TN乳がんの術後補助療法、パクリタキセル+カルボプラチンでDFS改善/JAMA Oncol

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 手術可能なトリプルネガティブ(TN)乳がんへの術後補助療法において、パクリタキセルとカルボプラチンの併用が標準レジメンより5年無病生存率が有意に高かったことが、無作為化第III相試験(PATTERN試験)で示された。中国・Fudan University Shanghai Cancer CenterのKe-Da Yu氏らが報告した。JAMA Oncology誌オンライン版2020年8月13日号に掲載。

 本試験は中国の9施設のがんセンターと病院で実施された。対象患者は2011年7月1日~2016年4月30日に登録し、データはITT集団で2019年12月1日~2020年1月31日に解析した。

・対象: 18~70歳の手術可能なTN乳がんの女性(病理学的に確認された局所リンパ節転移のある患者もしくは原発腫瘍径10mm超のリンパ節転移のない患者)で、除外基準は、転移ありもしくは局所進行の患者、TNではない乳がん患者、術前治療(化学療法、放射線療法)を受けた患者
・試験群: 1、8、15日目にパクリタキセル80mg/m2+カルボプラチン(AUC 2)、28日ごと6サイクル投与(PCb群)
・対照群:シクロホスファミド500mg/m2+エピルビシン100mg/m2+フルオロウラシル500mg/m2を3週ごと3サイクル投与後、ドセタキセル100mg/m2を3週ごと3サイクル投与(CEF-T群)
・評価項目:
[主要評価項目]無病生存期間(DFS)
[副次評価項目]全生存期間、遠隔DFS、無再発生存期間、BRCA1/2もしくは相同組換え修復(HRR)関連遺伝子の変異がある患者のDFS 、毒性

 主な結果は以下のとおり。

・手術可能なTN乳がん患者647例(平均年齢[SD]:51[44~57]歳)をCEF-T群(322例)またはPCb群(325例)に無作為に割り付けた。
・中央値62ヵ月の追跡期間で、PCb群はCEF-T群よりDFSが長かった(5年DFS:86.5% vs.80.3%、ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.44~0.96、p=0.03)。遠隔DFSと無再発生存期間でも同様の結果が認められた。
・全生存期間は統計学的な有意差がみられなかった(HR:0.71、95%CI:0.42~1.22、p=0.22)。
・サブグループ解析では、BRCA1/2変異のある患者のDFSのHRは0.44(95%CI:0.15~1.31、p=0.14)、HRR関連遺伝子変異のある患者では0.39(95%CI:0.15~0.99、p=0.04)であった。
・安全性データは既知の安全性プロファイルと一致していた。

 著者らは、「これらの結果から、手術可能なTN乳がん患者においてパクリタキセルとカルボプラチンの併用が術後補助化学療法の代替の選択肢となりうることが示唆される。分子分類の時代においては、PCbが有効なTN乳がんのサブセットをさらに調べる必要がある」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Yu KD, et al. JAMA Oncol. 2020 Aug 13. [Epub ahead of print]

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「乳腺外科医事件」控訴審、逆転有罪判決の裏側~担当弁護人による「判決の争点」解説~【前編】

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 手術直後の女性患者への準強制わいせつ罪を問われた執刀医が、逮捕・勾留・起訴された事件。一審では無罪判決となったが、再審では懲役2年の実刑判決が東京高裁より言い渡された。一転して逆転有罪判決となった経緯には何があったのか。弁護人の1人である水沼 直樹氏に、実際に法廷で論じられた争点について、前・後編で解説いただく。

前編:経緯と検察側証人の証言

1.事案の概要

 2016年5月、右側の良性の乳腺腫瘍摘出術を受けた30代の女性患者が、術後30分以内に2度回診に来た執刀医からわいせつ行為を受けたと訴えたところ、患者の健側胸部から執刀医と同型のDNA型が検出され、アミラーゼ検査が陽性となった本件について、東京地裁は2019年2月20日無罪判決を言い渡しましたが*、東京高裁は2020年7月13日懲役2年の実刑判決を言い渡しました。

2.経緯

 検察官は、控訴趣意書(本文50頁)の約3分の2を割いてDNA定量検査およびアミラーゼ検査が科学的に問題ないことを主張し、検査時に作成するワークシートが鉛筆書きで良いといった某大学の「化学実験の指針」や検査人に問題がない旨の意見書等を証拠提出しました。

 これに対して、弁護人は、 DNA定量検査の際の増幅曲線や検量線図が検査ごとに必要である等と主張したり、上記「化学実験の指針」には、「字を消しゴム(訂正インク)を使って消したりまたは逆に塗りつぶしたりしてはならない」等の記載があることを反証し,検察側の意見者が矛盾する論文を執筆していた事実等を証拠請求しました。

3.控訴審での動き

 東京高裁は、患者が当時せん妄状態であったか、せん妄状態でLINE送信が可能か、幻覚を体験し得るか、について関心があると明言し、専門家証人を推薦するよう指示しました。

 そこで、検察官が精神科医1名を、弁護人が精神科医と集中治療医1名ずつを推薦したところ、東京高裁は2名の精神科医だけを証人採用しました。

4.検察側証人の証言

(1)主尋問の骨子

 自分はせん妄の専門家ではないが、救急センター兼任教授としてせん妄患者を診ている。せん妄は、アルコールの酩酊とパラレルに考えられ、アルコール酩酊者がBinderの分類でいう病的酩酊→複雑酩酊→単純酩酊と移行するように、せん妄も過活動型→混合型→低活動型と移行する。幻覚は、過活動型と混合型でみられるものの、記憶に残らない。低活動型の場合、意識障害がなく周囲の状況を理解でき、後から出来事を思い出せるが、幻覚体験をすることはない。前後不覚状態ではLINEを打てず、患者がLINEを打つという合目的的な行動をとっている点で、患者はせん妄状態ではない。患者の訴えは、性被害者の訴えの典型である。今回調べたところ、世界的に医師の性犯罪が問題となっていた。

(2)反対尋問の骨子

 せん妄の論文執筆、研究、学会発表等の経験は一切ない。せん妄とアルコール酩酊をパラレルに考えたのは、模式的に説明するためで、証人としては今後これを医学的論文等で公表したいと考えている。低活動型せん妄で幻覚が生じないことの出典はない。緩和ケアを基礎とするせん妄の診断基準・統計と本件とでは質が違う。せん妄の診断に際して見当識障害のあることが大前提とは言えない。本件患者は直線的に時事刻々と目覚めた。

 後編では,弁護側証人の証言,控訴審判決を中心に解説します。

*:詳細は、本サイト『「乳腺外科医事件」の判決の裏側』(前編/後編)を、または「医療判例解説」Vol.79をご覧ください。

( ケアネット )


講師紹介

水沼 直樹 ( みずぬま なおき ) 氏東京神楽坂法律事務所 弁護士、東邦大学医学部ほか非常勤講師

[略歴] 東北大学法学部・日本大学大学院法務研究科卒業。
都内で法律事務所勤務ののち、亀田総合病院の内部専属弁護士として5年超にわたり勤務したのち,本件弁護を受任したため同院を退職し,現在に至る。
日本がん・生殖医療学会(兼理事)、日本睡眠歯科学会(兼倫理委員)、日本法医学会・日本DNA多型学会・日本医事法学会・日本賠償科学会・日本子ども虐待防止学会、日本麻酔医事法制研究会、オートプシー・イメージング学会(兼アドバイザ)、日本医療機関内弁護士協会(代表)の各会員ほか。

乳がん関連リンパ浮腫、リンパ節照射より腋窩手術の種類が影響/JCO

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 乳がん関連リンパ浮腫について、腋窩手術の種類と領域リンパ節照射(RLNR)による影響を検討したところ、センチネルリンパ節生検(SLNB)、腋窩リンパ節郭清(ALND)ともRLNR追加でリンパ浮腫発現率は増加しなかった。また、ALND単独のほうが、SLNBにRLNRを追加するよりリンパ浮腫リスクが高かったことが、米国・ハーバード大学医学大学院のGeorge E. Naoum氏らによる前向きスクリーニング研究の長期結果で示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年7月30日号に掲載。

 本試験では、2005~18年にマサチューセッツ総合病院で治療を受けた浸潤性乳がん患者1,815例を、SLNB単独群、SLNB+RLNR群、ALND単独群、ALND+RLNR群の4群に分け、術前および治療後観察期間にperometerで上肢容積を測定した。術後3ヵ月以降に患側上肢容積が術前に比べて10%以上増加した場合をリンパ浮腫とした。

 主な結果は以下のとおり。

・各治療群の対象例数は、SLNB単独群1,340例、SLNB+RLNR群121例、ALND単独群91例、ALND+RLNR群263例であった。
・全体における診断後の観察期間中央値は52.7ヵ月であった。
・リンパ浮腫の5年累積発現率は、SLNB単独群8.0%、SLNB+RLNR群10.7%、ALND単独群24.9%、ALND+RLNR群30.1%であった。
・年齢、BMI、手術、再建タイプを調整した多変量Coxモデルによる解析において、ALND単独群はSLNB+RLNR群に比べてリンパ浮腫リスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:2.66、p=0.02)。SLNB単独群とSLNB+RLNR群の間(HR:1.33、p=0.44)、ALND+RLNR群とALND単独群の間(HR:1.20、p=0.49)に有意差はみられなかった。
・5年局所再発率は、SLNB単独群2.3%、SLNB+RLNR群0%、ALND単独群3.8%、ALND+RLNR群2.8%でほぼ同じだった。

 著者らは、「RLNRはリンパ浮腫リスクを高めるが、リンパ浮腫の主要なリスク因子は腋窩手術の種類である」と結論している。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Naoum GE, et al. J Clin Oncol. 2020 Jul 30. [Epub ahead of print]

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コロナ禍、がん診断の遅れで5年後がん死増加の恐れ/Lancet Oncol

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、がん死に影響するとの報告が英国から寄せられた。同国ではCOVID-19のパンデミックにより2020年3月に全国的なロックダウンが導入されて以降、がん検診は中断、定期的な診断・診療も延期され、緊急性の高い症候性患者のみに対して診断・治療が行われているという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のCamille Maringe氏らは、診断の遅れが主ながん患者の生存率にどのような影響を及ぼすのかモデリング研究にて検討し、回避可能ながん死が相当数増加すると予想されることを明らかにした。結果を踏まえて著者は、「緊急の政策介入が必要である。とくに、COVID-19パンデミックのがん患者への影響を軽減するため、定期的な診断サービスの確保を管理する必要がある」とまとめている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年7月20日号掲載の報告。

 研究グループは、英国の国民保健サービス(NHS)のがん登録および病院管理データを用い、2010年1月1日~12月31日の間に乳がん、大腸がんまたは食道がんと診断され2014年12月31日までの追跡データがある、または、2012年1月1日~12月31日の間に肺がんと診断され2015年12月31日までの追跡データがある15~84歳の患者を特定し、物理的距離を確保する対策が開始された2020年3月16日から1年間の診断遅延が及ぼす影響について解析した。

 診断遅延の生存に対する2次的影響をモデル化するため、通常のスクリーニングと紹介の経路での患者を、診断時の病期がより進行していることと関連する緊急経路に割り当て、最良から最悪まで3つのシナリオについて、診断後1、3、5年時点でのがんに起因する追加死亡および全損失生存年数(YLL)を算出し、パンデミック前のデータと比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・乳がん患者3万2,583例、大腸がん患者2万4,975例、食道がん患者6,744例、肺がん患者2万9,305例が解析に組み込まれた。
・乳がんでは、診断後5年時までの乳がん死が7.9~9.6%(追加死亡相当で281例[95%信頼区間[CI]:266~295]~344例[329~358])増加すると推定された。
・同様に、大腸がんでは15.3~16.6%(追加死亡1,445例[95%CI:1,392~1,591]~1,563例[1,534~1,592])、肺がんでは4.8~5.3%(追加死亡1,235例[1,220~1,254]~1,372例[1,343~1,401])、食道がんでは5.8~6.0%(追加死亡330例[324~335]~342例[336~348])、それぞれ増加すると推定された。
・これら4種のがんについての5年間の追加死亡は、3つのシナリオ全体で3,291~3,621例であり、追加YLLは5万9,204~6万3,229年と推定された。

(ケアネット)


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Maringe C, et al. Lancet Oncol. 2020 Jul 20. [Epub ahead of print]

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がん患者の脱毛軽減に有用な頭皮冷却装置、国内初の製造販売承認

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 2020年7月10日、「抗がん剤治療の副作用による脱毛を低減・抑制する国産初の『頭皮冷却装置』発表記者会見」が開催された(株式会社毛髪クリニックリーブ21主催)。小林 忠男氏(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 招へい教授)が「乳がん化学療法患者さんにおけるリーブ21 CellGuard(セルガード、頭皮冷却装置)を用いた脱毛の軽減化について」を、渡邉 隆紀氏(仙台医療センター乳腺外科医長)が「乳がんにおける化学療法と脱毛の問題点」について講演した。

 がん化学療法に伴う容姿変化が原因で治療介入に対し消極的となる患者も存在する。そのような患者のサポートを行う上でエビデンスが集約され治療に役立つのが、「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」である。これには脱毛をはじめ、爪の変形や皮膚への色素沈着などへの対応法がまとめられ、たとえば、脱毛に関しては“CQ1:脱毛の予防や重症度の軽減に頭皮冷却は有用か”の項で、頭皮冷却の推奨はC1a(科学的根拠はないが、行うように勧められる)とされている。しかし、日本は海外に比べ、医療施設への頭皮冷却装置の導入が遅れているのが現状であるー。

頭皮冷却装置でがん患者の満足度アップ

 小林氏は化学療法に誘発される脱毛(CIA:Chemotherapy induced-alopecia)のメカニズムについて、頭皮冷却の理論的根拠(温度低下により血管が収縮→血流低下により薬剤濃度低下、または反応速度低下→毛根細胞生存の維持)や脱毛頻度の高い抗がん剤開発と頭皮冷却の歴史を交えて解説。CIAが女性患者にもたらす影響として以下を述べた。

●身体的また精神的な悪影響
●心理学的な症状
●ボディイメージの低下
●乳房を失うよりも強いトラウマ
●QOLの低下:Identityと個性に強い影響を及ぼす
●治療後も持続的な髪質の変化(くせ毛・量・太さ)

 これらの悩みを解決するべく誕生したのがセルガードであり、この特徴として、「制御付き頭皮冷却のデジタルシステムである。頭皮温度を氷点下で維持することで毛根周囲の血管を収縮させて、毛根周辺毛細血管に到達する抗がん剤の量を抑制することができる。また、1台で2名が利用でき外来化学療法に有用」と説明した。上田 美幸氏らが第18回日本乳癌学会学術総会(2010年)で報告した『頭皮冷却キャップ装着に伴う変化 患者満足度アンケート』によると、装着の問題、使用中の気分不快、頭痛について調査し大多数で満足が得られているほか、加藤乳腺クリニックの29例を対象とした調査では、NCI-CTC scale Grade0は8例、Grade1は17例、Grade2は4例という結果が得られた。これを踏まえ同氏は、「セルガードによる頭皮冷却法がCIAに効果的であると証明された。今後、患者のQOLを向上させるだけではなく、より良い治療へ貢献する可能性がある」と語った。

脱毛に関する不安、患者と医療者で大きな差

 脱毛の臨床的な見解を示した渡邉氏は、がん化学療法を受けた患者の苦痛調査1,2,3,4)から「脱毛は、この30年間で常に上位に位置するほど患者の大きな悩み。また、別の調査5)でも治療時の不安において、患者は脱毛を4番目に挙げる一方、看護師は9番目、医師は12番目に挙げた」と、がん患者・看護師・医師の認識の乖離を指摘。なかでも、乳がんは患者の増加、初発年齢の若さ、適格な診断・予後の良さに加え、近年では外来化学療法が主流となっているが、体毛すべてに影響を及ぼす乳がん再発予防の治療は患者に大きな負担をもたらしている。同氏らが行った調査6)によると乳がん患者が脱毛した場合、再発毛しても頭髪8割以上の回復は60%、頭髪5~8割の回復は25%、頭髪5割未満の回復は15%で、再発毛不良部位は前頭部と頭頂部が圧倒的に多いことが明らかになった。また、ウイッグの使用期間は平均12.5±9.7ヵ月で、60ヵ月以上もウィッグを手放せない患者も存在した。このことから同氏は「脱毛程度の軽減、再発毛の促進に頭皮冷却装置の効果を期待する」と締めくくった。

日本人向け脱毛防止装置で苦痛開放へ

 日本での冷却装置導入の遅れに注目したリーブ21代表取締役社長の岡村 勝正氏は、「女性にとって乳がん治療はがん告知、乳房、髪の毛を失う三重の苦しみがあると言われている。欧米で発売されている頭皮冷却装置は日本人に適さないことから、脱毛で悩む日本人を救うため開発を行った」とし、「同製品は本年秋頃、全国のがん診療連携拠点病院に対してプロモーションを予定している」と話した。

■参考
リーブ21:頭皮冷却装置<セルガード> 
1)Coates A, et al. Eur J Cancer Clin Oncol. 1983;19:203-208.
2)Griffin AM, et al. Ann Oncol. 1996;7:189-195.
3)Dennert MB, et al. Br J Cancer. 1997;76:1055-1061.
4)Carelle N, et al. Cancer. 2002;95:155-163.
5)Mulders M, et al. Eur J Oncol Nurs. 2008;12:97-102.
6)Watanabe T, et al. PLoS One.2019;14:e0208118.

(ケアネット 土井 舞子)


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閉経後ホルモン補充療法、乳がんへの長期影響は?/JAMA

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 2件の無作為化試験の長期フォローアップの解析から、子宮摘出術を受けた女性において、結合型エストロゲン(CEE)単独療法を受けた患者群はプラセボ群と比較して、乳がん発生率および乳がん死亡率の低下と有意に関連していることが明らかにされた。また、子宮温存療法を受けた女性において、CEE+メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)療法を受けた患者群はプラセボ群と比較して、乳がん発生率は有意に高く、乳がん死亡率に有意な差はみられなかった。米国・Harbor-UCLA Medical CenterのRowan T. Chlebowski氏らによる報告で、これまで閉経後ホルモン療法の乳がんへの影響は、観察研究と無作為化試験の所見が一致せず結論には至っていなかったことから、一般閉経後女性を対象としたホルモン補充療法の大規模前向き無作為化試験「Women’s Health Initiative」参加者の長期追跡評価試験を行い、CEE+MPA療法またはCEE単独療法の乳がん発生・死亡への影響を調べる検討を行った。JAMA誌2020年7月28日号掲載の報告。

CEE単独またはCEE+MPA療法の対プラセボ評価を20年超追跡

 2件のプラセボ対照無作為化試験の長期追跡評価は、乳がんの既往がなく、ベースラインのマンモグラフィで陰性が確認された50~79歳の閉経後女性2万7,347例を対象に行われた。対象者は、1993~98年に米国内40ヵ所のセンターで登録され、2017年12月31日まで追跡を受けた。

 このうち、子宮が温存されている1万6,608例を対象とした試験では、8,506例がCEE 0.625mg/日+MPA 2.5mg/日を投与され、8,102例がプラセボを投与された。また、子宮摘出術を受けていた1万739例を対象とした試験では、5,310例がCEE 0.625mg/日単独投与を、5,429例がプラセボ投与を受けた。

 CEE+MPA試験は、中央値5.6年後の2002年に中止となり、CEE単独試験は中央値7.2年後の2004年に中止となっている。

 主要評価項目は、乳がんの発生(プロトコールは有害性についての主要モニタリングアウトカムと規定)、副次評価項目は、乳がん死および乳がん後の死亡であった。

 対象者2万7,347例はベースラインの平均年齢63.4(SD 7.2)歳で、累積フォローアップ中央値20年超において98%以上の死亡情報の入手・利用が可能であった。

子宮摘出CEE単独は発生率・死亡率とも低下、子宮温存CEE+MPAは発生率上昇

 子宮摘出術を受けていた1万739例において、CEE単独療法はプラセボと比較して、統計学的に有意に乳がんの発生率が低かった(238例[年率0.30%]vs.296例[0.37%]、ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.65~0.93、p=0.005)。また、乳がん死も統計学的に有意に低率だった(30例[0.031%]vs.46例[0.046%]、0.60、0.37~0.97、p=0.04)。

 対照的に、子宮が温存されていた1万6,608例において、CEE+MPA療法はプラセボと比較して、統計学的に有意に乳がんの発生率が高く(584例[年率0.45%]vs.447例[0.36%]、HR:1.28、95%CI:1.13~1.45、p<0.001)、乳がん死の有意差はみられなかった(71例[0.045%]vs.53例[0.035%]、1.35、0.94~1.95、p=0.11)。

(ケアネット)


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Chlebowski RT, et al. JAMA. 2020;324:369-380.

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併存症のある高齢乳がん患者、補助化学療法と生存は関連するか/JAMA Oncol

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 複数の併存疾患を有する高齢乳がん患者において、補助化学療法は生存と関連するのか。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのNina Tamirisa氏らは、併存疾患を有する70歳以上の乳がん患者を対象に、補助化学療法と生存の関連を評価する、後ろ向きの大規模コホート研究を実施した。JAMA Oncology誌オンライン版2020年7月16日号に掲載の報告より。

 対象は米国国立がんデータベースに登録された、70歳以上のエストロゲン受容体陽性、ERBB2陰性、Charlson/Deyo併存疾患指数が2または3の乳がん患者。2010年1月1日~2014年12月31日にリンパ節転移陽性乳がんの手術を受けていた。

 年齢、併存症スコア、施設タイプ、施設の場所、病理学的TおよびN分類、補助内分泌療法と放射線療法の有無に基づく傾向スコアを用いた、二重ロバストCox比例ハザード回帰モデルにより、補助化学療法と全生存との関連が推定された。データ分析期間は、2018年12月13日~2020年4月28日。

 主な結果は以下のとおり。

・データベースに含まれる計244万5,870例のうち、1,592例(平均年齢:77.5[SD 5.5]歳、女性:96.9%)が包含基準を満たした。
・これらの患者のうち、350例(22.0%)で化学療法が実施され、1,242例(78.0%)では実施されなかった。
・化学療法グループと比較して、化学療法なしのグループは若く(平均年齢:74 vs.78歳、p<0.001)、原発腫瘍が大きく(pT3/T4:72例[20.6%] vs.182例 [14.7%]、p = 0.005)、リンパ節転移数が多かった(pN3:75例[21.4%]vs.81例[6.5%]、pN1:182例[52.0%]vs.936例[75.4%]、p<0.001)。
・化学療法グループでより多く、他の術後療法も行われていた:内分泌療法(309例 [88.3%] vs.1,025例[82.5%]、p=0.01)、放射線療法(236例[67.4%]vs.540例[43.5%]、p<0.001)。
・追跡期間中央値43.1ヵ月(95%CI:39.6~46.5ヵ月)において、化学療法グループと化学療法なしのグループの全生存期間中央値に、統計的有意差はみられなかった(78.9ヵ月[95%CI:78.9ヵ月~NR]vs.62.7ヵ月[95%CI:56.2ヵ月~NR]、p = 0.13)。
・潜在的な交絡因子で調整後、化学療法の実施と生存率改善が関連した(ハザード比:0.67、95%CI:0.48~0.93、p=0.02)。

 著者らは、複数の併存症を有するリンパ節転移陽性、エストロゲン受容体陽性の高齢乳がん患者において、化学療法の実施が全生存期間の改善に関連することが明らかになったとし、選択バイアスによる調整後これらの結果が得られたことからは、補助化学療法から治療効果が得られる可能性が高い患者を医師が慎重に選択したことが示唆されていると結論づけている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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Tamirisa N, et al. JAMA Oncol. 2020 Jul 16. [Epub ahead of print]

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日本のがん患者のカウンセリングニーズは?1万件超の電話相談を分析

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 日本のがんサバイバーらのアンメットニーズを、電話相談の主訴から、男女差を主眼に解析し、その特徴をあぶりだした神奈川県立がんセンター 臨床研究所 片山佳代子氏らの研究が、Patient Education and Counseling誌2020年5月16日に掲載された。

 分析されたがん患者の電話相談は10,534件。男女別相談者別にデータのコーディングを行い、複数の関連コードをまとめ主要な19のカテゴリーを生成した。属性と生成されたカテゴリーのクロス集計を行い、語句と性別の関係をコレスポンディング分析によって可視化している。またテキストマイニング手法を使い出現頻度の高かった単語「不安」と「心配」の係受け関係となるkeywordを抽出し可視化することで男女差を浮き彫りにした。

 主な結果は以下のとおり。

・全相談件数のうち、約7割が女性から相談であった。
・男性は胃がん(11.8%)、女性では乳がん(18.4%)の相談が多く、男女共にがんの確定診断のないものからの相談が20%を占めた。
・男女に共通して多かった相談カテゴリーは「治療」(各々21.6%、31.0%)、「がんの疑い」(各25.2%)、「医療者への不信感/コミュニケーションの欠如」(20.2%、20.8%)、「手術」について(19.5%、30.2%)となった。
・男性は女性と比べて検査や医療施設に関する質問や、転院相談、一般的ながん情報の収集が多く、日常生活への不安や精神的なサポートのニーズは少なかった。男性サバイバーは的確な情報を収集し、自分で解決するスタイルを好むようである。医療者への不満に対して見切りも早く、そのため転院相談が多いのではないかと関連が考えられる。
・男性は精神的サポートを必要としていないのか、あってもしないのかは本研究からは不明としている。
・一方女性は、広範囲な事柄について直接的な支援を求めており、心配や不安に感じる事柄が多岐に渡る。妻として夫の禁煙相談や飲酒に関する相談や、遠隔地で独居している親の相談など家族の代表としての相談も多い。こうしたことを鑑みると、地域の患者会やピアサポートを紹介することは理にかなっているようである。

 筆者は、日本のがんの相談支援には性別による特有のスタイルを理解し、それに対応する必要があると述べている。ピアサポーターの養成等、相談現場での活用が望まれる。

 男性の場合、一般には的確な情報を渡しつつ、一方 で 嗜癖物の乱用 がないか医療現場や相談支援者が確認すること、またがん情報の発信においても、患者視点のニーズを把握し、患者目線の情報を提供するオンラインプラットフォームが必要であると述べている。

(ケアネット)


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Katayama K, et al. Patient Educ Couns. 2020 May 16「Epub ahead of print]

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ASCO作成COVID-19流行下のがん治療の指針、和訳版を公開/日本癌治療学会

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 日本癌治療学会は7月9日、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が作成した「ASCOスペシャルレポート:COVID-19の世界的流行下におけるがん治療の実施に関する指針」をホームページ上で公開した。この指針は、COVID-19 の世界的大流行への対応を継続する中で患者および医療スタッフの安全性を保護するため、がん診療で実施可能な即時および短期の措置についてASCOが世界的視野に立ち作成、5月19日に発表されたもの。

 和訳版は全22ページからなり、下記20項目について知見がまとめられている:
・トリアージ/スクリーニング
・COVID-19検査中/陽性の患者
・COVID-19診断検査
・感染防止対策
・勤務者
・リソースおよび資材
・医療機関における留意事項
・指定区域でのサービスおよび診療時間
・COVID-19感染が急増した場合の計画
・衛生関連手順
・サポートサービス
・健康および安全性に関する患者教育
・遠隔医療
・腫瘍内科
・腫瘍放射線治療
・付帯的サービス
・がんスクリーニング
・手術
・治験
・その他 役立つ参考文献

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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早期乳がんの全乳房5分割照射、10年後の結果(FAST)/JCO

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 早期乳がんに対する術後寡分割放射線療法において、従来の50Gy/25回/5週レジメンの晩期有害事象の軽減の観点から、総線量を減らした週1回5分割レジメンを検討した多施設無作為化第III相FAST試験。今回、放射線治療後5年の乳房の外観変化と10年の正常組織への影響(NTE)と腫瘍アウトカムについて、英国・University Hospitals of North Midlands NHS TrustのAdrian Murray Brunt氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年7月14日号に掲載。

 本試験では、50歳以上の低リスク浸潤性乳がん(pT1-2 pN0)の女性を、乳房温存手術後の全乳房照射のレジメンを、50Gy/25回/5週、30Gy/5回/5週(週1回6.0Gy)、28.5Gy/5回/5週(週1回5.7Gy)の3群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、2年後と5年後の写真での乳房外観の変化、副次評価項目は医師によるNTE評価と局所腫瘍制御であった。縦断的分析によるオッズ比(OR)でレジメンを比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・2004~07年に英国の放射線治療センター18施設から915例が組み入れられた。
・適格患者862例中615例(71%)で5年後の写真を入手できた。
・写真での外観変化について、50Gyに対するORは、30Gyで1.64(95%CI:1.08~2.49、p=0.019)、28.5Gyで1.10(95%CI:0.70~1.71、p=0.686)であった。
・写真の評価項目におけるα/β推定値は2.7Gy(95%CI:1.5〜3.9 Gy)で、28Gy(95%CI:26〜30Gy)/5回は50Gy/25回と同一効果をもたらすと推定された。
・医師評価による中程度または著しい乳房NTE(萎縮、硬結、毛細血管拡張、浮腫)について、50Gyに対するORは、30Gyで2.12(95%CI:1.55~2.89、p<0.001)、28.5Gyで1.22(95%CI:0.87~1.72、p=0.248)であった。
・追跡期間中央値9.9年までに、同側乳がんが11例に発生し(50Gy:3例、30Gy:4例、28.5Gy:4例)、96例が死亡した(50Gy:30例、30Gy:33例、28.5Gy:33例)。

 今回の報告において、10年時のNTE率は従来の50Gy/25回と比べて、28.5Gy/5回で有意な差はなかったが30Gy/5回では高かった。著者らは、「今回の結果により、治療後3年時に発表した、全乳房放射線療法の週1回5分割照射がNTEに関して従来のレジメンと放射線生物学的に同等であることを示した結果が確認された」と述べている。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Brunt AM, et al. J Clin Oncol. 2020 Jul 14. [Epub ahead of print]

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