日本人トリプルネガティブ乳がんのMSI-H頻度は?

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 日本人のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者におけるMSI-H頻度は高くはないものの、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)のターゲットとなる患者が存在することが示唆された。九州大学の倉田 加奈子氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年1月6日号掲載の報告より。

 本邦では、MSI-HまたはdMMRを有する進行固形がんに対しペムブロリズマブが承認されている。また、ゲノム不安定性を有する腫瘍はPD-1 / PD-L1阻害に良好な反応を示し、難治性乳がんの有望なターゲットとなりうることが示唆されている。しかし、日本人TNBCにおけるMSI-H頻度は明らかになっていない。

 本研究では、2004年1月から2014年12月の間に、国内3施設で術前化学療法なしで切除を実施した女性TNBC患者228例を対象に、MSI-H頻度を後ろ向きに評価した。MSI解析には、5種類のマイクロサテライトマーカー(BAT-26、NR-21、BAT-25、MONO-27、NR-24)によるMSI Analysis System Version 1.2(Promega)を使用している。

 主な結果は以下のとおり。

・228検体のうち、222検体(97.4%)がマイクロサテライト安定性、4検体(1.7%)がMSI-L(いずれか1種類のマーカーで不安定性を示す)、2検体(0.9%)がMSI-H (2種類以上のマーカーで不安定性を示す)であった。
・MSI-Hの2検体では、ともにBAT-26、NR21およびBAT-25の3つのマーカーで不安定性を示した。これらの腫瘍はそれぞれT1N0およびT2N0であり、NG3およびKi-67高値(>30%)といった予後不良とされる特徴を有し、基底細胞様、non-BRCAnessに分類された。1検体でのみPD-L1発現が確認され、2検体でTIL低値およびCD8陰性であった。
・MSI-Lの4検体では、不安定性を示したマーカーはそれぞれ異なり、4検体が基底細胞様、2検体のみnon-BRCAnessに分類された。また、1検体のみPD-L1発現がありTIL高値、そのほか3検体はTIL低値であった。

 著者らは、日本人TNBCにおけるMSI-H頻度は稀ではあるものの、ICIの潜在的なターゲットとなる患者は存在し、包括的なゲノムプロファイリングのプラットフォームを使用してピックアップしていく必要があると結論付けている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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Kurata K, et al. Breast Cancer. 2020 Jan 6. [Epub ahead of print]

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trastuzumab deruxtecan(DS-8201)、米国で乳がんの承認取得/第一三共

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 第一三共とアストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ)は、2019年12月23日、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)trastuzumab deruxtecanについて、米国食品医薬品局(FDA)より「転移乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能又は転移乳がん」を適応として販売承認を取得したと発表。

 本適応は、T-DM1治療を受けたHER2陽性の再発・転移乳がんを対象としたグローバル第II相臨床試験(DESTINY-Breast01)の奏効率および奏効期間の結果に基づき、迅速審査のもとで承認された。本適応での承認取得は条件付きであり、第III相臨床試験における臨床的有用性の検証が必要となる。同剤については、2019年10月にFDAより承認申請が受理されていた。

(ケアネット 細田 雅之)


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閉経後ルミナールB乳がんへの術前療法、ribociclib+レトロゾール併用が有望(CORALLEEN)/SABCS2019

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 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)の閉経後乳がんに対する術前療法として、ribociclibとレトロゾールの併用投与が、術前化学療法と同様の効果を示す可能性があるとの試験結果が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、スペインInstituto Valenciano de OncologiaのJoaquin Gavila氏より発表された。この結果はLancet Oncology誌オンライン版2019年12月11日号に同時掲載された。

 本試験(CORELLEEN試験)は、2017年7月~2018年12月にスペイン国内(21施設)で実施された、オープンラベル無作為化比較の第II相試験である。

・対象:Stage I~IIIAのHR+/HER2-ルミナールBタイプの閉経後乳がん患者(ルミナールBタイプは遺伝子発現プロファイル検査法PAM50で判定)
・試験群:ribociclib+レトロゾール群(R群) 52例
・対照群:ドキソルビシン+シクロホスファミド後にパクリタキセル逐次投与群(CT群) 54例
・評価項目:
[主要評価項目]手術時にPAM50によりROR(Risk Of Recurrence)-lowと判定される割合
[副次評価項目]組織学奏効率(pCR)、残存腫瘍量(RCB)とPEPI(Preoperative Endocrine Prognostic Index)スコア、PAM50によるサブタイプ変化、奏効率、QOL、安全性、バイオマーカー検索など

 両群共に6ヵ月の投薬期間後に手術を施行。ROR-Lowの判定は、リンパ節転移陰性(n0)の場合、RORスコア40以下、リンパ節転移1~3個(n1-3)の場合、15以下とした。同様にn0でRORスコアが41~60、n1~3で16~40をIntermediateとした。

 主な結果は以下のとおり。

・遺伝子検査の解析対象はR群49例、CT群51例であった。
・手術時のROR-lowの割合は、R群46.9%(95%信頼区間[CI]:32.5~61.7)、CT群:46.1%(95%CI:32.9~61.5)であった。
・RORスコアの中央値は、R群18、CT群25であった。中央判定によるKi67の中央値は、R群3、CT群10であった。
・pCR率はR群0%(95%CI:0~7.2)、CT群5.8%(95%CI:1.4~16.6)、PEPIスコア0はR群22.4%(95%CI:11.7~36.6)、CT群17.3%(95%CI:8.6~31.4)であった。
・手術時におけるサブタイプ変化は、R群の87.8%、CT群の82.7%がルミナールAとなっており、ルミナールBはR群で8.2%、CT群で15.4%であった。
・ベースラインと薬剤投与15日目のRORの変化を見たところ、R群の1例以外はすべて減少しており、CT群に比べ大きなRORの低下がみられた。
・Grade3以上の有害事象(AE)の発現率は、R群で56.9%、CT群で69.2%、重篤なAEはR群で3.9%、CT群で15.4%であった。また、AEによる投与中止はR群で15.7%、CT群で19.2%であった。

Gavila氏はSABCSのプレスリリースで、「ハイリスクのルミナールB乳がん患者に対するribociclibとレトロゾールの併用による術前内分泌療法は有害事象も少なく、術前化学療法と同等の臨床的効果があり、今後は術前化学療法にとって代わる可能性がある」と述べている。

(ケアネット)


【参考文献・参考サイトはこちら】

Prat A, et al. Lancet Oncol. 2019 Dec 11.[Epub ahead of print]

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乳房温存手術後の同側再発の抑制に、加速乳房部分照射は有効か/Lancet

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 乳房温存手術後の放射線療法において、温存乳房内再発(IBTR)の予防に関して、加速乳房部分照射(APBI)の全乳房照射(WBI)に対する非劣性が示された。ただし、APBIでは急性毒性の発現は少ないものの、中等度の晩期有害事象の増加と整容性不良が認められた。カナダ・マックマスター大学およびJuravinski Cancer CenterのTimothy J. Whelan氏らが、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのがんセンター33施設で実施した多施設共同無作為化非劣性試験「RAPID試験」の結果を報告した。WBIは、整容性が良好で局所再発を低下させるものの、乳房温存手術後3~5週間にわたり1日1回照射が必要であることから、より簡便な方法として腫瘍床に1週間照射するAPBIが開発された。Lancet誌2019年12月14日号掲載の報告。

乳がん患者2,135例をAPBI群とWBI群に無作為化、IBTR率を評価

 研究グループは、乳房温存手術を受けた非浸潤性乳管がんまたはリンパ節転移陰性の40歳以上の乳がん患者を、APBI群(38.5Gy/10回、1日2回で5~8日間)またはWBI群(42.5Gy/16回、1日1回21日間、または50Gy/25回、1日1回35日間)に1対1の割合で無作為に割り付けた(非盲検)。

 主要評価項目はIBTRで、APBIのWBIに対する非劣性マージンは、IBTRハザード比(HR)の両側90%信頼区間(CI)上限値が2.02未満とした。

 2006年2月7日~2011年7月15日に2,135例が登録され、APBI群1,070例、WBI群1,065例に無作為化された。APBI群のうち6例は治療前に同意撤回、4例は放射線治療を受けず、16例はWBIを受け、WBI群では16例が同意撤回、2例が放射線治療を受けなかった。また、追跡不能および追跡期間中の撤回が、APBI群で14例および9例、WBI群でそれぞれ20例および35例であった。

APBIはWBIに対して非劣性

 追跡期間中央値8.6年(IQR:7.3~9.9)において、8年累積IBTR率はAPBI群で3.0%(95%CI:1.9~4.0)、WBI群で2.8%(95%CI:1.8~3.9)であった。WBIに対するAPBIのHRは1.27(90%CI:0.84~1.91)であり、非劣性が認められた。

 急性放射線毒性(放射線療法開始後3ヵ月以内、Grade2以上)の発現率は、APBI群(28%、300/1,070例)がWBI群(45%、484/1,065例)より有意に低かった(p<0.0001)。

 一方、晩期放射線毒性(3ヵ月以降、Grade2以上)の発現率は、APBI群(32%、346/1,070例)がWBI群(13%、142/1,065例)より有意に高かった(p<0.0001)。
 また、整容性不良(fairまたはpoor)の患者の割合も、APBI群がWBI群より3年時(絶対群間差:11.3%、95%CI:7.5~15.0)、5年時(16.5%、12.5~20.4)および7年時(17.7%、12.9~22.3)のいずれにおいても高率であった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


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Whelan TJ, et al. Lancet. 2019;394:2165-2172.

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アナストロゾール5年投与の乳がん予防効果、11年後も(IBIS-II)/Lancet

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 乳がん発症リスクが高い閉経後女性において、アナストロゾールの予防効果は投与終了後も長期にわたり維持されており、新たな遅発性の副作用は報告されなかったことが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のJack Cuzick氏らによる長期追跡試験「IBIS-II試験」で示された。「MAP.3」および「IBIS-II」の2件の大規模臨床試験において、アロマターゼ阻害薬投与後最初の5年間で高リスク女性の乳がん発症率が低下することが報告されていたが、アナストロゾール投与終了後の長期的な乳がん発症率についてはこれまで不明であった。Lancet誌オンライン版2019年12月12日号掲載の報告。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。

乳がん発症高リスク閉経後女性約3,900例で、アナストロゾール5年投与による乳がん発症率をプラセボと比較

 IBIS-II試験(International Breast Cancer Intervention Study II)は、乳がん高リスク閉経後女性におけるアナストロゾールの乳がん(浸潤性乳がんまたは非浸潤性乳管がん)に対する発症予防効果および安全性を評価する、国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。

 研究グループは、2003年2月2日~2012年1月31日の間に、40~70歳の乳がん発症高リスク閉経後女性(一般女性に対する乳がん相対リスクが40~44歳は4倍以上、45~60歳は2倍以上、60~70歳は1.5倍以上)3,864例を、アナストロゾール(1mgを1日1回経口投与)群(1,920例)またはプラセボ群(1,944例)に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ5年間投与した。

 治療完遂後、年1回追跡調査を行い、乳がん発症、死亡、その他のがんの発症、主要有害事象(心血管イベントおよび骨折)に関するデータを収集した。主要評価項目は、すべての乳がん発症で、Cox比例ハザードモデルを用いてintention-to-treat解析を行った。

アナストロゾール群で追跡期間約11年の乳がん発症率が49%低下

 追跡期間中央値131ヵ月(IQR:105~156)において、乳がん発症率はアナストロゾール群で49%減少した(85例vs.165例、ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.39~0.66、p<0.0001)。

 乳がん発症率の低下は、最初の5年間が大きかったが(35例vs.89例、HR:0.39、95%CI:0.27~0.58、p<0.0001)、5年以降も有意であり(新規発症例:50例vs.76例、HR:0.64、95%CI:0.45~0.91、p=0.014)、最初の5年間と5年以降とで有意差はなかった(p=0.087)。

 エストロゲン受容体陽性浸潤性乳がんの発症率は54%低下し(HR:0.46、95%CI:0.33~0.65、p<0.0001)、治療完遂後に有意な効果が持続した。非浸潤性乳管がんは59%低下し(HR:0.41、95%CI:0.22~0.79、p=0.0081)、とくにエストロゲン受容体陽性で著しかった(HR:0.22、95%CI:0.78~0.65、p<0.0001)。

 観察された全死亡(69例vs.70例、HR:0.96、95%CI:0.69~1.34、p=0.82)、または乳がん死亡(2例vs.3例)について、両群で有意差は確認されなかった。非乳がんの発症率は、アナストロゾール群で有意な低下が確認され(147例vs.200例、オッズ比:0.72、95%CI:0.57~0.91、p=0.0042)、とくに非黒色腫皮膚がんの発症率低下が大きかった。

 骨折または心血管疾患のリスク増加は確認されなかった。

 結果を踏まえて著者は、「さらなるフォローアップを行い、乳がん死亡への効果を評価することが必要だ」と述べている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


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Cuzick J, et al. Lancet. 2019 Dec 12. [Epub ahead of print]

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乳がん病期分類と微量栄養素の関係

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 乳がん治療は、治療法の種類によって酸化ストレスレベル増加や抗酸化物質の枯渇を招く可能性がある。乳がんの病期分類が進行するにつれて、血清の微量栄養素濃度の有意な低下がみられることが、ブラジル・リオデジャネイロ連邦大学のCintia Rosa氏らの調査で明らかとなった。「微量栄養素間の相乗効果は、利益を最大化し、正常細胞への照射の悪影響を最小化するために考慮されなければならない」と報告している。Nutrients誌オンライン版2019年12月4日号掲載の報告。

 研究グループは放射線治療前の乳がん患者を対象とした横断観察研究を行い、乳がんの病期分類(TNM分類)と微量栄養素(レチノール、β-カロテン、亜鉛)の血清濃度の相関関係を調査、放射線治療前に行われるさまざまな治療法とこれらの微量栄養素間の相乗効果について検討した。患者は、グループ1:乳房温存手術、グループ2:化学療法のみ、グループ3:乳房温存手術と化学療法の3グループに割り付けられ、それぞれのグループにおいて、レチノール、β-カロテン、および亜鉛の血清濃度を定量化した。

 主な結果は以下のとおり。

・230例の患者を評価した。
・疾患の病期分類が進行するにつれ、微量栄養素の血清濃度が低下した。
・手術のみの場合でも、レチノールは血清濃度に大きな悪影響を及ぼした。
・放射線治療前の治療を考慮すると、手術のみと術後化学療法を受けている患者では、β-カロテンとレチノールの欠乏率が高かった。
・亜鉛、レチノール、およびβ-カロテンの濃度間に正の相関があり、これらの微量栄養素間の相乗効果が示された。

(ケアネット 土井 舞子)


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Rosa C, et al. Nutrients. 2019 Dec 4.[Epub ahead of print]

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HR+乳がん、術後ホルモン療法に1年のS-1併用が有効(POTENT)/SABCS2019

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 ホルモン受容体陽性乳がん(HRBC)に対する術後療法として、5年間のホルモン療法に1年間のS-1の併用が有効であるとの試験結果が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、京都大学の戸井 雅和氏より発表された。

 本試験(POTENT試験)は、2012年2月~2016年2月に症例登録がなされた、国内多施設共同(139施設)のオープンラベル無作為化比較の第III相試験である。中間解析時に主要評価項目の閾値を達成したため早期に試験が中止され、今回の発表となった。

・対象:StageI~IIIBのエストロゲン陽性かつHER2陰性再発リスク中~高の乳がん患者1,959例 (リンパ節転移状況は問わず)
・試験群:S-1(2週連日投与1週休薬を1年間)と標準的ホルモン療法の併用群(S-1群) 解析対象957例
・対照群:標準的ホルモン療法群(E群) 解析対象973例
・評価項目:
[主要評価項目]無浸潤疾患生存期間(iDFS)
[副次評価項目]無病生存期間、全生存期間、安全性、バイオマーカー検索など

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値51ヵ月時点の5年時iDFS率はS-1群86.9%、E群81.6%で、ハザード比(HR)が0.63(95%信頼区間[CI]:0.49~0.81、p<0.0001)と、S-1群が統計学的に有意に良好な結果を示した。
・各サブグループの解析(閉経状況、術前/術後の化学療法の有無、Ki-67値など)においても、ほぼ一貫してS-1群は良好な結果を示した。
・安全性の報告に関しては、好中球減少、肝機能障害、消化器症状、色素沈着などがS-1群で多く報告されたが、いずれも対応可能であった。

 SABCSのプレスリリースで戸井氏は「本試験の対象は日本人症例だけであり、安全性プロファイルに人種差がある可能性もあるが、HRBCへの術後ホルモン療法にS-1を併用することで、iDFSを有意に改善できる」と述べている。

(ケアネット)


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早期TN乳がんの術前化療後のctDNA検出が再発と関連/SABCS2019

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 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)で術前化学療法(NAC)後に手術を受けた女性において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)検出が遠隔無病生存期間(DDFS)および全生存期間(OS)に関連することが示された。米国・Indiana University Simon Cancer CenterのMilan Radovich氏が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で発表した。

 本研究では、第II相BRE12-158試験(NAC後に残存病変を有する早期TNBC患者を、遺伝子に基づく治療と主治医選択の治療に無作為に割り付け)に登録された患者から採取した血漿サンプルを分析した。本試験には196例が参加し、FoundationOne Liquidにより142例のctDNA配列が解析された。ctDNA検出とDDFSおよびOSとの関連について、log-rank検定による単変量解析およびCox比例ハザードモデルを使用した多変量解析で評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・142例のうち90例(63%)で変異したctDNAが検出され、最も多い変異はTP53であった。
・追跡期間中央値17.2ヵ月において、ctDNA検出がDDFSと有意に関連し、ctDNA陽性例ではDDFS中央値が32.5ヵ月であったのに対し、陰性例では未到達であった。
・24ヵ月後のDDFS率は、ctDNA陰性例81%に対し、陽性例では56%であった。多変量解析においても、残存腫瘍量、リンパ節転移の数、腫瘍の大きさ、ステージ、悪性度、年齢、人種を含む共変量を調整後、ctDNA検出とDDFSの間に独立した関連が認められ、ctDNA陽性例は陰性例に比べて遠隔再発リスクが3倍高かった。
・ctDNA検出はOSの低下にも関連しており、ctDNA陽性例は陰性例に比べ死亡リスクが4.1倍高かった。

 SABCS2019のプレスリリースで、本研究のシニアオーサーであるBryan P. Schneider氏(Indiana University)は「この結果は、術前化学療法後にctDNAが検出された早期TNBC患者は再発リスクが高いことを証明している」と述べている。

(ケアネット 金沢 浩子)


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乳房温存手術後の同側再発の抑制に、加速乳房部分照射は有効か/Lancet

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 乳房温存手術では、腫瘍摘出術後の加速乳房部分照射(APBI)は全乳房照射と比較して、同側乳房腫瘍再発(IBTR)のコントロールにおいて同等性の判定基準を満たさないことが、米国・NRG OncologyのFrank A. Vicini氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌2019年12月14日号に掲載された。早期乳がんに対する乳房温存手術後の全乳房照射はIBTRを抑制し、乳房全切除術と同等の結果をもたらす。一方、腫瘍のある四分円にのみ照射するAPBIは治療期間の短縮をもたらすが、その効果が乳房全切除術と同等かは知られていない。

4ヵ国で行われた無作為化同等性試験

 本研究は、4ヵ国(米国、カナダ、アイルランド、イスラエル)の154施設が参加した無作為化第III相同等性試験(NSABP B-39/RTOG 0413)であり、2005年3月21日~2013年4月16日の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上の女性で、早期(Stage 0/I/II、遠隔転移はないが最大3個の腋窩リンパ節が転移陽性)の乳がん(腫瘍径≦3cm、すべての組織型、多病巣性乳がん)が認められ、腫瘍摘出術後の切除断端が陰性(がん細胞が検出されない)の患者であった。

 被験者は、APBIまたは全乳房照射を受ける群に無作為に割り付けられた。APBIは、8日以内に5治療日で、小線源治療(34Gy)または外照射療法(38.5Gy)を行った。全乳房照射は、外照射療法により総線量50Gyを25日に分けて5週間で照射した(腫瘍床への追加照射の有無にかかわらず)。患者、担当医、統計解析者には治療割り付け情報がマスクされた。

 主要アウトカムは、初回の浸潤性または非浸潤性IBTRとし、脱落例を除くintention-to-treat集団で解析が行われた。同等性の検定は、相対リスクのマージンの50%増加とし、ハザード比(HR)の90%信頼区間(CI)が0.667~1.5の範囲内の場合に同等と判定した。

10年累積IBTR発生率の絶対差は1%未満

 4,216例(APBI群2,107例、全乳房照射群2,109例)が登録され、4,125例(2,089例、2,036例)が主要アウトカムの解析に含まれた。追跡期間中央値は10.2年(IQR:7.5~11.5)。

 ベースラインの全体の年齢中央値は54歳(IQR:47~64)、2,587例(61%)が閉経後、3,788例(90%)が白人で、3,185例(76%)が浸潤性乳がん、1,031例(24%)が非浸潤性乳管がん(DCIS)であり、浸潤性のうち2,518例(79%)とDCISの908例(88%)がホルモン受容体(ER、PgR)陽性であった。

 IBTRの発生率は、APBI群が4%(90/2,089例)、全乳房照射群は3%(71/2,036例)であった。HRは1.22(90%CI:0.94~1.58)であり、APBI群の同等性の判定基準は満たされなかった。10年累積IBTR発生率は、APBI群が4.6%(95%CI:3.7~5.7)、全乳房照射群は3.9%(3.1~5.0)であり、両群間の絶対差はわずか0.7%であった。

 10年無再発生存率(APBI群91.8%、全乳房照射群93.4%、HR:1.33、95%CI:1.04~1.69、p=0.02)は全乳房照射群で良好であったが、10年無遠隔病変生存率(96.7%、97.1%、1.31、0.91~1.91、p=0.15)、10年生存率(90.6%、91.3%、1.10、0.90~1.35、p=0.35)、10年無病生存率(78.1%、79.7%、1.12、0.98~1.29、p=0.10)は両群間に差はなかった。乳がんの再発による死亡率は、APBI群が2%(49例)、全乳房照射群も2%(44例)だった。

 サブグループ解析(探索的事後解析)では、腫瘍径≦10mmの浸潤性乳がんで、APBI群の10年IBTR発生率が良好な傾向が認められた(APBI群2.0%、全乳房照射群3.9%、HR:0.58、95%CI:0.27~1.22、交互作用のp=0.01)。

 APBI群で、最も高い毒性のグレードが1の患者は40%、2は44%、3は10%、全乳房照射群ではそれぞれ31%、59%、7%であり、Grade4/5は10例(<1%)および6例(<1%)で発現した。1つ以上の2次原発がん(APBI群9%[192例]、全乳房照射群10%[200例]、HR:0.93、95%CI:0.76~1.13、p=0.46)の頻度は両群間で類似しており、このうち対側乳がんと同側の乳房肉腫は、APBI群が33%(63例)、全乳房照射群は36%(72例)で認められた(0.83、0.59~1.17、p=0.29)。治療関連死はみられなかった。

 著者は、「これらの知見は、乳房温存手術における腫瘍摘出術後の全乳房照射を支持するものだが、10年累積IBTR発生率の絶対差は1%未満であり、一部の女性ではAPBIが許容可能な代替法となる可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Vicini FA, et al. Lancet. 2019;394:2155-2164.

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新規ADC薬のDS-8201、既治療HER2+乳がんで腫瘍縮小効果/NEJM

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 多くの前治療歴(レジメン数中央値6)のある転移を有するHER2陽性乳がんの治療において、trastuzumab deruxtecan(DS-8201)は持続的な腫瘍縮小効果(奏効率60.9%、奏効期間中央値14.8ヵ月)をもたらすことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏らが行った「DESTINY-Breast01試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年12月11日号に掲載された。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。trastuzumab deruxtecanは、トラスツズマブと同じアミノ酸配列を持ち、HER2を特異的な標的とするヒト化モノクローナル抗体と、細胞傷害性薬剤(ペイロード)である強力なトポイソメラーゼI阻害薬を、開裂可能なテトラペプチドベースのリンカーを介して結合した抗体薬物複合体(ADC)。既治療のHER2陽性進行乳がんの第I相用量設定試験(DS8201-A-J101試験)では、奏効率59.5%、奏効期間中央値20.7ヵ月と報告されている。

8ヵ国で行われた2部構成の単群第II相試験

 本研究は、北米、日本を含むアジア、欧州の8ヵ国72施設が参加した2部構成の多施設共同非盲検単群第II相試験であり、2017年10月~2018年9月の期間に患者登録が行われた(Daiichi SankyoとAstraZenecaの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上(日本と韓国は20歳以上)の切除不能または転移を有するHER2陽性乳がんで、全身状態(ECOG PS)が0/1であり、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)による治療歴のある患者であった。

 試験の第1部では、被験者はtrastuzumab deruxtecanの3つの用量(5.4、6.4、7.4mg/kg、3週ごとに静脈内投与)に無作為に割り付けられ、推奨用量が決定された。第2部では、推奨用量による治療の有効性と安全性の評価が行われた。

 主要評価項目は、中央判定による奏効率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])とし、主な副次評価項目は病勢コントロール率(DCR、CR+PR+安定[SD])、臨床的有用率(CBR、CR+PR+6ヵ月以上持続するSD)、奏効期間、無増悪生存(PFS)期間、安全性などであった。

DCR 97.3%、CBR 76.1%、間質性肺疾患に注意が必要

 第1部では、trastuzumab deruxtecanの第2部での推奨用量が5.4mg/kgと決定された。

 5.4mg/kg群(184例)の年齢中央値は55.0歳(範囲:28.0~96.0)で、23.9%が65歳以上であり、97例(52.7%)がホルモン受容体陽性腫瘍であった。前治療レジメン数中央値は6(2~27)で、全例にT-DM1とトラスツズマブの治療歴があり、121例(65.8%)がペルツズマブ、100例(54.3%)がその他の抗HER2療法を受けていた。

 治療期間中央値は10.0ヵ月(範囲0.7~20.5)で、追跡期間中央値は11.1ヵ月(範囲0.7~19.9)であり、128例(69.6%)が6ヵ月以上の治療を受けていた。

 第2部では、184例中112例で奏効が得られ、奏効率は60.9%(95%信頼区間[CI]:53.4~68.0)であった。内訳はCRが6.0%、PRは54.9%であった。DCRは97.3%、CBRは76.1%だった。

 T-DM1投与中または投与後に増悪した180例のうち、奏効が確認されたのは61.1%であった。また、T-DM1投与の直後にtrastuzumab deruxtecanの投与を受けた56例中36例(64%)で奏効が得られた。

 奏効期間中央値は14.8ヵ月(95%CI:13.8~16.9)、PFS期間中央値は16.4ヵ月(12.7~未到達)であった。また、6ヵ月の時点での全生存(OS)率の推定値は93.9%(89.3~96.6)、1年OS率は86.2%(79.8~90.7)であり、OS期間中央値には未到達であった。

 最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、好中球数の減少(基本語として好中球数減少[neutrophil count decreased]と好中球減少[neutropenia]を含む)であり、20.7%(38/184例)に認められた。次いで、貧血が8.7%(16例)、悪心が7.6%(14例)にみられた。発熱性好中球減少は3例で発現した。独立判定委員会により、13.6%(25例)が試験薬関連の間質性肺疾患(Grade1/2:10.9%、Grade3/4:0.5%、Grade5:2.2%)と判定された。

 著者は、「間質性肺疾患のリスクを考慮し、肺症状への配慮と注意深いモニタリングが求められる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Modi S, et al. N Engl J Med. 2019 Dec 11. [Epub ahead of print]

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