マンモグラフィ、AIと医師一人読影の併用で高精度に

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 人工知能(AI)は人間によるマンモグラフィ読影の限界を克服できるのだろうか。今回、米国・セージバイオネットワークスのThomas Schaffter氏らが検討したところ、AI単独では放射線科医を上回ることはなかったが、放射線科医の一人読影との併用で精度が改善することが示された。JAMA Network Open誌2020年3月2日号で発表した。

 診断精度に関する本研究は2016年9月~2017年11月に実施され、マンモグラフィ検診の読影に絞ったAIアルゴリズム開発を促進するために、国際的なクラウドソーシングチャレンジが開催された。44ヵ国126チーム、1,100人以上が参加し、2016年11月18日に分析を開始した。

 アルゴリズムは、画像単独、もしくは、画像、以前の検査(利用可能な場合)、および臨床的・人口統計学的危険因子データを組み合わせて使用し、12ヵ月以内のがんの有無を表すスコアをアウトプットした。アルゴリズムの乳がん検出の精度は、曲線下面積(AUC)およびアルゴリズムの特異度(放射線科医の感度を85.9%[米国]および83.9%[スウェーデン]に設定したときの放射線科医の特異度と比較)で評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・8万5,580人の米国人女性(952人が検診後12ヵ月以内にがん陽性)における14万4,231件、および6万8,008人(780人ががん陽性)のスウェーデン人女性における16万6,578件の乳房X線写真を用いて、アルゴリズムのトレーニングと検証を行った。
・最も精度が高かったアルゴリズムは、AUCが0.858(米国)および0.903(スウェーデン)、放射線科医の感度における特異度が66.2%(米国)および81.2%(スウェーデン)で、地域医療の放射線科医における特異度の90.5%(米国)および98.5%(スウェーデン)より低かった。
・最も精度の高かったアルゴリズムと米国の放射線科医の判定を併用すると、AUCは0.942と上昇し、同感度における特異性は92.0%と大幅に改善した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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JAMA Netw Open. 2020 Mar 2;3:e200265.

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エリブリン治療における乳がん患者のOS予測因子は?(EMBRACE)

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 局所進行または転移を有する乳がん(MBC)患者へのエリブリン治療における、全生存期間(OS)の予測因子が評価された。これまでに、好中球・リンパ球比(NLR)がエリブリン治療における無増悪生存期間(PFS)の予測因子となる可能性が示唆されている。兵庫医科大学の三好 康雄氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年3月5日号掲載の報告より。

 研究グループは、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む前治療歴のあるMBC患者に対する、エリブリンと主治医選択薬(TPC)の有効性を比較した第III相EMBRACE試験のPost-Hoc解析を実施。ベースライン時のリンパ球絶対数(ALC)およびNLRとOSの関連が両群で評価された。

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時のALCとNLRは、それぞれ751例(エリブリン群500例 vs.TPC群251例)、713例(475例 vs.238例)で評価可能であった。
・ベースラインALC≧1,500/μLの患者で、エリブリン群はTPC群と比較してOSを有意に延長した(ハザード比[HR]:0.586、95%信頼区間[CI]:0.437~0.784、p<0.001)。
・ALC<1,500/μLの患者では、治療法による有意差はみられなかった(HR:1.002、95%CI:0.800~1.253、p=0.989)。
・単変量および多変量解析の結果、ベースラインALCがエリブリン治療患者におけるOSの潜在的な予測因子として特定された。
・OSの相互作用解析は、カットオフ値として1,500/μLを支持した。
・カットオフ値3のNLRは、エリブリン群におけるOS延長と関連した。しかし、同様の結果がTPC群でも観察され、明らかな相互作用効果は確認できず、NLRはエリブリン群におけるOSの特定の予測因子ではなく、一般的な予後予測因子である可能性が示唆された。

 著者らは、本研究からはベースラインALCがエリブリン治療によるMBC患者のOS延長の独立した予測因子であることが示唆され、追加の侵襲的処置を必要とせずに評価できるため、臨床的に有用な可能性があると考察している。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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Miyoshi Y, et al. Breast Cancer. 2020 Mar 5. [Epub ahead of print]

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簡略化MRI、高濃度乳房で高い乳がん検出率/JAMA

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 高濃度乳房(dense breast)女性の乳がんスクリーニング検査では、簡略化乳房MRI(AB-MRI)はデジタル乳房トモシンセシス(DBT)に比べ、浸潤性乳がんの検出率が有意に高いことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのChristopher E. Comstock氏らECOG-ACRIN Cancer Research Groupが行ったEA1141試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年2月25日号に掲載された。高濃度乳房の女性は乳がんのリスクが高く、マンモグラフィでも早期診断が難しいため、スクリーニング検査法の改良が求められているという。

2つの検査を受けた女性を長期に追跡した横断研究

 本研究は、高濃度乳房女性の乳がんスクリーニングにおけるAB-MRIとDBTの診断能を比較する横断研究である(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。米国の47施設とドイツの1施設が参加し、2016年12月~2017年11月の期間に患者登録が行われ、2019年9月までフォローアップが実施された。

 対象は、年齢40~75歳、直近のマンモグラフィによるスクリーニング検査で高濃度乳房(米国放射線学会[ACR]の定義で、heterogeneously denseまたはextremely dense)とされ、DBTによる乳がんスクリーニング検査を受ける予定の臨床的に無症状の女性であった。

 被験者は、ベースラインと1年後に、AB-MRI(造影剤投与前後にT2強調とT1強調画像を10分以内に撮像)とDBTの両方を受けた(検査間隔は24時間以内)。2つの検査の施行順は、中央で無作為化された。読影バイアスを回避するために、2人の乳房放射線科医が独立に、互いの検査結果をブラインドした状態で読影した。

 DBTで陽性所見の女性は、追加画像検査を受けるよう勧められ(コールバック)、AB-MRIの施行前に最終診断が行われた。また、AB-MRIまたはDBTで「良性腫瘍が弱く疑われる(probably benign)」所見の女性は、6ヵ月後に「短期フォローアップ」として画像検査が推奨された。

 主要評価項目は、浸潤性乳がんの検出率とした。副次評価項目には、感度、特異度、追加画像検査推奨率(コールバック+短期フォローアップの推奨)、生検の陽性反応適中度(PPV)が含まれた。浸潤性乳がんまたは非浸潤性乳管がん(DCIS)、あるいは双方の発現を、これら評価項目の陽性参照基準と定義した。また、コア生検または外科的生検の病理所見を、がん検出率とPPVの参照基準とした。

追加画像検査推奨率やPPVに差はない

 1,516例の女性が登録され、1,444例(96%、年齢中央値54歳[範囲:40~75])が2つの検査の双方を受けた。高濃度乳房のACR分類の内訳は、heterogeneously denseが77%、extremely denseは15%だった。

 17例の女性(19病変)が、DCISの有無にかかわらず浸潤性乳がんが陽性で、6例はDCISが単独で陽性であった。フォローアップ期間中に、中間期がんは認められなかった。

 AB-MRIは、17例の浸潤性乳がんをすべて検出し、6例のDCISのうち5例を検出した。また、DBTは、浸潤性乳がん女性17例中7例を、DCIS女性6例中5例を検出した。浸潤性乳がん検出率は、AB-MRIは1,000例当たり11.8例(95%信頼区間[CI]:7.4~18.8)、DBTは1,000例当たり4.8例(2.4~10.0)であり、1,000例当たりの差は7例(2.2~11.6)と、AB-MRIで有意に良好であった(exact McNemar検定のp=0.002)。

 浸潤性乳がんおよびDCISの検出の感度は、AB-MRIが95.7%(95%CI:79.0~99.2)、DBTは39.1%(22.2~59.2)であり(p=0.001)、特異度はそれぞれ86.7%(84.8~88.4)および97.4%(96.5~98.1)であった(p<0.001)。また、追加画像検査推奨率は、AB-MRIが7.5%(6.2~9.0)、DBTは10.1%(8.7~11.8)であり、有意な差はなかった(Bonferroni補正後のp=0.02[p<0.01で有意差ありと定義])。また、生検のPPVは、AB-MRIが19.6%(13.2~28.2)、DBTは31.0%(17.0~49.7)だった(p=0.15)。

 1年以内に12例に13件の有害事象が認められた。8件(62%)はGrade1またはそれ以下であった。最も頻度の高い有害事象は、軽度アレルギー反応(3件)と不安(2件)だった。

 著者は、「スクリーニング検査法と臨床アウトカムの関連を、よりよく理解するためにさらなる研究を要する」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Comstock CE, et al. JAMA. 2020;323:746-756.

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がん患者のCOVID-19感染~非がん患者と比べて/Lancet Oncol

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 中国およびその他の地域では、SARS-CoV-2による重症急性呼吸器症候群が発生している。がん患者は化学療法や手術などの抗がん治療によって引き起こされる全身性の免疫抑制により、易感染状態であることが多い。そのため、COVID-19についても感染リスクが高く、さらに感染後も予後不良の可能性がある。

 中華人民共和国の国立呼吸器疾患臨床研究センターと国民健康委員会が協力し、中国全土でCOVID-19症例を観察する前向きコホートを設立した。 2020年1月31日のデータカットオフの時点で、31の地方行政区域から2,007例の症例を収集。記録不十分な417例を除外し1,590のCOVID-19症例を分析している。Lancet Oncology誌2020年3月1日号では、その中から、がん患者について分析している。

・COVID-19患者1,590例のうち18例(1%、95%CI:0.61~1.65)にがんの既往があり、これは285.83/100,000人(0.29%、2015年がん疫学統計)という中国人全体のがんの発生率よりも高かった。
・COVID-19を合併した18例のがん患者内訳をみると、最も頻度の高いのは肺がん(5例、28%)であった。
・重症イベント(ICU入院、要侵襲的換気または死亡)は、がん患者では39%(18例中7例)に観察されたが、非がん患者では8%(1,572例中124例)で、がん患者で有意に重症イベントのリスクが高かった(p=0.0003)。
・重症イベントはさらに、1ヵ月以内に化学療法または外科手術を受けた患者では75%(4例中3例)、受けていない患者43%(14例中6例)と、化学療法または外科手術を受けた患者で高かった。
・重症イベントまでの時間を評価すると、がん患者では中央値13日、非がん患者では43日で、がん患者のほうが急速に悪化することが明らかになった(年齢調整後HR:3.56、95%CI:1.65~7.69、p<0.0001)。

(ケアネット 細田 雅之)


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Liang W,et al.Lancet Oncol. 2020 Feb 14.[Epub ahead of print]

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早期TN乳がん、ペムブロリズマブ+術前化学療法が有望/NEJM

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 早期トリプルネガティブ乳がん患者に対し、ペムブロリズマブ+術前化学療法はプラセボ+術前化学療法に比べ、手術時の病理学的完全奏効率が約14%ポイント有意に高いことが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏らが行った第III相無作為化比較試験の結果、示された。追跡期間中央値15.5ヵ月後の病勢進行を認めた被験者の割合も、ペムブロリズマブ+術前化学療法を行った群で低かったという。先行試験で早期トリプルネガティブ乳がん患者における、ペムブロリズマブの有望な抗腫瘍活性と忍容可能な安全性プロファイルが示されていたが、術前化学療法へのペムブロリズマブ追加が、手術時の病理学的完全奏効(浸潤がんなし・リンパ節転移陰性と定義)を得られる患者割合を有意に増大するかについては不明であった。NEJM誌2020年2月27日号掲載の報告。

4サイクルのペムブロリズマブ3週間ごと+パクリタキセルとカルボプラチン投与

 試験は、未治療のStageIIまたはIIIのトリプルネガティブ乳がん患者を2対1で無作為に2群に割り付けて行われた。一方の群には、術前補助療法として4サイクルのペムブロリズマブ(200mg)3週間ごと+パクリタキセルとカルボプラチンを投与(784例)。もう一方の群には、同サイクルのプラセボ3週間ごと+パクリタキセルとカルボプラチンを投与した(390例)。その後、両群に、4サイクルのペムブロリズマブまたはプラセボの追加投与と、ドキソルビシン-シクロホスファミドまたはエピルビシン-シクロホスファミドの投与を行った。

 根治手術後にも術後療法として、ペムブロリズマブまたはプラセボの3週間ごと投与を最大9サイクル行った。

 主要評価項目は、intention-to-treat集団における根治手術時における病理学的完全奏効と無イベント生存期間だった。

病理学的完全奏効の推定治療差は約14%ポイント

 初回中間解析では、無作為化された最初の患者602例のうち、根治手術時における病理学的完全奏効が認められたのは、ペムブロリズマブ群64.8%(95%信頼区間[CI]:59.9~69.5)、プラセボ群51.2%(44.1~58.3)だった(推定治療群間差:13.6%ポイント、95%CI:5.4~21.8、p<0.001)。

 追跡期間中央値15.5ヵ月後(範囲:2.7~25.0)において、根治手術不能の病勢進行や局所/遠隔再発または2次原発がんの発生、全死因死亡のいずれかを認めたのは、ペムブロリズマブ群784例中58例(7.4%)、プラセボ群390例中46例(11.8%)であった(ハザード比[HR]:0.63、95%CI:0.43~0.93)。

 全治療段階において、Grade3以上の治療関連有害事象の発生は、ペムブロリズマブ群では78.0%、プラセボ群が73.0%であり、うち死亡例はそれぞれ3例(0.4%)と1例(0.3%)であった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)


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Schmid P, et al. N Engl J Med. 2020;382:810-821.

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ペムブロリズマブ併用、転移TN乳がん1次治療でPFS延長/MSD

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 MSD株式会社は2020年2月21日、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対する初回治療として、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)と化学療法の併用療法が、化学療法単独と比較して無増悪生存期間(PFS)を延長したと発表した(第III相KEYNOTE-355試験)。

 KEYNOTE-355試験は、化学療法歴のない、手術不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、ペムブロリズマブと化学療法併用の有効性を評価する無作為化比較試験。本試験は2パートからなり、パート2では登録患者847例が、ペムブロリズマブ+3種類の化学療法のうちの1つ(ナブパクリタキセル、パクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチンから医師が選択)の併用療法群と、プラセボ+同3種の化学療法のうちの1つの化学療法単独群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、全患者およびPD-L1陽性(CPS≧1およびCPS≧10)患者における全生存期間(OS)とPFS。

 今回、独立データ監視委員会(DMC)の中間解析により、CPS≧10のPD-L1陽性患者において、併用療法群で統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるPFSの改善が認められた。ペムブロリズマブの安全性プロファイルはこれまでに報告されている試験で認められているものと一貫しており、新たな安全性の懸念は特定されていない。

 同社はプレスリリースの中で、データは今後の学術集会において発表予定としている。また、DMCの推奨に基づき、もう一つの主要評価項目であるOSについても、変更なく評価を継続する。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-355試験(Clinical Trials.gov)

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ペグフィルグラスチムの自動投与デバイス国内臨床試験開始/協和キリン

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 協和キリンは、ペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)の自動投与デバイスに関する国内臨床試験を本年2月19日に開始した。

 ペグフィルグラスチムは持続型G-CSF製剤。がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制を適応症とし2014年より日本にて販売している製品で、がん化学療法を行った翌日以降に医療機関にて投与が行われる。

 ペグフィルグラスチムが翌日に自動投与される仕組みを搭載した同デバイスをがん化学療法と同日に使用することにより、ペグフィルグラスチム投与のための通院が不要となり、患者の通院負担、さらには医療従事者の負担の軽減にもつながることを期待している。

 同試験は、第I相多施設共同非対照非盲検試験で、対象はがん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制。主要評価項目は安全性で、予定被験者数は30例である。第I相臨床試験の位置づけだが、本臨床試験のデータを使用し厚生労働省へ製造販売承認申請を行う予定だという。

(ケアネット 細田 雅之)


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HER2低発現乳がんへのtrastuzumab deruxtecanの効果と安全性/JCO

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 trastuzumab deruxtecan(T-DXd)は2019年12月、米国食品医薬品局(FDA)より「転移乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能または転移乳がん」に対して迅速承認された。今回、HER2低発現(IHC 1+もしくは2+ / ISH-)の乳がん患者における推奨展開用量(RDE)の効果と安全性について、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのShanu Modi氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年2月14日号で報告。本剤の有望な抗腫瘍活性が示され、毒性は消化管または血液毒性がほとんどだったが、重要なリスクとして間質性肺疾患(ILD)が特定された。

 本試験の適格患者は、標準治療に不応/不耐の進行/転移HER2低発現乳がん患者(米国は18歳以上、日本は20歳以上)。T-DXdを、同意の撤回、許容できない毒性発現、または病勢進行まで、3週ごとに1回、5.4または6.4mg/kgを静脈内投与し、抗腫瘍活性と安全性を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・2016年8月~2018年8月に54例が登録され、RDEで1回以上T-DXdを投与した。
・前治療の中央値は7.5であった。
・独立中央判定による奏効率は20/54(37.0%、95%CI:24.3~51.3%)、奏効期間中央値は10.4ヵ月(95%CI:8.8ヵ月~未達)であった。
・治療関連有害事象(TEAE)は、患者のほとんど(53/54、98.1%)で1つ以上認められた(Grade3以上:34/54、63.0%)。
・Grade3以上の主な(5%以上)TEAEは、好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症、貧血、低K血症、AST上昇、食欲不振、下痢などであった。
・6.4mg/kgで治療された3例で、T-DXdによる間質性肺疾患(ILD)/肺臓炎関連の致死的イベントを認めた(独立中央判定委員会による)。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Modi S, et al. J Clin Oncol. 2020 Feb 14:JCO1902318. [Epub ahead of print]

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日本人HER2+早期乳がんへのトラスツズマブ、長期予後解析(JBCRG-cohort study 01)

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 日本人のHER2陽性早期乳がん患者に対する、周術期のトラスツズマブ療法による5年および10年時の予後への影響が評価された。大規模試験において予後改善が示されてきたが、日本人患者における長期的有効性は明らかではない。また、新たな抗HER2薬などが登場する中で、治療を強化すべき患者と、軽減すべき患者の判断基準が課題となっている。そのため、治療選択のための再発予測モデルの構築が試みられた。天理よろづ相談所病院の山城 大泰氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年2月14日号掲載の報告より。

 本研究は、浸潤性HER2陽性乳がんI~IIIC期と組織学的に診断され、周術期にトラスツズマブによる治療を少なくとも10ヵ月以上受けた20歳以上の患者を対象とした観察研究。主要評価項目は無病生存期間(DFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・2009年7月~2016年6月の間に、国内56施設から2,024例を登録。適格基準を満たさなかった43例を除き、1,981例が解析対象とされた。
・ベースライン時の治療歴は、術前化学療法を35.4%、術後化学療法を99.6%が受けていた。トラスツズマブ投与は術前のみが1.3%、術前および術後が22.2%、術後のみが76.5%であった。乳房温存術を51.6%、乳房切除術を48.4%が受けていた。また、術後ホルモン療法は48.2%、術後放射線療法は57.5%が受けていた。
・追跡期間中央値は80.9ヵ月(5.0~132.2ヵ月、平均80.2ヵ月)。
・5年DFS率は88.9%(95%信頼区間[CI]:87.5~90.3%)、10年DFS率は82.4%(95%CI:79.2~85.6%)。
・5年OS率は96%(95%CI:95.1~96.9%)、10年DFS率は92.7%(95%CI:91.1~94.3%)。
・多変量解析により、再発のリスク因子は≧70歳、≧T2、臨床的に認められたリンパ節転移、組織学的腫瘍径>1cm、組織学的に認められたリンパ節転移(≧n2)、および術前治療の実施であった。
・標準治療下での5年再発率は、構築された再発予測モデルでスコアが3以上の患者で10%超と推定された。

 著者らは、単群の観察研究データに基づくことの限界に触れたうえで、この再発予測モデルがI~IIIC期の患者の治療選択を改善する可能性があると結んでいる。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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Yamashiro H, et al. Breast Cancer. 2020 Feb 14. [Epub ahead of print]

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転移TN乳がん1次治療、PTXにcapivasertib追加でPFSとOS延長(PAKT)/JCO

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 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)においてはPI3K/AKTシグナル伝達経路の活性化が頻繁にみられる。TNBCの1次治療でパクリタキセル(PTX)にAKT阻害薬capivasertibを追加したときの有効性と安全性を評価した二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験(PAKT試験)で、capivasertib追加で無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が著明に延長し、とくにPIK3CA/AKT1/PTEN変異TNBCではより顕著であったことを英国・クイーンメアリー大学のPeter Schmid氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌2020年2月10日号に掲載。

 本試験の対象は未治療の転移を有するTNBCの女性140例。1サイクル28日間でPTX 90mg/m2(1、8、15日目)+capivasertib(400mg、1日2回)またはPTX+プラセボ(2~5、9~12、16~19日)に無作為に1対1に割り付け、病勢進行または許容できない毒性発現まで投与した。主要評価項目はPFS、副次評価項目はOSのほか、PIK3CA/AKT1/PTEN変異によるサブグループでのPFSおよびOS、腫瘍縮小効果、安全性であった。

 主な結果は以下のとおり。

・PFS中央値は、capivasertib+PTXが5.9ヵ月、プラセボ+PTXが4.2ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.50〜1.08、片側p=0.06、事前に定義された有意水準は片側p=0.10)。
・OS中央値は、capivasertib+PTXが19.1ヵ月、プラセボ+PTXが12.6ヵ月であった(HR:0.61、95%CI:0.37〜0.99、両側p=0.04)。
PIK3CA/AKT1/PTEN変異患者(28例)のPFS中央値は、capivasertib+PTXが9.3ヵ月、プラセボ+PTXが3.7ヵ月であった(HR:0.30、95%CI:0.11〜0.79、両側p=0.01)。
・Grade3以上の主な有害事象は、下痢(capivasertib+PTX vs.プラセボ+PTX:13% vs.1%)、感染症(4% vs.1%)、好中球減少症(3% vs.3%)、発疹(4% vs.0%)、疲労(4% vs.0%)であった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Schmid P, et al. J Clin Oncol. 2020;38:423-433.

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