早期乳がんアジュバントでCDK4/6阻害薬は有用か/ESMO Open

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 HR+/HER2-の進行乳がんにおいてはCDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用は標準治療だが、アジュバントにおけるCDK4/6阻害薬の評価は一定していない。イタリア・Hunimed UniversityのElisa Agostinetto氏らは、系統的レビューとメタ解析により、HR+/HER2-早期乳がんのアジュバントにおける内分泌療法へのCDK4/6阻害薬追加による生存および安全性アウトカムへの影響を評価した。その結果、無浸潤疾患生存(IDFS)におけるベネフィットの傾向と、毒性(全Grade)および投与中止リスクの増加がみられた。ESMO Open誌2021年3月17日号に掲載。

 本研究では、2020年12月15日までPubMed、Cochrane、EMBASEデータベースおよび主要な学会抄録集の系統的レビューを行った。HR+/HER2-の早期乳がんのアジュバントでCDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用および内分泌療法単独で治療されたすべての無作為化比較試験について、ランダム効果モデルを用いて生存および安全性アウトカムの各統合ハザード比(HR)またはオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・3件の研究から入手可能なデータ(1万2,647例)において、内分泌療法へのCDK4/6阻害薬の追加は、IDFSでのベネフィットを有する傾向がみられた(HR:0.85、95%CI:0.71~1.01、p=0.071)。
・遠隔無再発生存の有意な改善は見られなかった(HR:0.83、95%CI:0.58~1.19、p=0.311)。
・内分泌療法へのCDK4/6阻害薬の追加により、全Gradeの毒性(OR:9.36、95%CI:3.46~25.33、p<0.001)および早期投与中止リスク(OR:22.11、95%CI:9.45~51.69、p<0.001)が大きく増加した。

 著者らは、「アジュバントでのCDK4/6阻害薬の役割については議論の余地があり、臨床診療の直接的な変化を支持する前にこれらの無作為化比較試験の長期のフォローアップが必要」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Agostinetto E, et al. ESMO Open. 2021;6:100091.

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HER2陽性早期乳がんへの術後トラスツズマブ、半年 vs.1年~メタ解析

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 HER2陽性早期乳がん患者における術後トラスツズマブ投与が生存転帰を改善することが示されているが、標準とされる12ヵ月の投与と比較し6ヵ月の投与が非劣性であるかについては議論がある。中国・華中科技大学同済医学院のBi-Cheng Wang氏らは術後トラスツズマブの投与期間についてメタ解析を実施。Medicine誌オンライン版2021年3月12日号にその結果が掲載された。

 2020年1月14日まで、PubMed、Cochrane Library、Web of Science、およびEMBASEで関連研究が検索された。無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)について、プールされたハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)のメタ解析が行われた。

 主要評価項目はDFS(非劣性マージン:1.2)、副次評価項目はOS(同:1.43)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・3つの無作為化臨床研究が選択基準を満たし、6ヵ月投与群3,974例、12ヵ月投与群3,976例が対象とされた。
・DFSのHRは1.18(95%CI:0.97~1.44、p=0.09)で、95%CIの上限は非劣性マージン(1.25)を上回った。
・OSのHRは1.14(95%CI:0.98~1.32、p=0.08)で、95%CIの上限は非劣性マージン(1.43)を下回った。

 著者らは、今回の分析ではDFSの改善において6ヵ月投与の非劣性を示すことができなかったとし、OSの改善については非劣性が示されたが、乳がん患者では疾患の進行または再発がみられた場合に追加の全身療法を受ける必要があることを考慮すると、12ヵ月投与を標準的治療として提案するとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Wang BC, et al. Medicine (Baltimore). 2021 Mar 12;100:e24995. [Epub ahead of print]

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HER2陽性早期乳がんへの術後トラスツズマブ、半年vs.1年~メタ解析

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 HER2陽性早期乳がん患者における術後トラスツズマブ投与が生存転帰を改善することが示されているが、標準とされる12ヵ月の投与と比較し6ヵ月の投与が非劣性であるかについては議論がある。中国・華中科技大学同済医学院のBi-Cheng Wang氏らは術後トラスツズマブの投与期間についてメタ解析を実施。Medicine誌オンライン版2021年3月12日号にその結果が掲載された。

 2020年1月14日まで、PubMed、Cochrane Library、Web of Science、およびEMBASEで関連研究が検索された。無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)について、プールされたハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)のメタ解析が行われた。

 主要評価項目はDFS(非劣性マージン:1.2)、副次評価項目はOS(同:1.43)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・3つの無作為化臨床研究が選択基準を満たし、6ヵ月投与群3,974例、12ヵ月投与群3,976例が対象とされた。
・DFSのHRは1.18(95%CI:0.97~1.44、p=0.09)で、95%CIの上限は非劣性マージン(1.25)を上回った。
・OSのHRは1.14(95%CI:0.98~1.32、p=0.08)で、95%CIの上限は非劣性マージン(1.43)を下回った。

 著者らは、今回の分析ではDFSの改善において6ヵ月投与の非劣性を示すことができなかったとし、OSの改善については非劣性が示されたが、乳がん患者では疾患の進行または再発がみられた場合に追加の全身療法を受ける必要があることを考慮すると、12ヵ月投与を標準的治療として提案するとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Wang BC, et al. Medicine (Baltimore). 2021 Mar 12;100:e24995. [Epub ahead of print]

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キノコ摂取量とがんリスク~メタ解析

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 キノコは生理活性化合物が豊富で、健康上のメリットについての研究が増えている。そこで、米国・ペンシルベニア州立大学医学部のDjibril M. Ba氏らは、系統的レビューおよびメタ解析により、キノコ摂取量と各種がん発生リスクとの関連を評価した。その結果、がん全体、とくに乳がんにおいて、キノコ摂取量が多いほどがんリスクが低いことが示された。Advances in Nutrition誌オンライン2021年3月16日号に掲載。

 著者らは、MEDLINE、Web of Science、Cochrane Libraryを検索し、1966年1月1日~2020年10月31日に発表されたキノコ摂取とがんに関する研究を特定した。2カテゴリー以上のキノコ摂取量に対するがんリスクについて、リスク比(RR)/ハザード比(HR)/オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)が示されている17件の観察研究を適格とし、ランダム効果メタ解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・キノコ摂取量が多いほどがん全体のリスクが低かった(摂取量最大グループの最少グループに対するプールRR:0.66、95%CI:0.55~0.78、17研究)。
・キノコ消費量が多いほど乳がん(同RR:0.65、95%CI:0.52~0.81、10研究)および乳がん以外(同RR:0.80、95%CI:0.66~0.97、13研究)のリスクも低かった。
・がんの部位別にみると、キノコ摂取量との有意な関連がみられたのは乳がんのみだったが、これは他のがんにおける研究が少ないことが原因である可能性がある。
・キノコ摂取量とがん全体のリスクの間に有意な非線形の用量反応関係がみられた(非線形性のp=0.001、7研究)。

 著者らは本研究の限界の1つとして、ケースコントロールデザインでの想起バイアスと選択バイアスの可能性を挙げている。このメタ解析における17研究のうち11研究がケースコントロール研究で、各研究の最終モデルで使用された調整因子の違いが大きかったとしている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Ba DM, et.al. Adv Nutr. 2021 Mar 16. [Epub ahead of print]

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統合失調症患者の乳がん、術後合併症が多い~日本の全国データ

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 統合失調症患者は一般集団より乳がん発症リスクが高いが、乳がんの術後合併症を調査した研究はほとんどない。今回、東京大学の小西 孝明氏らの研究から、統合失調症患者では精神疾患のない患者より乳がんの術後合併症発生率や入院の総費用が高いことが示唆された。British Journal of Surgery誌2021年3月号に掲載。

 本研究は、全国的な入院患者データベースから、2010年7月~2017年3月にStage 0~III乳がんで手術を受けた患者を特定し、多変量解析を用いて統合失調症患者と精神疾患のない患者について術後合併症と入院費用を比較した。感度分析は、入院時の年齢・施設・年度で1:4にマッチングさせたペアコホート分析、抗精神病薬を服用していなかった統合失調症患者を除外した分析、意思に反して入院した統合失調症患者を除外した分析の3つを実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・統合失調症患者3,660例、精神疾患のない患者35万860例が対象となった。
・統合失調症患者のほうが術後合併症発生率が高く(オッズ比:1.37、95%CI:1.21〜1.55)、合併症別のオッズ比は術後出血多量が1.34(95%CI:1.05〜1.71)、手術部位感染が1.22(95%CI:1.04〜1.43)、敗血症が1.20(95%CI:1.03~1.41)だった。
・統合失調症患者での入院の総費用は、精神疾患のない患者よりも高かった(多変量解析で精神疾患のない患者を基準にした係数:743ユーロ、95%信頼区間:680〜806)。
・すべての感度分析において主要分析と同様の結果を示した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Konishi T, et al. Br J Surg. 2021;108:168-173.

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リスク低減卵管卵巣摘出術で乳がんリスクは減少するか/JAMA Oncol

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 これまで不明であったリスク低減卵管卵巣摘出術(risk reducing salpingo-oophorectomy:RRSO)と乳がんリスクとの関連が明らかにされた。カナダ・ウェスタン大学のYun-Hee Choi氏らはケースシリーズ研究を行い、BRCA1またはBRCA2病的バリアント保持女性に対するRRSOは、術後5年間の乳がんリスク低下、ならびにBRCA1病的バリアント保持者での長期的な累積乳がんリスクと関連することを示した。著者は、「RRSOの主たる適応症は卵巣がんの予防であるが、RRSOの実施とそのタイミングに関する臨床的な意思決定を導くために、乳がんリスクとの関連を評価することも重要である」とまとめている。BRCA1/2病的バリアントを有する女性は、乳がんおよび卵巣がんの発症リスクが高いことが知られる。通常は集中的な監視を行いRRSOも考慮される。RRSOは、卵巣がんのリスクを低減することが知られているが、乳がんリスクとの関連は不明であった。JAMA Oncology誌オンライン版2021年2月25日号掲載の報告。

 研究グループは、1996~2000年に「Breast Cancer Family Registry」に登録されたBRCA1/2の病的バリアント保持家族について分析した。

 RRSOと乳がんリスクとの時間的な関連を評価し、他の潜在的なバイアスを説明するため特別に設計された生存分析アプローチを用いた。

 主要評価項目は、初回原発性乳がん発症までの期間で、2019年8月~2020年11月に解析が行われた。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象は、BRCA1病的バリアント保持498家族(2,650例、平均年齢55.8歳、白人発端者87.8%)、BRCA2病的バリアント保持378家族(1,925例、平均年齢57.0歳、白人発端者79.1%)の合計876家族。
・RRSOは、術後5年以内のBRCA1/2病的バリアント保持者の乳がんリスク低下と関連していた(ハザード比[HR]:0.28、95%信頼区間[CI]:0.10~0.63/0.19、95%CI:0.06~0.71)。一方で、術後5年以降は、低下との関連が減弱した(HR:0.64、95%CI:0.38~0.97/0.99、95%CI:0.84~1.00)。
・40歳でRRSOを受けたBRCA1/2病的バリアント保持者の場合、乳がんの特異的累積リスクは70歳まででそれぞれ49.7%/52.7%であったのに対し、RRSOを受けていない患者では61.0%/54.0%であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Choi YH, et al. JAMA Oncol. 2021 Feb 25. [Epub ahead of print]

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新専門医制度での「腫瘍内科専門医」、何が変わる?/日本臨床腫瘍学会

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 日本臨床腫瘍学会の専門医制度は、新専門医制度の中で主に内科を基本領域とする「サブスペシャルティ領域専門医」として日本専門医機構より認定された。名称は「腫瘍内科専門医」とされ、今秋・遅くとも来春からの研修開始を目指して最終調整が進められている。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)ではこの新専門医制度についてシンポジウムが開催された。本稿では、その概要について解説した田村 研治氏(島根大学医学部附属病院先端がん治療センター)の講演内容を紹介する。

「がん薬物療法専門医」から「腫瘍内科専門医」へ、新制度をめぐる紆余曲折

 2018年、日本専門医機構は「がん薬物療法専門医」を新専門医制度における「サブスペシャリティ領域専門医」として承認した。しかし2019年に厚生労働省・医道審議会医師分科会・医師研修部会が発足し、同新制度の問題点を指摘。サブスペシャリティ領域の承認基準や整備指針に不十分な点があるのではないかということで、見直しが図られた。

 その結果、最終的に「がん薬物療法専門医」は「腫瘍内科専門医」に名称が変更され、内科のサブスペシャリティ領域の1つとして承認された。

腫瘍内科と呼吸器内科で異なる、サブスぺ領域の類型とは?

 サブスペシャリティ領域は、研修実施の時期や考え方に応じて以下の3類型が設けられている。
1) 連動研修を行い得る領域:内科(ほか基本領域)の3年間の研修中に、いくつかの症例について連動して研修可能(消化器内科、呼吸器内科、血液内科など)
2) 連動研修を行わない領域:内科(ほか基本領域)の3年間の研修後に開始(腫瘍内科、アレルギー、感染症など)
3) 少なくとも1つのサブスペシャリティ領域を修得した後に研修を行う領域:(消化器内科→肝臓内科、消化器内視鏡など)

 このうち、腫瘍内科は2)連動研修を行わない領域に位置づけられ、3年間の基本領域研修中にがんの症例を経験したとしても、研修経験は共有できない。また、複数のサブスペシャリティ領域の同時登録はできないため、例えば連動研修として呼吸器内科の研修を開始していた場合に、同時期に腫瘍内科での研修を開始することはできない。

 しかし、サブスペシャリティ領域どうしの症例のオーバーラップは可能であり、田村氏は「例えば呼吸器内科領域で肺がんの症例を診ていて、2つめのサブスぺ領域として腫瘍内科を選択した場合には、双方の学会の同意のもと、腫瘍内科での症例としても認められることとなっている」と説明した。また、新専門医制度は5年をめどに制度が見直されることとされており、「将来的には、腫瘍内科についても連動研修が可能となるよう目指して体制の整備含め動いていきたい」と展望を示した。

新制度では主に内科を基本領域に

 旧専門医制度での「がん薬物療法専門医」取得にあたっては、内科のほか外科、産婦人科、泌尿器科など14学会の専門医資格を基本資格としている。しかし、新専門医制度では、「腫瘍内科専門医」は日本内科学会を基本領域とする。この背景には、新制度では多くのサブスペシャリティ領域専門医の取得が実質的に難しいこと(原則として2領域)、「がん薬物療法専門医」取得者の基本領域は86%を日本内科学会が占めることがある。ただし、日本外科学会を基本領域としている医師も10%ほどおり、田村氏は「とくに乳がん領域で多く、今後日本外科学会については基本領域としての追加を検討していきたい」と話した。

 なお、この変更は旧専門医制度「がん薬物療法専門医」取得者の更新には影響せず、例えば皮膚科を基本領域として「がん薬物療法専門医」を取得している医師の資格は失われない。

旧→新制度への今後の移行スケジュール

 新専門医制度における内科専門研修1期生は、2018年から3年間の基本領域プログラムを受けており、本来であれば、2021年4月から腫瘍内科等のサブスペシャリティ領域の研修がスタート予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症等の影響で遅れが出ており、基本領域の試験は2021年7月4日に予定されている。「腫瘍内科専門医のモデルカリキュラムは9月頃にはホームページ上で公開予定となっており、J-OSLERの開始も遅くとも来春までには整えたい」と田村氏は説明した。なお、2021年4月からの症例については、さかのぼって実績に含めることができる。

 今後数年は旧制度と新制度が並行する形となるが、2024年度頃におそらく最初の腫瘍内科専門医が誕生し、その後最終的には、旧制度は終了する予定との見通しを同氏は示した。参加者からは、「外科などの内科以外を基本領域とするがん薬物療法専門医は腫瘍内科専門医へ移行可能か?」という質問が寄せられた。同氏は、旧制度のがん薬物療法専門医は順次更新が行われるので、新専門医制度による影響は受けないことを説明。名称については今後更新の際に「がん薬物療法専門医」→「腫瘍内科専門医」と変更される可能性はあるが、資格としては変わらず更新が可能とした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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飲酒と乳がんリスクの関連~日本人16万人の解析

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 欧米の研究から、飲酒が乳がんリスクを上昇させることが報告されている。しかし、日本人女性は欧米人女性より飲酒習慣が少なく、またアセトアルデヒドの代謝酵素の働きが弱い人が多いなど、飲酒関連の背景が欧米とは異なる。これまで日本人を対象とした大規模な研究は実施されていなかったが、今回、愛知県がんセンターや国立がん研究センターなどが共同で日本の8つの大規模コホート研究から約16 万人以上を統合したプール解析を行い、乳がんリスクと飲酒との関連を検討した。その結果、閉経前女性では飲酒により乳がん罹患リスクが上昇したことを愛知県がんセンターの岩瀬 まどか氏らが報告した。International Journal of Cancer誌オンライン版2021年1月26日号に掲載。

 本研究には、国内の大規模コホート研究である多目的コホート研究(JPHC-I, JPHC-II)、JACC研究、大崎国保コホート研究、宮城県コホート研究、三府県宮城コホート研究、三府県愛知コホート研究、放影研寿命研究の8コホート研究が参加。それぞれのコホート研究で使用している飲酒習慣のアンケート調査結果から、飲酒習慣を頻度と量に分けて検討し、頻度は「現在非飲酒」「機会飲酒(週1日以下)」「ときどき(週1日以上4日以下)」「ほとんど毎日(週5日以上)」の4つ、量は1日飲酒量で「0g」「0~11.5g」「11.5~23g」「23g以上」の 4つのカテゴリーに分類した。年齢、地域、閉経状況、喫煙、BMI、初経年齢、出産数、女性ホルモン薬の使用、余暇の運動を調整後、非飲酒に対するその他の飲酒カテゴリーの乳がん罹患リスクを算出し、プール解析を行った。また乳がんの罹患は、閉経状態に基づき閉経前乳がんと閉経後乳がんに分け、それぞれに対する飲酒の影響を検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・計15万8,164人の女性を平均14年追跡し、2,208例が新規に乳がんと診断された。
・調査時の閉経状態に基づく閉経前乳がんにおいて、飲酒頻度別では非飲酒者に対する最も頻度の高い飲酒者のハザード比(HR)は1.37(1.04~1.81)、飲酒量別では1日0gの群に対する23g以上の群のHRは1.74(1.25~2.43)であった。
・診断時の閉経状態に基づく閉経前乳がんにおいて、飲酒量別で1日0gの群に対する23g以上の群のHRは1.89(1.04~3.43)であった。
・一方、調査時もしくは診断時での閉経状態に基づく閉経後乳がんでは、飲酒頻度、飲酒量ともに乳がんリスクとの有意な関連は認められなかった。

 これらの結果から、日本人においても欧米での報告と同様に、閉経前乳がんでは飲酒が乳がんの罹患リスクを上昇させることが明らかとなった。一方、閉経後乳がんでは日本人では有意な関連が認められず、海外の結果と異なり閉経状態によって乖離がみられた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Iwase M, et al. Int J Cancer. 2021 Jan 26. [Epub ahead of print]

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原発不明がん、NGSから原発を推定した治療の成果は?(NGSCUP)/日本臨床腫瘍学会

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 原発不明がん(CUP)は全悪性腫瘍の2〜5%を占める。生命予後は不良、治療法は未確立であり、経験的にプラチナ製剤とタキサンの併用が行われている。最近の腫瘍ゲノム解析の進歩によりCUP個別患者の腫瘍の遺伝子発現/異常パターンから原発腫瘍を推定し、特異的治療を行う試みがある。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)では、未治療のCUPに対し次世代シークエンサー(NGS)による遺伝子プロファイリングから推定された原発疾患に対する標準的治療を行う多施設共同第II相試験の結果を千葉大学の滝口 裕一氏が発表した。

 対象は未治療の転移を有するCUP患者110例(PS 0~2)。対象患者はNGS検査ののち、推定された原発腫瘍に対する標準治療を受けた。主要評価項目は1年全生存(OS)割合。副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効率、有害事象などである。事前に設定された1年全生存(OS)割合の95%信頼区間(CI)の下限は40%であった。

 主な結果は以下のとおり。

・97例が推定された原発腫瘍に対する治療を受けた。
・NGSにより推定された原発腫瘍としては肺がん22%、肝臓がん16%、腎がん16%、大腸がん12%など、組織型は腺がん52.6%、低分化腺がん16.5%、未分化がん15.5%、扁平上皮がん9.3%であった。
・1年OS割合は53.1%(95%CI:42.6~62.5)で、事前に設定された閾値を上回り、主要評価項目を達成した。
・OS中央値は13.7ヵ月、PFS中央値は5.2ヵ月であった。
・発見された遺伝子異常は、TP5346.4%、KRAS19.6%、CDKN2A18.6%であった。
・事前に定義した有効な薬物療法がある腫瘍(大腸がん、乳がん、卵巣がん、腎がん、前立腺がん、膀胱がん、非小細胞肺がん、胚細胞腫瘍、リンパ腫)と推定された患者はそれ以外と比べ、OS15.7ヵ月対11.0ヵ月(HR:0.634、p=0.078)、PFS5.5ヵ月対2.8ヵ月(HR:0.578、p=0.019)と、良好な生存期間を示す傾向が認められた。

(ケアネット 細田 雅之)


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遺伝子パネル検査、がん種別に見た遺伝子異常の特徴は?/日本臨床腫瘍学会

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 国立がんセンターが中心となって展開する産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業、SCRUM-Japan。2019年7月に開始した第三期プロジェクトでは、それまで消化器がんを対象としていたGI-SCREEN-Japanプロジェクトが泌尿器がん、乳がん等にも対象を拡大し、新たに血液を用いた遺伝子解析検査(リキッドバイオプシー)も取り入れた、MONSTAR-SCREENとして再始動している。参加するのは全国31施設、参加者は消化器がん、皮膚がん、乳がん、産婦人科がん、頭頸部がん、泌尿器がんなどの切除不能な固形がん患者で、腫瘍組織によるゲノム解析を受けたうえで、リキッドバイオプシー検査と腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の検査、解析を受ける。

 2月に行われた第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)Presidential Session3では、MONSTAR-SCREENの消化器・泌尿器の各サブグループが、がん種別の遺伝子変異の特徴をはじめとした、中間解析の結果を発表した。

 はじめに、舛石 俊樹氏(愛知県がんセンター)が、MONSTAR SCREENの消化器がんサブグループの中間解析結果を発表した。

【消化器がんサブグループ中間解析】

・血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が検出された470例のうち、消化器がんは133例、非消化器がんは337例だった。
・消化器がんは非消化器がんに比べ、ctDNAレベル中央値が有意に高値であった(11.8 vs0.6%)。消化器がんの中では、大腸がんのctDNAレベルが最も高値であった。
・消化器がんは非消化器がんに比べ、発がんや腫瘍増殖に関連するシグナル伝達経路の中で、p53、RTK、MAPK、Wnt経路における遺伝子異常が有意に高頻度であり、とくに多く見られた遺伝子異常はAPCTP53変異だった。
・腫瘍組織とリキッドバイオプシーにおける遺伝子異常の検出一致率は69%(81/132)であった。

 続けて、野々村 祝夫氏(大阪大学)が、泌尿器がんサブグループの中間解析結果を発表した。

【泌尿器がんサブグループ中間解析】

・ctDNAが検出された470例のうち、泌尿器がんは70例、非泌尿器がんは400例だった。
・泌尿器がんは非泌尿器がんと比べ、ctDNAレベルに有意差を認めなかったものの、腎細胞がんは全がん種において2番めに低かった(中央値:0.13%)。
・腎がん、前立腺がん、尿路上皮がんにおける血中腫瘍遺伝子変異量(bTMB)中央値はそれぞれ0.44/Mb、0.88/Mb、4.39/Mbであり、尿路上皮がんは全がん種において最も高かった。
・泌尿器がんは非泌尿器がんに比べ、PI3K、MAPK、Wnt経路における遺伝子異常が有意に低頻度だった。
・腫瘍組織とリキッドバイオプシーにおける遺伝子異常の検出一致率は67%(10/15)であった。

 両氏は、中間解析の結果から得られた示唆を活かしながら引き続き症例を蓄積し、がん種別に奏効率に関わる検討などを行い、国内外に広く発信するとしている。

 JSMO Virtual2021は3月1~31日までオンデマンド配信が行われる(要参加登録)。
第18回日本臨床腫瘍学会学術集会

(ケアネット 杉崎 真名)


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