パルボシクリブ+フルベストラント、内分泌療法感受性のHR+/HER2-進行乳がんでPFS延長(FLIPPER)/ESMO2020

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 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)、内分泌療法感受性の閉経後進行乳がん患者に対する一次治療として、CDK4/6阻害薬パルボシクリブとフルベストラントの併用療法が、フルベストラント単剤療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した。スペイン・Hospital del MarのJoan Albanell氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で第II相FLIPPER試験の早期解析結果を発表した。

 第III相PALOMA-3試験において、内分泌療法抵抗性の患者に対するパルボシクリブ併用療法の有効性が示され、標準治療となっている。FLIPPER試験は、de novo症例または5年以上の術後内分泌療法を完了してから>12ヵ月後に再発した閉経後HR+/HER2-進行乳がん患者を対象とした、国際多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験。

・対象:de novo症例または5年以上の術後内分泌療法を完了してから>12ヵ月後に再発した、HR+/HER2-乳がん患者(閉経後女性、再発後の治療歴なし、ECOG PS≦2)
・試験群:以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付け
パルボシクリブ併用群:28日を1サイクルとし、パルボシクリブ(125mgを3週投与、1週休薬)+フルベストラント(500mgを1サイクル目のみ1日目と15日目、以降1サイクル毎1回投与) 94例
プラセボ群:28日を1サイクルとし、プラセボ+フルベストラント(500mgを1サイクル目のみ1日目と15日目、以降1サイクル毎1回投与) 95例
・層別化因子:内臓 vs.非内臓転移、de novo vs.再発転移
・評価項目:
[主要評価項目]1年時のPFS率(RECIST1.1による治験責任医師評価)
[副次評価項目]PFS中央値、OS、客観的奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・2016年2月~2019年1月、189例が無作為化された。
・年齢中央値は64歳、60.3%が内臓転移を有し、45.5%がde novo症例。両群のベースライン特性はバランスがとれていた。
・主要評価項目である1年時のPFS率(追跡期間中央値28.6ヵ月)は併用群83.5%(80%信頼区間[CI]:78.5~88.5) vs.プラセボ群71.9%(80%CI:65.8~77.9)。ハザード比[HR]:0.55、80%CI:0.36~0.83、p=0.064で、事前に設定された境界値(HR:0.6、検出力:80%、両側検定α=0.2)を満たした。
・副次評価項目であるPFS中央値は、併用群31.8ヵ月(80%CI:30.3~33.4) vs.プラセボ群22ヵ月(80%CI:18.5~25.1)であった(HR:0.52、80%CI:0.39~0.68、p=0.002)。
・1年時のPFS率を層別化因子ごとに解析した結果、内臓転移を有する患者(併用群81.8% vs.プラセボ群69.6%[HR:0.55、p=0.1397])およびde novo症例(90.5% vs.60.2%[HR:0.20、p=0.004])において併用群で有意な改善がみられた。
・ORRは、併用群68.3% vs.プラセボ群42.2%[オッズ比[OR]:2.9、p=0.004])。CBRは、90.4% vs.80.0%[OR:2.3、p=0.048])であった。
・頻度の高いGrade2/4の非血液毒性は、倦怠感(併用群12.8% vs.プラセボ群5.3%)、下痢(併用群3.2% vs. 2.1%)であった。
・頻度の高いGrade3/4の血液毒性は、好中球減少症(併用群68.1% vs.プラセボ群0%)、白血球減少症(26.6%vs.0%)およびリンパ球減少症(14.9% vs.2.1%)であった。好中球減少症や治療に関連した死亡例の報告はなかった。

(ケアネット)


【参考文献・参考サイトはこちら】

FLIPPER試験(Clinical Trials.gov)

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乳がんアジュバント、アベマシクリブ+内分泌療法が予後改善(monarchE)/ESMO2020

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 再発高リスクのホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)乳がんに対する術後療法としての、アベマシクリブと内分泌療法薬の併用は、内分泌療法薬単独よりも、有意に無浸潤疾患生存期間(iDFS)を延長することが示された。日本も参加した、この国際共同のオープンラベル第III相monarchE試験の結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、英国・The Royal Marsden NHS Foundation TrustのStephen R. D. Johnson氏より発表され、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年9月20日号に同時掲載された。追跡期間中央値15.5ヵ月でのアベマシクリブの2年間投与が終了している症例が12.5%で、70%以上が投与中という状況での中間解析。

・対象:HR+/HER2−の初発乳がん、遠隔転移なし腋窩リンパ節転移陽性の症例(閉経状況問わず)、術前/術後の化学療法は許容
・試験群:標準的内分泌療法+アベマシクリブ150mg×2/日投与。アベマシクリブは最長2年間投与(Abe群:2,808例)
・対照群:標準的な術後内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、LH-RHアゴニストなど。薬剤は主治医選択)を5年間以上施行(ET群:2,829例)
・評価項目:
[主要評価項目]iDFS
[副次評価項目]遠隔無転移生存期間(DRFS)、全生存期間(OS)、安全性、患者報告アウトカム、薬物動態

 主な結果は以下のとおり。

・選択された内分泌療法薬は、タモキシフェンが30%程度(うちLH-RHアゴニスト併用が7~8%)、アロマターゼ阻害薬が68%程度(うちLH-RHアゴニスト併用が14~15%)であった。
・iDFSのハザード比(HR)は0.747(95%信頼区間[CI]:0.598~0.932)、p=0.0096でAbe群が有意に予後を延長していた。2年iDSは、Abe群92.2%、ET群88.7%であった。事前に規定されたすべてのサブグループ解析でも、Abe群で優位性が確認された。
・DRFSのHRは0.717(95%CI:0.559~0.920)、p=0.0085でAbe群が有意に予後を改善していた。2年DRFSは、Abe群93.6%、ET群90.3%であった。
・Abe群では有害事象のため16.6%がアベマシクリブの投与を中止し、ET群での薬剤投与中止は0.8%だった(Abe群での下痢による投与中止は4.8%)。
・Abe群で倦怠感、下痢、好中球減少、悪心などが多く発現し、関節痛やほてりはAbe群で少なかったが、その安全性プロファイルは既報のものと齟齬はなかった。
・間質性肺炎はAbe群で2.7%、ET群で1.2%、発熱性好中球減少症はそれぞれ0.3%と0.1%未満に発現した。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】
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Jonston SRD, et al. J Clin Oncol. 2020 Sep 20. [Epub ahead of print]

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早期TN乳がんの術前療法、アテゾリズマブ+化療でpCR改善(IMpassion031)/Lancet

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 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する術前補助療法として、アテゾリズマブ+化学療法(nab-パクリタキセル/ドキソルビシン/シクロホスファミド)の併用は、プラセボ+化学療法と比較して病理学的完全奏効(pCR)率を有意に改善し、忍容性は良好であることが明らかとなった。米国・ダナ・ファーバー/ブリガム&ウィメンズがんセンターのElizabeth A. Mittendorf氏らが、13ヵ国75施設で実施された国際共同無作為化二重盲検第III相試験「IMpassion031試験」の結果を報告した。早期TNBCに対する術前補助療法では、アントラサイクリン/シクロホスファミドやタキサンベースの化学療法が推奨されている。一方、PD-L1陽性の転移があるTNBC患者では、アテゾリズマブ+nab-パクリタキセル併用が無増悪生存期間や全生存期間の改善に有効であることが、IMpassion130試験で示されていた。Lancet誌オンライン版2020年9月20日号掲載の報告。

化学療法へのアテゾリズマブ追加の有効性をプラセボと比較

 IMpassion031試験の対象は、未治療で組織学的に確認されたStageII~IIIのTNBC患者(18歳以上)で、化学療法+アテゾリズマブ(840mg、2週間隔、静注)群または化学療法+プラセボ群に、ステージ(IIまたはIII)とPD-L1発現(<1%または≧1%)で層別化して1対1の割合で無作為に割り付けた。いずれも、nab-パクリタキセル(125mg/m2、毎週、静注)と併用投与を12週間行った後、ドキソルビシン(60mg/m2、2週間隔、静注)およびシクロホスファミド(600mg/m2、2週間隔、静注)との併用投与を8週間行い、手術を実施した。手術後は、アテゾリズマブ群ではアテゾリズマブ1,200mgを3週間隔(静注)で11回投与し、プラセボ群は経過観察を継続した。

 主要評価項目は、無作為化された全患者(ITT集団)およびPD-L1陽性患者(PD-L1発現≧1%)におけるpCRとした。

 2017年7月7日~2019年9月24日の期間に、333例が無作為に割り付けられた(アテゾリズマブ群165例、プラセボ群168例)。カットオフ日(2020年4月3日)時点で、追跡期間中央値はアテゾリズマブ群が20.6ヵ月(IQR:8.7~24.9)、プラセボ群が19.8ヵ月(IQR:8.1~24.5)であった。

アテゾリズマブ+化学療法で、PD-L1発現状態にかかわらずpCR率が17%有意に増加

 ITT集団におけるpCR率は、アテゾリズマブ群が58%(95/165例)(95%信頼区間[CI]:50~65%)、プラセボ群が41%(69/168例)(95%CI:34~49%)で、アテゾリズマブ群が有意に高かった(群間差:17%、95%CI:6~27、片側p=0.0044[有意水準p<0.0184])。

 PD-L1陽性患者におけるpCR率は、アテゾリズマブ群が69%(53/77例)(95%CI:57~79%)、プラセボ群が49%(37/75例)(95%CI:38~61%)であった(群間差:20%、95%CI:4~35%、片側p=0.021[有意水準p<0.0184])。

 術前補助療法期において、Grade3/4の有害事象は両群で差はなく、治療関連の重篤有害事象はアテゾリズマブ群37例(23%)、プラセボ群26例(16%)で認められた。両群で各1例、Grade5の有害事象である死亡(アテゾリズマブ群:交通事故、プラセボ群:肺炎、ともに治療とは関連しない)が報告された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


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Mittendorf EA, et al. Lancet. 2020 Sep 18. [Epub ahead of print]

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早期乳がん術後補助療法でのパルボシクリブ追加、iDFS改善せず(PALLAS)/ESMO2020

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 ホルモン受容体(HR)陽性/HER2陰性の早期乳がんの術後補助療法として、標準的な内分泌療法にCDK4/6阻害薬パルボシクリブを追加しても、無浸潤疾患生存期間(iDFS)を有意に改善できなかったことが、第III相オープンラベルPALLAS試験で示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのErica L. Mayer氏が発表した。

 転移を有するHR陽性/HER2陰性乳がんにおいては、内分泌療法にパルボシクリブを追加することにより無増悪生存期間(PFS)が改善する。このPALLAS試験では、早期乳がんの術後補助療法においても、パルボシクリブの追加でアウトカムが改善するかどうかを検討した。

・対象:Stage II/IIIのHR陽性/HER2陰性乳がん患者(診断後12ヵ月以内、内分泌療法による術後補助療法開始後3ヵ月以内)
・試験群:パルボシクリブ(125mg1日1回、3週投与1週休薬、2年間)+標準的内分泌療法(少なくとも5年)
・対照群:標準的内分泌療法(少なくとも5年)単独
・評価項目
[主要評価項目]iDFS
[副次評価項目]非乳房由来の2次がんを除くiDFS、遠隔無再発生存期間(DRFS)、局所無再発生存期間、全生存期間(OS)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・2015年9月~2018年11月に5,760例(年齢中央値52歳)が登録され、パルボシクリブ併用群と内分泌療法群に1対1で無作為に割り付けられた。
・Stage IIB/IIIの症例が4,729例(82.1%)と多くを占め、化学療法歴のある患者も4,754例(82.5%)と多かった。
・観察期間中央値23.7ヵ月において、3年iDFSはパルボシクリブ併用群88.2%、内分泌療法群88.5%(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.76~1.15、p=0.51)と有意差は認められなかった。また、臨床的高リスクグループ(リンパ節転移4個以上[N2以上]、もしくはリンパ節転移1~3個でT3/T4かつ/またはG3)を含め、臨床病理学的なサブグループのいずれにおいても差が認められなかった。
・3年DRFSについても、パルボシクリブ併用群89.3%、内分泌療法群90.7%(HR:1.00、95%CI:0.79~1.27、p=0.9997)と、差が認められなかった。
・有害事象は、パルボシクリブ併用群99.4%、内分泌療法群88.6%に発現した。Grade3/4の有害事象は、パルボシクリブ併用群で最も多かったのは好中球減少症(61.3%)であった。全Gradeの有害事象は、血液毒性、疲労、上気道感染症、貧血、悪心、脱毛、下痢でパルボシクリブ併用群のほうが多かった。
・パルボシクリブ併用群では、早期中止例が42.2%と多く、データカットオフ時点でパルボシクリブを継続していた患者は25.5%、予定された治療期間を完了した患者は32.3%であった。
・パルボシクリブ併用群における早期中止例の64.2%が有害事象関連によるものだった。24ヵ月時点の早期中止率は、パルボシクリブ併用群6.9%、内分泌療法群6.3%で差がなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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PALLAS試験(ClinicalTrials.gov)

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アテゾリズマブ+パクリタキセル、TN乳がん1次治療でPFS改善せず(IMpassion131)/ESMO2020

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 転移を有する/切除不能な局所進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する1次治療として、アテゾリズマブ+パクリタキセルの併用療法は、無増悪生存期間(PFS)の有意な改善を認めなかった。英国・Mount Vernon Cancer CentreのDavid Miles氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験IMpassion131の結果を報告した。

・対象:進行乳がんに対する化学療法または全身療法歴のない、転移を有する/切除不能な局所進行TNBC患者([ネオ]アジュバント化学療法後≧12ヵ月、ECOG PS≦1)
・試験群:以下の2群に2対1の割合で無作為に割り付け
アテゾリズマブ併用群:28日を1サイクルとし、アテゾリズマブ(840mgを1、15日目投与)、パクリタキセル(90mg/m2を1、8、15日目投与) PD-L1陽性191例/ITT集団431例
※各サイクル少なくとも最初の2回は、デキサメタゾン8~10mgを投与
プラセボ群:28日を1サイクルとし、プラセボ+パクリタキセル(90mg/m2を1、8、15日目投与) PD-L1陽性101例/ITT集団220例
・層別化因子:タキサン治療歴、VENTANA PD-L1 SP142アッセイによるPD-L1発現状況(<1% vs.≧1%)、肝転移の有無、地域(北米 vs.西欧/オーストラリア vs.東欧/アジアvs.南米)
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者およびITT集団における治験責任医師評価によるPFS(PD-L1陽性患者で達成された場合にITT集団で解析を行うことを事前に規定)
[副次評価項目]PD-L1陽性患者およびITT集団における全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・両群のベースライン特性はバランスがとれており、PD-L1≧1%の患者は全体の45%であた。
・2019年11月15日データカットオフ時点におけるPD-L1陽性患者でのPFS中央値は併用群6.0ヵ月 vs.プラセボ群5.7ヵ月(層別ハザード比[HR]:0.82、95%CI:0.60~1.12、ログランク検定p=0.20)で、併用による有意な改善はみられなかった。
・ITT集団でのPFS中央値は併用群5.7ヵ月 vs.プラセボ群5.6ヵ月(層別ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.70~1.05、p値は検出せず)であった。
・タキサン治療歴やPD-L1発現状況、肝転移の有無などPFSのサブグループ解析結果も、PD-L1陽性患者全体と同様の傾向で、併用によるベネフィットがみられる因子はみられなかった。
・治験責任医師評価による未確定のORRは、PD-L1陽性患者で併用群63.4% vs.プラセボ群55.4%、ITT集団で53.6% vs.47.5%であった。
・2020年8月19日データカットオフ時点におけるOS中央値は、PD-L1陽性患者で併用群22.1ヵ月 vs.プラセボ群28.3ヵ月(層別HR:1.12、95%CI:0.76~1.65)。ITT集団で19.2ヵ月 vs.22.8ヵ月(層別HR:1.11、95%CI:0.87~1.42)であった。
・安全性プロファイルは各薬剤の既知のリスクと一致していた。

 ディスカッサントを務めた米国・UNC Lineberger Comprehensive Cancer CenterのLisa Carey氏は、PD-L1陽性患者でベネフィットを示したアテゾリズマブ+ナブパクリタキセル併用のIMpassion130試験との間でなぜ結果に差が生じたのかについて考察。試験対象の患者背景に大きな差異はみられず、パクリタキセル投与時に前投与されるステロイドが免疫チェックポイント阻害薬の効果に影響を及ぼす可能性に言及した。しかし、ペムブロリズマブ+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンのうちいずれか)併用の有効性を評価したKEYNOTE-355試験ではPFS改善が報告されており、引き続き検討が必要とした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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IMpassion131試験(Clinical Trials.gov)

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進行TN乳がん1次治療でのアテゾリズマブ+nab-PTX、OSの最終解析(IMpassion130)/ESMO2020

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 進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)への1次治療として、抗PD-L1抗体アテゾリズマブとnab-パクリタキセル(PTX)の併用療法を検討した第III相IMpower130試験における最終解析における全生存期間(OS)の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で報告された。ITT集団ではOSにおける有意差は認められなかったが、PD-L1陽性患者ではOSの改善がみられたことを、米国・University of Pittsburgh Medical Center Hillman Cancer CenterのLeisha A.Emens氏が発表した。

 本試験の無増悪生存期間(PFS)については、すでに2018年のNEJM誌で報告されており、ITT集団でのハザード比(HR)が0.80(95%信頼区間[CI]:0.69~0.92、p=0.002)、PD-L1陽性患者のHRが0.62(95%CI:0.49~0.78、p<0.001)といずれもアテゾリズマブ併用群の有効性が示されている。また、OSについては、第1回中間解析(データカットオフ2018年4月17日)では、ITT集団でのHRが0.84(95%CI:0.69~1.02、p=0.0840)、PD-L1陽性患者でのHRが0.62(95%CI:0.45~0.86)、第2回中間解析(データカットオフ2019年1月2日)では、ITT集団でのHRが0.86(95%CI:0.72~1.02、p=0.078)、PD-L1陽性患者でのHRが0.71(95%CI:0.54~0.93)であった。

・対象:未治療の転移有りまたは切除不能な局所進行TNBC患者(ECOG PS 0~1)
・試験群(アテゾリズマブ併用群):アテゾリズマブ840mg(1、15日目)+nab-PTX 100mg/m2(1、8、15日目)、28日ごと 451例
・対照群(プラセボ群):プラセボ(1、15日目)+nab-PTX 100mg/m2(1、8、15日目)、28日ごと 451例
・主要評価項目:ITT集団およびPD-L1陽性患者におけるPFSとOS

 主な結果は以下のとおり。

・最終解析のデータカットオフは2020年4月14日で、OS観察期間中央値は18.8ヵ月。
・OS中央値は、ITT集団ではアテゾリズマブ併用群21.0ヵ月、プラセボ群18.7ヵ月(HR:0.87、95%CI:0.75~1.02、p=0.077)で有意な差は認められなかったが、PD-L1陽性患者ではアテゾリズマブ併用群25.4ヵ月、プラセボ群17.9ヵ月(HR:0.67、95%CI:0.53~0.86)と改善が認められた(ただし、事前規定された階層に基づく解析ではない)。
・Grade3/4の有害事象発現率は、アテゾリズマブ併用群51%、プラセボ群43%、重篤な有害事象発現率はアテゾリズマブ併用群24%、プラセボ群19%であった。
・追加の観察期間においても、アテゾリズマブ併用群では安全性と忍容性を維持していた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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新規抗体薬物複合体SG、TN乳がんのPFSとOSを延長(ASCENT)/ESMO2020

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 転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対する新規の抗体薬物複合体(ADC)sacituzumab-govitecan (SG)の国際第III相試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのAditya Bardia氏から発表された。

 このSGは、多くの固形腫瘍の細胞表面に発現するタンパクTrop-2を標的とするADCで、複数の治療歴を有するmTNBCに対し、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を有意に改善することが報告された。

・対象:mTNBCに対する化学療法剤治療を2ライン以上(中央値4ライン)受けている患者529例で、免疫チェックポイント阻害薬やPARP阻害薬の既治療例も含まれる。
・試験群:SG 10mg/kgをday1、8に投与し、1週休薬の3週間隔での点滴投与(SG群)
・対照群:主治医選択の単剤化学療法(エリブリン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビン)(CT群)
・評価項目:
[主要評価項目]脳転移のない症例を対象にした盲検下中央判定によるPFS
[副次評価項目]脳転移がある症例を含む全症例のPFS、脳転移のない症例を対象にしたOSと奏効率、安全性、奏効期間など

 なお、本試験はデータ安全性モニタリング委員会の勧告により、早期の有効中止となっている。

 主な結果は以下のとおり。

・SG群には、脳転移あり32例を含む267例が、CT群には脳転移あり29例を含む262例が登録された。
・脳転移なし集団におけるPFS中央値は、SG群5.6ヵ月、CT群1.7ヵ月で、HRが0.41(95%CI:0.32~0.52、p<0.0001)と、有意にSG群で良好であった。
・OS中央値は、SG群で12.1ヵ月、CT群6.7ヵ月、HRが0.48(95%CI:0.38~0.59、p<0.0001)と、同様に有意にSG群で良好であった。
・奏効率は、SG群35%、CT群5%と、有意にSG群で高かった(p<0.0001)。
・SG群の安全性プロファイルは過去の報告と同様であり、忍容性は良好であった。
・Grade3以上の主な治療関連有害事象は、好中球減少症がSG群で51%、CT群で33%、下痢が10% vs.1%未満、発熱性好中球減少症が6% vs.2%であった。
・SG群では、治療中止となった有害事象の発現率は、4.7%であり(CT群は5.4%)、重度の心血管系毒性はなく、治療関連死もなかった。CT群では治療関連死が1例に発生した。

 Bardia氏は「SGは既治療のmTNBC患者に対する新たな標準治療として考慮すべきである」と結んだ。

(ケアネット)


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ASCENT試験(ClinicalTrials.gov)

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alpelisib+フルベストラント、PIK3CA陽性進行乳がんに対するOS最終結果(SOLAR-1)/ESMO2020

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 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)、PIK3CA変異陽性の進行乳がんに対する、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラントの併用療法は、統計学的有意差には達しなかったものの、フルベストラント単剤療法と比較し全生存期間(OS)を7.9ヵ月延長した。フランス・Institut Gustave RoussyのFabrice Andre氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で第III相SOLAR-1試験のOS最終結果を発表した。

 HR+/HER2-乳がん患者の約40%がPIK3CA変異を有し、予後不良と関連する。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、プラセボ群5.7ヵ月に対しalpelisib+フルベストラント併用群11.0ヵ月と有意な改善を示し(ハザード比[HR]:0.65、 95%信頼区間[CI]:0.50~0.85、片側検定p=0.00065)、米国FDA は2019年5月、欧州委員会は2020年7月に同併用療法を承認している。

・対象:ホルモン療法中/後に再発/進行した、HR+/HER2-乳がん患者(閉経後女性および男性、再発後の化学療法歴なし、ECOG PS≦1)をPIK3CA変異陽性および陰性コホートに分類
・試験群:PIK3CA変異陽性患者を以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付け
alpelisib併用群:28日を1サイクルとし、alpelisib(300mg/日)、フルベストラント(1サイクル目のみ500mgを1日目と15日目、以降1日目)投与 169例
プラセボ群:28日を1サイクルとし、プラセボ+フルベストラント(1サイクル目のみ500mgを1日目と15日目、以降1日目)投与 172例
・評価項目:
[主要評価項目]PIK3CA陽性コホートにおけるPFS
[主要副次評価項目]PIK3CA陽性コホートにおけるOS
[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・本OS解析のデータカットオフ日(2020年4月23日)時点で、死亡は181例、治療継続中の症例は併用群21例(12.4%)、プラセボ群7例(4.1%)であった。
・追跡期間中央値30.8ヵ月におけるOS中央値は併用群39.3ヵ月 vs. プラセボ群31.4ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.64~1.15、片側検定p=0.15)で、事前に設定された境界値(片側検定p≦0.0161)を満たさなかった。
・OSのサブグループ解析の結果、肺および/または肝転移を有する患者(84例vs.86例)におけるOS中央値は併用群37.2ヵ月 vs. プラセボ群22.8ヵ月(HR:0.68、95%CI:0.46~1.00)。血漿ctDNAによるPIK3CA陽性患者(92例vs.94例)におけるOS中央値は併用群34.4ヵ月 vs. プラセボ群25.2ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.51~1.08)であった。
・化学療法開始までの期間の中央値は、併用群23.3ヵ月 vs.プラセボ群14.8ヵ月で(HR:0.72、 95%CI:0.54~0.95)、併用群で8.5ヵ月長かった。
・PFS2(無作為化から、全死因死亡あるいは試験治療中止後の最初の抗腫瘍療法における疾患進行までの期間)は、併用群22.8ヵ月 vs.プラセボ群18.2ヵ月(HR:0.80、 95%CI:0.62~1.03)であった。
・安全性についての長期追跡結果(追跡期間中央値42.4ヵ月)は、以前の報告と一致していた。頻度の高いGrade3/4の有害事象(AE)は、高血糖(併用群37.0% vs.プラセボ群<1%)、皮疹(9.9% vs.<1%)、下痢(7.0% vs.<1%)であった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

SOLAR-1試験(Clinical Trials.gov)

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早期乳がん/DCISへの寡分割照射による乳房硬結リスク(DBCG HYPO試験)/JCO

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 Danish Breast Cancer Group(DBCG)では、1982年以来、早期乳がんに対する放射線療法の標準レジメンは50Gy/25回である。今回、デンマーク・Aarhus University HospitalのBirgitte V. Offersen氏らは、リンパ節転移陰性乳がんまたは非浸潤性乳管がん(DCIS)に対する放射線療法において、40Gy/15回の寡分割照射が標準の50Gy/25回に比べて3年の乳房硬結が増加しないかどうかを検討するDBCG HYPO試験(無作為化第III相試験)を実施した。その結果、乳房硬結は増加せず、9年局所領域再発リスクは低いことが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年9月10日号に掲載。

 本試験の対象は、リンパ節転移陰性乳がんまたはDCISで乳房温存手術を受けた40歳超の1,882例で、50Gy/25回または40Gy/15回の放射線療法に無作為に割り付けた。主要評価項目は、局所領域再発に関して非劣性と仮定して、3年のGrade2〜3の乳房硬結とした。

 主な結果は以下のとおり。

・2009〜14年に、8施設から1,854例(50 Gy群:937例、40 Gy群:917例)が登録された(リンパ節転移陰性乳がん:1,608例、DCIS:246例)。
・3年乳房硬結率は、50Gy群で11.8%(95%CI:9.7〜14.1%)、40Gy群で9.0%(95%CI:7.2〜11.1%)で、硬結リスクは増加しなかった(リスク差:-2.7%、95%CI:-5.6〜0.2%、p=0.07)。
・毛細血管拡張、色素脱失、瘢痕、乳房浮腫、痛みの発現率は低く、美容上のアウトカムと乳房外観における患者満足度はどちらの群も同様に高いか、40Gy群で50Gy群より良かった。
・9年局所領域再発リスクは、50Gy群で3.3%(95%CI:2.0〜5.0%)、40Gy群で3.0%(95%CI:1.9〜4.5%)であった(リスク差:-0.3%、95%CI:-2.3〜1.7%)。
・9年全生存率は、50Gy群で93.4%(95%CI:91.1〜95.1%)、40Gy群で93.4%(95%CI:91.0〜95.2%)と同等であった。
・放射線治療による心臓および肺疾患はまれであり、分割療法による影響はなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】
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Offersen BV, et al. J Clin Oncol. 2020 Sep 10. [Epub ahead of print]

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BRCA変異乳がん患者、妊娠による予後への影響/JCO

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 BRCA変異を有する若年乳がん患者にとって、妊娠は安全であることを示す結果が明らかとなった。乳がん後の妊娠および妊娠による乳がん予後への影響を調べた国際多施設共同後ろ向きコホート試験の結果を、イタリア・ジェノバ大学のMatteo Lambertini氏らが、Journal of Clinical Oncology誌2020年9月10日号に報告した。

 2000年1月~2012年12月に、浸潤性早期乳がんと診断された、40歳以下の生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する患者が本研究に組み入れられた。主要評価項目は、妊娠率、および乳がん後の妊娠の有無による患者間の無病生存期間(DFS)。副次的評価項目は、妊娠のアウトカムと全生存期間(OS)であった。生存時間分析は、既知の予後因子を制御するGuarantee-Time Bias(GTB)を考慮して調整された。

 主な結果は以下のとおり。

・生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する1,252例(BRCA1:811例、BRCA2:430例、 BRCA1 / 2:11例)のうち195例が、乳がん後に少なくとも1回の妊娠を経験した(10年の妊娠率:19%、95%信頼区間[CI]:17~22%)。
・人工流産および流産は、それぞれ16例(8.2%)および20例(10.3%)で発生した。出産した150例(76.9%;乳児170人)のうち、妊娠合併症が13例(11.6%)、先天性異常は2例(1.8%)発生した。
・乳がん診断後の追跡期間中央値8.3年における、妊娠コホートと非妊娠コホートの間で、DFS(調整ハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.61~1.23、p=0.41)およびOS(調整HR:0.88、95%CI:0.50~1.56、p=0.66)の差はみられなかった。

 研究者らは、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する患者の乳がん後の妊娠は、母親の予後を明らかに悪化させることなく安全であり、良好な胎児転帰と関連したと結論づけている。そのうえでこれらの結果は、将来の妊娠・出産について、BRCA変異を有する乳がん患者に安心感をもたらすものとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)

【原著論文はこちら】
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Lambertini M, et al. J Clin Oncol. 2020 Sep 10;38:3012-3023.

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