高齢の早期乳がん、手術省略で生存率は?

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 高齢の手術可能な乳がん患者における手術省略は、生存率に影響はないのだろうか。今回、オランダ・ライデン大学のA. Z. de Boer氏らは、Stage I~IIの80歳以上のホルモン受容体(HR)陽性乳がん患者において調査したところ、手術省略が相対生存率および全生存率低下に関連することが示された。British Journal of Surgery誌オンライン版2020年4月7日号に掲載。

 本研究の対象は、Netherlands Cancer Registryにおいて2003~09年にStage I~IIのHR陽性乳がんと診断された高齢患者(80歳以上)6,464例。手術率の異なる病院の患者間で相対生存率と全生存率を比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・相対生存率は、手術率が低い病院で治療を受けた患者のほうが、手術率が高い病院で治療を受けた患者より低かった(5年後:90.2 vs.92.4%、10年後:71.6 vs.88.2%)。
・手術率の低い病院で治療を受けた患者の相対過剰リスクは2.00(95%CI:1.17~3.40)であった。
・全生存率も、手術率が低い病院で治療を受けた患者のほうが、手術率が高い病院で治療を受けた患者より低かった(5年後:48.3 vs.51.3%、10年後:15.0 vs.19.7%、調整ハザード比:1.07、95%CI:1.00~1.14)。

(ケアネット 金沢 浩子)


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de Boer AZ, et al. Br J Surg. 2020 Apr 7. [Epub ahead of print]

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乳房全摘後の即時再建術、術後合併症が再発率に影響か

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 乳房切除術後の即時乳房再建において、術後合併症の発症率が比較的高い。今回、韓国・成均館大学のK-T Lee氏らの研究から、術後合併症発症が即時再建後の生存と再発に悪影響を与える可能性が示唆された。British Journal of Surgery誌オンライン版2020年4月4日号に掲載。

 本研究では、2008~13年に乳房全摘術と即時再建を実施した乳がん患者438例を5年以上追跡し、術後合併症の腫瘍学的転帰に及ぼす影響について多変量Cox回帰分析を用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値は82ヵ月であった。
・5年局所無再発生存率95.4%、無病生存率93.1%、全生存率98.4%だった。
・術後合併症は、120例(27.4%)で乳房に、30例(6.8%)で他部位(皮弁ドナー部)に発症した。
・乳房合併症の発症は合併症がない場合と比較して、有意に再発率が高かった(16.7% vs.5.9%、p=0.002)。
・多変量解析において、乳房合併症を発症した患者は合併症のない患者より無病生存率が有意に低く(HR:2.25、p=0.015)、術後8週間以内に術後補助療法を受けた患者においても有意なままであった(HR:2.45、p=0.034)。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Lee KT, et al. Br J Surg. 2020 Apr 4. [Epub ahead of print]

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「遺伝性乳がん卵巣がん症候群の保険診療に関する手引き」公開/日本乳癌学会

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 4月から遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の既発症者に対する、リスク低減乳房切除術(RRM)、乳房再建術ならびにリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)が保険収載となった。これを受けて日本乳癌学会では、4月1日にホームページ上で「遺伝性乳がん卵巣がん症候群の保険診療に関する手引き」を公開している。なお、手引きの冒頭では、本手引きがガイドラインあるいはガイダンスではなく、エビデンスが蓄積していない内容も含まれると説明。そのため、HBOC診療に当たっては施設内で医療者のコンセンサスと患者・家族への十分な説明を求めるとともに、手引きについては今後もバージョンアップを図っていくと記されている。

予防的切除が推奨される患者と年齢

 日本人女性の乳がん罹患者数は10万人超と推計されるが、その5~10%がHBOCであり、全乳がんの4%がBRCA1/2遺伝子変異に起因する乳がんである。HBOCは稀な疾患ではなく、日本国内でも年間数千人の女性が乳がんあるいは卵巣がんの治療をされていると推測される。また、その近親者も2分の1の確率で遺伝子変異を受け継いでいる可能性がある。

 乳がん既発症者にBRCA1/2遺伝子変異が判明すれば、リスク低減手術などにより、健側の乳がんの発症と、卵巣がんの発症のリスクを下げることが可能となる。乳がんは30歳頃から、卵巣がんは40歳頃から発症率が上昇するので、RRMは40歳まで、RRSOは50 歳までに実施することが勧められる。

BRCA遺伝学的検査、保険適応の対象となるのは

 BRCA遺伝学的検査が保険適応となるのは、乳がん既発症例の中では、以下のいずれかの項目に当てはまる場合に対象となる:
・45歳以下の発症
・60歳以下のトリプルネガティブ乳がん
・2個以上の原発乳がん発症
・第3度近親者内に乳がんまたは卵巣がん発症者がいる
・男性乳がん
 また、卵巣がん、卵管がんおよび腹膜がん既発症例と、従来からのPARP阻害薬に対するコンパニオン診断の適格基準を満たす場合に保険適用となる。

 本手引きではそのほか、BRCA遺伝学的検査およびRRM、RRSOの施設要件や、HBOC 診療のフローチャートなども提示されており、下記の全14項目で構成されている。
1)これまでのHBOC診療
2)HBOC診療の保険収載の意義
3)BRCA遺伝学的検査の施設要件
4)RRM、RRSOの施設要件
5)乳がんまたは卵巣がん患者の遺伝カウンセリング
6)RRMと乳房再建術
7)健側乳房の病理学的検査
8)RRSO
9)BRCA遺伝子変異患者の近親者への遺伝カウンセリング
10)BRCA遺伝子変異患者と近親者におけるサーベイランス検査
11)BRCA遺伝学的検査の保険診療と自費診療の区分
12)NCD乳癌登録
13)HBOC診療のフローチャート
14)HBOCを学ぶためのツール集

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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固形がんに対するリキッドバイオプシー、「FoundationOne Liquid CDx」の国内申請/中外

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 中外製薬は、2020年03月31日、固形がんに関連する包括的ゲノムプロファイリングを提供するリキットバイオプシー検査として、「FoundationOne Liquid CDx(海外製品名)」に対する製造販売承認申請を厚生労働省に行ったと発表。

 「FoundationOne Liquid CDx」は米国・ケンブリッジに拠点を置くファウンデーションメディシン社が開発した次世代シークエンサーを用いた包括的ながん関連遺伝子解析システム。進行固形がんの患者を対象とし、血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA: circulating tumor DNA)を用いることで、がんの遺伝子変異を検出するリキットバイオプシー検査である。米国では、2018年4月に米国食品医薬品局(FDA)よりBreakthrough Device指定を受けている。

(ケアネット 細田 雅之)


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乳がん術前化療から手術までの日数と術後合併症

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 乳がん治療において術前化学療法(NAC)が増えているが、化学療法から手術までの期間(TTS)はさまざまである。今回、米国・オレゴン健康科学大学のThomas L. Sutton氏らが、術後合併症におけるTTSの影響を評価したところ、28日未満のTTSが術後創合併症の危険因子であることが示された。ただし、合併症のほとんどは軽微で、外来で治療されていた。American Journal of Surgery誌オンライン版2020年3月10日号に掲載。

 本研究は2011年1月~2016年12月に自施設でNACを受けた女性を対象とした後ろ向きレビューで、術後創合併症について調査し多変量解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象の455例におけるTTS中央値は30日(範囲:11〜228)であった。
・多変量解析では、TTSが28日未満の場合、創合併症のオッズが70%高かった(p<0.05)。
・年齢の増加が創合併症との関連が最も強かった(p<0.0001)。
・創合併症の大部分(80例、83%)は外来で治療された。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Sutton TL, et al. Am J Surg. 2020 Mar 10. [Epub ahead of print]

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トラスツズマブ デルクステカン、HER2陽性乳がんに国内承認/第一三共

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 2020年3月25日、第一三共株式会社は「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」の効能・効果で、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ点滴静注用100mg)の製造販売承認を取得した。

 トラスツズマブ デルクステカンの有効性と安全性は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療を受けたHER2陽性の再発・転移を有する乳がん患者を対象としたグローバル第II相臨床試験(DESTINY-Breast01、北米、欧州および日本を含むアジアで実施)の結果により確認された。独立中央判定委員会による奏効率は60.9%、奏効期間中央値は14.8ヵ月であり、持続的な腫瘍縮小効果が示されている。

条件付き早期承認制度のもとで迅速承認、使用上の留意事項を発出

 トラスツズマブ デルクステカンは、日本において医薬品条件付き早期承認制度のもと優先審査品目に指定され、2019年9月に製造販売承認を申請していた。米国では、米国食品医薬品局(FDA)より迅速審査のもとで2019年12月に「転移性の乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能又は転移性乳がん」を適応として承認され、2020年1月より販売を開始している。

 なお、厚生労働省では、臨床試験において間質性肺疾患があらわれ、死亡例が報告されていること、国内での臨床試験症例が限定的であることから、同日(2020年3月25日)付で使用にあたっての留意事項を発出。適正使用を求めている。

・製品名:エンハーツ点滴静注用100mg
・一般名:トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)
・効能・効果:化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)
・用法・用量:通常、成人にはトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回5.4mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。
・承認条件:
1. 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
2. 化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌患者を対象に実施中の第III相試験における本剤の有効性及び安全性について、医療現場に適切に情報提供すること。
3. 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤の使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
・製造販売承認取得日:2020年3月25日
・製造販売元:第一三共株式会社

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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抗がん剤の末梢神経障害、凍結手袋の効果は?/Ann Oncol

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 凍結手袋(frozen gloves)は、抗がん剤治療に伴う手足などの末梢神経障害の予防に有用なのか。オランダ・Maxima Medical Center Eindhoven and VeldhovenのA.J.M. Beijers氏らは、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に対する凍結手袋の予防効果を検討した無作為化試験を行い、凍結手袋を着用した患者と非着用患者でEORTC QLQ-CIPN20スコアに差はみられなかったものの、着用により手の神経障害症状が軽減され、QOLの改善が示されたと報告した。ただし著者は、「今回の試験では着用群の3分の1が治療終了前に試験を中止しており、その点で留意が必要である」と述べ、「今後の研究では、CIPN予防について四肢低体温法に力を注ぐべきであろう」とまとめている。Annals of Oncology誌2020年1月号掲載の報告。

 研究グループは、患者のQOLに影響を及ぼすCIPNを予防するため、化学療法中の凍結手袋着用の有効性および安全性を検討した。2013年2月~2016年5月に腫瘍内科でオキサリプラチン、ドセタキセルまたはパクリタキセルによる治療を開始するがん患者を、治療中に凍結手袋を両手に着用する(FG)群と着用しない(対照)群に無作為に割り付けた。

 CIPNおよびQOLは、ベースライン(t0)、3サイクル後(t1)、化学療法終了時(t2)および化学療法終了6ヵ月後(t3)の4時点で、EORTC QLQ-CIPN20およびQLQ-C30を用いた患者の自己報告に基づき評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・各群90例、計180例が登録された。ほとんどが大腸がんまたは乳がんの治療を受けた。
・FG群において、31例(34%)は主に不快感のため試験を中止した。
・intention-to-treat解析では、FG群と対照群との間でEORTC QLQ-CIPN20スコアに重要な差は示されなかったが、FG群は対照群と比較して、指/手のチクチク感(β=-10.20、95%信頼区間[CI]:-3.94~-3.14、p=0.005)、手の力の低下による瓶やボトルを開ける際の問題(β=-6.97、95%CI:-13.53~-0.40、p=0.04)が減少した。
・per-protocol解析でも同様の結果で、指/手のうずくような痛みや灼熱感(β=-4.37、95%CI:-7.90~-0.83、p=0.02)および手のけいれん(β=-3.76、95%CI:-7.38~-0.14、p=0.04)が減少した。
・t1での指/手のチクチク感の差異は、臨床的に関連していた。
・FG群は対照群よりQOL(β=4.79、95%CI:0.37~9.22、p=0.03)および身体機能(β=5.66、95%CI:1.59~9.73、p=0.007)が良好であった。
・用量減量による差異は観察されなかった。

(ケアネット 細田 雅之)


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Beijers AJM, et al. Ann Oncol. 2020;31:131-136.

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乳がん術前治療、BRCA1/2変異患者でpCR率高い/JAMA Oncol

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 さまざまなサブタイプの乳がんに対する2つの術前治療レジメンの効果を比較した多施設前向き無作為化試験GeparOctoにおいて、ドイツ・ケルン大学病院のEsther Pohl-Rescigno氏らが遺伝子変異の有無別に2次解析したところ、BRCA1/2遺伝子変異のある患者で病理学的完全奏効(pCR)率が高いことが示された。JAMA oncology誌オンライン版2020年3月12日号に掲載。

 GeparOctoは、intense dose-denseエピルビシン+パクリタキセル+シクロホスファミド(iddEPC)とweeklyパクリタキセル+非ペグ化リポソームドキソルビシン(PM)の2つの術前治療レジメンの効果を比較した無作為化試験で、2014年12月~2016年6月に実施された。PM群に割り付けられたトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者にはカルボプラチンが追加された(PMCb)。本試験では2群間に差は認められなかった。今回、著者らはBRCA1/2および他の乳がん素因遺伝子の生殖細胞系列変異の有無による治療効果を検討した。

 本研究は2017年8月~2018年12月に、GeparOctoの対象患者945例のうち914例におけるBRCA1/2遺伝子および16種の乳がん素因遺伝子の変異について、ケルンのCenter for Familial Breast and Ovarian Cancerで遺伝子解析を実施した。主要評価項目は、生殖細胞系列変異の有無別にみた術前治療後のpCR(ypT0 /is ypN0)を達成した患者の割合。

 主な結果は以下のとおり。

・914例の乳がん診断時の平均年齢は48歳(範囲:21~76歳)であった。
・pCR率は、BRCA1/2遺伝子変異陽性患者(60.4%)が陰性患者(46.7%)より高かった(オッズ比[OR]:1.74、95%CI:1.13~2.68、p=0.01)。一方、BRCA1/2遺伝子以外の乳がん素因遺伝子の変異はpCR率と関連がみられなかった。
BRCA1/2遺伝子変異陽性のTNBC患者でpCR率が最も高かった。
・TNBC患者において、BRCA1/2遺伝子変異陽性は、PMCb群(74.3% vs. 陰性47.0%、OR:3.26、95%CI:1.44~7.39、p=0.005)およびiddEPC群(64.7% vs. 陰性45.0%、OR:2.24、95%CI:1.04~4.84、p=0.04)の両群ともpCR率に関連していた。
BRCA1/2遺伝子変異陽性は、HR陽性ERBB2陰性乳がんにおける高いpCR率とも関連していた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Pohl-Rescigno E, et al. JAMA Oncol. 2020 Mar 12. [Epub ahead of print]

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がん10年生存率57.2%に、80%以上のがん種も/全がん協調査

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 国立がん研究センターの研究班は3月17日、全国がんセンター協議会(以下、全がん協)加盟の全国32施設における、全がんおよび部位別の、がん生存率最新データを公表した。前回調査と比較して、全がんの5年相対生存率は0.5ポイント増の68.4%、10年相対生存率は0.8ポイント増の57.2%であった。現在、10年生存率の算出と公開を行っているのは同研究班によるもののみで、部位別生存率において相対生存率(がんによる死亡)のほか、実測生存率(全死亡)も提示していることが特徴。

<調査概要>
収集症例:1997~2011年までに32施設で診断治療を行った68万9,207症例
集計対象:
[5年生存率]2009~11年に診断治療を行った症例のうち、以下の条件を満たした14万2,947症例(前回調査は2008~10年症例)
[10年生存率]2003~06年に診断治療を行った症例のうち、以下の条件を満たした8万708症例(前回調査は2002~05年症例)
集計基準:
・15歳未満、95歳以上は除外
・良性腫瘍、上皮内がん、0期、転移性腫瘍は除外
・自施設診断自施設治療、および他施設診断自施設治療症例(診断のみは解析対象外)
・下記の基準を満たした施設のデータのみを集計
 臨床病期判明率60%以上
 追跡率(予後判明率)90%以上

5年相対生存率は前立腺、乳、甲状腺がんで90%以上

 部位別(22種)・臨床病期別に、全症例と手術症例の5年生存率が算出された。全部位全臨床病期の5年相対生存率(全症例)は68.4%で、前回調査の67.9%からは0.5ポイント増でほぼ横ばい、初回調査(1997~99年)の61.8%からは徐々に改善傾向がみられている。部位別の5年生存率(相対生存率/実測生存率)について、主な結果は以下の通り:
・5年相対生存率90%以上
 前立腺(100%/88.6%)、乳(女)(93.7%/91.0%)、甲状腺(92.4%/88.7%)
・5年相対生存率70%以上90%未満
 子宮体(86.4%/83.9%)、大腸(76.8%/70.3%)、子宮頸(76.8%/75.0%)、胃(74.9%/67.6%)など
・5年相対生存率50%以上70%未満
 腎臓など(69.4%/63.9%)、膀胱(69.0%/60.6%)、卵巣(66.2%/64.7%)
・5年相対生存率30%以上50%未満
 食道(46.0%/41.7%)、肺(45.2%/41.2%)、肝(37.0%/33.1%)
・5年相対生存率30%未満
 胆のう胆道(28.6%/25.6%)、膵(9.9%/9.2%)

10年相対生存率は前立腺、乳、甲状腺、子宮体がんで80%以上

 部位別(18種)・臨床病期別に、全症例と手術症例の10年生存率が算出された。全部位全臨床病期の10年相対生存率(全症例)は57.2%で、前回調査の56.4%からは0.8ポイント上昇。部位別の10年生存率(相対生存率/実測生存率)について、主な結果は以下の通り:
・10年相対生存率90%以上
 前立腺(97.8%/72.3%)
・10年相対生存率70%以上90%未満
 乳(85.9%/80.9%)、甲状腺(84.1%/77.4%)、子宮体(81.2%/76.5%)
・10年相対生存率50%以上70%未満
 子宮頸(68.8%/65.6%)、大腸(67.8%/56.5%)、胃(65.3%/53.7%)、腎など(64.0%/54.5%)など
・10年相対生存率30%以上50%未満
 卵巣(45.3%/43.1%)、肺(30.9%/25.8%)、食道(30.9%/25.4%)
・10年相対生存率30%未満
 胆のう胆道(18.0%/14.8%)、肝(15.6%/12.8%)、膵(5.3%/4.5%)

 研究班では、前回調査との比較において、多くの部位で5年および10年の生存率上昇を認める一方、低下している部位も含めて、臨床的に意味のある変化は認められないとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

国立がん研究センタープレスリリース

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がん患者が過剰摂取しやすいサプリメントは?

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 多くのがん患者は、がん診断後に栄養補助食品を使い始める傾向にある。そのため、がんではない人と比べ、どのような栄養補助食品が、がんサバイバーの総栄養摂取量に寄与しているかを検証する必要がある。今回、米国・タフツ大学のMengxi Du氏らは「がんではない人と比較した結果、がんサバイバーへの栄養補助食品の普及率は高く、使用量も多い。しかし、食事摂取量は少ない」ことを明らかにした。研究者らは「がんサバイバーは食事からの栄養摂取が不十分である。とくに高用量を摂取する栄養補助食品の短期~長期的使用による健康への影響について、がんサバイバー間でさらに評価する必要がある」としている。Journal of Nutrition誌オンライン版2020年2月26日号掲載の報告。

 研究者らは、がんサバイバーが全栄養摂取のうち栄養補助食品から摂取している栄養素を調べ、がんではない人との総栄養摂取量を比較する目的で、2003~2016年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した成人がんサバイバー2,772人と、がんではない3万1,310人を調査。栄養補助食品の使用率、用量および使用理由について評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・がんサバイバーとがんではない人の栄養補助食品の普及率は70.4% vs.51.2%と、がんサバイバーで高かった。マルチビタミン/ミネラルの普及率は48.9% vs.36.6%で、ビタミン系11種類、ミネラル系8種類の服用が報告された。
・全体的に、がんサバイバーは栄養補助食品からの栄養摂取量が有意に多く、食事から大部分の栄養素がとれていなかった。
・がんサバイバーは、がんではない人と比較して食事摂取量が少ないため、葉酸、ビタミンB6、ナイアシン、カルシウム、銅、リンの摂取量が不十分な人の割合が高かった(総栄養摂取量<平均必要量[EAR:Estimated Average Requirement]または栄養所要量[AI:Adequate Intake])。
・その一方で、がんサバイバーはビタミンD、ビタミンB6、ナイアシン、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛を、栄養補助食品から過剰摂取(総栄養摂取≧許容上限摂取量[UL:tolerable upper intake level])している割合が高かった。
・栄養補助食品を摂取するほぼ半数(46.1%)は、管理栄養士・栄養士に相談せずに独自に摂取していた。

(ケアネット 土井 舞子)


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Du M et al, J Nutr. 2020 Feb 26.[Epub ahead of print]

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