BRCA変異HER2-乳がんへのveliparib追加、HR+でもTNでもPFS改善(BROCADE3)/ESMO BC2020

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 生殖細胞系列のBRCA遺伝子(gBRCA)変異のあるHER2陰性進行乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセルへのPARP1/2阻害薬veliparibの上乗せ効果を検討した第III相BROCADE3試験のサブグループ解析で、ホルモン受容体(HR)陽性でもトリプルネガティブ(TN)でも無増悪生存期間(PFS)を改善させることが示された。カナダ・Centre Hospitalier de l’Universite de MontrealのJean-Pierre Ayoub氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)で報告した。なお、主要評価項目であるPFSについては、すでに2019年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で有意に改善することが報告されている。また、HRの有無によるPFSの解析は事前に規定されていた。

・対象:gBRCA1/2変異陽性のHER2陰性進行乳がん(転移に対する細胞傷害性の抗がん剤治療が2レジメン以下、プラチナ製剤は1レジメン以下、投与終了から12ヵ月以内に進行なし)
・試験群:veliparib(120mg 1日2回、Day -2~5)+カルボプラチン(AUC 6、Day 1)/パクリタキセル(80mg/m2、Day 1、8、15)21日ごと 337例
・対照群:プラセボ+カルボプラチン/パクリタキセル 172例
・主要評価項目:PFS

 主な結果は以下のとおり。

・ITT集団509例のうち、HR陽性が266例(52%)、TNが243例(48%)であった。
・HR陽性患者において、治験責任医師の評価によるPFS中央値は、veliparib群(174例)が13.0ヵ月(95%CI:12.1~16.6)、プラセボ群(92例)が12.5ヵ月(95%CI:10.2~13.2)であった(ハザード比[HR]:0.69、95%CI:0.52~0.93、p=0.013)。2年PFSはveliparib群27.5%、プラセボ群15.3%、3年PFSはveliparib群17.5%、プラセボ群が8.6%であった。
・TN患者において、治験責任医師の評価によるPFS中央値は、veliparib群(163例)が16.6ヵ月(95%CI:12.3~22.7)、プラセボ群(80例)が14.1ヵ月(95%CI:11.0~15.8)であった(HR:0.72、95%CI:0.52~1.00、p=0.051)。2年PFSはveliparib群40.4%、プラセボ群25.0%、3年PFSはveliparib群35.3%、プラセボ群13.0%であった。
・HR陽性患者において、OS中央値は、veliparib群が32.4ヵ月(95%CI:26.5~37.9)、プラセボ群が27.1ヵ月(95%CI:22.9~35.2)であった(HR:0.96、95%CI:0.68~1.36、p=0.829)。
・TN患者において、OS中央値は、veliparib群が35.0ヵ月(95%CI:24.9~NE)、プラセボ群が30.0ヵ月(95%CI:24.5~NE)であった(HR:0.92、95%CI:0.62~1.36、p=0.683)。
・HR陽性、TNの両サブグループにおいて、全Gradeの貧血、好中球減少症、悪心、下痢の発現率がveliparib群でプラセボ群より5%以上高かった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

NCT02163694(Clinical Trials.gov)

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BRCA変異HER2-乳がんへのveliparib追加、HR+でもTNでもPFS改善(BROCADE3)/ESMO BC2020

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 生殖細胞系列のBRCA遺伝子(gBRCA)変異のあるHER2陰性進行乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセルへのPARP1/2阻害薬veliparibの上乗せ効果を検討した第III相BROCADE3試験のサブグループ解析で、ホルモン受容体(HR)陽性でもトリプルネガティブ(TN)でも無増悪生存期間(PFS)を改善させることが示された。カナダ・Centre Hospitalier de l’Universite de MontrealのJean-Pierre Ayoub氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)で報告した。なお、主要評価項目であるPFSについては、すでに2019年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で有意に改善することが報告されている。また、HRの有無によるPFSの解析は事前に規定されていた。

・対象:gBRCA1/2変異陽性のHER2陰性進行乳がん(転移に対する細胞傷害性の抗がん剤治療が2レジメン以下、プラチナ製剤は1レジメン以下、投与終了から12ヵ月以内に進行なし)
・試験群:veliparib(120mg 1日2回、Day -2~5)+カルボプラチン(AUC 6、Day 1)/パクリタキセル(80mg/m2、Day 1、8、15)21日ごと 337例
・対照群:プラセボ+カルボプラチン/パクリタキセル 172例
・主要評価項目:PFS

 主な結果は以下のとおり。

・ITT集団509例のうち、HR陽性が266例(52%)、TNが243例(48%)であった。
・HR陽性患者において、治験責任医師の評価によるPFS中央値は、veliparib群(174例)が13.0ヵ月(95%CI:12.1~16.6)、プラセボ群(92例)が12.5ヵ月(95%CI:10.2~13.2)であった(ハザード比[HR]:0.69、95%CI:0.52~0.93、p=0.013)。2年PFSはveliparib群27.5%、プラセボ群15.3%、3年PFSはveliparib群17.5%、プラセボ群が8.6%であった。
・TN患者において、治験責任医師の評価によるPFS中央値は、veliparib群(163例)が16.6ヵ月(95%CI:12.3~22.7)、プラセボ群(80例)が14.1ヵ月(95%CI:11.0~15.8)であった(HR:0.72、95%CI:0.52~1.00、p=0.051)。2年PFSはveliparib群40.4%、プラセボ群25.0%、3年PFSはveliparib群35.3%、プラセボ群13.0%であった。
・HR陽性患者において、OS中央値は、veliparib群が32.4ヵ月(95%CI:26.5~37.9)、プラセボ群が27.1ヵ月(95%CI:22.9~35.2)であった(HR:0.96、95%CI:0.68~1.36、p=0.829)。
・TN患者において、OS中央値は、veliparib群が35.0ヵ月(95%CI:24.9~NE)、プラセボ群が30.0ヵ月(95%CI:24.5~NE)であった(HR:0.92、95%CI:0.62~1.36、p=0.683)。
・HR陽性、TNの両サブグループにおいて、全Gradeの貧血、好中球減少症、悪心、下痢の発現率がveliparib群でプラセボ群より5%以上高かった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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T-DXd、HER2+乳がん脳転移例で良好な結果(DESTINY-Breast01)/ESMO BC2020

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 CNS転移を有する既治療のHER2陽性乳がん患者に対する、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、DS-8201)の有効性が示された。ベルギー・リエージュ大学のGuy Jerusalem氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)でDESTINY-Breast01試験のサブグループ解析結果を報告した。

 DESTINY-Breast01試験は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療を受けたHER2陽性の再発・転移を有する乳がん患者を対象としたグローバル第II相試験。独立中央判定委員会による奏効率は60.9%、PFS中央値は16.4ヵ月であり、持続的な腫瘍縮小効果が示されている。

 この結果に基づき、本邦では2020年3月に「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」を適応として、国内製造販売承認を取得。5月25日に発売された。

・対象:切除不能または転移を有するHER2陽性乳がんで、全身状態(ECOG PS)が0/1であり、T-DM1による治療歴のある患者。今回のサブグループ解析は、ベースライン時にCNS転移を有する患者が対象。
・第1部では、5.4、6.4、7.4mg/kg(3週ごとに静脈内投与)の3つの用量に無作為に割り付けられ、推奨用量が決定された。第2部では、5.4mg/kg(3週ごとに静脈内投与)の用量で登録された184例を対象にT-DXdの有効性と安全性の評価が行われた。
・評価項目:
[主要評価項目]中央判定による奏効率(ORR、完全奏効[CR]+部分奏効[PR])
[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR、CR+PR+安定[SD])、臨床的有用率(CBR)、奏効期間、無増悪生存(PFS)期間、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時に24例(13%)がCNS転移を有していた。
・CNS転移を有する患者は全体集団と比較して、全身状態が良好で(ECOG PS 0がCNS転移有:62.5%、全体集団:55.4%)、ホルモン受容体陰性患者が多かった(58.3%、45.1%)。
・治療歴数の中央値は全体集団と同じく6。CNS転移を有する患者の治療歴は、トラスツズマブ、T-DM1が100%、ペルツズマブ、HER2 TKIが62.5%、ホルモン療法が45.8%、その他の全身療法が100%、放射線療法が88.3%であった。
・CNS転移を有する患者において、ORRは58.3%(95%信頼区間[CI]:36.6~77.9]。DCRは91.7%で、内訳はCR :4.2%、PR:54.2%、およびSD:33.3%であった。
・PFS中央値は18.1ヵ月(95%CI:6.7~18.1)であった。
・増悪がみられた部位は全体集団と同様の傾向がみられ、肺、肝臓、リンパ節などであった。CNS転移を有する患者のうち、脳において増悪がみられたのは2例(8.3%)。全体集団では4例(2.2%)であった。
・脳における増悪は、CNS転移を有する患者では78日目と85日目に、CNS転移のない患者では323日目と498日目に発生した。
・TEAEは、CNS転移を有する患者と全体集団の間で一致しており、主に消化器系または血液系であった。TEAEによる治療中止(2例以上みられたもの)は、全体集団で肺炎(11例)、ILD(5例)だったのに対し、CNS転移を有する患者では、肺炎とILD以外のTEAEにより2例が中止された。

 発表では、HER2陽性(IHC3+)/ホルモン受容体陰性の転移を有する乳がん患者で、治療歴数17の48歳の女性が、T-DXd投与中に転移性脳病変の55%の退縮を示した症例についても報告された。

 T-DXdについては、HER2陽性患者対象にT-DM1後の標準治療と有効性を比較するDESTINY-Breast02試験のほか、2つの第III相試験が進行中である。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

DESTINY-Breast01試験(Clinical Trials.gov)

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TN乳がん1次治療へのipatasertib+PTXのOS結果(LOTUS)/ESMO BC2020

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 手術不能な局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療において、経口AKT阻害薬ipatasertibをパクリタキセル(PTX)に併用することにより、全生存期間(OS)が延長する可能性が、二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であるLOTUS試験の最終解析で示された。シンガポール・National Cancer Centre SingaporeのRebecca Dent氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)で報告した。なお、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)については、すでに有意に延長することが報告されている。

・対象:測定可能病変のある、治癒切除が不可能な局所進行または転移を有する未治療のTNBCで、6ヵ月以上化学療法を受けておらず、ECOG PSが0または1の患者
・試験群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+ipatasertib 400mg(Day1~21)を1サイクル28日で進行(PD)または許容できない毒性発現まで投与(ipatasertib群)62例
・対照群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+プラセボ(Day1~21)(プラセボ群)62例
・評価項目:
[主要評価項目]ITT集団およびPTEN-low患者におけるPFS
[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)(ITT集団、PTEN-low患者、PI3K/AKT経路活性化患者)、PI3K/AKT経路活性化患者におけるPFS、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・最終データカットオフは2019年9月3日で、それまでに全患者が主にPDで治療中止となった。
・ITT集団におけるOS中央値は、ipatasertib群25.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:18.6~28.6)、プラセボ群16.9ヵ月(95%CI:14.6~24.6)で、層別ハザード比(HR)が0.80(95%CI:0.50~1.28)とipatasertib群で良好であった。1年OSはipatasertib群83%、プラセボ群68%であった。
・PTEN-low患者(48例)におけるOS中央値は、ipatasertib群23.1ヵ月(95%CI:18.3~28.6)、プラセボ群15.8ヵ月(95%CI:9.0~29.1)で、非層別HRが0.83(95%CI:0.42~1.64)であった。1年OSはipatasertib群79%、プラセボ群64%であった。
・PIK3CA/AKT1/PTEN変異患者(42例)におけるOS中央値は、ipatasertib群25.8ヵ月(95%CI:18.6~35.2)、プラセボ群22.1ヵ月(95%CI:8.7~NE)で、非層別HRが1.13(95%CI:0.52~2.47)であった。1年OSはipatasertib群88%、プラセボ群63%であった。
・サブグループ解析では、50歳未満のOS中央値がipatasertib群35.2ヵ月、プラセボ群15.1ヵ月で、HRが0.41(95%CI:0.20~0.85)と有意にipatasertib群が延長していた。
・Grade 3以上の有害事象(AE)の発現率は、ipatasertib群56%、プラセボ群45%であった。また、ipatasertib群においてAE関連の中止は4例(7%)、中断は22例(36%)、減量は13例(21%)であった。

 現在、無作為化第III相試験であるIPATunity130試験が日本も参加して行われている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

NCT02162719(Clinical Trials.gov)

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COVID-19に伴う乳がん診療トリアージについて/日本乳癌学会

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 日本乳癌学会は5月25日、COVID-19に伴う乳がん診療トリアージについて指針を公開した。欧米の診療トリアージを参考に、日本における現在の診療に即した形となるようまとめたもの。外来診療、画像診断、外科療法、放射線療法、薬物療法それぞれについて、緊急度を高優先度/中優先度/低優先度の3つに分けて指針を示している。本稿では、外科療法、放射線療法、薬物療法について抜粋して下記紹介する。

【外科療法】
A)高優先度(できるかぎり通常通りの迅速な対応を要する)
1)膿瘍の切開排膿
2)術後合併症に対するサルベージ手術(血腫除去術や血流不全の皮弁に対する処置など)
3)自家再建組織の血行再建術・修復術
4)急速に増大する葉状腫瘍
B)中優先度(治療の遅延が後に生存に影響を与える可能性がある)
1)StageI・IIホルモン受容体陽性症例*に対しては、術前内分泌療法を施行して手術を延期することは可能である。
*ルミナルAタイプや小葉がんの症例に対する6~12ヵ月の術前内分泌療法は、安全性および有効性が示されている。
2)術前化学療法中の症例の方針変更
T2またはN1のホルモン受容体陽性HER2陰性症例:状況によっては術前内分泌療法へ変更できる。
トリプルネガティブまたはHER2陽性症例:施設環境などの状況によるが、易感染性の症例は手術に切り替えてもよい。
3)局所再発の腫瘤切除術
4)再建を伴う手術は、人工物再建として自家組織再建は極力行わない。
C)低優先度(緊急性はなくパンデミックの期間中は延期することができる)
1)良性疾患
2)予防的切除
3)非浸潤がんが確実な症例
4)追加切除術
5)術前内分泌療法が奏効している症例*
*中優先度の外科治療の項参照

【放射線療法】
A)高優先度
1)他に有効な手段がない出血を伴う腫瘍
2)術後照射中および再発巣に対する治療中の症例
3)脊髄圧迫や脳転移、その他致命的な転移性病変を有する症例
B)中優先度
1)高リスク症例に対する照射
炎症性乳がん、リンパ節転移陽性およびトリプルネガティブ乳がん、術前化学療法後に残存病変がある症例、若年(40歳未満)などの高リスク症例は、手術・化学療法終了後から20週以内に照射を行う。
2)低〜中間リスク症例に対する照射
65歳未満のStage I、Stage IIのホルモン受容体陽性乳がんなど低〜中間リスク症例は、手術・化学療法終了後から6ヵ月以内に照射を行う。また来院回数を減らすために寡分割照射も考慮する。
C)低優先度
1)65~70歳以上のホルモン受容体陽性/HER2陰性のStage I症例では、術後内分泌療法が行われている場合、生存率に影響を与えずに放射線照射を延期または省略できる。
2)非浸潤がん症例では、術後内分泌療法を行われている場合、放射線照射は生存率に影響を与えないので省略できる。

【薬物療法】
A)高優先度
1)トリプルネガティブまたはHER2陽性症例に対する術前・術後化学療法
2)すでに開始されている術前・術後治療*の継続
3)予後改善が見込まれる転移再発乳がんの初期化学療法
[考慮すべき事項]
・術前・術後治療*でも内分泌療法中の高齢者や、5年以上経過している症例などでは一時的な休薬も考慮する。
・来院回数を減らすため、用量用法または投与間隔を調整する。
・発熱性好中球減少症を避けるため、PEG-GCSF製剤は積極的に投与する。
・免疫機能を考慮してデキサメタゾンの使用は適切な範囲で制限する。
・トラスツズマブ・ペルツズマブやフルベストラントは免疫機能に影響を与えない。
・LHRHアゴニストは長期製剤を使用する。
B)中優先度
1)緩和的化学療法
[考慮すべき事項]
・術後トラスツヅマブ治療中の症例では、12ヵ月間から7ヵ月間に短縮することは可能である。
・転移再発例に対する抗HER2療法は、投与間隔の延長は可能である。
・HER2陽性転移再発症例で、抗HER2療法が2年以上奏効している症例では、進展がなければ抗HER2療法の休止を考慮してもよい。
・内分泌療法単独で治療可能な症例や奏効している症例に対しては、CDK4/6阻害薬や mTOR阻害薬の追加を延期する。
C)低優先度
1)骨転移に対する骨吸収抑制薬
2)ポートフラッシュ

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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HER2陽性乳がんに、トラスツズマブ デルクステカン発売/第一三共

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 第一三共は、トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)について、2020年5月25日、国内で新発売したと発表。

 同剤は、T-DM1治療を受けたHER2陽性の再発・転移性乳がん患者を対象としたグローバル第II相臨床試験(DESTINY-Breast01、北米、欧州及び日本を含むアジアで実施)の結果に基づき、2020年3月に「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」を適応として、国内製造販売承認を取得した。

製品概要
・販売名:エンハーツ点滴静注用100mg
・一般名:トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)
・効能又は効果:化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)
・用法及び用量:通常、成人にはトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回5.4mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。
・薬価:エンハーツ点滴静注用100mg :100mg 1瓶 165,074円

(ケアネット 細田 雅之)


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乳がん患者、治療開始の遅れが生存に及ぼす影響

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 早期乳がん患者では、乳がんと診断されてから術前化学療法開始までが61日以上となると、死亡リスクの増加と関連することが示唆された。これまでに、手術や術後化学療法開始の遅れが生存に影響することが報告されてきたが、術前化学療法を必要とする患者は一般的に高リスクの腫瘍を有するため、より影響が大きい可能性が考えられた。ブラジル・Hospital Beneficencia PortuguesaのDebora de Melo Gagliato氏らは、米国・MDアンダーソンがんセンターで術前化学療法を受けた早期乳がん患者のデータを解析した。Oncologist誌オンライン版2020年5月20日号掲載の報告より。

 研究者らは、1995年1月~2015年12月にMDアンダーソンがんセンターで術前化学療法を受けた原発性浸潤性乳がん患者(Stage I~III)を特定。乳がんと診断されてから術前化学療法までの時間(日数)に従って、3つのサブグループに分類した:0~30日、31~60日、および≧61日。主要評価項目は全生存期間(OS)、記述統計とCox比例ハザードモデルが用いられた。

 主な結果は以下のとおり。

・5,137例の患者が登録された。追跡期間中央値は6.5年。
・5年OSの推定値は、診断から術前化学療法までの時間ごとに、0~30日:87%、31~60日:85%、≧61日:83%であった(p=0.006)。
・多変量解析では、0~30日と比較して61日以上となると死亡リスクが増加した(31~60日:ハザード比[HR]=1.05、95%信頼区間[CI]=0.92~1.19、≧61日:HR = 1.28、95%CI=1.06~1.54)。
・層別解析では、術前化学療法開始の遅れと死亡リスク増加との関連は、Stage I、II(31~60日:HR=1.22、95%CI=1.02~1.47、≧61日:HR =1.41、95%CI=1.07~1.86)およびHER2陽性(≧61日:HR=1.86、95%CI:1.21~2.86)の患者で有意に認められた。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Gagliato DM, et al. Oncologist. 2020 May 20. [Epub ahead of print]

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高齢者のがん、発症前に歩行速度が急激に減少

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 高齢者におけるがん診断前と後におけるサルコペニアの尺度の減少度をがんではない高齢者と比較した場合、診断前に歩行速度の減少度が大きいことがわかった。米国・アラバマ大学のGrant R. Williams氏らが報告した。JAMA Network Open誌2020年5月1日号に掲載。

 著者らは、サルコペニアの3つの尺度(四肢除脂肪量[ALM]、握力、歩行速度)について、がんと診断された高齢者の診断前の減少度と診断後の減少度を、がんではない高齢者の減少度と比較し、さらにサルコペニアの尺度とがん患者の全生存率および主な身体障害との関連を評価した。

 このコホート研究は、Health, Aging, and Body Composition研究の参加者(ペンシルベニア州ピッツバーグおよびテネシー州メンフィスとその周辺の白人のメディケア被保険者とすべての黒人居住者のランダムサンプルから募集した70~79歳の地域住民3,075人)を対象とし、1997年1月から2013年12月まで17年間観察した。データは2018年5月~2020年2月に分析した。年に一度、ALM、握力、歩行速度を調査し、線形混合効果モデルを使用して、それぞれの変化についてがん発症者の診断前と診断後、非がん発症者で比較した。さらに、サルコペニアの尺度とがん診断日からの全生存および主な身体障害との関連について、多変量Cox回帰を用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・3,075人のうち、男性が1,491人(48.5%)、黒人が1,281人(41.7%)、平均年齢は74.1(SD:2.9)歳であった。
・研究開始から7年の間に515人(16.7%)ががんを発症した。多いがんは前立腺がん(117人、23.2%)、大腸がん(63人、12.5%)、肺がん(61人、12.1%)、乳がん(61人、12.1%)で、165人(32.0%)に転移が認められた。
・がん発症者の診断前の各尺度の減少率は、非がん発症者と比べ、歩行速度では大きかった(β=-0.02、95%CI:-0.03~-0.01、p<0.001)が、ALM(β=-0.02、95%CI:-0.07~0.04、p=0.49)、握力(β=-0.21、95%CI:-0.43~0、p=0.05)は差がなかった。
・がん発症者の診断後の各尺度の減少率は、非がん発症者に比べ、ALMでは大きかった(β=-0.14、95%CI:-0.23〜-0.05、p<0.001)が、握力(β=-0.02、95%CI:-0.37〜0.33、p=0.92)、歩行速度(β=0、95%CI:-0.01〜0.02、p=0.51)は差がなかった。
・転移のある患者では、がん診断後のALMの減少率が最も大きかった(β=-0.32、95%CI:-0.53〜-0.10、p=0.003)。
・歩行速度が遅いと、死亡率が44%増加(HR:1.44、95%CI:1.05〜1.98、p=0.02)、身体障害が70%増加(HR:1.70、95%CI:1.08〜2.68、p=0.02)したが、ALMや握力が低い場合には死亡率と身体障害の増加は認められなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Williams GR, et al. JAMA Netw Open. 2020;3:e204783.

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早期乳がん術後放射線療法、26Gy/5回/1週が有用か/Lancet

提供元:CareNet.com

 早期乳がんの初回手術後の局所放射線療法では、5年後の局所コントロールおよび正常組織への影響に関する安全性について、総線量26Gyの5分割1週間照射は、標準的な40Gyの15分割3週間照射に対し非劣性であることが、英国・ノースミッドランズ大学病院のAdrian Murray Brunt氏らの「FAST-Forward試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年4月28日号に掲載された。早期乳がんの術後放射線療法は、従来、1.8~2.0Gy/日を週5日間、5週間以上照射する方法が標準であったが、カナダや英国、次いで中国とデンマークの無作為化第III相試験により、2.7Gy/日の15または16分割照射の安全性と有効性が示されている。さらに、最近では、5分割の1週間照射の長期アウトカムが報告され、早期乳がんにおける根治的放射線療法のいっそうの簡便化の可能性が示唆されている。

再発率を比較する英国の無作為化非劣性試験

 本研究は、英国の97施設(放射線センター47施設、紹介先病院50施設)が参加した非盲検無作為化第III相非劣性試験であり、2011年11月~2014年6月の期間に患者登録が行われた(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上の男女で、浸潤性乳がん(pT1~3、pN0~1、M0)に対して、乳房温存術または乳房切除術(乳房再建術も可)を受けた患者であった。

 被験者は、次の3群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、全乳房と胸壁への照射が行われた。1)総線量40Gy/15分割(1回2.67Gy)/3週間、2)総線量27Gy/5分割(1回5.4Gy)/1週間、3)総線量26Gy/5分割(1回5.2Gy)/1週間。

 主要エンドポイントは同側乳房の腫瘍再発とし、同側乳腺、皮膚、切除後の胸壁に発生した浸潤性乳がんまたは非浸潤性乳管がん(DCIS)と定義された。40Gy照射で主要エンドポイントが5年間で2%に発生すると推定し、5分割スケジュールの5年発生率の増加が1.6%を超えない場合に非劣性と判定することとした。また、正常組織への影響を、医師と患者が評価し、写真を用いた評価も行った。

5年再発率:2.1% vs.1.7% vs.1.4%

 4,096例が登録され、40Gy群に1,361例(年齢中央値60歳[IQR:53~66、範囲:29~89]、男性6例[0.4%])、27Gy群に1,367例(61歳[53~67、25~90]、2例[0.1%])、26Gy群に1,368例(61歳[52~66、25~89]、4例[0.3%])が割り付けられた。

 フォローアップ期間中央値71.5ヵ月(IQR:71.3~71.7)の時点で、同側乳がん再発は79例(40Gy群31例、27Gy群27例、26Gy群21例)に認められた。40Gy群との比較におけるハザード比(HR)は、27Gy群が0.86(95%信頼区間[CI]:0.51~1.44)、26Gy群は0.67(0.38~1.16)であった。

 40Gy群の5年同側乳がん再発率は2.1%(95%CI:1.4~3.1)であり(予測された再発率は2%)、27Gy群は1.7%(1.2~2.6)、26Gy群は1.4%(0.9~2.2)であった。40Gy群と27Gy群との推定絶対差は-0.3%(-1.0~0.9)(非劣性:p=0.0022)、26Gy群との推定絶対差は-0.7%(-1.3~0.3)(非劣性:p=0.00019)であった。これらの上限信頼限界は、27Gy群と26Gy群は40Gy群と比較して、同側乳がんの再発率が1.6%を超えて増加しないことを示しており、2つの5分割スケジュールの40Gy/15分割に対する非劣性が確かめられた。

 局所領域再発、遠隔再発、無病生存、全生存は、3群で類似しており、有意な差は認められなかった。

 5年後の時点で、医師評価による乳房と胸壁の正常組織への中等度~著明な影響は、40Gy群が986例中98例(9.9%)、27Gy群は1,005例中155例(15.4%)、26Gy群は1,020例中121例(11.9%)で報告された。40Gy群と27Gy群の間には有意差がみられた(p=0.0003)が、40Gy群と26Gy群には有意な差はなかった(p=0.17)。

 1~5年の期間における、医師評価による乳房と胸壁の正常組織への中等度~著明な晩発性の影響(萎縮、硬化、毛細血管拡張症、浮腫)のリスクに関して、40Gy群と比較したオッズ比(OR)は、27Gy群が1.55(95%CI:1.32~1.83、p<0.0001)と有意に増加したが、26Gy群は1.12(0.94~1.34、p=0.20)であり、有意な差はみられなかった。また、患者および写真による正常組織への晩発性の影響の評価では、40Gy群に比べ27Gy群はリスクが高かったが、26Gy群は高くなかった。

 著者は、「本試験と以前の寡分割照射の試験の一貫した結果は、部分または全乳房への術後放射線療法を要する切除可能な乳がん女性の新たな標準治療として、総線量26Gyの5日間分割照射の選択を支持する」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Brunt AM, et al. Lancet. 2020 Apr 28. [Epub ahead of print]

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早期乳がんの術後AIの服薬アドヒアランス/JCO

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 早期乳がんの術後補助療法におけるアロマターゼ阻害薬(AI)の服薬アドヒアランスは一般に低く、再発リスクにつながる。今回、大規模な長期無作為化試験(SWOG S1105)の結果、AIのアドヒアランス失敗率が高いこと、週2回のテキストメッセージ受信ではアドヒアランスが改善しなかったことを米国・コロンビア大学のDawn L. Hershman氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年5月5日号に掲載。

 本試験は、米国の40施設においてテキストメッセージ(TM)群とテキストメッセージなし(No-TM)群を比較した無作為化試験。対象は、AI投与が36ヵ月以上計画され、30日以上服薬している早期乳がんの閉経後女性で、メッセージは週2回、36ヵ月送信した。メッセージの内容は服薬アドヒアランスの障壁の克服にフォーカスし、行動のきっかけ、薬物治療の効果に関するステートメント、AI服用の推奨などで、3ヵ月ごとに評価した。主要アウトカムは、アドヒアランス失敗(AF)までの期間(time to adherence failure)で、AFは、尿中AI代謝物の検査で、<10ng/mL、検出不能、検体提出なしのいずれかの場合と定義した。層別log-rank検定、複数の感度分析により評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・2012年5月~2013年9月に計724例の患者が登録され、そのうち702例(TM群348例、No-TM群354例)がベースラインで対象となった。
・1次解析ではAFまでの期間に差は見られなかった(3年AF率:TM群81.9% vs. No-TM群85.6%、HR:0.89、95%CI:0.76~1.05、p=0.18)。複数の感度分析でも同様に有意差は見られなかった。
・自己報告によるAFまでの期間(3年AF率:TM群10.4% vs.No-TM群10.3%、HR:1.16、95%CI:0.69~1.98、p=0.57)、施設報告によるAFまでの期間(21.9% vs.18.9%、HR:1.31、95%CI:0.86~2.01、p=0.21)も差はなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Hershman DL, et al. J Clin Oncol. 2020 May 5:JCO1902699. [Epub ahead of print]

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