HR+閉経後乳がんへのAI追加投与、至適治療期間は?~メタ解析

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 5年間の内分泌療法終了後、ホルモン受容体陽性(HR+)の閉経後早期乳がん患者に対するアロマターゼ阻害薬(AI)追加投与の至適治療期間を検討したメタ解析結果が報告された。中国・北京協和医学院のJuan Chen氏らが、Breast Cancer誌オンライン版2021年1月2日号で発表した。

 著者らは、適格基準を満たした無作為化比較試験を、内分泌療法の全期間に応じて3つのカテゴリーに分類(10年 vs.5年/7~8年 vs.5年/10年 vs.7~8年)。各カテゴリーについて、無増悪生存期間(DFS)と全生存期間(OS)のハザード比(HR)、および有害事象の発生率のリスク比(RR)のプール解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・計9件のRCT、HR陽性乳がんの閉経後女性計2万2,313例が対象とされた。
・内分泌療法の治療期間を5年から7~8年に延長すると、DFSの改善がみられた(HR:0.79 [0.69~0.91])。この傾向は特にタモキシフェンのみの投与(HR:0.40 [0.22~0.73])、タモキシフェン後のAI投与(HR:0.82 [0.71~0.95])、リンパ節転移陽性(HR:0.72 [0.56~0.93])、エストロゲン受容体(ER)陽性およびプロゲステロン受容体(PR)陽性(HR:0.61 [0.47~0.78])、および腫瘍径≧2cm(HR:0.72 [0.51~0.98])の患者でみられた。
・一方、内分泌療法の治療期間を7~8年から10年に延長しても、DFSの改善はみられなかった(HR:0.79 [0.69~0.91])。
・内分泌療法の延長はOSの改善とは関連しなかったが、骨折と骨減少症/骨粗鬆症リスクの増加と関連した。

 著者らは、AIによる5年間の治療後、リンパ節転移陰性、ER+/PR-またはER-/PR+、腫瘍径2 cm未満の患者は、長期のAI追加投与を実施する必要はなく、タモキシフェンのみあるいはタモキシフェン後AIによる計5年間の治療後、リンパ節転移陽性、ER+/PR+、腫瘍径2 cm以上の患者では、2~3年のAI追加投与が必要で、期間はそれで十分である可能性が示されたと結論づけている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Chen J, et al. Breast Cancer. 2021 Jan 2. [Epub ahead of print]

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早期TNBC、低用量カペシタビン維持療法で転帰が改善/JAMA

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 標準的な術後補助療法を受けた早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)女性において、低用量カペシタビンによる1年間の維持療法は経過観察と比較して、5年無病生存率を有意に改善し、有害事象の多くは軽度~中等度であることが、中国・中山大学がんセンター(SYSUCC)のXi Wang氏らが行った「SYSUCC-001試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2020年12月10日号で報告された。乳がんのサブタイプの中でも、TNBCは相対的に再発率が高く、標準治療後の転帰は不良であり、再発および死亡のリスクを低減する効果的な維持療法が求められている。低用量カペシタビンによる化学療法は、2つの転移の機序(血管新生、免疫逃避)を標的とすることでTNBC女性の再発を抑制する可能性が示唆されているが、再発抑制に要する長期の治療の有効性と受容性については不確実性が残るという。

中国の13施設が参加した非盲検無作為化第III相試験

 研究グループは、早期TNBC女性において、標準的な術後補助療法後の低用量カペシタビンによる維持療法の有効性と有害事象を評価する目的で、非盲検無作為化第III相試験を実施した(Sun Yat-sen University Clinical Research 5010 Programなどの助成による)。中国の13施設が参加し、2010年4月~2016年12月の期間に患者登録が行われ、最終フォローアップ日は2020年4月30日だった。

 対象は、病理学的に確定された浸潤性乳管がんで、ホルモン受容体とERBB2が陰性であり、鎖骨上リンパ節・内胸リンパ節に転移がなく、ステージがT1b-3N0-3cM0の早期の腫瘍を有し、標準治療として胸筋温存乳房切除術または乳房温存術が施行され、術前または術後に化学療法と放射線治療を受けた患者であった。

 被験者は、標準的な術後補助療法終了後に、カペシタビン(650mg/m2、1日2回、経口)を1年間投与する群または経過観察群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは5年無病生存率とした。無病生存は、無作為化の時点から局所再発、遠隔転移、対側乳がん、全死因死亡の初回発生までの期間と定義された。副次エンドポイントは、遠隔無病生存(無作為化から遠隔再発、対側乳房の浸潤性乳がん、全死因死亡までの期間)、全生存(無作為化から全死因死亡までの期間)、局所領域無再発生存(無作為化から局所領域の浸潤性乳がん再発または死亡までの期間)、有害事象であった。

再発・死亡リスクが36%低減、Grade 3手足症候群は7.7%

 443例が無作為化の対象となり、434例が最大の解析対象集団(FAS)とされた。年齢中央値は46歳(範囲:24~70)で、閉経前が66.8%であった。86.4%が乳房切除術を受けた。アントラサイクリン系またはタキサン系薬剤ベースのレジメンによる術前化学療法を受けた患者が5.8%、同レジメンによる術後化学療法を受けた患者は78.8%であり、T1/T2が93.1%、リンパ節転移陰性が61.8%、Grade3が72.8%だった。

 フォローアップ期間中央値61ヵ月(IQR:44~82)の時点で、無病生存に関するイベントは94件観察された。カペシタビン群は38件(再発37件、死亡32件)、観察群は56件(56件、40件)であった。推定5年無病生存率は、カペシタビン群が82.8%と、観察群の73.0%と比較して有意に優れた(再発または死亡のリスクのハザード比[HR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.42~0.95、p=0.03)。事前に規定されたサブグループのすべてで、無病生存率はカペシタビン群で良好な傾向がみられた。

 また、推定5年遠隔無病生存率(カペシタビン群85.8% vs.観察群75.8%、遠隔転移または死亡のリスクのHR:0.60、95%CI:0.38~0.92、p=0.02)はカペシタビン群で有意に良好であったのに対し、推定5年全生存率(85.5% vs.81.3%、死亡リスクのHR:0.75、95%CI:0.47~1.19、p=0.22)および推定5年局所領域無再発生存率(85.0% vs.80.8%、局所領域再発および死亡のリスクのHR:0.72、95%CI:0.46~1.13、p=0.15)には、両群間に有意な差は認められなかった。

 カペシタビン群で最も頻度の高い有害事象は手足症候群(45.2%)で、このうちGrade3は7.7%であった。このほか、白血球減少(23.5%)、ビリルビン値上昇(12.7%)、腹痛/下痢(6.8%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値・アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)値上昇(5.0%)の頻度が高かったが、いずれもGrade1または2であった。

 著者は、「カペシタビンの1年間の投与は、多くの女性にとって忍容可能であり、毒性による投与中止はほとんどなかった。80%以上の参加者が1年間の投与を完了し、何らかの理由で投与の中断を要したのは4分の1未満であった」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Wang X, et al. JAMA. 2020 Dec 10. [Epub ahead of print]

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血液による乳がん検診法開発へ、初の大規模試験開始/国立がん研究センター

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 血液中マイクロRNAがんマーカーの乳がん検診での応用を検証する、3,000人対象の大規模臨床試験が全国 4 道県でスタートする。研究班は国立がん研究センターを中心に、国立国際医療研究センター、東京医科大学、日本対がん協会、東レの研究者らで構成し、北海道と福井県、愛媛県、鹿児島の各日本対がん協会支部、がん専門病院、大学病院などの協力を得て実施される。12月14日、国立がん研究センターがプレスリリースで発表した。

 本試験で用いるのは、各検診機関での乳がん検診受診者の血液検体。がん等の疾患にともなって種類や量が変動することが明らかになっている血液中のマイクロRNAを東レの3Dジーンという技術で測定する。この測定には、13 種類のがんを対象にした「体液中マイクロ RNA 測定技術基盤開発」(2014~18 年度)で開発された診断モデルと検出技術が用いられる。本試験は、この基礎研究での成果を実際のがん検診で応用できるかどうかを検証するために計画されたもので、13 種類一つひとつのがんについて精度を検証していく必要があるとの考えから、まずは検出方法の開発が先行している乳がんを対象に初めて実施される。

[開始時期・場所(終了はいずれも2022年3月)]
愛媛県
開始:2020年12月下旬より本格化(2019年8月より試行的に実施)
場所:(検診)愛媛県総合保健協会、(精密検査)四国がんセンター、愛媛県立中央病院
鹿児島県
開始:2021年1月より開始
場所:(検診)鹿児島県民総合保健センター、(精密検査)鹿児島大学病院
北海道
開始:準備が整い次第
場所:(検診)北海道対がん協会、(精密検査)北海道がんセンター
福井県
開始:準備が整い次第
場所:(検診)福井県健康管理協会、(精密検査)福井県立中央病院

[参加対象]
各検診機関で乳がん検診を受診する40歳から69歳の方で文書による同意が得られた方

[登録目標]
3,000人(マンモグラフィーで要精検と判定された方2,000人、精検不要と判定された方1,000人)

[実施方法]
参加者は全員、マンモグラフィーのほか、乳腺エコー検査を実施(マンモグラフィーで「要精検」と判断された方は精密検査で、「精検不要」と判断された方には本研究による乳腺エコー検査)。採血は9mLで、マイクロRNAがんマーカーを測定。

[評価]
マンモグラフィーの結果、乳腺エコーの結果、マイクロRNAがんマーカーの測定結果を比較し、分析を行う。がんの発見については、まず精密検査による発見で分析し、最終的にはがん登録の情報をもとに分析される。
※マイクロRNAの測定結果は、参加者への公開はされない。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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国立がん研究センタープレスリリース

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HER2+進行乳がんへのペルツズマブ再投与でPFS延長(PRECIOUS)/SABCS2020

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 ペルツズマブ、トラスツズマブ、および化学療法治療歴のある、局所進行または転移を有するHER2陽性乳がんに対し、3次/4次治療としてのペルツズマブ再投与が無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが報告された。熊本大学の山本 豊氏が、第III相JBCRG-M05(PRECIOUS)試験の結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。

・対象:1次/2次治療としてペルツズマブ、トラスツズマブ、および化学療法による治療歴のある局所進行または転移を有するHER2陽性乳がん(ECOG PS 0-2、治療歴<4レジメン[直近のレジメンでペルツズマブ投与なし]、ベースライン時のLVEF≧50%)217例
・試験群:ペルツズマブ+トラスツズマブ+主治医選択による化学療法 108例
・対照群:トラスツズマブ+主治医選択による化学療法 109例
*ドセタキセル、パクリタキセル、ナブパクリタキセル、ビノレルビン、エリブリン、カペシタビン、ゲムシタビンから選択
・評価項目:
[主要評価項目]治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]独立レビュアー評価によるPFS、直近のレジメンでT-DM1が投与された患者のPFS、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、健康関連QOL(HR-QoL)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・2015年10月~2018年12月に、日本国内の93施設から219例を登録。217例(ペルツズマブ群108例、対照群109例)が解析対象とされた。
・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値:ペルツズマブ群57歳 vs.対象群60歳、ECOG PS 0:72.2% vs.67.0%、化学療法歴(2ライン:56.5% vs.59.6%、3ライン:42.6% vs.38.5%)、抗HER2療法歴(ペルツズマブ:両群とも99.1%、トラスツズマブ:両群とも99.1%、T-DM1:96.3% vs.99.1%、ラパチニブ:13.9% vs.13.8%)。
・主要評価項目である治験責任医師評価によるPFS中央値(追跡期間中央値14.2ヵ月)は、ペルツズマブ群5.3ヵ月 vs.対照群4.2ヵ月(ハザード比[HR]:0.755[片側95%CI上限:0.967]、片側p[層別log-rank検定]=0.0217)となり、ペルツズマブ群で有意な改善がみられた。
・直近のレジメンでT-DM1投与を受けた患者におけるPFS中央値は、ペルツズマブ群5.3ヵ月 vs.対照群4.2ヵ月(HR:0.801[片側95%CI上限:1.061]、片側層別log-rank検定p=0.0952)であった。
・OS中央値は、ペルツズマブ群28.8ヵ月 vs. 対照群23.4ヵ月(HR:0.713[片側95%CI上限:1.026]、片側層別log-rank検定p = 0.062)。さらなるフォローアップが必要だが、ペルツズマブ群でより長くなる傾向がみられた。
・測定可能病変を有する患者におけるORRは、ペルツズマブ群(90例)18.9% vs.対照群(92例)19.6%で、差はみられなかった。
・重篤な有害事象の発生率について両群で差はみられなかった(17.9% vs.21.3%)。また、心血管イベントを含む新たな安全性シグナルは検出されていない。
・FACT-Bスコアを用いたHR-QoLの評価においても、両群に有意な差はみられなかった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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PRECIOUS試験(ClinicalTrials.gov)

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TN乳がん1次治療でのipatasertib+PTX、PIK3CA/AKT1/PTEN変異を持つ患者でPFS改善せず(IPATunity130)/SABCS2020

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 PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を持つ、手術不能な局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の1次治療において、経口AKT阻害薬ipatasertibとパクリタキセル(PTX)の併用は、PTXのみと比較してPFSの改善がみられなかった。シンガポール・国立がんセンターのRebecca Dent氏が、第III相IPATunity130試験コホートAの結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。

 同治療法については、第II相LOTUS試験において無増悪生存期間(PFS)の改善が報告され、なかでもPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を有する患者でより顕著な効果が得られていた。

・対象:PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を持ち、測定可能病変のある、手術不能な局所進行または転移を有する、化学療法未治療([術前]術後化学療法終了から12ヵ月以上)のTNBC患者(ECOG PS:0/1、タキサン単剤療法への適格性あり)
・試験群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+ipatasertib 400mg(Day1~21)を1サイクル28日として投与(ipatasertib群)168例
・対照群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+プラセボ(Day1~21)(プラセボ群)87例
・評価項目:
[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS
[主要副次評価項目]全生存期間(OS)
[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性など
・層別化因子:[術前]術後化学療法の有無、地域(アジア vs.欧州 vs.北米 vs.その他)、腫瘍の変異状態(PIK3CA/KT1 活性型変異 vs. PIK3CA/AKT1 活性型変異のないPTEN異常)

 主な結果は以下のとおり。

・2018年2月~2020年4月に計255例が登録され、ipatasertib群とプラセボ群に2:1の割合で無作為に割り付けられた。
・ベースライン時の患者特性は、[術前]術後化学療法歴有がipatasertib群48% vs.プラセボ群55%、手術不能・局所進行がんが21% vs.13%。PD-L1陽性が29% vs.40%、PIK3CA /AKT1活性型変異を有する患者が両群とも51%で、両群間で有意な差がある項目はなかった。
・追跡期間中央値8.3ヵ月において、主要評価項目のPFS中央値は、ipatasertib群7.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~8.5) vs.プラセボ群6.1ヵ月(95%CI:5.5~9.0)であった(層別ハザード比[HR]:1.02、95%CI:0.71~1.45、log-rank検定のp=0.9237)。
・ORRはipatasertib群39% vs.プラセボ群35%、CBRは47% vs.プラセボ群45%。
・ipatasertib/プラセボによる治療期間中央値は5.9ヵ月 vs. 5.6ヵ月と差はみられず、PTX治療期間も両群で差はなかった。
・安全性については、以前の報告と一致していた。

 同試験ではOSのフォローアップが進行中のほか、ipatasertibによるベネフィットを受けうるバイオマーカーの探索が行われている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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IPATunity130(ClinicalTrials.gov)

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TN乳がん1次治療でのipatasertib+PTX、PIK3CA/AKT1/PTEN変異を持つ患者でPFS改善せず(IPATunity130)/SABCS2020

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 PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を持つ、手術不能な局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の1次治療において、経口AKT阻害薬ipatasertibとパクリタキセル(PTX)の併用は、PTXのみと比較してPFSの改善がみられなかった。シンガポール・国立がんセンターのRebecca Dent氏が、第III相IPATunity130試験コホートAの結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。

 同治療法については、第II相LOTUS試験において無増悪生存期間(PFS)の改善が報告され、なかでもPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を有する患者でより顕著な効果が得られていた。

・対象:PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を持ち、測定可能病変のある、手術不能な局所進行または転移を有する、化学療法未治療([術前]術後化学療法終了から12ヵ月以上)のTNBC患者(ECOG PS:0/1、タキサン単剤療法への適格性あり)
・試験群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+ipatasertib 400mg(Day1~21)を1サイクル28日として投与(ipatasertib群)168例
・対照群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+プラセボ(Day1~21)(プラセボ群)87例
・評価項目:
[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS
[主要副次評価項目]全生存期間(OS)
[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性など
・層別化因子:[術前]術後化学療法の有無、地域(アジア vs.欧州 vs.北米 vs.その他)、腫瘍の変異状態(PIK3CA/KT1 活性型変異 vs. PIK3CA/AKT1 活性型変異のないPTEN異常)

 主な結果は以下のとおり。

・2018年2月~2020年4月に計255例が登録され、ipatasertib群とプラセボ群に2:1の割合で無作為に割り付けられた。
・ベースライン時の患者特性は、[術前]術後化学療法歴有がipatasertib群48% vs.プラセボ群55%、手術不能・局所進行がんが21% vs.13%。PD-L1陽性が29% vs.40%、PIK3CA /AKT1活性型変異を有する患者が両群とも51%で、両群間で有意な差がある項目はなかった。
・追跡期間中央値8.3ヵ月において、主要評価項目のPFS中央値は、ipatasertib群7.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~8.5) vs.プラセボ群6.1ヵ月(95%CI:5.5~9.0)であった(層別ハザード比[HR]:1.02、95%CI:0.71~1.45、log-rank検定のp=0.9237)。
・ORRはipatasertib群39% vs.プラセボ群35%、CBRは47% vs.プラセボ群45%。
・ipatasertib/プラセボによる治療期間中央値は5.9ヵ月 vs. 5.6ヵ月と差はみられず、PTX治療期間も両群で差はなかった。
・安全性については、以前の報告と一致していた。

 同試験ではOSのフォローアップが進行中のほか、ipatasertibによるベネフィットを受けうるバイオマーカーの探索が行われている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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IPATunity130(ClinicalTrials.gov)

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TN乳がん1次治療へのペムブロリズマブ上乗せ、化療レジメンによらず有効(KEYNOTE-355)/SABCS2020

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 手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性(CPS≧10)のトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療において、併用する化学療法の種類によらず、ペムブロリズマブの追加で無増悪生存期間(PFS)を改善することが明らかになった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)包括的がんセンターのHope S. Rugo氏が、第III相KEYNOTE-355試験の新たな解析結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。

 同試験については、CPS≧10のPD-L1陽性患者におけるPFS中央値が、ペムブロリズマブ+化学療法群9.7ヵ月 vs.化学療法単独群5.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.49~0.86、片側p=0.0012)と有意に改善したことが報告されている。今回は、探索的評価項目(併用化学療法別のPFS中央値)ならびに副次評価項目(ORR、DOR、DCR)の解析結果が発表された。

・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例
・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例
・対照群:プラセボ+化学療法 281例
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるPFSと全生存期間(OS)
[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性
[探索的評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団における併用化学療法の種類による治療効果の一貫性

 主な結果は以下のとおり。

・併用化学療法別のPFS中央値
[CPS≧10の患者]
全体(323例):ペムブロリズマブ群9.7ヵ月 vs.化学療法単独群5.6ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86)
ナブパクリタキセル(99例): 9.9ヵ月 vs. 5.5ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.34~0.95)
パクリタキセル(44例):9.6ヵ月 vs.3.6ヵ月(HR:0.33、95%CI:0.14~0.76)
ゲムシタビン/カルボプラチン(180例):8.0ヵ月 vs.7.2ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.53~1.11)
[CPS≧1の患者]
全体(636例):7.6ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.61~0.90)
ナブパクリタキセル(204例):6.3ヵ月 vs. 5.3ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.47~0.92)
パクリタキセル(84例):9.4ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.46、95%CI:0.26~0.82)
ゲムシタビン/カルボプラチン(348例): 7.5ヵ月 vs.7.5ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.66~1.11)
[ITT集団]
全体(847例):7.5ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.69~0.97)
ナブパクリタキセル(268例):7.5ヵ月 vs.5.4ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.51~0.93)
パクリタキセル(114例):8.0ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.35~0.93)
ゲムシタビン/カルボプラチン(465例):7.4ヵ月 vs.7.4ヵ月(HR:0.93、95%CI:0.74~1.16)
・ORRはCPS≧10の患者で53.2% vs.39.8%、CPS≧1の患者で45.2% vs.37.9%、ITT集団で41.0% vs.35.9%であった。
・ORRを併用化学療法別にみると、ITT集団のゲムシタビン/カルボプラチン併用を除いて(40.2% vs. 42.2%)、ペムブロリズマブ群で高かった。
・DCRはCPS≧10の患者で65.0% vs.54.4%、CPS≧1の患者で58.6% vs.53.6%、ITT集団で56.0% vs.51.6%であった。
・DOR中央値はCPS≧10の患者で19.3ヵ月 vs.7.3ヵ月、CPS≧1の患者で10.1ヵ月 vs.6.5ヵ月、ITT集団で10.1ヵ月 vs.6.4ヵ月であった。

 Rugo氏は、サブグループ解析の結果、化学療法レジメンの種類によらずペムブロリズマブの上乗せによりPFSは改善し、またその治療効果はPD-L1発現状況に応じて高まる傾向がみられると結論付けた。ディスカッサントを務めた米国・NYU Langone Medical CenterのSylvia Adams氏は、併用する化学療法レジメンの比較については、本サブ解析結果のみで判断するのはエビデンスとして十分ではないと述べている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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KEYNOTE-355(ClinicalTrials.gov)

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PD-L1陽性TN乳がん1次治療、ペムブロリズマブの上乗せ効果は?(KEYNOTE-355)/Lancet

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 未治療の局所再発手術不適応または転移のあるPD-L1 CPS 10以上のトリプルネガティブ乳がん患者において、ペムブロリズマブ+化学療法はプラセボ+化学療法と比べて、無増悪生存(PFS)期間が有意かつ臨床的意義のある改善を示した。スペイン・Quiron GroupのJavier Cortes氏らによる第III相の国際多施設共同プラセボ対照二重盲検試験「KEYNOTE-355試験」の結果で、Lancet誌2020年12月5日号で発表された。著者は、「今回示された結果は、転移のあるトリプルネガティブ乳がんの1次治療について、標準治療へのペムブロリズマブ上乗せの意義を示すものである」と述べている。先行研究で同患者へのペムブロリズマブ単剤療法が、持続的な抗腫瘍活性と管理可能な安全性を示しており、研究グループは、同患者へのペムブロリズマブの上乗せが、化学療法の抗腫瘍活性を増強するかを検討した。

29ヵ国209ヵ所の医療機関で試験

 KEYNOTE-355試験は、29ヵ国209ヵ所の医療機関を通じ、未治療の局所再発手術不適応または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者を無作為に2対1の2群に割り付け、一方にはペムブロリズマブ(200mg、3週間ごと)+化学療法(nabパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン+カルボプラチンのいずれか)、もう一方にはプラセボ+化学療法を行った。無作為化は、ブロック法(ブロックサイズは6つ)および統合Web応答機能付き対話型音声応答システムを用い、化学療法のタイプ(タキサン系またはゲムシタビン+カルボプラチン)、ベースラインでのPD-L1発現(CPS 1以上または1未満)、同クラス薬剤による化学療法歴(術前・術後)で層別化も行った。

 適格基準は、18歳以上、トリプルネガティブ乳がんを中央施設で確認、測定可能病変が1つ以上、中央検査施設でトリプルネガティブ乳がんの状態およびPD-L1の状態を免疫組織学的に検査するための新たな腫瘍病変が提供可能、ECOG PSが0または1、十分な臓器機能であった。試験のスポンサー、研究者、そのほか各地の試験スタッフ(マスクされなかった薬剤師は除く)および患者は、ペムブロリズマブまたはプラセボ投与について知らされず、患者ごとのPD-L1バイオマーカーの結果も知らされなかった。

 主要評価項目は2つで、PD-L1 CPSが10以上の患者、CPSが1以上の患者、ITT集団のそれぞれにおけるPFSと全生存(OS)だった。PFSは今回の中間解析で評価し、OSの評価は追跡を継続している。PFSの評価には階層テスト戦略が用いられ、最初にPD-L1 CPSが10以上の患者で行われ(今回の中間解析の事前規定の統計学的基準はα=0.00411)、その後にCPSが1以上の患者(今回の中間解析のα=0.00111、CPSが10以上の患者のPFSからの部分的α値を含む)、最後にITT集団(今回の中間解析のα=0.00111)で評価した。

CPS 10以上の無増悪生存、ペムブロリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月

 2017年1月9日~2018年6月12日に1,372例がスクリーニングを受け、847例が無作為に割り付けられた(ペムブロリズマブ群566例、プラセボ群281例)。2次中間解析(データカットオフは2019年12月11日)での追跡期間中央値は、ペムブロリズマブ群25.9ヵ月(IQR:22.8~29.9)、プラセボ群26.3ヵ月(22.7~29.7)だった。

 CPS 10以上の患者群では、PFS期間中央値はペムブロリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月だった(病勢進行または死亡に関するハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.49~0.86、片側p=0.0012)。

 CPS 1以上の患者群では、PFS期間中央値はそれぞれ7.6ヵ月、5.6ヵ月で有意差は示されなかった(HR:0.74、95%CI:0.61~0.90、片側p=0.0014)。ITT集団では、それぞれ7.5ヵ月、5.6ヵ月だった(0.82、0.69~0.97、有意性の検定は未実施)。

 ペムブロリズマブの治療効果として、PD-L1誘発の増大が確認された。

 Grade3~5の治療関連有害イベントの発生率は、ペムブロリズマブ群68%、プラセボ群67%だった。そのうち、死亡はペムブロリズマブ群1%未満、プラセボ群0%だった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)


【原著論文はこちら】

Cortes J, et al. Lancet. 2020;396:1817-1828.

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早期TN乳がんの術前化療+アテゾリズマブにおける患者報告アウトカム(IMpassion031)/SABCS2020

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 未治療の早期トリプルネガティブ(TN)乳がんの術前化学療法に、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブの追加を検討したIMpassion031試験における患者報告アウトカムの解析結果が報告された。米国・Brigham and Women’s Hospital Dana-Farber Cancer InstituteのElizabeth A. Mittendorf氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。

 本試験では、18歳以上で未治療のStageII~IIIのTN乳がん患者333例を、アテゾリズマブ(840mg、2週ごと)+nab-パクリタキセル(アテゾリズマブ群)またはプラセボ+nab-パクリタキセル(プラセボ群)に1対1で無作為に割り付けた。12週間(3サイクル)投与後、ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)との併用で8週間(2サイクル)投与し、手術を実施した。術後、アテゾリズマブ群はアテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと)を11回投与し、プラセボ群は経過観察を行った。主要評価項目の病理学的完全奏効(pCR)率については、PD-L1の有無にかかわらず、アテゾリズマブ群が57.6%とプラセボ群41.1%に比べて有意に改善(p=0.0044)したことがすでに報告されている。

 患者報告アウトカムの測定は、EORTC Quality of Life Questionnaire Core 30(QLQ-C30)およびFunctional Assessment of Cancer Therapy-General(FACT-G)single item GP5の質問票を用いて、術前療法および術後療法の各サイクルのベースライン・1日目・治療終了時、観察期間には1年目は3ヵ月ごと、2~3年目は6ヵ月ごと、その後は年に1回実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・両群のQLQ-C30完了率(ITT解析)は、ベースラインは100%、術前療法期間では90%以上、術後療法期間(16サイクルまで)では89%以上、GP5完了率は、ベースライン(2サイクル1日目)で98%以上、術前療法期間および術後療法期間で88%以上であった。
・ベースラインの平均値(95%CI)は、身体機能がアテゾリズマブ群91%(89~93)、プラセボ群90%(88~92)、役割機能がアテゾリズマブ群89%(86~93)、プラセボ群89%(86~92)、健康関連(HR)QOLがアテゾリズマブ群79%(76~82)、プラセボ群76%(73~79)と高かった。
・16サイクルまでの治療評価期間、観察期間を通じ、身体機能、役割機能、HRQOLの平均値とベースライン値からの平均変化は両群で類似していた。
・平均身体機能は、両群で3~5サイクル目の術前療法期間中に臨床的に重要な低下を示したが、術後療法期間に回復し、7サイクル目の開始を安定させた。
・平均役割機能は、アテゾリズマブ群では2サイクル目から、プラセボ群では3サイクル目から5サイクル目までの術前療法期間で臨床的に重要な低下を示したが、術後療法期間に回復し、プラセボ群のみ9サイクル目で安定した。
・平均HRQOLは、両群で3~5サイクル目の術前療法期間で臨床的に重要な低下を示したが、術後療法期間で回復し、6サイクル目から安定した。
・術前療法期間の疲労、下痢、悪心・嘔吐は、機能およびHRQOLにおけるベースライン値からの平均および平均変化と類似した傾向で、両群とも5サイクルを通じて悪化した。術後療法期間の平均症状スコアは、疲労を除いて両群ともベースラインと同様であった。

 Mittendorf氏は、「両群の治療関連症状は類似しており、化学療法へのアテゾリズマブの追加は新たな副作用はみられず忍容性があった。この解析結果から、nab-パクリタキセル後にACを投与する術前化学療法にアテゾリズマブを追加することで、患者に新たな治療負担を与えることなくpCRを改善することが示された」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

IMpassion031試験(ClinicalTrials.gov)

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「523遺伝子を搭載した国内完結型がん遺伝子パネル検査」先進医療に承認/岡山大学

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 新たながん遺伝子パネル検査に関する厚生労働省・先進医療技術【先進医療B】研究として、「国内完結型個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究」が厚生労働省より承認され、2020年12月1日より、岡山大学病院が全国で初めて実施することになった。523遺伝子を搭載した国内では最多となるがん遺伝子パネル検査となる。

 わが国で保険適応されている遺伝子パネル検査は2種類で、それぞれ114、324個の遺伝子を対象にしていた。しかし、がん種によっては十分な遺伝子が調べられないこともあった。
 
 今回、同研究で使用する新たな遺伝子パネルTruSightTM Oncology500(TSO500) は、 523遺伝子を調べることが可能。また、遺伝子の数が多いほど精度が高くなることが示されていることから、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を予測指標の1つである腫瘍遺伝子変異量(TMB)についても、より正確に測定することができるという。

 同研究の対象は、抗がん剤による標準治療を実施後の固形がんと診断された、16歳以上で腫瘍組織が得られる患者。研究は、2020年12月1日(予定)~2022年3月31日までの期間で実施し、予定参加患者は250人である。先進医療にかかる医療費は全額患者負担となり、約60万円程度。

(ケアネット 細田 雅之)


【参考文献・参考サイトはこちら】

岡山大学プレスリリース

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