HR+/HER2-進行乳がんへのribociclib+フルベストラント、OSの最新データ(MONALEESA-3)/ASCO2021

提供元:CareNet.com

 ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)の閉経後進行乳がんに対するribociclib+フルベストラント併用療法の全生存期間(OS)におけるベネフィットが、観察期間中央値56.3ヵ月時点でも維持されたことが、第III相MONALEESA-3試験の最新の解析で示された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのDennis J. Slamon氏が発表した。OSベネフィットは1次治療、2次治療の両方で認められ、さらに化学療法開始までの期間が大幅に延長することも示された。

 第III相MONALEESA-3試験では、HR+/HER2-閉経後進行乳がんの1次治療または2次治療において、ribociclib+フルベストラント併用がフルベストラント単独と比べてOSを有意に改善したことがすでに報告されている(ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.57~0.92、p=0.00455)。本試験は、盲検解除後にプラセボ群の治療継続患者はribociclib群にクロスオーバーすることが許可されているが、今回、観察期間中央値56.3ヵ月時点におけるOSの探索的解析の結果が報告された。

・対象:未治療または1ラインの内分泌療法を受けた、HR+/HER2-の閉経後女性または男性の進行乳がん患者 726例、以下の2群に2対1の割合で無作為に割り付け
・試験群:ribociclib+フルベストラント(ribociclib群)484例
・対照群:プラセボ+フルベストラント(プラセボ群)242例
・評価項目:OS、化学療法開始までの期間、化学療法なしの生存期間、無作為化から2次治療での増悪/死亡までの期間(PFS2)、

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフ時(2020年10月30日)の観察期間中央値は56.3ヵ月(最低52.7ヵ月)で、ribociclib群で68例(14.0%)、プラセボ群で21例(8.7%)が治療を受けていた。
・4年を超える観察期間の延長後も、ribociclib群のプラセボ群に対するOSベネフィットが継続した(中央値:53.7ヵ月vs.41.5ヵ月、HR:0.726、95%CI:0.588~0.897)。
・1次治療におけるOS中央値は、ribociclib群が未到達、プラセボ群が51.8ヵ月で、HRが0.640(95%CI:0.464~0.883)と、前回の報告(Slamon DJ, et al. N Engl J Med. 2020;382:514-524.)でのOSベネフィット(HR:0.70、95%CI:0.48~1.02)より大きかった。
・2次治療におけるOS中央値も、ribociclib群(39.7ヵ月)がプラセボ群(33.7ヵ月)に比べ延長していた(HR:0.780、95%CI:0.587~1.037)。
・サブグループ解析においても、肝臓または肺に転移した症例や転移部位が3つ以上、内分泌療法抵抗性(1次内分泌療法での6ヵ月以内の増悪、もしくは術前/術後補助療法での2年以内の再発)などを含む、ほとんどのサブグループでOSベネフィットが示された。
・内分泌療法抵抗性患者におけるOS中央値は、ribociclib群35.6ヵ月、プラセボ群31.7ヵ月、HRは0.815(95%CI:0.451~1.473)、内分泌療法感受性患者におけるOS中央値は、ribociclib群49.0ヵ月、プラセボ群41.8ヵ月、HRは0.731(95%CI:0.557~0.959)だった。
・化学療法開始までの期間の中央値は、ribociclib群48.1ヵ月、プラセボ群28.8ヵ月と20ヵ月近く延長した(HR:0.704、95%CI:0.566~0.876)。
・化学療法なしの生存期間の中央値も、ribociclib群32.3ヵ月、プラセボ群22.4ヵ月と約10ヵ月延長した(HR:0.688、95%CI:0.570~0.830)。
・PFS2の中央値も、ribociclib群37.4ヵ月、プラセボ群28.1ヵ月と延長がみられた(HR:0.693、95%CI:0.570~0.844)。
・本試験における治療中止患者のうち、ribociclib群では81.9%、プラセボ群では86.4%が次のラインに進み、それぞれ14.0%、30.0%がいずれかのラインでCDK4/6阻害薬の治療を受けた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

MONALEESA-3(ClinicalTrials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

HER2+乳がんの術前薬物療法、アントラサイクリンの有無別の生存率/TRAIN-2試験2次解析

提供元:CareNet.com

 Stage II/IIIのHER2陽性乳がんの術前薬物療法において、アンスラサイクリンを含む化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブと、アンスラサイクリンを含まない化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブを比較したTRAIN-2試験では、すでに病理学的完全奏効率に差がない(67% vs. 68%)ことが示されている。今回、オランダ・the Netherlands Cancer InstituteのAnna van der Voort氏らのフォローアップ解析により、3年無イベント生存率(EFS)および3年全生存率(OS)も差がないことが示された。また、アントラサイクリンの使用は、発熱性好中球減少症、心毒性、2次がん発症リスクの増加と関連していた。JAMA Oncology誌オンライン版2021年5月20日号に掲載。

 TRAIN-2試験は非盲検無作為化第III相試験で、2013年12月9日~2016年1月14日にオランダの37病院で登録されたStage II/IIIのHER2陽性乳がん438例が対象。参加者は、年齢、Stage、リンパ節転移状況、エストロゲン受容体の有無で層別化され、FEC 3サイクル後パクリタキセル+カルボプラチン6サイクル(アントラサイクリン群)とパクリタキセル+カルボプラチン9サイクル(非アントラサイクリン群)に1:1で無作為に割り付けられた(両群ともトラスツズマブとペルツズマブを3週ごとに投与)。

 主な結果は以下のとおり。

・計438例が各群219例ずつに割り付けられ、年齢中央値はアントラサイクリン群が49歳(四分位範囲:43~55歳)、非アントラサイクリン群が48歳(同:43~56歳)だった。観察期間中央値は48.8ヵ月(四分位範囲:44.1〜55.2ヵ月)。
・EFSイベントは、アントラサイクリン群で23(10.5%)、非アントラサイクリン群で21(9.6%)発生した(ハザード比:0.90、95%CI:0.50~1.63)。
・3年EFSはアントラサイクリン群92.7%(95%CI:89.3~96.2%)、非アントラサイクリン群93.6%(同:90.4~96.9%)、3年OSはアントラサイクリン群97.7%(同:95.7~99.7%)、非アントラサイクリン群98.2%(同:96.4~100%)だった。
・ホルモン受容体やリンパ節転移状況にかかわらず、EFSおよびOSの結果に差はなかった。
・左室駆出率がベースラインから10%以上低下し50%未満になった患者の割合は、アントラサイクリン群が7.7%(220例中17例)で、非アントラサイクリン群の3.2%(218例中7例)より高かった(p=0.04)。
・アントラサイクリン群の2例で急性白血病を発症した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

van der Voort A, et al. JAMA Oncol. 2021 May 20. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

ホルモン感受性と年齢別、乳がん後の2次原発がんリスク

提供元:CareNet.com

 乳がんサバイバーの2次原発がん(SPC)リスクは、ホルモン受容体(HR)の状態と初発がんの診断年齢によって大きく異なる可能性が示唆された。米国がん協会のHyuna Sung氏らによるCancer誌オンライン版2021年5月18日号掲載の報告より。

 解析には、米国のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)の12のレジストリのデータが用いられた。研究者らは1992~2015年までに20~84歳で診断された43万1,222人の乳がんサバイバー(1年以上の生存)を特定。SPCリスクは、標準化された発生率(SIR)および1万人年当たりの過剰絶対リスク(EAR)として測定した。ポアソン回帰モデルを用いてホルモン受容体の状態ごとのSIRが解析された。

 主な結果は以下のとおり。

・平均8.4年の追跡期間中に、HR陽性乳がんサバイバー(35万2,478人)で4万940件(絶対リスク:139.9/1万人年)、HR陰性乳がんサバイバー(7万8,744人)で9,682件(絶対リスク:147.3/1万人年)のSPCが発生した。
・一般集団と比較すると、新たながん診断リスクはHR陽性乳がんサバイバーで 20%(SIR:1.20、95%信頼区間[CI]:1.19~1.21、EAR:23.3/1万人年)、HR陰性乳がんサバイバーでは44%高く(SIR:1.44、95%CI:1.41~1.47、EAR:45.2/1万人年)、ホルモン受容体の状態間のリスク差は統計的に有意であった。
・一般集団と比較して、乳がんサバイバーでは7つのがん(急性非リンパ球性白血病、肉腫、乳がん、口腔/咽頭がん、子宮体がん、肺がん、結腸がん)のリスクが高かった。甲状腺がん、小腸がん、膵臓がん、膀胱がんおよび皮膚の黒色腫のリスクは、HR陽性乳がんサバイバーでのみ上昇し、食道がん、卵巣がん、および腹膜がんのリスクは、HR陰性乳がんサバイバーでのみ上昇した。
・診断時の年齢別の1万人年あたりの総EARは、
晩期発症(50~84歳)のHR陽性乳がん:15.8(95%CI:14.1~17.5、SIR:1.11)
晩期発症のHR陰性乳がん:29.0(95%CI:25.0~33.0、SIR:1.22)
早期発症(20~49歳)のHR陽性乳がん:41.3(95%CI:39.2~43.5、SIR:2.24)
早期発症のHR陰性乳がん:69.4(95%CI:65.1~73.7、SIR:2.24)
・二次原発の乳がんは各サバイバーグループの総EARの73~80%を占めていた。
・乳がんを除くと、SPC で1万人年あたりのEARが大きかったのは、早期発症HR陰性乳がんサバイバーの卵巣がん、早期および晩期発症HR陰性乳がんサバイバーの肺がん、および晩期発症HR陽性乳がんサバイバーの子宮体がんであった。

 著者らはこの結果を受けて、乳がんサバイバーのケア計画において、がん予防と早期発見戦略のためのより的を絞ったアプローチが必要であるとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Sung H, et al. Cancer. 2021 May 18. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

ペムブロリズマブ、高リスク早期TN乳がんでEFSを有意に改善/MSD

提供元:CareNet.com

 MSDは、2021年5月13日、高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)と化学療法の術前併用療法と、それに続くペムブロリズマブの術後単独療法を評価する第III相試験KEYNOTE-522において、主要評価項目の1つである無イベント生存期間(EFS)を達成したと公表した。TNBCに対する術前・術後補助療法としてEFSを統計学的有意に改善したのは、抗PD-1抗体として初。なお、同試験のもう1つの主要評価項目である病理学的完全奏効(pCR)の達成は、2019年の欧州臨床腫瘍会議(ESMO)においてすでに公表・NEJM誌に掲載されている。

 KEYNOTE-522は、高リスクの早期TNBC患者を対象とし、ペムブロリズマブと化学療法の併用による術前補助療法と、それに続くペムブロリズマブ単独の術後補助療法を、術前化学療法とそれに続くプラセボによる術後補助療法と比較する、無作為化二重盲検第III相試験。主要評価項目はpCRとEFSで、副次評価項目は根治的手術時におけるpCR率(主要評価項目のpCRとは異なる定義[乳房とリンパ節に、侵襲性、非侵襲性の残存腫瘍がないこと]で評価)、全生存期間、PD-L1発現患者(CPS≧1)のEFS、安全性および患者報告アウトカムとされている。1,174例がペムブロリズマブ群とプラセボ群のいずれかに2:1の割合で無作為に割り付けられた。

 今回、独立データ監視委員会(DMC)による中間解析により、ペムブロリズマブと化学療法の術前併用療法とそれに続くペムブロリズマブ単独の術後補助療法では、術前化学療法のみの場合と比較して統計学的に有意で臨床的に意味のあるEFSの改善が認められた。ペムブロリズマブの安全性プロファイルはこれまでに報告されている試験で認められているものと一貫しており、新たな安全性の懸念は特定されていない。

 同社は、pCRのデータおよびEFSの早期中間結果に基づいて提出した、高リスク早期TNBC患者に対するペムブロリズマブの生物製剤追加承認申請(sBLA)について、2021年3月にFDAから審査完了通知(CRL)を受理したことをすでに発表している。この通知は、FDAの抗がん剤諮問委員会の会合で、KEYNOTE-522試験のデータがさらに明らかになるまで承認の判断を待つことが全会一致で了承されたことを受けたものとなっている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-522試験(Clinical Trials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

BRCA変異、免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカーとなるか

提供元:CareNet.com

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果に関するバイオマーカーとしては、腫瘍遺伝子変異量(TMB)、PD-L1発現、DNAミスマッチ修復機能欠損が知られている。一方、BRCA1およびBRCA2はDNA修復において重要な役割を果たすが、免疫療法においてこれら遺伝子変異の役割は不明のままである。今回、米国・University of Oklahoma Health Sciences CenterのZhijun Zhou氏らは、BRCA1/2の変異がTMBに関連していると仮説を立て、コホート研究を実施した結果、TMBと組み合わせたBRCA2変異が、ICI治療のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。JAMA Network Open誌5月3日号に掲載。

 本研究では、BRCA変異のデータをcBioPortalプラットフォームから取得した。生存分析には、Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)コホートでICI治療を受け、ゲノム配列を調べた各種がん患者が登録された。各がんにおけるTMBの上位10%を高TMB、下位90%を低TMBと定義した。主要評価項目は、ICI投与開始からの全生存期間(OS)で、BRCA1/2変異のある患者とない患者を比較した。データ分析は2020年7月~11月に実施した。

 主な結果は以下のとおり。

BRCA1/2変異のある1,977例(5.3%)を含む3万7,259例の3万9,307の腫瘍サンプルを検討した。
BRCA1BRCA2とも変異していたのは164例(0.4%)、BRCA1のみの変異は662例(1.8%)、BRCA2のみの変異1,151例(3.1%)だった。
BRCA1/2変異のある腫瘍のTMBの中央値は24.59(四分位範囲[IQR]:9.84~52.14)で、野生型(5.90、IQR:2.95~10.00)より高かった(p<0.001)。
BRCA1/2変異のある患者の49例(34.8%)が高TMBであるのに対し、野生型の患者の1,399例(92.0%)は低TMBであった(p<0.001)。
・MSKCCコホートにおいてICI治療を受けゲノム配列が決定された1,661例のうち、141例(8.5%)でBRCA1/2変異を有していた。
BRCA1変異とOSの関連はみられなかった。
BRCA2変異のある患者のOS中央値は31.0ヵ月(IQR:10.0~80.0)で、変異のない患者(18.0ヵ月、IQR:6.0~58.0)より良好だった(p=0.02)。
・低TMB でBRCA2変異のある患者のOS中央値は44.0ヵ月(IQR:10.0~67.0)で、高TMBの患者(41.0、IQR:13.0~80.0)と同等だった。どちらの群も、低TMBでBRCA2野生型の患者(16.0ヵ月、IQR:6.0~57.0)よりも良好だった(p<0.001)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Zhou Z, et al. JAMA Netw Open. 2021;4:e217728.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

がん患者、新型コロナワクチン接種後の抗体価が低い/Ann Oncol

提供元:CareNet.com

 がん治療を受けている固形腫瘍患者はCOVID-19ワクチン接種後の抗体価が低く、2回以降の接種が健常者以上に重要になる、という報告が相次いでいる。

 Annals Oncology誌2021年4月28号オンライン版に「LETTER TO THE EDITOR」として掲載されたフランスの研究では、固形腫瘍患者194例と 健常者の対照群31例にファイザーの新型コロナワクチン「BNT162b2」 を接種。初回接種時、2回目接種時(3~4週後)、2回目接種後3~4週目(6~8週後)に抗体値を測定し、陽性判定を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・2021年1月18日~3月15日までに194例中122例(64.4%)が少なくとも2回の判定を受けた。年齢中央値は69.5歳(44~90歳)、男性64例(52.5%)、女性58例(47.5%)だった。
・122例中105例(86.0%)は化学療法±分子標的薬療法を受けていた。
・2回目接種時(3、4週後)は58例(47.5%、95%信頼区間:38.4~56.8)、2回目接種後3~4週目(6~8週後)は分析可能な40例(95.2%、83.8~99.4)が抗体陽性だった。
・対照群は、2回目接種時(3、4週後)は13例(100.0%、75.3~100.0)、2回目接種後3~4週目(6~8週後)は24例(100.0%、85.7~99.4)が抗体陽性であり、固形腫瘍患者は健常者と比べ陽性率が有意に低かった。またいずれの時点でも抗体価中央値は固形腫瘍患者で有意に低かった。
・化学療法を受けた患者は、受けていない患者や分子標的薬療法のみの患者と比べ、2回目接種時(3、4週後)に抗体陽性となった患者が少なかった(42.9%vs. 76.5%、p=0.016)。

 研究者らは、がん患者は免疫不全状態であることが多く、ワクチン単回の接種では反応が弱い、または反応しない割合が高いことを考慮して、初回接種後少なくとも6~8週間は引き続き厳格な感染予防措置をとること、化学療法を受けている患者はとくに2回目接種のスケジュールを厳守すること、3回目以降の接種の有効性を検討する必要があることを示唆している。

(ケアネット 杉崎 真名)


【原著論文はこちら】

Barriere J, et al. Ann Oncol. 2021 Apr 28. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

低・中リスクのHER2+早期乳がん、術後トラスツズマブは9週投与も検討可か/ESMO BREAST 2021

提供元:CareNet.com

 低および中リスクのHER2陽性早期乳がん患者において、術後トラスツズマブの投与期間を9週間に短縮した場合の、良好な長期結果が示された。1年間の投与が標準であることには変わりないものの、トラスツズマブへのアクセスが制限される状況やLVEF低下などで投与継続が難しい場合には、より短期間の投与が選択肢となる可能性がある。イタリア・パドヴァ大学のPierfranco Conte氏が、short-HER試験の長期解析結果を欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で報告した。

 short-HER試験は、HER2 陽性早期乳がん患者をトラスツマブと化学療法による術後補助療法1年投与群と9週間投与群に無作為に割り付けて比較した非劣性試験。非劣性マージンは無病生存期間(DFS)のハザード比(HR)<1.29と設定された。主要解析では、DFSのHRは1.13(90%信頼区間[CI]:0.89~1.42)であったため、非劣性は示されなかった1)。しかし、Grade2以上の心血管有害事象は9週間投与群で有意に少なかった(HR:0.32、95%CI:0.21~0.50、p<0.0001)。

 今回、主要評価項目の1つである全生存期間(OS)ならびに、3つのリスクカテゴリーごとのDFSのアップデートデータが発表された。

[3つのリスクカテゴリー]
低リスク:pT<2cm および pN0
中間リスク: pT<2cmおよびpN1-3またはpT>2cmおよびpN0-3
高リスク: pN4+

 主な結果は以下のとおり。

・1年投与群に627例、9週投与群に626例が割り付けられた。
・追跡期間中央値8.7年で、DFSイベントの発生は237件。1年投与群116件 vs. 9週投与群121件であった(HR:1.09、90%CI:0.88~1.35)。
・OSイベントの発生は109件。1年投与群51件 vs. 9週投与群58件であった(HR:1.18、90%CI:0.86~1.62)。
・リスクカテゴリーごとの5年DFS率は、低リスクカテゴリー(37.5%)で1年投与群91% vs. 9週投与群91%(HR:0.91、90%CI:0.60~1.38)、中間リスクカテゴリー(47.1%)で88% vs. 89%(HR 0.88、90%CI:0.63~1.21)、高リスクカテゴリー(15.4%)で82% vs. 64%(HR 2.06、90%CI:1.36~3.13)であった。
・リスクカテゴリーごとの5年OS率は、低リスクカテゴリーで1年投与群97% vs. 9週投与群99%(HR:0.57、90%CI:0.27~1.13)、中間リスクカテゴリーで96% vs.95%(HR: 1.14、90%CI:0.68~1.89)、高リスクカテゴリーで95% vs. 91%(HR:1.09、90%CI:0.75~1.359)であった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)Conte P,et al. Ann Oncol. 2018 Dec 1;29:2328-2333.

short-HER試験(Clinical Trials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

高齢の早期乳がん患者への化学療法の効果は?

提供元:CareNet.com

 高リスクの早期乳がんでは化学療法によりアウトカムが改善されるが、高齢者にはほとんど投与されない。今回、英国・The Royal Marsden Hospital NHS Foundation TrustのAlistair Ring氏らは、高齢の高リスク早期乳がん患者の化学療法による効果を検討したところ、転移を有する再発のリスクは化学療法で低下したが、生存期間延長が示されたのはエストロゲン受容体(ER)陰性乳がんのみであった。また、QOLへの影響は大きかったが一時的だった。British Journal of Cancer誌オンライン版2021年5月10日号に掲載。

 本研究は、70歳以上の手術可能な原発性浸潤性乳がん(T1-3および一部のT4b、N0-1、M0)患者を対象とした多施設前向き観察研究で、化学療法(±トラスツズマブ)の使用と生存期間・QOLについて調査した。ベースライン時の年齢・健康状態(fit/vulnerable/frail)・病期の相違について傾向スコアマッチングで調整した。

 主な結果は以下のとおり。

・英国の56センターで2013~18年に3,416例が登録され、手術を受けた2,811例のうち1,520例(54%)が高リスクの早期乳がんで、2,059例(73%)で健康状態がfitだった。
・高リスクの早期乳がんでfitだった1,100例中306例(27.8%)が化学療法を受けた。
・年齢・病期・健康状態をマッチさせていない高リスク例(1,498例、調整後ハザード比[HR]:0.36、95%CI:0.19~0.68)およびマッチさせた高リスク例(541例、調整後HR:0.43、95%CI:0.20~0.92)において、化学療法により転移を有する再発のリスクが減少した。しかし、どちらも全生存期間(OS)および乳がん特異的生存期間(BCSS)の改善はみられなかった。
・ER陰性乳がん患者では、化学療法により生存率が改善した(OSのHR:0.20、95%CI:0.08~0.49、BCSSのHR:0.12、95%CI:0.03~0.44)。
・QOLに一時的な負の影響がみられた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Ring A, et al. Br J Cancer. 2021 May 10. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

monarchE試験で報告された3つの重要なAE、その特徴と転帰/ESMO BREAST 2021

提供元:CareNet.com

 monarchE試験において、ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性の高リスク早期乳がんに対する術後内分泌療法(ET)とアベマシクリブの併用は、無浸潤疾患生存期間(iDFS)の有意な改善を示した。同試験では、ET単独群と比較してアベマシクリブ併用群で静脈血栓塞栓症(VTE)、アミノトランスフェラーゼ上昇(EAT)、間質性肺疾患(ILD)が頻繁に報告されており、その特徴と転帰についての詳細解析結果を、京都大学の戸井 雅和氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で報告した。

 安全性解析の対象は、少なくとも1回の投薬を受けた5,591例(アベマシクリブ併用群2,791例、ET単独2,800例)で、VTEの病歴のある患者は除外された。アベマシクリブによる治療期間中央値は19.1ヵ月(データカットオフは2020年7月8日)。試験プロトコルにはあらかじめ有害事象(AE)の管理ガイダンスが含まれていた。

 主な結果は以下のとおり。

[VTE]
・ET群16例(0.6%)に対しアベマシクリブ群67例(2.4%)でVTE が報告され、37例(1.3%)がGrade3以上、主に肺塞栓症(0.9%)であった。
・肺塞栓症発症者の約1/3が重篤ではなく、入院の必要はなかった。死亡例も報告されていない。
・VTEイベントはほとんどが単回の発生であった(88.1%)。
・多くの患者でVTE発生後もアベマシクリブ投与が継続され、57%が用量変更なしだったが、19.4%で主にGrade3以上であったことを理由に投与が中止された。
・94%の患者に抗凝固薬が投与され、管理は良好であった。
・最初のETでタモキシフェンが投与された患者では、アロマターゼ阻害薬が投与された患者と比較してVTE発症が多かった(4.1% vs.1.7%)。
・Grade3以上のVTEは、BMI≧25の患者でBMI<25の患者と比較して多く発生する傾向がみられた(1.8% vs.0.6%)。
・最初のVTEイベント発生までの期間中央値は両群とも6ヵ月以内であった。
[EAT]
・ET群181例(6.5%)に対しアベマシクリブ群356例(12.8%)でEATが報告され、87例(3.1%)がGrade3以上、85%が単回の発生であった。
・多くの患者でEAT発生後も投与が継続され、Grade3以上の患者の71%が用量変更なし/減量で継続、16%で投与が中止された。
・Grade3以上の患者は全員、用量変更あるいは投与中止により回復し、薬物性肝障害を起こした患者はいなかった。
・Grade3以上のEAT発生までの期間中央値はアベマシクリブ群3ヵ月以内、ET群4ヵ月以内であった。
・アベマシクリブ群でのGrade3以上のALT/AST上昇は、安全性解析集団全体と比較してアジア人集団で多い傾向がみられた(2.4%/1.8% vs. 4.2%/3.1%)。
[ILD]
・ET群34例(1.2%)に対しアベマシクリブ群82例(2.9%)でILDが報告されたが、多くが無症候性で軽度であった。重篤なILDイベントはアベマシクリブ群で14例(0.5%)発生し、1例が死亡した。
・両群でほとんどのILDが単回の発生であった(>97%)。
・多くの患者でILD発生後もアベマシクリブ投与が継続されたが、23%で主にGrade2以上であったことを理由に投与が中止された。
・アベマシクリブ群のILD発症者の52%でステロイド/抗生物質が投与された。
・アベマシクリブ群で、Grade2以上のILDは47%が最初の180日間に発現していた。
・アベマシクリブ群でのILDは、安全性解析集団全体と比較してアジア人集団で多い傾向がみられたが、無症候性が多く、Grade2以上やSAE、治療中断の発生率は全体と同程度であった。

 VTE、EAT、ILDの多くは最初の6ヵ月間に発生しており、アベマシクリブによる長期的な治療の累積影響やリスク増加は認められず、用量調整と標準的な薬物治療により管理可能と結論づけられている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

monarchE試験(Clinical Trials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

高リスク早期乳がん術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加、アジア人での解析(monarchE)/ESMO BREAST 2021

提供元:CareNet.com

 高リスクのホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)早期乳がんの術後補助療法において、CDK4/6阻害薬アベマシクリブと内分泌療法(ET)併用は、アジア人集団においても無浸潤疾患生存期間(iDFS)と遠隔無転移生存期間(DRFS)を有意に改善することが認められた。monarchE試験におけるアジア人での解析結果を、シンガポール国立がんセンターのYoon-Sim Yap氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で発表した。

 monarchE試験は、再発リスクの高いHR+/HER2-の早期乳がん患者を対象に、術後補助療法としてアベマシクリブ+ET群とET単独群に1:1に無作為に割り付けた第III相試験で、主要評価項目はiDFS、副次評価項目はDRFS、全生存期間(OS)、安全性、患者報告アウトカム、薬物動態。すでにITT集団で、アベマシクリブ+ET群におけるiDFS(HR:0.713、95%CI:0.583~0.871、p=0.0009)およびDRFS(HR:0.687、95%CI:0.551~0.858、p=0.0009)の有意な改善が報告されている。今回、ITT集団5,637例のうちアジア(中国、香港、日本、韓国、シンガポール、台湾)の患者1,155例(アベマシクリブ+ET群:573例、ET単独群:582例)について有効性と安全性を解析、アジア以外の患者4,482例(アベマシクリブ+ET群:2,235例、ET単独群:2,247例)でのデータと共に発表した。

 主な結果は以下のとおり。

・iDFSはアベマシクリブ+ET群で有意に改善し(HR:0.777、95%CI:0.493~1.227)、2年iDFS率はアベマシクリブ+ET群93.2%、ET単独群90.1%で、非アジア人と同等だった。
・DRFSも有意な改善が認められ(HR:0.758、95%CI:0.455~1.264)、2年DRFS率はアベマシクリブ+ET群94.4%、ET単独群91.7%で、非アジア人と同等だった。
・アベマシクリブ+ET群において最も多かった有害事象は下痢(89.5%)で、ほとんどがGrade1(55.8%)もしくはGrade2(28.7%)だった。下痢のために用量調節した患者の割合はアジア人のほうが非アジア人より低かった。
・アベマシクリブ+ET群におけるGrade3以上の有害事象および重篤な有害事象の発現率は、53.5%および12.1%だった(ET単独群:10.5%および6.3%)。アジア人は非アジア人と比べて、Geade3以上の好中球減少症(31.5% vs.15.5%)および白血球減少症(21.2% vs.8.3%)の発現率が高く、用量調節した患者の割合が高かった。
・アベマシクリブ+ET群における間質性肺疾患の発現率は、全Gradeではアジア人(6.6%)が非アジア人(2.0%)より高かったが、Grade3以上ではアジア人(0.3%)と非アジア人(0.4%)でほぼ同等だった。
・アベマシクリブ+ET群の14.5%の患者が、有害事象のためにアベマシクリブまたはすべての治療を中止した。
・ITT集団と同様、用量調節したほとんどの患者が治療継続可能だった。

 本試験はOSの最終評価まで継続されており、アジア人でのさらなるフォローアップが求められる。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

monarchE試験(Clinical Trials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)