乳がん術前治療、BRCA1/2変異患者でpCR率高い/JAMA Oncol

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 さまざまなサブタイプの乳がんに対する2つの術前治療レジメンの効果を比較した多施設前向き無作為化試験GeparOctoにおいて、ドイツ・ケルン大学病院のEsther Pohl-Rescigno氏らが遺伝子変異の有無別に2次解析したところ、BRCA1/2遺伝子変異のある患者で病理学的完全奏効(pCR)率が高いことが示された。JAMA oncology誌オンライン版2020年3月12日号に掲載。

 GeparOctoは、intense dose-denseエピルビシン+パクリタキセル+シクロホスファミド(iddEPC)とweeklyパクリタキセル+非ペグ化リポソームドキソルビシン(PM)の2つの術前治療レジメンの効果を比較した無作為化試験で、2014年12月~2016年6月に実施された。PM群に割り付けられたトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者にはカルボプラチンが追加された(PMCb)。本試験では2群間に差は認められなかった。今回、著者らはBRCA1/2および他の乳がん素因遺伝子の生殖細胞系列変異の有無による治療効果を検討した。

 本研究は2017年8月~2018年12月に、GeparOctoの対象患者945例のうち914例におけるBRCA1/2遺伝子および16種の乳がん素因遺伝子の変異について、ケルンのCenter for Familial Breast and Ovarian Cancerで遺伝子解析を実施した。主要評価項目は、生殖細胞系列変異の有無別にみた術前治療後のpCR(ypT0 /is ypN0)を達成した患者の割合。

 主な結果は以下のとおり。

・914例の乳がん診断時の平均年齢は48歳(範囲:21~76歳)であった。
・pCR率は、BRCA1/2遺伝子変異陽性患者(60.4%)が陰性患者(46.7%)より高かった(オッズ比[OR]:1.74、95%CI:1.13~2.68、p=0.01)。一方、BRCA1/2遺伝子以外の乳がん素因遺伝子の変異はpCR率と関連がみられなかった。
BRCA1/2遺伝子変異陽性のTNBC患者でpCR率が最も高かった。
・TNBC患者において、BRCA1/2遺伝子変異陽性は、PMCb群(74.3% vs. 陰性47.0%、OR:3.26、95%CI:1.44~7.39、p=0.005)およびiddEPC群(64.7% vs. 陰性45.0%、OR:2.24、95%CI:1.04~4.84、p=0.04)の両群ともpCR率に関連していた。
BRCA1/2遺伝子変異陽性は、HR陽性ERBB2陰性乳がんにおける高いpCR率とも関連していた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Pohl-Rescigno E, et al. JAMA Oncol. 2020 Mar 12. [Epub ahead of print]

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がん10年生存率57.2%に、80%以上のがん種も/全がん協調査

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 国立がん研究センターの研究班は3月17日、全国がんセンター協議会(以下、全がん協)加盟の全国32施設における、全がんおよび部位別の、がん生存率最新データを公表した。前回調査と比較して、全がんの5年相対生存率は0.5ポイント増の68.4%、10年相対生存率は0.8ポイント増の57.2%であった。現在、10年生存率の算出と公開を行っているのは同研究班によるもののみで、部位別生存率において相対生存率(がんによる死亡)のほか、実測生存率(全死亡)も提示していることが特徴。

<調査概要>
収集症例:1997~2011年までに32施設で診断治療を行った68万9,207症例
集計対象:
[5年生存率]2009~11年に診断治療を行った症例のうち、以下の条件を満たした14万2,947症例(前回調査は2008~10年症例)
[10年生存率]2003~06年に診断治療を行った症例のうち、以下の条件を満たした8万708症例(前回調査は2002~05年症例)
集計基準:
・15歳未満、95歳以上は除外
・良性腫瘍、上皮内がん、0期、転移性腫瘍は除外
・自施設診断自施設治療、および他施設診断自施設治療症例(診断のみは解析対象外)
・下記の基準を満たした施設のデータのみを集計
 臨床病期判明率60%以上
 追跡率(予後判明率)90%以上

5年相対生存率は前立腺、乳、甲状腺がんで90%以上

 部位別(22種)・臨床病期別に、全症例と手術症例の5年生存率が算出された。全部位全臨床病期の5年相対生存率(全症例)は68.4%で、前回調査の67.9%からは0.5ポイント増でほぼ横ばい、初回調査(1997~99年)の61.8%からは徐々に改善傾向がみられている。部位別の5年生存率(相対生存率/実測生存率)について、主な結果は以下の通り:
・5年相対生存率90%以上
 前立腺(100%/88.6%)、乳(女)(93.7%/91.0%)、甲状腺(92.4%/88.7%)
・5年相対生存率70%以上90%未満
 子宮体(86.4%/83.9%)、大腸(76.8%/70.3%)、子宮頸(76.8%/75.0%)、胃(74.9%/67.6%)など
・5年相対生存率50%以上70%未満
 腎臓など(69.4%/63.9%)、膀胱(69.0%/60.6%)、卵巣(66.2%/64.7%)
・5年相対生存率30%以上50%未満
 食道(46.0%/41.7%)、肺(45.2%/41.2%)、肝(37.0%/33.1%)
・5年相対生存率30%未満
 胆のう胆道(28.6%/25.6%)、膵(9.9%/9.2%)

10年相対生存率は前立腺、乳、甲状腺、子宮体がんで80%以上

 部位別(18種)・臨床病期別に、全症例と手術症例の10年生存率が算出された。全部位全臨床病期の10年相対生存率(全症例)は57.2%で、前回調査の56.4%からは0.8ポイント上昇。部位別の10年生存率(相対生存率/実測生存率)について、主な結果は以下の通り:
・10年相対生存率90%以上
 前立腺(97.8%/72.3%)
・10年相対生存率70%以上90%未満
 乳(85.9%/80.9%)、甲状腺(84.1%/77.4%)、子宮体(81.2%/76.5%)
・10年相対生存率50%以上70%未満
 子宮頸(68.8%/65.6%)、大腸(67.8%/56.5%)、胃(65.3%/53.7%)、腎など(64.0%/54.5%)など
・10年相対生存率30%以上50%未満
 卵巣(45.3%/43.1%)、肺(30.9%/25.8%)、食道(30.9%/25.4%)
・10年相対生存率30%未満
 胆のう胆道(18.0%/14.8%)、肝(15.6%/12.8%)、膵(5.3%/4.5%)

 研究班では、前回調査との比較において、多くの部位で5年および10年の生存率上昇を認める一方、低下している部位も含めて、臨床的に意味のある変化は認められないとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

国立がん研究センタープレスリリース

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がん患者が過剰摂取しやすいサプリメントは?

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 多くのがん患者は、がん診断後に栄養補助食品を使い始める傾向にある。そのため、がんではない人と比べ、どのような栄養補助食品が、がんサバイバーの総栄養摂取量に寄与しているかを検証する必要がある。今回、米国・タフツ大学のMengxi Du氏らは「がんではない人と比較した結果、がんサバイバーへの栄養補助食品の普及率は高く、使用量も多い。しかし、食事摂取量は少ない」ことを明らかにした。研究者らは「がんサバイバーは食事からの栄養摂取が不十分である。とくに高用量を摂取する栄養補助食品の短期~長期的使用による健康への影響について、がんサバイバー間でさらに評価する必要がある」としている。Journal of Nutrition誌オンライン版2020年2月26日号掲載の報告。

 研究者らは、がんサバイバーが全栄養摂取のうち栄養補助食品から摂取している栄養素を調べ、がんではない人との総栄養摂取量を比較する目的で、2003~2016年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した成人がんサバイバー2,772人と、がんではない3万1,310人を調査。栄養補助食品の使用率、用量および使用理由について評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・がんサバイバーとがんではない人の栄養補助食品の普及率は70.4% vs.51.2%と、がんサバイバーで高かった。マルチビタミン/ミネラルの普及率は48.9% vs.36.6%で、ビタミン系11種類、ミネラル系8種類の服用が報告された。
・全体的に、がんサバイバーは栄養補助食品からの栄養摂取量が有意に多く、食事から大部分の栄養素がとれていなかった。
・がんサバイバーは、がんではない人と比較して食事摂取量が少ないため、葉酸、ビタミンB6、ナイアシン、カルシウム、銅、リンの摂取量が不十分な人の割合が高かった(総栄養摂取量<平均必要量[EAR:Estimated Average Requirement]または栄養所要量[AI:Adequate Intake])。
・その一方で、がんサバイバーはビタミンD、ビタミンB6、ナイアシン、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛を、栄養補助食品から過剰摂取(総栄養摂取≧許容上限摂取量[UL:tolerable upper intake level])している割合が高かった。
・栄養補助食品を摂取するほぼ半数(46.1%)は、管理栄養士・栄養士に相談せずに独自に摂取していた。

(ケアネット 土井 舞子)


【原著論文はこちら】

Du M et al, J Nutr. 2020 Feb 26.[Epub ahead of print]

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マンモグラフィ、AIと医師一人読影の併用で高精度に

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 人工知能(AI)は人間によるマンモグラフィ読影の限界を克服できるのだろうか。今回、米国・セージバイオネットワークスのThomas Schaffter氏らが検討したところ、AI単独では放射線科医を上回ることはなかったが、放射線科医の一人読影との併用で精度が改善することが示された。JAMA Network Open誌2020年3月2日号で発表した。

 診断精度に関する本研究は2016年9月~2017年11月に実施され、マンモグラフィ検診の読影に絞ったAIアルゴリズム開発を促進するために、国際的なクラウドソーシングチャレンジが開催された。44ヵ国126チーム、1,100人以上が参加し、2016年11月18日に分析を開始した。

 アルゴリズムは、画像単独、もしくは、画像、以前の検査(利用可能な場合)、および臨床的・人口統計学的危険因子データを組み合わせて使用し、12ヵ月以内のがんの有無を表すスコアをアウトプットした。アルゴリズムの乳がん検出の精度は、曲線下面積(AUC)およびアルゴリズムの特異度(放射線科医の感度を85.9%[米国]および83.9%[スウェーデン]に設定したときの放射線科医の特異度と比較)で評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・8万5,580人の米国人女性(952人が検診後12ヵ月以内にがん陽性)における14万4,231件、および6万8,008人(780人ががん陽性)のスウェーデン人女性における16万6,578件の乳房X線写真を用いて、アルゴリズムのトレーニングと検証を行った。
・最も精度が高かったアルゴリズムは、AUCが0.858(米国)および0.903(スウェーデン)、放射線科医の感度における特異度が66.2%(米国)および81.2%(スウェーデン)で、地域医療の放射線科医における特異度の90.5%(米国)および98.5%(スウェーデン)より低かった。
・最も精度の高かったアルゴリズムと米国の放射線科医の判定を併用すると、AUCは0.942と上昇し、同感度における特異性は92.0%と大幅に改善した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

JAMA Netw Open. 2020 Mar 2;3:e200265.

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エリブリン治療における乳がん患者のOS予測因子は?(EMBRACE)

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 局所進行または転移を有する乳がん(MBC)患者へのエリブリン治療における、全生存期間(OS)の予測因子が評価された。これまでに、好中球・リンパ球比(NLR)がエリブリン治療における無増悪生存期間(PFS)の予測因子となる可能性が示唆されている。兵庫医科大学の三好 康雄氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年3月5日号掲載の報告より。

 研究グループは、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む前治療歴のあるMBC患者に対する、エリブリンと主治医選択薬(TPC)の有効性を比較した第III相EMBRACE試験のPost-Hoc解析を実施。ベースライン時のリンパ球絶対数(ALC)およびNLRとOSの関連が両群で評価された。

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時のALCとNLRは、それぞれ751例(エリブリン群500例 vs.TPC群251例)、713例(475例 vs.238例)で評価可能であった。
・ベースラインALC≧1,500/μLの患者で、エリブリン群はTPC群と比較してOSを有意に延長した(ハザード比[HR]:0.586、95%信頼区間[CI]:0.437~0.784、p<0.001)。
・ALC<1,500/μLの患者では、治療法による有意差はみられなかった(HR:1.002、95%CI:0.800~1.253、p=0.989)。
・単変量および多変量解析の結果、ベースラインALCがエリブリン治療患者におけるOSの潜在的な予測因子として特定された。
・OSの相互作用解析は、カットオフ値として1,500/μLを支持した。
・カットオフ値3のNLRは、エリブリン群におけるOS延長と関連した。しかし、同様の結果がTPC群でも観察され、明らかな相互作用効果は確認できず、NLRはエリブリン群におけるOSの特定の予測因子ではなく、一般的な予後予測因子である可能性が示唆された。

 著者らは、本研究からはベースラインALCがエリブリン治療によるMBC患者のOS延長の独立した予測因子であることが示唆され、追加の侵襲的処置を必要とせずに評価できるため、臨床的に有用な可能性があると考察している。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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Miyoshi Y, et al. Breast Cancer. 2020 Mar 5. [Epub ahead of print]

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簡略化MRI、高濃度乳房で高い乳がん検出率/JAMA

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 高濃度乳房(dense breast)女性の乳がんスクリーニング検査では、簡略化乳房MRI(AB-MRI)はデジタル乳房トモシンセシス(DBT)に比べ、浸潤性乳がんの検出率が有意に高いことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのChristopher E. Comstock氏らECOG-ACRIN Cancer Research Groupが行ったEA1141試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年2月25日号に掲載された。高濃度乳房の女性は乳がんのリスクが高く、マンモグラフィでも早期診断が難しいため、スクリーニング検査法の改良が求められているという。

2つの検査を受けた女性を長期に追跡した横断研究

 本研究は、高濃度乳房女性の乳がんスクリーニングにおけるAB-MRIとDBTの診断能を比較する横断研究である(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。米国の47施設とドイツの1施設が参加し、2016年12月~2017年11月の期間に患者登録が行われ、2019年9月までフォローアップが実施された。

 対象は、年齢40~75歳、直近のマンモグラフィによるスクリーニング検査で高濃度乳房(米国放射線学会[ACR]の定義で、heterogeneously denseまたはextremely dense)とされ、DBTによる乳がんスクリーニング検査を受ける予定の臨床的に無症状の女性であった。

 被験者は、ベースラインと1年後に、AB-MRI(造影剤投与前後にT2強調とT1強調画像を10分以内に撮像)とDBTの両方を受けた(検査間隔は24時間以内)。2つの検査の施行順は、中央で無作為化された。読影バイアスを回避するために、2人の乳房放射線科医が独立に、互いの検査結果をブラインドした状態で読影した。

 DBTで陽性所見の女性は、追加画像検査を受けるよう勧められ(コールバック)、AB-MRIの施行前に最終診断が行われた。また、AB-MRIまたはDBTで「良性腫瘍が弱く疑われる(probably benign)」所見の女性は、6ヵ月後に「短期フォローアップ」として画像検査が推奨された。

 主要評価項目は、浸潤性乳がんの検出率とした。副次評価項目には、感度、特異度、追加画像検査推奨率(コールバック+短期フォローアップの推奨)、生検の陽性反応適中度(PPV)が含まれた。浸潤性乳がんまたは非浸潤性乳管がん(DCIS)、あるいは双方の発現を、これら評価項目の陽性参照基準と定義した。また、コア生検または外科的生検の病理所見を、がん検出率とPPVの参照基準とした。

追加画像検査推奨率やPPVに差はない

 1,516例の女性が登録され、1,444例(96%、年齢中央値54歳[範囲:40~75])が2つの検査の双方を受けた。高濃度乳房のACR分類の内訳は、heterogeneously denseが77%、extremely denseは15%だった。

 17例の女性(19病変)が、DCISの有無にかかわらず浸潤性乳がんが陽性で、6例はDCISが単独で陽性であった。フォローアップ期間中に、中間期がんは認められなかった。

 AB-MRIは、17例の浸潤性乳がんをすべて検出し、6例のDCISのうち5例を検出した。また、DBTは、浸潤性乳がん女性17例中7例を、DCIS女性6例中5例を検出した。浸潤性乳がん検出率は、AB-MRIは1,000例当たり11.8例(95%信頼区間[CI]:7.4~18.8)、DBTは1,000例当たり4.8例(2.4~10.0)であり、1,000例当たりの差は7例(2.2~11.6)と、AB-MRIで有意に良好であった(exact McNemar検定のp=0.002)。

 浸潤性乳がんおよびDCISの検出の感度は、AB-MRIが95.7%(95%CI:79.0~99.2)、DBTは39.1%(22.2~59.2)であり(p=0.001)、特異度はそれぞれ86.7%(84.8~88.4)および97.4%(96.5~98.1)であった(p<0.001)。また、追加画像検査推奨率は、AB-MRIが7.5%(6.2~9.0)、DBTは10.1%(8.7~11.8)であり、有意な差はなかった(Bonferroni補正後のp=0.02[p<0.01で有意差ありと定義])。また、生検のPPVは、AB-MRIが19.6%(13.2~28.2)、DBTは31.0%(17.0~49.7)だった(p=0.15)。

 1年以内に12例に13件の有害事象が認められた。8件(62%)はGrade1またはそれ以下であった。最も頻度の高い有害事象は、軽度アレルギー反応(3件)と不安(2件)だった。

 著者は、「スクリーニング検査法と臨床アウトカムの関連を、よりよく理解するためにさらなる研究を要する」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Comstock CE, et al. JAMA. 2020;323:746-756.

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がん患者のCOVID-19感染~非がん患者と比べて/Lancet Oncol

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 中国およびその他の地域では、SARS-CoV-2による重症急性呼吸器症候群が発生している。がん患者は化学療法や手術などの抗がん治療によって引き起こされる全身性の免疫抑制により、易感染状態であることが多い。そのため、COVID-19についても感染リスクが高く、さらに感染後も予後不良の可能性がある。

 中華人民共和国の国立呼吸器疾患臨床研究センターと国民健康委員会が協力し、中国全土でCOVID-19症例を観察する前向きコホートを設立した。 2020年1月31日のデータカットオフの時点で、31の地方行政区域から2,007例の症例を収集。記録不十分な417例を除外し1,590のCOVID-19症例を分析している。Lancet Oncology誌2020年3月1日号では、その中から、がん患者について分析している。

・COVID-19患者1,590例のうち18例(1%、95%CI:0.61~1.65)にがんの既往があり、これは285.83/100,000人(0.29%、2015年がん疫学統計)という中国人全体のがんの発生率よりも高かった。
・COVID-19を合併した18例のがん患者内訳をみると、最も頻度の高いのは肺がん(5例、28%)であった。
・重症イベント(ICU入院、要侵襲的換気または死亡)は、がん患者では39%(18例中7例)に観察されたが、非がん患者では8%(1,572例中124例)で、がん患者で有意に重症イベントのリスクが高かった(p=0.0003)。
・重症イベントはさらに、1ヵ月以内に化学療法または外科手術を受けた患者では75%(4例中3例)、受けていない患者43%(14例中6例)と、化学療法または外科手術を受けた患者で高かった。
・重症イベントまでの時間を評価すると、がん患者では中央値13日、非がん患者では43日で、がん患者のほうが急速に悪化することが明らかになった(年齢調整後HR:3.56、95%CI:1.65~7.69、p<0.0001)。

(ケアネット 細田 雅之)


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Liang W,et al.Lancet Oncol. 2020 Feb 14.[Epub ahead of print]

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早期TN乳がん、ペムブロリズマブ+術前化学療法が有望/NEJM

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 早期トリプルネガティブ乳がん患者に対し、ペムブロリズマブ+術前化学療法はプラセボ+術前化学療法に比べ、手術時の病理学的完全奏効率が約14%ポイント有意に高いことが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏らが行った第III相無作為化比較試験の結果、示された。追跡期間中央値15.5ヵ月後の病勢進行を認めた被験者の割合も、ペムブロリズマブ+術前化学療法を行った群で低かったという。先行試験で早期トリプルネガティブ乳がん患者における、ペムブロリズマブの有望な抗腫瘍活性と忍容可能な安全性プロファイルが示されていたが、術前化学療法へのペムブロリズマブ追加が、手術時の病理学的完全奏効(浸潤がんなし・リンパ節転移陰性と定義)を得られる患者割合を有意に増大するかについては不明であった。NEJM誌2020年2月27日号掲載の報告。

4サイクルのペムブロリズマブ3週間ごと+パクリタキセルとカルボプラチン投与

 試験は、未治療のStageIIまたはIIIのトリプルネガティブ乳がん患者を2対1で無作為に2群に割り付けて行われた。一方の群には、術前補助療法として4サイクルのペムブロリズマブ(200mg)3週間ごと+パクリタキセルとカルボプラチンを投与(784例)。もう一方の群には、同サイクルのプラセボ3週間ごと+パクリタキセルとカルボプラチンを投与した(390例)。その後、両群に、4サイクルのペムブロリズマブまたはプラセボの追加投与と、ドキソルビシン-シクロホスファミドまたはエピルビシン-シクロホスファミドの投与を行った。

 根治手術後にも術後療法として、ペムブロリズマブまたはプラセボの3週間ごと投与を最大9サイクル行った。

 主要評価項目は、intention-to-treat集団における根治手術時における病理学的完全奏効と無イベント生存期間だった。

病理学的完全奏効の推定治療差は約14%ポイント

 初回中間解析では、無作為化された最初の患者602例のうち、根治手術時における病理学的完全奏効が認められたのは、ペムブロリズマブ群64.8%(95%信頼区間[CI]:59.9~69.5)、プラセボ群51.2%(44.1~58.3)だった(推定治療群間差:13.6%ポイント、95%CI:5.4~21.8、p<0.001)。

 追跡期間中央値15.5ヵ月後(範囲:2.7~25.0)において、根治手術不能の病勢進行や局所/遠隔再発または2次原発がんの発生、全死因死亡のいずれかを認めたのは、ペムブロリズマブ群784例中58例(7.4%)、プラセボ群390例中46例(11.8%)であった(ハザード比[HR]:0.63、95%CI:0.43~0.93)。

 全治療段階において、Grade3以上の治療関連有害事象の発生は、ペムブロリズマブ群では78.0%、プラセボ群が73.0%であり、うち死亡例はそれぞれ3例(0.4%)と1例(0.3%)であった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)


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Schmid P, et al. N Engl J Med. 2020;382:810-821.

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ペムブロリズマブ併用、転移TN乳がん1次治療でPFS延長/MSD

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 MSD株式会社は2020年2月21日、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対する初回治療として、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)と化学療法の併用療法が、化学療法単独と比較して無増悪生存期間(PFS)を延長したと発表した(第III相KEYNOTE-355試験)。

 KEYNOTE-355試験は、化学療法歴のない、手術不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、ペムブロリズマブと化学療法併用の有効性を評価する無作為化比較試験。本試験は2パートからなり、パート2では登録患者847例が、ペムブロリズマブ+3種類の化学療法のうちの1つ(ナブパクリタキセル、パクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチンから医師が選択)の併用療法群と、プラセボ+同3種の化学療法のうちの1つの化学療法単独群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、全患者およびPD-L1陽性(CPS≧1およびCPS≧10)患者における全生存期間(OS)とPFS。

 今回、独立データ監視委員会(DMC)の中間解析により、CPS≧10のPD-L1陽性患者において、併用療法群で統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるPFSの改善が認められた。ペムブロリズマブの安全性プロファイルはこれまでに報告されている試験で認められているものと一貫しており、新たな安全性の懸念は特定されていない。

 同社はプレスリリースの中で、データは今後の学術集会において発表予定としている。また、DMCの推奨に基づき、もう一つの主要評価項目であるOSについても、変更なく評価を継続する。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-355試験(Clinical Trials.gov)

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ペグフィルグラスチムの自動投与デバイス国内臨床試験開始/協和キリン

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 協和キリンは、ペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)の自動投与デバイスに関する国内臨床試験を本年2月19日に開始した。

 ペグフィルグラスチムは持続型G-CSF製剤。がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制を適応症とし2014年より日本にて販売している製品で、がん化学療法を行った翌日以降に医療機関にて投与が行われる。

 ペグフィルグラスチムが翌日に自動投与される仕組みを搭載した同デバイスをがん化学療法と同日に使用することにより、ペグフィルグラスチム投与のための通院が不要となり、患者の通院負担、さらには医療従事者の負担の軽減にもつながることを期待している。

 同試験は、第I相多施設共同非対照非盲検試験で、対象はがん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制。主要評価項目は安全性で、予定被験者数は30例である。第I相臨床試験の位置づけだが、本臨床試験のデータを使用し厚生労働省へ製造販売承認申請を行う予定だという。

(ケアネット 細田 雅之)


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