2年ごとの乳房視触診、50歳以上の乳がん死3割減/BMJ

提供元:CareNet.com

 2年ごとの医療従事者による乳房の視触診(clinical breast examination:CBE)は、CBEを行わない場合と比べ、乳がん診断時の病期を軽減し(downstaging)、50歳以上の女性の乳がんによる死亡率を約3割抑制することが、インド・Homi Bhabha National InstituteのIndraneel Mittra氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年2月24日号で報告された。マンモグラフィによる乳がんスクリーニングは、50歳以上の女性では死亡率を抑制するが、50歳未満の女性における有効性には疑問があるとされる。また、乳がん自己検診(breast self-examination)の、乳がんの早期検出法としての有効性は証明されておらず、CBEが乳がんによる死亡を低減するかについても明らかではないという。

ムンバイ市の15万人のクラスター無作為化対照比較試験

 研究グループは、CBEによるスクリーニングが、CBEを行わない場合と比較して、乳がん診断時の病期を軽減させるかを検証する目的で、プロスペクティブなクラスター無作為化対照比較試験を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。

 インド・ムンバイ市の地理的な境界で定義された20のクラスターを、CBEによるスクリーニングを行う群またはCBEを行わない対照群に、10クラスターずつ無作為に割り付けた。登録は1998年5月に開始され、2019年3月、解析のためにデータベースがロックされた。乳がん歴のない35~64歳の女性15万1,538人が試験に参加した。

 スクリーニング群(7万5,360人)は、2年ごとに、訓練を受けた女性のプライマリケア医療従事者によるCBEを4回と、がん啓発情報の提供を受け、その後は2年ごとの自宅訪問による積極的サーベイランス(active surveillance)を5回受けた。対照群(7万6,178人)は、がん啓発情報の提供を1回受け、その後は2年ごとに積極的サーベイランスを8回受けた。

 主要アウトカムは、診断時における乳がんの病期の軽減および乳がん死の低減とした。

50歳未満の乳がん死、全死因死亡には差がない

 登録時の平均年齢は、スクリーニング群が44.84(SD 7.90)歳、対照群は44.92(8.00)歳であった。試験開始から20年(フォローアップ期間中央値18年)の時点で、スクリーニング群の640人、対照群の655人が乳がんと診断され、それぞれ213人および251人が乳がんによって死亡した。

 乳がん検出時の年齢は、スクリーニング群が対照群よりも若かった(55.18[SD 9.10]歳vs.56.50[9.10]歳、p=0.01)。また、乳がん診断時の病期は、スクリーニング群でStageIII/IVの割合が有意に低かった(37%[220人]vs.47%[271人]、p=0.001)。この病期の軽減は、50歳未満(診断時StageIII/IVの割合:37%[161人]vs.47%[183人]、p=0.005)および50歳以上(35%[59人]vs.46%[88人]、p=0.05)のいずれにおいても認められた。

 全体(35~64歳)では、スクリーニング群は対照群に比べ、乳がん死の割合が15%低下したが、有意な差は認められなかった(10万人年当たり20.82人[95%信頼区間[CI]:18.25~23.97]vs.24.62人[21.71~28.04]、率比[RR]:0.85[95%CI:0.71~1.01]、p=0.07)。

 一方、事後的サブセット解析では、50歳以上の女性における乳がん死は、スクリーニング群で有意に約30%低下した(10万人年当たり24.62人[95%CI:20.62~29.76]vs.34.68人[27.54~44.37]、RR:0.71[95%CI:0.54~0.94]、p=0.02)。これに対し、50歳未満の女性では有意な差はみられなかった(19.53人[17.24~22.29]vs.21.03人[18.97~23.44]、0.93[0.79~1.09]、p=0.37)。

 また、全死因死亡は、スクリーニング群で5%低下したが、有意差はなかった(RR:0.95[95%CI:0.81~1.10]、p=0.49)。

 著者は、「低・中所得国では、乳がんのスクリーニング法としてCBEを考慮すべきと考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Mittra I, et al. BMJ. 2021;372:n256.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

進行乳がんのエリブリン治療、リンパ球数と病勢進行の関連は(EMBRACE)/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 第III相EMBRACE試験において、非タキサン系の微小管阻害薬エリブリンは進行乳がんの生存期間(OS)を有意に延長した。同試験のPost-Hoc解析では、ベースライン時のリンパ球絶対数(ALC)がエリブリン治療によるOS延長の独立した予測因子であることが示唆されている。今回、エリブリン治療によるOS延長におけるALCと病勢進行(PD)の関係が調べられた。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)において、静岡がんセンターの渡邉 純一郎氏がその結果を発表した。

 本Post-Hoc解析では、EMBRACE試験に登録された被験者が、PDの状態に基づいて3つのサブグループに分類された。
グループ1:新たな転移によるPD
グループ2:既存の病変の進行によるPD
グループ3:データカットオフまでPDなし
 ベースラインALCのカットオフ値は1,500/μLに設定。OS中央値、ハザード比(HR)、およびP値は、それぞれカプランマイヤー法、層別Cox比例ハザードモデル、および層別ログランク検定を用いて推定された。

 主な結果は以下のとおり。

・EMBRACE試験には、評価可能なベースラインALCの記録を有する症例がエリブリン群500例、主治医選択薬(TPC)群251例含まれていた。
・ALC≧1,500/μLのエリブリン群の患者では、ALC<1,500/μLと比較して新たな転移を有する患者が少ない傾向がみられたが(25% vs.29%)、有意な差はみられなかった。
・グループ1において、ベースラインALCが≧1,500/μLの場合、エリブリン群ではTPC群と比較してOSの有意な延長が示された(HR:0.485、95%信頼区間[CI]:0.271~0.869、p=0.013)。一方、ベースラインALC<1,500/μLの場合両群に差はみられなかった。
・グループ2において、ベースラインALCが≧1,500/μLの場合、エリブリン群ではOS延長の傾向が強くみられたが(中央値15.7ヵ月 vs.9.3ヵ月)、統計学的有意差は得られなかった(HR:0.746、95%CI:0.409~1.362、p=0.339)。ベースラインALC<1,500/μLの場合両群に差はみられなかった。
・グループ3では、ベースラインALCが≧1,500/μLの場合、エリブリン群のOSが有意に延長された(HR:0.567、95%CI:0.322~0.998、p=0.047)。ベースラインALC<1,500/μLの場合両群に差はみられなかった。
・さらに、新たな転移のみられた患者を除外し、それ以外の患者について解析を行ったところ、エリブリン群のOSが大幅に延長された(HR:0.571、95%CI:0.394~0.826、p=0.003)。OS中央値としては、エリブリン群で約5ヵ月延長されている。

 これらの結果を受けて同氏は、下記のように結論づけた。

・ベースラインALC≧1,500/μLは、エリブリン群におけるPDの状態を予測するバイオマーカーとはいえず、適切なカットオフ値についてのさらなる検討が必要
・ベースラインALC≧1,500/μLで、新たな転移を有さない患者が、エリブリン治療によるベネフィットを最も受けうる
・しかしながら、ベースラインALC≧1,500/μLで新たな転移を有する患者においても、エリブリンによる治療はOSの有意なベネフィットをもたらす
・TPC群の患者では、OSの予測において、ALCも病勢進行の状態も関連がみられなかった

(ケアネット 遊佐 なつみ)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

乳がん手術療法のDe-escalation、検討中の4つの方向性/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 乳がん治療における手術療法はHalsted手術以降、一貫して縮小してきており、早期乳がんに対する胸筋温存、乳房温存などが一般的に実施されている。腋窩リンパ節郭清に関してもセンチネルリンパ節生検が広く行われるようになり、その後、センチネルリンパ節に転移を認めても条件を満たせば郭清を省略するようになっている。現在、さらなる手術縮小の可能性が前向きに検討されているが、具体的な4つの方向性について現在進行中の試験を含めて、第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)におけるシンポジウム「乳がん治療におけるDe-escalationを考える」の中で、岡山大学の枝園 忠彦氏が紹介した。

1)術前薬物療法実施症例でのセンチネルリンパ節生検

 術前薬物療法の実施後にセンチネルリンパ節生検を実施したACOSOG Z1071(Alliance)、SENTINA(Arm C)、SN FNACの各試験を、術前薬物療法なしでセンチネルリンパ節生検を実施したNSABP B-32試験と比較すると、NSABP B-32試験ではセンチネルリンパ節生検の同定率は97.2%、偽陰性率9.8%であるのに対し、他の3試験では同定率は減少し偽陰性率は増加した。しかしながら、センチネルリンパ節を多め(3個以上)に摘出もしくは腫瘍の大きさをT2までに限ることで、センチネルリンパ節生検を可能にすることが示されている。
 また、偽陰性率を下げるための工夫として、転移のあったリンパ節に術前にクリップなどのマーキングをして手術で確実に切除することにより偽陰性率が低く抑えられた結果が報告されており、現在、多くの施設でさらなる検討が実施されている。
 さらに、もともとリンパ節転移があり術前薬物療法でリンパ節転移が消失した症例にセンチネルリンパ節生検が有用かどうかについて前向き試験で検討されており、結果が待たれている。

2)術前に臨床的にリンパ節転移が認められない症例でのリンパ節郭清の省略

 現在、センチネルリンパ節生検は、術後薬物療法の実施を決定するための「診断」として利用されることが多いことから、術後薬物療法はホルモン療法のみの予定のER陽性の高齢の乳がん症例において、センチネルリンパ節生検省略の安全性と有効性を検討する試験が組まれている(NCT02564848)。
 また、超音波画像で転移がないことが明らかであればセンチネルリンパ節生検は不要ではないかとのことから、超音波検査で転移陰性を診断したうえで省略するという前向きのSOUND試験(NCT02167490)も実施されている。
 同様に、術前薬物療法が実施され、画像上完全奏効が得られている症例で、術後薬物療法を実施することが決定しているトリプルネガティブまたはHER2陽性症例において、センチネルリンパ節生検の省略を検討する前向き試験(NCT04101851)が実施されている。

3)低悪性度のDCIS症例における手術の省略

 マンモグラフィの進歩によって、石灰化を伴うごく小さな非浸潤性乳管がん(DCIS)が発見されるようになった。他方、低悪性度のDCISでは手術の有無にかかわらず予後は変わらないことが報告されている。また、すべてのDCISが浸潤がんに進行するわけではないが、進行リスクの高い患者を予測する方法がないため、すべてのDCIS症例に手術や放射線治療がなされてきた。
 このような背景から、現在、世界では4つの前向き試験が実施されており、日本でもLORETTA試験(JCOG1505)が症例登録中で、いずれも低~中悪性度でER陽性のDCISを対象に、経過観察のみもしくは経過観察+ホルモン療法の安全性を検討している。枝園氏は、これらの試験の結果によっては、低悪性度の場合は手術しないというのもオプションの1つになると思われると期待を述べた。

4)術前薬物療法で臨床的完全奏効が得られた症例における手術の省略

 術前薬物療法は早期乳がんの標準治療の1つになっており、完全奏効が得られる症例が多くなっている。とくにHER2陽性乳がんでは半数以上がHER2阻害薬と化学療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られると報告されている。しかし、現状では手術なしでpCRを確認する方法がないため、全例に手術を行うのが標準になっている。
 それに対して、海外では診断精度を高めるために、針生検を実施してがんの残存を確認する前向き試験が実施されているが、実際には完璧にpCRを予測するのが難しいとされている。
 そこで、わが国では、HER2陽性乳がんで術前薬物療法(化学療法+HER2阻害薬)により画像上で腫瘍が消失した患者に対して、手術なしでも予後は変わらないことを前向きに確認するAMATERAS試験(JCOG1806)を現在実施している。

 最後に枝園氏は、「手術の縮小は症状が出ることを避け、整容性を向上させることを目的としているが、逆に局所再発の増加を引き起こす。データ上、局所再発は生存に影響ないが長期的には影響が出てくるため、手術縮小と引き換えに全身療法や放射線療法が必要となる」と述べ、「これら3つの組み合わせによって手術縮小と治療を両立させることが重要である」と講演を締めくくった。

(ケアネット 金沢 浩子)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

TNBC術前化療への免疫療法併用、メタ解析結果/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)における術前化学療法と免疫療法併用の有効性についてメタ解析が行われ、併用による病理学的完全奏効率(pCR)の有意な改善が示された。またPD-L1発現状態に基づくサブグループ解析の結果、PD-L1陽性集団では併用によるpCRの有意な改善が示されたが、陰性集団では統計学的有意差は得られなかった。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)で、フィリピン・St. Luke’s Medical CenterのJessa Gilda Pandy氏が発表した。

 Pubmed、Embase、Cochrane、臨床試験データベースの系統的検索と手作業による検索により、TNBCにおける術前化学療法とPD-1/PD-L1阻害薬併用についての無作為化比較試験(RCT)を特定した。2020年3月までに発表された試験が対象。変量効果モデルを使用して、統合オッズ比(OR)がpCRについて計算された。また、PD-L1発現状態に基づくpCRのサブグループ解析も実施された。

 主な結果は以下のとおり。

・4つのRCT(Keynote-522、I-SPY2、NeoTRIPaPDL1、GeparNuevo)が解析対象とされた(384例)。
・術前化学療法と免疫療法の併用は、化学療法単独と比較して有意にpCRを改善した(58.5% vs.42.4%、OR:1.76、95%信頼区間[CI]:1.11~2.79、p<0.02)。
・PD-L1発現状態に基づくサブグループ解析の結果、併用群では、PD-L1陽性集団でPD-L1陰性集団よりも高いpCRが示された(64.5% vs.52.2%)。また、陽性集団では併用によるpCRの有意な改善が示されたが(OR:1.55、95%CI:1.16~2.09、p=0.003)、陰性集団では統計学的有意差は得られなかった(OR:1.42、95%CI:0.80~2.52、p=0.23)。
・有害事象は既知の安全性プロファイルと一致していた。多くみられたのは内分泌障害、甲状腺機能低下症であった。

 Pandy氏は、症例数の少なさなど本研究の限界に触れたうえで、PD-L1発現状態は、免疫療法併用によるベネフィットをより多く受けうる患者の選択に活用できる可能性があると結論づけている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

新型コロナでマンモグラフィ2ヵ月中止、診断時の病期に影響/ESMO Open

提供元:CareNet.com

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の影響を強く受けた北イタリアではマンモグラフィ検診が2ヵ月間中止となった。イタリア・Azienda Ospedaliero-Universitaria di ModenaのAngela Toss氏らが、検診中断後の乳がん診断時および初期治療時の病期を調査したところ、検診中断後にリンパ節転移陽性およびStage IIIの乳がんが増加していた。ESMO Open誌オンライン版2021年2月11日号に掲載。

 本研究は単施設での後ろ向き研究で、2ヵ月間のマンモグラフィ検診中断後の2020年5~7月に乳がんと診断された177例(女性174例、男性3例)の臨床病理学的特徴について、定期的に検診を実施していた2019年の同時期に乳がんと診断された223例(女性221例、男性2例)と比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・2ヵ月間の検診中断により、非浸潤がんでの診断は有意に減少し(2019年17.2%→2020年6.87%、p=0.0021)、リンパ節転移陽性(2019年12.5%→2020年23.7%、p=0.0034)およびStage III(2019年2.2%→2020年12.5%、p=0.0001)での診断は有意に増加した。
・増殖能が高い患者群(MIB-1≧20%)では、リンパ節転移陽性は18.5%増加し(p=0.0352)、Stage IIIは11.4%増加した(p=0.045)。
・増殖能が低い患者群(MIB-1<20%)では、リンパ節転移陽性は変わらなかった(p=1)が、Stage IIIは9.3%増加した(p=0.0064)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Toss A, et al. ESMO Open. 2021;6:100055.[Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

男性乳がんにおける内分泌療法の第II相無作為化試験/JAMA Oncol

提供元:CareNet.com

 ホルモン受容体(HR)陽性の男性乳がん患者において、標準的内分泌療法によるエストラジオール値の変化は不明である。今回、ドイツ・Kliniken Essen-MitteのMattea Reinisch氏らが第II相無作為化試験で調べたところ、アロマターゼ阻害薬(AI)またはタモキシフェンにゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)を併用した群では、エストラジオール値が持続的に低下することが示された。JAMA Oncology誌オンライン版2021年2月4日号に掲載。

 本研究の対象は、ドイツ国内のブレストユニット24施設から2012年10月~2017年5月に組み入れられたHR陽性乳がんの男性患者56例で、タモキシフェン単独、タモキシフェン+GnRHa、AI+GnRHaの3群に無作為に割り付けた。主要評価項目はベースラインから3ヵ月後のエストラジオール値の変化、副次評価項目は6ヵ月後のエストラジオール値の変化と、他の内分泌パラメータ、有害事象、性機能、生活の質の3ヵ月および6ヵ月後の変化とした。

 主な結果は以下のとおり。

・男性患者(年齢中央値:61.5歳、範囲:37~83歳)56例中52例が治療を開始し、3例(各群1例)が早期に治療中止した。50例が主要評価項目について評価可能であった。
・3ヵ月後のエストラジオール値の中央値は、タモキシフェン群では67%増加(+17.0 ng/L)、タモキシフェン+GnRHa群では85%減少(-23.0ng/L)、AI+GnRHa群では 72%減少(-18.5ng/L)がみられた(p<0.001)。
・6ヵ月後のエストラジオール値の中央値は、タモキシフェン群では41%増加(+12 ng/L)、タモキシフェン+GnRHa群では61%減少(-19.5ng/L)、AI+GnRHa群では64%減少(-17.0ng/L)がみられた(p<0.001)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Reinisch M, et al. JAMA Oncol. 2021 Feb 4. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

低・中所得国は、がん手術後の転帰が不良/Lancet

提供元:CareNet.com

 がん患者の80%が手術を必要とするが、術後の早期の転帰に関する低~中所得国(LMIC)の比較データはほとんどないという。英国・エディンバラ大学のEwen M. Harrison氏らGlobalSurg Collaborative and NIHR Global Health Research Unit on Global Surgeryの研究グループは、とくに疾患の病期や合併症が術後の死亡に及ぼす影響に着目して、世界の病院のデータを用いて乳がん、大腸がん、胃がんの術後転帰を比較した。その結果、(1)LMICでは術後の死亡率が高いが、これは病期が進行した患者が多いことだけでは十分に説明できない、(2)術後合併症からの患者救済能力(capacity to rescue)は、有意義な介入のための明確な機会をもたらす、(3)術後の早期死亡は、一般的な合併症の検出と介入を目指した、周術期の治療体制の強化に重点を置いた施策によって抑制される可能性があることなどが示された。Lancet誌2021年1月21日号掲載の報告。

82ヵ国428病院の前向きコホート研究

 研究グループは、全身麻酔または脊髄幹麻酔(neuraxial anaesthesia)下に施行される皮膚の切開を要する手術を受けた原発性の乳がん、大腸がん、胃がんの成人患者を対象に、国際的な多施設共同前向きコホート研究を実施した(英国国立健康研究所[NIHR]グローバル健康研究ユニットの助成による)。

 主要転帰は、術後30日以内の死亡または重度合併症とした。マルチレベルロジスティック回帰により、病院および国別の患者における3段階のネストモデル内の関連性を解析した。病院レベルのインフラストラクチャー効果は、3要因媒介分析で評価した。

 2018年4月~2019年1月の期間に、82ヵ国の428病院から1万5,958例(乳がん8,406例[52.7%]、大腸がん6,215例[38.9%]、胃がん1,337例[8.4%])が登録された。高所得国(31ヵ国)が9,106例、高中所得国(23ヵ国)が2,721例、低・低中所得国(28ヵ国)が4,131例であった。

低・低中所得国で、胃がん、大腸がん、合併症による死亡率が高い

 LMICは高所得国に比べ、より進行した病変を持つ患者が多かった。30日死亡率は、胃がんが低・低中所得国(補正後オッズ比[aOR]:3.72、95%信頼区間[CI]:1.70~8.16)で高く、大腸がんは高中所得国(2.06、1.11~3.83)および低・低中所得国(4.59、2.39~8.80)で高かった。乳がんでは死亡率の差は認められなかった。

 重度合併症の発現後に死亡した患者の割合は、低・低中所得国(aOR:6.15、95%CI:3.26~11.59)および高中所得国(3.89、2.08~7.29)で高かった。

 合併症発現後の術後死亡は、60%が患者要因で、40%は病院または国の要因で説明が可能であった。LMICでは、一貫して利用可能な術後ケア施設がないことが、重度合併症100件当たり7~10件以上という高い死亡率と関連していた。また、がんの病期だけでは、国別の死亡率や術後合併症発現の早期のばらつきは、ほとんど説明がつかなかった。

 著者は、「LMICでは、周術期死亡率が過度に高く、これががん生存の劣悪さに寄与している。術後の一般的な合併症の発現後に、回避可能な死亡を防ぐには、LMICの医師の主導により、実践的な周術期介入を緊急に評価する必要がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

GlobalSurg Collaborative and National Institute for Health Research Global Health Research Unit on Global Surgery. Lancet. 2021;397:387-397.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

バーチャル開催のJSMO2021、注目演題を発表/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 2021年2月18日(木)~21日(日)、第18回日本臨床腫瘍学会学術集会が完全バーチャル形式で開催される。これに先立ち、プレスセミナーが開催され、今回の学術集会の取り組みや注目演題等が発表された。

 この中で、会長を務める西尾 和人氏(近畿大学医学部ゲノム生物学教室 教授)が学会の概要を説明。昨年夏にいち早く完全バーチャル形式での開催を決めた本学会は、例年より長めの日程となり、海外演者も数多く登壇予定だ。「朝は7時から夜は23時まで多くの演題を用意し、勤務のある方でも参加しやすくした」(西尾氏)。

 学会のテーマは「Evolving Treatment Paradigms for Precision Oncology」で、2019年にがん遺伝子パネル検査が保険収載となってから1年半あまりで、がんの臨床現場を大きく変えたゲノム医療についてリアルワールドデータやアジア各国のとの協働研究の結果が報告される。また、15の学術部会による教育シンポジウムや患者支援企画、国際学会としてASCO(米国腫瘍学会)やESMO(欧州腫瘍学会)とのジョイントセミナーや少人数で各国の腫瘍内科医とディスカッションする「Meet the Experts」も多数設けられた。その他の注力テーマとしては「COVID-19流行下におけるがん診療」と、リキッドバイオプシーや人工知能(AI)の臨床応用といった「新しいテクノロジーにおけるがん医療の変革」が設定され、いずれも複数のセッションが予定されている。

 続けて、中川 和彦氏(近畿大学医学部内科学教室 教授)が、900題にのぼる一般演題の中で、とくに注目される3つのPresidential Sessionについて、詳細を解説した。

Presidential Session 1
2月19日(金) 14:00~15:55 「免疫チェックポイント阻害剤の治療開発」
1)進行食道がんに対するペムブロリズマブ+化学療法 KEYNOTE-590:原 浩樹氏(埼玉県立がんセンター)
2)MSI-high/dMMR の転移のある大腸がんに対するペムブロリズマブvs.化学療法KEYNOTE-177:吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院)
3)進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対するニボルマブ+プラチナ化学療法+ベバシズマブ 日本人サブ解析:樋田 豊明氏(愛知県がんセンター)
4)肺肉腫に対する2つの抗PD-1抗体(ニボルマブとペムブロリズマブ):板橋 耕太氏(国立がん研究センター中央病院)
5)R/R AML患者におけるAMG330:Farhad Ravandi氏(米MDアンダーソンがんセンター)

Presidential Session 2
2月20日(土) 15:30~15:35 「分子標的治療と殺細胞性抗がん剤治療」
1)術後ハイリスク頭頸部がんに対する化学療法 :田原 信氏(国立がん研究センター東病院)
2)EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するベバシズマブ+エルロチニブ OSとctDNA解析:福原 達朗氏(宮城県立がんセンター)
3)HER2陽性進行乳がんへのペルツズマブ再投与:遠山 竜也氏(名古屋市立大学)
4)再発または転移のある子宮頸がんに対するtisotumab:Robert L. Coleman氏(米国立がん研究所)
5)進行大腸がんにおけるAMG510:久保木 恭利氏(国立がん研究センター東病院)

Presidential Session 3
2月21日(日) 14:50~16:50 「ゲノム医療と希少がん」
1)進行胃がんにおけるctDNAによる遺伝子異常 SCRUM-Japan MONSTAR SCREEN:舛石 俊樹氏(愛知県がんセンター)
2)泌尿生殖器がんにおけるctDNAによるゲノム解析:野々村 祝夫氏(大阪大学)
3)日本におけるがんゲノム医療における初期エキスパートパネルのパフォーマンス:角南 久仁子氏(国立がん研究センター中央病院)
4)原発不明がんに対するNGSを用いた遺伝子発現解析と遺伝子変異による原発巣推定に基づくSite-Specific Treatment:新井 誠人氏(千葉大学)
5)小児がん患者における抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐予防としてのパロノセトロン:古賀 友紀氏(九州大学)

 19~21日には、その日に発表された演題の中から、とくに注目すべきものを識者が解説する「Highlight of the Day」(1時間)も予定されている。

◆第18回日本臨床腫瘍学会学術集会
ライブ配信:2021年2月18日(木)~21日(日)
オンデマンド配信:2021年3月1日(月)~31日(水)

(ケアネット 杉崎 真名)


【参考文献・参考サイトはこちら】

第18回日本臨床腫瘍学会学術集会

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

乳がん関連遺伝子バリアントのリスクを評価/NEJM

提供元:CareNet.com

 乳がんの遺伝性の病原性バリアントを有する女性のリスク評価と管理では、がん素因遺伝子の生殖細胞系列の病原性バリアントと関連する、集団ベースの乳がんリスクの推定がきわめて重要とされる。米国・メイヨークリニックのChunling Hu氏らCARRIERS(Cancer Risk Estimates Related to Susceptibility)コンソーシアムは、同国の一般集団において、既知の乳がん素因遺伝子の病原性バリアントと関連する乳がんの有病率とリスクの評価を行った。その結果、BRCA1BRCA2の病原性バリアントは乳がんリスクが最も高いことを示した。NEJM誌オンライン版2021年1月20日号掲載の報告。

米国の集団ベースの症例対照研究

 同コンソーシアムは、乳がん女性3万2,247例(乳がん診断時平均年齢62.1歳、乳がん家族歴あり20.4%)と、マッチさせた非乳がん女性(対照)3万2,544例(試験登録時平均年齢61.2歳、乳がん家族歴あり14.3%)を対象に、集団ベースの症例対照研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]と乳がん研究財団[BCRF]の助成による)。

 多遺伝子アンプリコンベースのカスタムパネルを用いてシークエンスを行い、28のがん素因遺伝子の生殖細胞系列の病原性バリアントを同定した。次いで、個々の遺伝子の病原性バリアントと乳がんリスクの関連を評価した。

BRCA12バリアントの生涯乳がんリスクは約50%

 12の確立された乳がん素因遺伝子の病原性バリアントが、乳がん群の5.03%(1,621例)および対照群の1.63%(531例)で検出された。

BRCA1BRCA2の病原性バリアントは乳がんリスクが最も高く、BRCA1のオッズ比(OR)は7.62(95%信頼区間[CI]:5.33~11.27、p<0.001)、BRCA2のORは5.23(4.09~6.77、p<0.001)だった。また、PALB2の病原性バリアントの乳がんリスクは中等度(OR:3.83、2.68~5.63)であった。

BRCA1BRCA2、およびPALB2の病原性バリアントはいずれも、エストロゲン受容体陽性乳がん(OR[95%CI]:BRCA1 3.39[2.17~5.45]、BRCA2 4.66[3.52~6.23]、PALB2 3.13[2.02~4.96])、同陰性乳がん(26.33[17.28~41.52]、8.89[6.36~12.47]、9.22[5.63~15.25])、およびトリプルネガティブ乳がん(42.88[26.56~71.25]、9.70[5.97~15.47]、13.03[7.08~23.75])のリスクが高かった。

 一方、BARD1(OR[95%CI]:2.52[1.18~5.00])、RAD51C(2.19[0.97~4.49])、およびRAD51D(3.93[1.40~10.29])の病原性バリアントはエストロゲン受容体陰性乳がんのリスクが高く、BARD1(3.18[1.16~7.42])はトリプルネガティブ乳がんのリスクも高かったのに対し、ATM(1.96[1.52~2.53])、CDH1(3.37[1.24~10.72])、およびCHEK2(2.60[2.05~3.31])はエストロゲン受容体陽性乳がんのリスクが増大していた。

 ミスマッチ修復遺伝子(MLH1MSH2MSH6)やNBNを含む16の乳がん素因遺伝子候補は、いずれも乳がんリスクの増加とは関連がなかった。また、BRCA1BRCA2の病原性バリアントの生涯乳がんリスクは約50%で、PALB2は約32%だった。

 著者は、「これらの知見は、一般集団におけるがん素因遺伝子の病原性バリアントを有する女性において、がんのスクリーニングやリスク管理戦略に有益な情報をもたらすと考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Hu C, et al. N Engl J Med. 2021 Jan 20. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

「がん診療と新型コロナウイルス感染症」、患者向けQ&Aを改訂/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 2021年1月25日、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で「がん診療と新型コロナウイルス感染症 がん患者さん向けQ&A」の改訂3版を公開した。これは3学会合同連携委員会の新型コロナウイルス(COVID-19)対策ワーキンググループがまとめたもので、「がん患者は新型コロナウイルスに感染しやすいのか」「検査はどこまですべきなのか」「現在の治療を延期したほうがよいのか」といった、多くのがん患者が抱える疑問に答える内容となっている。今回は各種文献やガイドラインのアップデートを反映した改訂となる。

 ASCO(米国臨床腫瘍学会)やESMO(欧州臨床腫瘍学会)が提唱する基本治療方針へのリンクや、「血液がん」「肺がん」「乳がん」といったがん種別に分けたうえで細かく治療方針を解説する項目もあり、がん治療中の患者にとって必要な情報が網羅的にまとまっている。

(ケアネット 杉崎 真名)


【参考文献・参考サイトはこちら】

日本癌治療学会,日本癌学会,日本臨床腫瘍学会(3学会合同作成)がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A 改訂第3版

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)