~13年に診断治療を行った症例のうち、集計基準を満たした15万1,568症例
[10年生存率]2005~08年に診断治療を行った症例のうち、集計基準を満たした12万649症例

<5年生存率>
全部位および部位別の5年相対生存率は以下のとおり。※( )内の数値は、前回2010~12年症例の5年相対生存率。
・全部位:68.9%(68.6%)
・食道:50.1%(48.9%)
・胃:75.4%(74.9%)
・大腸:76.8%(76.5%)
・肝:38.6%(38.1%)
・胆のう・胆管:28.7%(28.9%)
・膵臓:12.1%(11.1%)
・喉頭:80.4%(82.0%)
・肺:47.5%(46.5%)
・乳(女):93.2%(93.6%)
・子宮頸:75.9%(75.7%)
・子宮体:86.2%(86.3%)
・卵巣:64.3%(65.3%)
・前立腺:100.0%(100.0%)
・腎臓など:71.0%(69.9%)
・膀胱:67.7%(68.5%)
・甲状腺:93.0%(92.6%)

<10年生存率>
全部位および部位別の10年相対生存率は以下のとおり。※( )内の数値は、前回2004~07年症例の10年相対生存率。
・全部位:58.9%(58.3%)
・食道:34.4%(31.8%)
・胃:67.3%(66.8%)
・大腸:69.7%(68.7%)
・肝:17.6%(16.1%)
・胆のう・胆管:19.8%(19.1%)
・膵臓:6.6%(6.2%)
・喉頭:64.2%(63.3%)
・肺:33.6%(32.4%)
・乳(女):87.5%(86.8%)
・子宮頸:68.2(68.7%)
・子宮体:82.3%(81.6%)
・卵巣:51.0%(48.2%)
・前立腺:99.2%(98.8%)
・腎臓など:63.3%(62.8%)
・膀胱:63.0%(61.1%)
・甲状腺:86.8%(85.7%)

 5年生存率および10年生存率ともに、前回公表データと比較した場合多くの部位で生存率の上昇を認める一方、一部低下している部位も含めて、臨床的に意味のある変化は認められていない。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

国立がん研究センタープレスリリース

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乳がん放射線治療中、デオドラントの使用を継続してよいか~メタ解析/日本癌治療学会

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 デオドラント製品を日常的に使用している日本人女性は多いが、放射線治療期間中に使用を継続した場合に放射線皮膚炎への影響はあるのだろうか? 齋藤 アンネ優子氏(順天堂大学)らは、放射線治療期間中のデオドラント使用に関連する放射線皮膚炎について調査した無作為化試験のメタ解析を実施し、第59回日本癌治療学会学術集会(10月21~23日)で報告した。なお、本解析は「がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版」のために実施された。

 2020年3月までに、PubMed、医中誌、Cochrane Library、CINAHLより、デオドラント使用が放射線皮膚炎に与える影響を検討した無作為化比較試験を中心に検索がされた。評価項目は腋窩の放射線皮膚炎の重症度(Grade2以上/ Grade3以上、NCI-CTC v5.0による評価)で、金属含有デオドラントと金属非含有デオドラントを別々に評価した。メタアナリシスの効果指標はリスク比(RR)とした。

 主な結果は以下のとおり。

・乳がん患者を対象とした前向き比較第III相試験が5編、アンケート調査1編の計6編の論文が特定され、定性的・定量的システマティックレビューが実施された。
・金属含有デオドラント使用群とデオドラント禁止群の比較では、Grade2以上の皮膚炎(RR:1.01、95%信頼区間[CI]:0.85~1.20)、Grade3以上の皮膚炎(RR:0.79、95%CI:0.22~2.84)のいずれも有意な差はみられなかった。
・金属非含有デオドラント使用群とデオドラント禁止群の比較では、Grade2以上の皮膚炎(RR:0.9、95%CI:0.5~1.6)、Grade3以上の皮膚炎(RR:0.76、95%CI:0.33~1.78)のいずれも有意な差はみられなかった。
・QOLの評価は2編の論文で行われた。デオドラント使用群で汗の量は有意に少なかったが、QOLについては使用群と対照群の間で有意な差はなかった。しかし、1編のアンケート調査では、習慣的にデオドラントを使用しているとした乳がん患者のうち64%は、デオドラントを使用できないことで体臭が気になったと回答していた。

 皮膚炎の評価にかかわる主な交絡因子としては、喫煙、化学療法、照射範囲・線量、体型などが考えられ、デオドラントの使用方法が規定されておらず、盲検化が行われていないため、エビデンスの強さとしては「非常に弱い」とされた。また金属非含有デオドラント使用群との比較については研究数が3~4編となった一方、金属含有デオドラント使用群との比較については研究数が2編のみとなり、さらにこの2編が類似のバイアスの影響を受けていると考えられるもので、エビデンスとしてはより脆弱と考えられた。

 以上より、害と益のバランスとしては、下記のように評価された:
・金属非含有のデオドラントによる放射線皮膚炎の増悪は、エビデンスは弱いが、認められなかった
・習慣的にデオドラントを使用している患者には益が害を上回る

 ガイドラインにおける推奨文としては、「放射線治療中のデオドラント使用の継続を弱く推奨する」とされた。ただし、金属含有のデオドラントについては皮膚炎への評価をした研究のエビデンスの確実性が非常に低く、注意をしながら使用を継続することが推奨される。

 実臨床で質問を受けたときに医療者が提供できる情報として、齋藤氏は、習慣的に使用している場合であれば金属非含有のものを使用するのがいいのではないかという点に加え、商品としてはアルミニウムフリーと明記されて販売されていることを挙げた。また、ミョウバン入りの商品について、ミョウバン=アルミニウムということを認識していない患者さんも多いため、補足して伝えることができればよいのではないかと話した。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)日本がんサポーティブケア学会編.がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版 第2版.金原出版;2021.

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都市伝説に惑わされない!『がん治療におけるアピアランスケアGL 2021年版』発刊

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 日本がんサポーティブケア学会が作成した『がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版』が10月20日に発刊した。外見(アピアランス)に関する課題は2018年の第3期がん対策推進基本計画でも取り上げられ、がんサバイバーが増える昨今ではがん治療を円滑に遂行するためにも、治療を担う医師に対してもアピアランス問題の取り扱い方が求められる。今回の改訂は、分子標的薬治療や頭皮冷却法などに関する重要な臨床課題の新たな研究知見が蓄積されたことを踏まえており、患者ががん治療に伴う外見変化で悩みを抱えた際、医療者として質の高い治療・整容を提供するのに有用な一冊となっている。

 本書はこれまで“がん患者に対するアピアランスの手引き 2016年版”として公開してきたものをMinds診療ガイドライン作成マニュアル2017に準拠し作成、ガイドライン(GL)に格上げされたものだが、この作成委員長を務めた野澤 桂子氏(目白大学看護学部 看護学科/国立がん研究センター中央病院 アピアランス支援センター)に注目すべき点やアピアランスケアにおける患者への寄り添い方について伺った。

「◯◯の使用を控えましょう」は都市伝説レベルも少なくない

 今回、GLを発刊するにあたり、野澤氏は「僅少の研究からエビデンスとなるものを抽出し推奨度を決定するのは困難を極めた。さらに、下痢や発熱などの副作用と異なり、直接は命に関わらない外見の副作用に対するケアを患者QOLと医学的エビデンスとのバランスの中でどうGLに反映させるか、今回の課題だった」と言及した。その一方で、エビデンスを重視し過ぎる医療者に危機感も感じたという。「支持療法の評価を、がん治療の効果を評価するのとまったく同じ手法で評価する必要がどこまであるのだろうか。ハードルが高すぎて、同じ労力なら支持療法より治療法の研究をしようとする研究者も増えるかも知れない」とし、「医療者は、ゼロリスクにするために少しでも危険を避けようとするが、たとえば、日用整容品の注意事項に書かれている“病中病後の使用はお控えください”という言葉もがん患者のエビデンスがあるとは限らない」と指摘した。また、「炎症や肌荒れがなく患者さんの希望があれば挑戦してほしい。医療者は、患者さんがその挑戦のメリットデメリットを判断できるような情報を提供することが重要」と説明した。

医療者の責務―患者が主体的に生きることを支援する

 また、同氏は医療者のアピアランスケアの現状について「医療者は根拠なく患者さんの生活を限定させるような指導を行うべきではない。人間は息をするためだけに生きているのではない。その人らしく豊かに過ごすための時間にできなければ、患者さんにとって意味がないともいえる」と強調した。

 そんな野澤氏も以前はざ瘡様皮疹が出現した患者さんには、当時言われていたように、症状の悪化を懸念してフルメイクではなくポイントメイクを推奨していた。しかし、ある患者さんの一言でケアの在り方を見直したのだという。“ポイントメイクでは隠したいブツブツが隠せない。私は可愛いおばあちゃんと言われることが生きがいだったのに、これでは孫に会えない。効いてる限り死ぬまで使う薬なのに、そもそも生きている意味がないじゃない”と患者さんに迫られた経験談を話し、「その時にケアに対する認識の転換期を迎えた。アピアランスケアがほかの副作用対策と異なるのは、“命に直接関わらない”ということ。ケアに挑戦して何かあってもそれに対する対策はある。重要なのは、患者さんが納得した選択ができること、その人らしさを表現できることではないか」と語った。本ガイドラインはある意味、医療者のエビデンス呪縛を解くための指南書の役割もあるのだろう。

読みやすさ刷新、気になるページにすぐジャンプ

 今回の改訂では各章の項目がひと目でわかる「項目一覧」というページが追加されている。ここでは分類(症状や部位)、番号(BQ:background question、CQ:clinical question、FQ:future research question)の項目分類が一覧になっており、研究の状況がわかると同時に、気になるページにすぐたどり着くようになっている。また、各章に総論が設けられており、治療ごとの現状など、本書の読者の理解が促される仕様になっている。たとえば、化学療法編では、「レジメン別脱毛の頻度」や「レジメン別の手足症候群の頻度」が表として掲載され副作用の発現率に注目することで、実際の治療に応じた患者管理がしやすくなっている。

 各章の変更点については、5月に開催された日本がんサポーティブケア学会の特別シンポジウム『アピアランスケア研究の現状と課題~アピアランスケアガイドライン2021最新版を作成して~』にて、作成委員会の各領域リーダーらがトピックを解説。そこで挙げられた注目すべき点や改訂にて変更されたquestionを以下に示す。

<項目ごと追加・改訂点>―――

治療編(化学療法)
・CQ1:化学療法誘発脱毛の予防や重症度軽減に頭皮クーリングシステムは勧められるか(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B[中]、合意率:100%)
→周術期化学療法を行う乳がん患者限定。また、レジメンごとの脱毛治療の成功・不成功を踏まえた上で患者指導やケアが必要とされる。

・CQ8:化学療法による手足症候群の予防や重症度の軽減に保湿薬の外用は勧められるか
(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:D[とても弱い]、合意率:94%)

・CQ10:化学療法による手足症候群の予防や発現を遅らせる目的で、ビタミンB6を投与することは勧められるか(推奨の強さ:3、エビデンスの強さ:B[中]、合意率:94%)

治療編(分子標的療法)
・CQ17:分子標的治療に伴うざ瘡様皮疹の予防あるいは治療に対してテトラサイクリン系抗菌薬の内服は勧められるか(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B[中]、合意率:100%)
→皮膚障害のなかで代表的なのが「ざ瘡様皮疹」だが、無菌性であることが特徴。テトラサイクリン系は抗菌作用のみならず抗炎症作用を持ち合わせており、この効果を期待して使用される。

・FQ16:分子標的治療に伴うざ瘡様皮疹に対して過酸化ベンゾイルゲルの外用は勧められるか。

治療編(放射線療法)
・CQ28:放射線治療による皮膚有害事象に対して保湿薬の外用は勧められるか(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:C[弱]、合意率:乳がん-100%、頭頸部-94%)
→強度変調放射線治療(IMRT)の普及に伴い、線量に関する規定が削除され、“70Gy相当”の文言が削除された。

・FQ31:軟膏等外用薬を塗布したまま放射線治療を受けてもよいか

日常整容編
スキンケア(洗顔やひげ剃りなど)、カモフラージュとしてのメイクやつけまつげに関する項目は漠然としていたので今回は項目より削除。また、手術瘢痕へのテーピングについてはカモフラージュという表現から“顕著化を防ぐ方法”に変更されている。

・BQ32:化学療法中の患者に対して、安全な洗髪等の日常的ヘアケア方法は何か
→頭皮を清潔→決まった回数は存在せず、臭いや痒みに応じてでも構わない。シャンプ
ーも指定品があるわけではないので患者の嗜好に応じたものをアドバイスする。

・BQ37:がん薬物療法中の患者に対して勧められる紫外線防御方法は何か
→前回あまり触れられていなかった衣服について盛り込まれた。

・FQ42:乳房再建術後に使用が勧められる下着はあるか
―――

 今回は43項目(FQ:19、CQ:10、BQ:14)が出来上がったものの、患者の生命に直接関わるわけではない点がボトルネックとなりエビデンスレベルの高い研究が今後望まれる。次回の課題として「研究の蓄積、免疫チェックポイント阻害剤の皮膚障害に関する項目が盛り込まれること」と同氏は話した。

がん患者を治療ストレスから開放するために

 アピアランスケアを実践することは患者の自己表現を容認するものであり、治療効果ひいては生存率にもかかわってくるのではないだろうか。同氏は「患者さんにはもっと安心して治療をしてもらいたい。今は外見の副作用コントロールのための休薬・減量のスキルも進歩してきており、不安なことはケア方法含めて医療者に聞いて欲しい。そして、医療者はエビデンスをベースとしつつも、個々に応じた対応を心がけることが必要」と締めくくった。

(ケアネット 土井 舞子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

金原出版:がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版(第2版)

第6回日本がんサポーティングケア学会学術集会

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HR+/HER2-進行乳がんへのCDK4/6阻害薬+フルベストラントのOS、FDAがプール解析/Lancet Oncol

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 CDK4/6阻害薬は、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行・再発乳がんの1次/2次治療における内分泌療法との併用で、米国・食品医薬品局(FDA)に承認されている。今回、FDAのJennifer J. Gao氏らがCDK4/6阻害薬とフルベストラントによる全生存期間(OS)のプール解析を行ったところ、患者全体および調査したほとんどの臨床病理学的サブグループでOSベネフィットが示された。Lancet Oncology誌オンライン版2021年10月14日号に掲載。

 この探索的解析では、フルベストラントとCDK4/6阻害薬もしくはプラセボを併用した3つの第III相無作為化試験の患者データを統合した。解析した患者はすべて18歳以上で、ECOG PS 0~1のHR+/HER2-進行・再発乳がんだった。患者全体のほか、ライン別(1次治療と2次治療以降)、臨床病理学的サブグループ別に解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・3試験を統合すると、2013年10月7日~2016年6月10日に1,960例が登録され、うち12例が治療されず、CDK4/6阻害薬に1,296例(66%)、プラセボに652例(33%)が無作為に割り付けられた。
・治療を受けた患者(1,948例)において、OSの推定ハザード比(HR)は0.77(95%信頼区間[CI]:0.68~0.88)、追跡期間中央値は43.7ヵ月(四分位範囲[IQR]:37.8~47.7)で、935例(48%)が死亡した。推定OS中央値の差は7.1ヵ月で、CDK4/6阻害薬が良好だった。
・1次治療の内分泌療法でフルベストラントとCDK4/6阻害薬またはプラセボを併用された患者(2試験、396例)では、OSの推定HRは0.74(95%CI:0.52~1.07)、追跡期間中央値は39.4ヵ月(IQR:37.0~42.2)で、123例(31%)が死亡した。推定OS中央値の差は、CDK4/6阻害薬群のOS中央値が推定不能で(95%CI:50.9~NE)、算出できなかった。
・2次治療以降の内分泌療法でフルベストラントとCDK4/6阻害薬またはプラセボを併用された患者(3試験、1,552例)では、OSの推定HRは0.77(95%CI:0.67~0.89)、追跡期間中央値は45.1ヵ月(95%CI:39.2~48.5)で、812例(52%)が死亡した。推定OS中央値の差は7.0ヵ月で、CDK4/6阻害薬が良好だった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Gao JJ, et al. Lancet Oncol. 2021 Oct 14.[Epub ahead of print]

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Stage IV乳がんの原発巣切除の意義とは?/日本癌治療学会

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 わが国で実施されているJCOG1017試験(PRIM-BC)「薬物療法非抵抗性Stage IV乳がんに対する原発巣切除の意義(原発巣切除なしversusあり)に関するランダム化比較試験」は、来年8月に追跡期間が終了する予定で結果が待たれている。第59回日本癌治療学会学術集会(10月21~23日)におけるシンポジウム「乳癌治療におけるデエスカレーションとエスカレーション-さらなる個別化-」において、本試験の研究事務局である岡山大学の枝園 忠彦氏が、すでに発表されている海外での4つの前向きランダム化比較試験の結果と問題点を紹介し、それらのメタ解析の結果や今後の課題について発表した。

de novo Stage IV乳がんに対する原発巣切除の役割とは?

 Stage IV乳がんの治療の目的は延命と症状緩和で、薬物療法が基本である。近年、薬物療法の進歩はめざましく、早期乳がんのみならず、転移している乳がんにおいても、体内のがん細胞が消失する割合が増えてきている。また、画像検査の精度が上がり、小さながん転移もみつけることが可能で、さらに血液中の微小転移も検出できる検査も確立してきている。このような時代の中で、再度、原発巣切除の役割を考えるというのが、これらの前向きランダム化比較試験の目的である。

5つのランダム化比較試験の結果と問題点

 de novo Stage IV乳がんに対する原発巣切除による予後の比較については、10年以上前から色々な施設から後ろ向き研究のデータが出ているが、ほとんどが原発巣切除するほうが予後がよいという結果となっている。それを受け、世界で5つの前向きランダム化比較試験が開始された。インドのTata Memorial Hospitalでの単施設試験(登録数350例)、トルコのMF07-01試験(274例)、オーストリアのABCSG28試験(90例)、米国のECOG2108試験(256例)、日本のJCOG1017試験(407例)の5つで、日本を除く4試験の結果がすでに報告されている。このうち、インド、米国、日本の試験は、全身療法で効果があった患者に対して切除の有無でランダム化しているのに対し、インドとオーストリアの試験ではStage IV乳がんと診断された時点ですぐにランダム化しているという違いがある。

<インド・Tata Memorial Hospitalでの単施設試験>
結果:全生存期間(OS)には差がなく、すべてのサブグループでも差がなかったが、局所の無増悪生存期間(PFS)は切除群のほうが良好だった。遠隔転移のPFSは切除群のほうが悪かった。
問題点:生存期間中央値(MST)が20ヵ月未満と他の試験に比べて非常に短い。抗HER2療法を含めたNCCガイドラインに沿った薬物療法がなされていない。

<トルコ・MF07-01試験>
結果:切除群でOSが良好だった。サブグループ解析ではER/PR陽性、HER2陰性、55歳未満、単発性の骨転移で切除群のほうが良好だった。
問題点:両群の背景に偏りがあった(切除群にER/PR陽性例が多く、非切除群にトリプルネガティブタイプが多い、など)。

<オーストリア・ABCSG28試験>
結果:OSには差がなかった。
問題点:登録症例数が90例(予定は560例)と少ない。

<米国・ECOG2108試験>
結果:OSに差はなかったが、局所のPFSは切除群で良好であった。ただし、遠隔転移のPFSは差がなかった。サブグループ解析では、トリプルネガティブタイプのみ切除群でOSが悪かった。QOLは18ヵ月時点で切除群が有意に悪かった。
問題点:非切除群の19%で切除を受けていた。

4試験のメタ解析ではOSに差なし、JCOG1017試験が加わったときの結果は?

 登録された症例や治療法は4つの試験間で均一ではなく、それぞれに問題点を抱えているが、これらをメタ解析するとOSは差がなく、どのサブグループでも差がなかった。一方、局所のPFSは切除群で有意に良好であり、局所制御を目的とした場合、切除が有効と考えられる。これらの結果より、乳がん診療ガイドライン2018年度版において「Stage IV乳がんに対する予後の改善を期待しての原発巣切除を行わないことを弱く推奨する」とされている。トルコの試験では単発性の骨転移には切除群で良好だったことから、枝園氏は「局所制御のための原発巣切除の適応となる患者の選別や、原発巣切除を含めたオリゴメタに対する治療方針をさらに検討する必要がある」と述べた。

 日本のJCOG1017試験は来年8月に追跡期間が終わり、結果が発表される。「そのときにメタ解析の結果が変わるのか、いずれかのサブグループで差が出てくるのか、期待していただきたい」と枝園氏は締めくくった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

JCOGホームページ:JCOG1017薬物療法非抵抗性 Stage IV 乳癌に対する原発巣切除の意義(原発巣切除なし versus あり)に関するランダム化比較試験実施計画書 ver.1.9.0

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卵巣がん患者アンケート、6割が情報収集に困難/アストラゼネカ

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 アストラゼネカは卵巣がん患者の情報収集の実態と一般女性の卵巣がんに対する認識・理解度を把握するためのWebアンケートを実施し、結果を発表した。卵巣がんは国内の年間新規患者数約1万3,000人、初期は自覚症状がほとんどなく、検診での早期発見も難しいとされる。アンケートの回答者は「10年以内に卵巣がんと診断された20代以上の卵巣患者111名(患者調査)」と「卵巣がんに罹患していない女性1,314名(一般調査)」の2群。

【患者調査】
 93%が卵巣がんに関する情報を自ら調べていると回答し、情報収集源は医療情報関連サイトや病院HP、患者のブログなど多岐にわたっていた。また、62%が「情報収集時に困難を感じた」と回答し、困りごとの内訳としては、「信頼できる情報がどれだかわからなかった」(56%)、次いで「いろいろなサイトを見に行かなければならなかった」(39%)が続いた。

 患者が「信頼性の高い情報源」と認識しているのは「医師の情報(「非常に高い」「高い」の計71%)、「病院のHP」(同68%)が上位となり、これに学会や製薬会社の情報が続いた。他には「書籍」42%、「家族・知人」23%、「SNS」15%等が挙がった。一方で、医師の治療内容の説明に対して、54%が「専門用語などが難しく、その場ですぐに理解できなかった」と回答した。

 そして、72%が「情報が集約されている方が便利」と回答し、必要とする情報が医師監修など信頼できるかたちで1ヵ所にまとまって入手できる状態を望んでいることが確認された。

【一般調査】
 婦人科検診の受診状況について57%が「受けていない」と回答し、未受診の理由は「体調の不調を感じない」(44%)、「必要性を感じない」(23%)などとなった。婦人科検診を受けた人の中でも、マンモグラフィを子宮頸がん・卵巣がんの検査と認識するなど、どのがんのための検査なのかを理解していない人が一定数存在した。また、「おなかの張り」「腹痛」の症状がある時に受診する科としては8割以上が「内科」と回答し、婦人科は10%台だった。また、好発年齢や家族歴等のリスク要因について、卵巣がんは乳がん、子宮頸がんと比べて理解度が低いという結果が出た。

 調査を実施したアストラゼネカは「患者からは信頼できる正確な情報を手軽にかつ1ヵ所で入手したいというニーズが確認でき、一般の方には卵巣がんに対する知識の向上と婦人科検診の受診への意欲を高めてもらえるよう、各種の取り組みを続けたい」とコメントしている。

【アンケート概要】
調査対象:
[1]10年以内に「卵巣がん」と診断された20代以上の女性:111名  
[2]卵巣がんに罹患していない20代~70代の女性:1,314名
調査方法:Webアンケート
調査期間:2021年8月27日~9月1日

アンケートの詳細は下記
卵巣がん患者情報収集に関する調査
卵巣がんに関する意識調査

(ケアネット 杉崎 真名)


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再発乳がんへのパルボシクリブ、実臨床での併用薬や次治療は?/日本癌治療学会

提供元:CareNet.com

 2017年の承認以来、CDK4/6阻害薬パルボシクリブはホルモン受容体陽性/HER2陰性の手術不能または再発乳がん治療に使用されているが、治療ラインや併用薬、次治療についてのデータは限定的となっている。澤木 正孝氏(愛知県がんセンター)らは、日本におけるパルボシクリブによる治療状況を明らかにするために、リアルワールドデータを用いた後ろ向き観察研究を行い、第59回日本癌治療学会学術集会(10月21~23日)で報告した。

 2017年12月から2021年2月までにMedical Data Vision(MDV)データベースでパルボシクリブが処方された患者の請求データが解析に用いられた。MDVデータベースには439病院(2021年4月時点)が参加しており、DPC病院全体の25%がカバーされている。

 治療成功期間(TTF)中央値は、カプランマイヤー法を使用して推定され、併用内分泌療法についてはパルボシクリブ開始から30日以内を開始日とする乳がん治療として定義された。

 主な結果は以下のとおり。

・MDVデータベースに含まれる乳がんの診断を受けた約44万例のうち、パルボシクリブが投与された1,074例が解析対象とされた。追跡期間中央値は15.9ヵ月。
・患者背景は年齢中央値が64(53~72)歳。女性が99.3%、閉経後が86.4%を占めた。チャールソン併存疾患指数の中央値は8、化学療法施行率は18.2%、術後内分泌療法施行率は52.0%で、45.7%は内分泌療法中あるいは内分泌療法開始1年以内の再発であった。
・パルボシクリブが使用された治療ラインについて、半年ごとに期間を区切って変化をみると、1次治療は22.7%(2017年12月~2018年6月)から42.6%(2020年7月~12月)に増加し、4次治療以降は29.3%(2017年12月~2018年6月)から10.2%(2020年7月~12月)に減少していた。
・併用内分泌療法はフルベストラントとレトロゾールが主に使用され、フルベストラントはLate lineになるほどその使用割合が増加していた。
1次治療(357例):フルベストラント(57.4%)、レトロゾール(34.5%)、エキセメスタン(2.2%)、アナストロゾール(1.7%)、タモキシフェン(0.6%)、トレミフェン(0.3%)、その他(3.4%)
2次治療(336例):フルベストラント(62.8%)、レトロゾール(23.5%)、エキセメスタン(5.1%)、アナストロゾール(3.9%)、タモキシフェン(0.3%)、トレミフェン(0.3%)、その他(4.2%)
3次治療(150例):フルベストラント(66.0%)、レトロゾール(20.0%)、エキセメスタン(6.0%)、アナストロゾール(4.0%)、タモキシフェン(1.3%)、その他(2.7%)
・TTF中央値は1次治療が12.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.7~14.2)、2次治療が9.8ヵ月(95%CI:8.6~11.9)、3次治療が8.4ヵ月(95%CI:6.8~10.6)だった。
・初回投与量は125mgが82.0%を占め、うち63.5%で1回以上の減量が行われ、32.7%で75 mgまで減量が行われていた。
・パルボシクリブ投与後の次治療については、20~30%で内分泌療法+CDK4/6阻害薬が使用されており、化学療法はLate lineになるほどその使用割合が増加していた。
1次治療でのPAL投与後(194例):内分泌療法+CDK4/6阻害薬(29.4%)、化学療法単独(23.7%)、内分泌療法単独(17.0%)、内分泌療法+mTOR阻害薬(12.9%)、化学療法+ベバシズマブ(12.4%)、化学療法+内分泌療法(2.1%)、その他(2.6%)
2次治療でのPAL投与後(213例):内分泌療法+CDK4/6阻害薬(30.0%)、化学療法単独(29.1%)、内分泌療法+mTOR阻害薬(13.6%)、化学療法+ベバシズマブ(12.7%)、内分泌療法単独(8.9%)、化学療法+内分泌療法(3.8%)、その他(1.9%)
3次治療でのPAL投与後(93例):化学療法単独(35.5%)、内分泌療法+CDK4/6阻害薬(22.6%)、内分泌療法+mTOR阻害薬(15.1%)、内分泌療法単独(12.9%)、化学療法+ベバシズマブ(11.8%)、化学療法+内分泌療法(1.1%)、その他(1.1%)

 澤木氏は、PALOMA-2試験におけるPFS中央値(27.6ヵ月)1)と比較すると本結果におけるTTFは短いが、米国のリアルワールドデータと大きな差はみられないと考察。また、パルボシクリブによる治療後、一定の割合でCDK4/6阻害薬が使用されている点についても、米国でのリアルワールド研究2)において同様の傾向が報告されているとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)Rugo HS, et al. Breast Cancer Res Treat. 2019;174:719-729.

2)DeMichele A,et al. Breast Cancer Res. 2021 Mar 24;23:37.

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進むがん遺伝子パネル検査普及と見える課題/日本癌治療学会

提供元:CareNet.com

 1万8,329例中607例、8.1%。C-CATに登録されたわが国のがん遺伝子パネル累積検査数と、そこから治療に結び付いた症例数および割合である。

 2021年10月21~23日に開催された第59回日本癌治療学会学術集会のワークショップにおいて、わが国のがん遺伝子パネル検査の現状が発表された。大幅な検査の増加とともに、いくつかの課題が示されている。

検査数も治療に結びついた症例割合も増加

 東北大学の小峰 啓吾氏は、がんゲノム医療中核拠点病院における、がん遺伝子パネル検査の経時的な解析結果を発表した。

 調査は、がんゲノム医療中核拠点病でのがん遺伝子パネル検査を対象に行われ、2019年6月~2020年1月の第1期と、2020年2月~2021年1月の第2期に分けて分析された。

 がん遺伝子パネル検査数は、第1期754例、第2期では2,295例、と第2期で大きく増加した。また、検査から治療に結び付いた症例の割合も、第1期3.7%、第2期7.7%、と第2期で有意に増加した(p<0.001)。

 治療に結び付いた症例の治療内訳では治験がもっとも多く、割合は第1期で2.1%、第2期では4.7%と増加していた。また、治験登録数は治療に結びつく症例数と相関していた(R=0.72)。

 遺伝カウンセリングが推奨された割合についても、第1期2.4%、第2期では11.1%、と第2期で増加した(p<0.001)。

エキスパートパネルの課題はエビデンスレベルの低いケース

 東京大学の鹿毛 秀宣氏は、エキスパートパネルによる推奨治療の一致率に関する前向き調査の結果を発表した。

 調査では、模擬症例50例に対する、がんゲノム医療中核拠点病院から選出された中央委員会の推奨治療と、同病院のエキスパートパネルの推奨治療との一致率が比較された。模擬症例は中央委員会が作成したもの。

 結果、中央委員会とエキスパートパネルの推奨治療の一致率は全体で62%だった。施設ごとの一致率は48~86%で、施設差は大きかった。

 がん種ごとの一致率を見ると、一致率の高いがんは大腸がんの100%、低いがんは子宮頸がんの11%であった。

 遺伝子異常との一致率の関係を見ると、一致率の高いものはROS1融合遺伝子の100%、低いものはTP53の16%であった。

 エビデンスレベルの高さと一致率の見解を見ると、エビデンスレベルが高いほど一致率が高かった(A/R対C/D/E、オッズ比4.4)。上記の子宮頸がん、TP53遺伝子異常もエビデンスレベルは低い。

急がれる課題解決と下支えする医療者への対策

 検査数および治療到達率は経時的に向上している。わが国のがん患者数を考えると、今後さらに拡大していくと予想される。

 検査数の増加以上に重要なのは、治療に結びつく症例を増やすことである。それには、治験の情報共有と登録増加を促す必要がある。また、エビデンスレベルの低いケースに関する情報共有などエキスパートパネルのレベル均てん化も重要だ。

 ただ、こういった順調な経過のもとには、医療者の尽力があるようだ。今後のがん遺伝子パネル検査の増加を考えると、その点も十分な対策を打っていく必要があるだろう。

(ケアネット 細田 雅之)


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乳がん術後の放射線寡分割照射と通常分割照射の急性毒性を比較(HypoG-01)/ESMO2021

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 乳がん術後の放射線療法の照射回数と期間が照射後の安全性に与える影響を検討したHypoG-01試験の結果がフランス・Institut Gustave RoussyのSofia Rivera氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。

 同試験はフランス国内で実施された多施設共同の非劣性検証第III相試験である。

・対象:領域リンパ節への放射線照射の対象となる手術後乳がん(リンパ節転移の有無と腫瘍径は問わず、遠隔転移ありは除外)
・試験群(寡分割照射法):総線量40Gyを15回に分割し3週間で放射線照射終了(寡分割群:633例)
・対照群(通常分割照射法):総線量50Gyを25回に分割し5週間で放射線照射終了(通常群:631例)
 両群とも主治医判断でブースト照射の追加は可能
・評価項目:腕のリンパ浮腫などを3年間追跡

 主な結果は以下のとおり。

・年齢中央値は58歳、T1が33%でT2が47%(腫瘍径中央値は27mm)であった。
・乳房切除術は47%、乳房部分切除術は53%、腋窩リンパ節郭清は82%に施行されていた。また、強度変調放射線照射(IMRT)は52%、リアルタイム 3D照射(RT3D)は48%であった。
・放射線照射後1ヵ月間の有害事象は、ほとんどがGrade1/2であった。
・主な事象の発現率は、皮膚炎が寡分割群80%対通常群89%、全身倦怠感は49%対54%、疼痛は42%対47%、嚥下障害は20%対23%、色素沈着は12%対13%、呼吸器障害は16%対22%などで、両群間に大きな差は見られなかった。
・Grade2以上の皮膚炎はBMI25以下の症例に比べ、BMI30を超える症例で多く見られ、寡分割群では29%、通常群48%であった。
・合計18例で重篤な有害事象が発現したが(寡分割群10例、通常群8例)、そのうち治療と関連ありと判断されたのは各群1例ずつであった。

 演者は「15回/3週間での寡分割照射の安全性に関する懸念は見いだされなかった。本試験の長期的な追跡調査も進行中であり、さらにほかの臨床試験データとのメタ解析も計画されている」と締めくくった。

(ケアネット)


【参考文献・参考サイトはこちら】

HypoG-01試験(clinicaltrials.gov)

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