術前療法で残存病変のあるHER2+早期乳がん、術後T-DM1による末梢神経障害・血小板減少症・CNS再発(KATHERINE)/ESMO2019

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 トラスツズマブを含む術前化学療法で浸潤がんの残存がみられたHER2陽性早期乳がんに対する術後補助療法としてT-DM1(トラスツズマブ エムタンシン)の効果をトラスツズマブと比較したKATHERINE試験において、末梢神経障害、血小板減少症、中枢神経系(CNS)再発に関する詳細な分析結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)でドイツ・Helios Klinikum Berlin BuchのMichael Untch氏より報告された。T-DM1による末梢神経障害に関して、ベースライン時の末梢神経障害が持続期間と消失率に影響する可能性があるが発現率には影響せず、術前化学療法でのタキサン製剤の種類は発現率に影響しないことがわかった。

 KATHERINE試験は、HER2陽性早期乳がん1,486例を対象とした国際多施設無作為化オープンラベル第III相試験で、術後補助療法としてT-DM1(3.6mg/kg静注、3週ごと)またはトラスツズマブ(6mg/kg静注、3週ごと)を14サイクル投与した。本試験の結果は、2018年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2018)で、T-DM1がトラスツズマブに比べ無浸潤疾患生存期間(IDFS)を有意に改善したことが報告されているが、T-DM1群で末梢神経障害および血小板減少症が高率に発現し、最初のIDFSイベントとしてCNS再発率も高かった。

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時の末梢神経障害に関係なく、T-DM1群で末梢神経障害の発現率が高かった(ベースライン時に神経障害あり:T-DM1群36.3%、トラスツズマブ群17.5%、ベースライン時に神経障害なし:T-DM1群31.1%、トラスツズマブ群16.8%)。
・ベースライン時に末梢神経障害があると末梢神経障害発現期間の中央値が大きく、消失率が低かった(ベースライン時に神経障害あり:352~337日、66.0~63.6%、ベースライン時に神経障害なし:243~232日、81.2~82.5%)。
・術前化学療法でのタキサン製剤の種類により、末梢神経障害の発現率に差はなかった(ドセタキセル:T-DM1群32.1%、トラスツズマブ群17.8%、パクリタキセル:T-DM1群31.8%、トラスツズマブ群16.6%)。
・術前化学療法でプラチナ製剤が投与されていた場合、T-DM1群で血小板減少症の発現率が高かった(T-DM1群36%、トラスツズマブ群27%)が、Grade3~4の血小板減少症における発現期間中央値(33日、29日)と消失率(95%、96%)はプラチナ製剤の投与の有無で差はなかった。
・T-DM1群における最初のIDFSイベントとしてのCNS再発率は高かったが、全CNS再発率は同等であった。
・T-DM1群のほうがCNS無再発期間の中央値が大きく(T-DM1群17.5ヵ月、トラスツズマブ群11.9ヵ月)、CNS再発後の全生存期間は両群に差はなかった(ハザード比:1.07、95%信頼区間:0.60~1.91)

(ケアネット 金沢 浩子)


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KATHERINE(Clinical Trials.gov)

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ペムブロリズマブ、既治療TN乳がんへの単剤投与は?(KEYNOTE-119)/ESMO2019

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 局所進行/転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)患者に対する、2~3次治療としてのペムブロリズマブ単剤療法は、化学療法単剤と比較して生存期間を有意に改善しなかった。しかし、PD-L1発現レベルが上昇するにつれてペムブロリズマブによる治療効果が高まる傾向が確認されている。スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、スペイン・Vall d’Hebron Institute of OncologyのJavier Cortes氏が第III相無作為化非盲検試験KEYNOTE-119の結果を発表した。

・対象:1~2レジメンの全身化学療法(アントラサイクリン系および/またはタキサン系薬剤を含む)を受け、最新の治療でPDとなったmTNBC患者
・試験群:以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付け
ペムブロリズマブ群:ペムブロリズマブ(200mgを3週ごと、最大35サイクル) 312例
化学療法群:治験担当医師が選択した化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、ビノレルビン) 310例
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS ≧10およびCPS ≧1)における全生存期間(OS)、全患者におけるOS
[副次評価項目]全患者における無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性・忍容性。追加の副次評価項目として、全患者およびPD-L1陽性患者(CPS ≧10/CPS ≧1)における奏効持続期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)が加えられた
[探索的解析]PD-L1陽性患者におけるCPSの追加的なカットポイントでのOS、PFS、ORR、DOR

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時点での治療歴は、1ラインの患者がペムブロリズマブ群で59.9%、化学療法群で60.3%を占めた。PD-L1発現状況は、CPS ≧1が65.1% vs.65.2%、CPS ≧10が30.8% vs.31.6%、CPS ≧20が18.3% vs.16.8%であった。
・化学療法の内訳は、エリブリン53.9%、カペシタビン27.4%、ビノレルビン13.9%、ゲムシタビン4.8%であった。
・2019年4月11日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値はペムブロリズマブ群で9.9ヵ月、化学療法群で10.9ヵ月。
・OS中央値は、CPS≧1の患者でペムブロリズマブ群10.7ヵ月 vs. 化学療法群10.2ヵ月(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.69~1.06、p=0.073)、CPS≧10の患者で12.7ヵ月 vs. 11.6ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.57~1.06、p=0.057)とペムブロリズマブ群での有意な改善はみられなかった。全患者では9.9ヵ月 vs. 10.8ヵ月(HR:0.97、95%CI:0.82~1.15)、探索的解析項目のCPS≧20の患者では、14.9ヵ月 vs. 12.5ヵ月(HR:0.58、95%CI:0.38~0.88)であった。
・PFS中央値は、全患者で2.1ヵ月 vs. 3.3ヵ月(HR:1.60、95%CI:1.33~1.92)、CPS≧1の患者で2.1ヵ月 vs. 3.1ヵ月(HR:1.35、95%CI:1.08~1.68)、CPS≧10の患者で2.1ヵ月 vs. 3.4ヵ月(HR:1.14、95%CI:0.82~1.59)、CPS≧20の患者で3.4ヵ月 vs. 2.4ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.49~1.18)であった。
・ORRは、CPS≧1の患者で12.3% vs. 9.4%、CPS≧10の患者で17.7% vs. 9.2%、CPS≧20の患者で26.3% vs. 11.5%であった。
・DOR中央値は、CPS≧1の患者で12.2ヵ月vs. 6.5ヵ月、CPS≧10の患者でNR vs. 7.1ヵ月、CPS≧20の患者でNR vs. 7.1ヵ月で、全体としてペムブロリズマブ群で長い傾向がみられた。
・Grade3以上の有害事象は、ペンブロリズマブ34.6% vs.化学療法群49.0%。治療中止や用量調整につながる有害事象の発生は、ペンブロリズマブ群で低かった。Grade3以上の免疫関連有害事象は3.2% vs.1.0%で、死亡例は確認されていない。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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KEYNOTE-119試験(Clinical Trials.gov)

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BRCA変異HER2-進行乳がん、veliparib追加でPFSが有意に改善(BROCADE3)/ESMO2019

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 生殖細胞系列のBRCA遺伝子(gBRCA)変異のあるHER2陰性進行乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセルへのPARP1/2阻害薬であるveliparibの上乗せ効果を検討した第III相BROCADE3試験の結果、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが示された。veliparibの追加による毒性プロファイルの変化はみられなかった。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、フランス・Centre Eugene MarquisのVeronique C. Dieras氏が発表した。

 gBRCA遺伝子変異のある進行乳がんを対象とした第II相試験では、カルボプラチン+パクリタキセルにveliparibを上乗せすることにより、PFS中央値および全生存期間(OS)中央値がより大きく、毒性の上乗せは軽度であることが示されていた。

・対象:gBRCA1/2変異陽性のHER2陰性進行乳がん(転移に対する細胞傷害性の抗がん剤治療が2レジメン以下、プラチナ製剤は1レジメン以下、投与終了から12ヵ月以内に進行なし)
・試験群:veliparib(120mg1日2回、Day -2~5)+カルボプラチン(AUC 6、Day 1)/パクリタキセル(80mg/m2、Day 1、8、15)21日ごと 337例
・対照群:プラセボ+カルボプラチン/パクリタキセル 170例
・評価項目:
[主要評価項目]PFS
[副次評価項目]OS、クリニカルベネフィット率(CBR)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、PFS2

 主な結果は以下のとおり。

・主治医評価によるPFS中央値は、veliparib群14.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.5~17.7)、プラセボ群12.6ヵ月(95%信頼区間:10.6~14.4)で、ハザード比は0.705(95%CI:0.566~0.877、p=0.002)と有意に改善した。3年時のPFSはveliparib群26%、プラセボ群11%だった。
・独立中央委員会判定によるPFS中央値は、veliparib群19.3ヵ月(95%CI:16.5~23.3)、プラセボ群13.5ヵ月(95%CI:12.5~16.3)で、ハザード比は0.695(95%CI:0.537~0.899、p=0.005)と有意に改善した。3年時のPFSはveliparib群37%、プラセボ群20%だった。
・OS中央値はveliparib群33.5ヵ月(95%CI:27.6~37.9)、プラセボ群28.2ヵ月(95%CI:24.7~35.2)で、ハザード比は0.945(95%CI:0.729~1.225、p=0.666)だった。なお、プラセボ群の44%の患者がクロスオーバーしていた。
・24週時のCBRはveliparib群90.7%、プラセボ群93.2%、ORRはveliparib群75.8%、プラセボ群74.1%だった。
・DOR中央値はveliparib群14.7ヵ月、プラセボ群11.0ヵ月だった。
・PFS2中央値はveliparib群21.3ヵ月(95%CI:19.8~25.1)、プラセボ群17.4ヵ月(95%CI:16.0~20.0)で、ハザード比は0.760(95%CI:0.603~0.959、p=0.020)だった。
・とくに注目すべき有害事象のGrade3以上の発現率は、veliparib群、プラセボ群の順に、好中球減少症が81%、84%、血小板減少症は40%、28%、貧血は42%、40%、嘔気は6%、4.1%だった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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BRCA変異HER2-進行乳がん、veliparib追加でPFSが有意に改善(BROCADE3)/ESMO2019

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 生殖細胞系列のBRCA遺伝子(gBRCA)変異のあるHER2陰性進行乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセルへのPARP1/2阻害薬であるveliparibの上乗せ効果を検討した第III相BROCADE3試験の結果、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが示された。veliparibの追加による毒性プロファイルの変化はみられなかった。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、フランス・Centre Eugene MarquisのVeronique C. Dieras氏が発表した。

 gBRCA遺伝子変異のある進行乳がんを対象とした第II相試験では、カルボプラチン+パクリタキセルにveliparibを上乗せすることにより、PFS中央値および全生存期間(OS)中央値がより大きく、毒性の上乗せは軽度であることが示されていた。

・対象:gBRCA1/2変異陽性のHER2陰性進行乳がん(転移に対する細胞傷害性の抗がん剤治療が2レジメン以下、プラチナ製剤は1レジメン以下、投与終了から12ヵ月以内に進行なし)
・試験群:veliparib(120mg1日2回、Day -2~5)+カルボプラチン(AUC 6、Day 1)/パクリタキセル(80mg/m2、Day 1、8、15)21日ごと 337例
・対照群:プラセボ+カルボプラチン/パクリタキセル 170例
・評価項目:
[主要評価項目]PFS
[副次評価項目]OS、クリニカルベネフィット率(CBR)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、PFS2

 主な結果は以下のとおり。

・主治医評価によるPFS中央値は、veliparib群14.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.5~17.7)、プラセボ群12.6ヵ月(95%信頼区間:10.6~14.4)で、ハザード比は0.705(95%CI:0.566~0.877、p=0.002)と有意に改善した。3年時のPFSはveliparib群26%、プラセボ群11%だった。
・独立中央委員会判定によるPFS中央値は、veliparib群19.3ヵ月(95%CI:16.5~23.3)、プラセボ群13.5ヵ月(95%CI:12.5~16.3)で、ハザード比は0.695(95%CI:0.537~0.899、p=0.005)と有意に改善した。3年時のPFSはveliparib群37%、プラセボ群20%だった。
・OS中央値はveliparib群33.5ヵ月(95%CI:27.6~37.9)、プラセボ群28.2ヵ月(95%CI:24.7~35.2)で、ハザード比は0.945(95%CI:0.729~1.225、p=0.666)だった。なお、プラセボ群の44%の患者がクロスオーバーしていた。
・24週時のCBRはveliparib群90.7%、プラセボ群93.2%、ORRはveliparib群75.8%、プラセボ群74.1%だった。
・DOR中央値はveliparib群14.7ヵ月、プラセボ群11.0ヵ月だった。
・PFS2中央値はveliparib群21.3ヵ月(95%CI:19.8~25.1)、プラセボ群17.4ヵ月(95%CI:16.0~20.0)で、ハザード比は0.760(95%CI:0.603~0.959、p=0.020)だった。
・とくに注目すべき有害事象のGrade3以上の発現率は、veliparib群、プラセボ群の順に、好中球減少症が81%、84%、血小板減少症は40%、28%、貧血は42%、40%、嘔気は6%、4.1%だった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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アベマシクリブ+トラスツズマブ+フルベストラント、HR+/HER2+乳がんの予後を改善(monarcHER)/ESMO2019

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 ホルモン受容体(HR)陽性/HER2陽性(HR+/HER2+)の進行乳がんに対する、アベマシクリブ+トラスツズマブ+フルベストラントの3剤併用療法の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏から発表された。

 本試験はオープンラベル3群比較の国際共同第II相試験であり、HR+/HER2+進行乳がんを対象として、CDK4/6阻害薬+抗HER2薬+ホルモン剤の併用療法と、標準的な化学療法+トラスツズマブ併用療法を比較した初めての臨床試験である。

・対象:HR+/HER2+進行乳がんで、抗HER2療法を2ライン以上受けており(T-DM1とタキサン系抗がん剤の治療歴は必須)、さらにCDK4/6阻害薬とフルベストラントは未投与である患者237例
・試験群:アベマシクリブ+トラスツズマブ+フルベストラント(ATF群)またはアベマシクリブ+トラスツズマブ(AT群)
・対照群:トラスツズマブ+主治医選択の化学療法(TC群)
・評価項目:
[主要評価項目]ATF群とTC群における主治医評価による無増悪生存期間(PFS)の比較
(ATF群とTC群の比較で有意差が認められた場合、次にAT群とTC群の比較をする段階的な設定)
[副次評価項目]3群すべての奏効率(ORR)、安全性、全生存期間(OS)、患者報告アウトカム、体内薬物動態

 主な結果は以下のとおり。

・237例が登録され、ATF群、AT群、TC群に無作為に1:1:1で割り付けられた。
・主治医選択の化学療法剤の種類はビノレルビン38%、カペシタビン26%、エリブリン17%、ゲムシタビン11%などであった。
・PFS中央値はATF群で8.32ヵ月、TC群で5.69ヵ月、ハザード比(HR)0.673、p=0.0506と統計学的な有意差をもってATF群が良好であった。
・設定どおりに行われたAT群とTC群の比較では、AT群のPFS中央値は5.65ヵ月、HRが0.943、p=0.7695と、ここでは有意差は見いだせなかった。
・登録患者全体(ITT集団)を対象としたORRはATF群が32.9%、AT群は13.9%、TC群は13.9%で、ATF群とTC群の間にはp=0.0042と有意な差があった。また、奏効期間中央値はそれぞれ12.5ヵ月、9.5ヵ月、未到達であった。
・解析に必要なイベント数がまだ少ないため、探索的解析として実施されたOSの解析は、ATF群のOS中央値が24.33ヵ月、AT群は24.07ヵ月、TC群は21.50ヵ月で、ATF群のTC群に対するHRは0.751だった。また、AT群のTC群に対するHRは0.729であった。
・Grade3以上の治療関連の有害事象はATF群56.4%、AT群37.7%、TC群33.3%だった。本試験における新たな毒性の報告はなく、全般的に忍容可能な安全性プロファイルだった。

(ケアネット)


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転移TN乳がんへのアテゾリズマブの効果、PD-L1検査法が重要(IMpassion130)/ESMO2019

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 PD-L1陽性の転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対する1次治療として、nab-パクリタキセル(PTX)への抗PD-L1抗体アテゾリズマブの追加による臨床ベネフィットを示したIMpassion130試験。本試験におけるPD-L1陽性は、VENTANA PD-L1 SP142アッセイを用いて判定している。今回、本試験のサンプルを用いて、SP142アッセイのほか、VENTANA SP263 IHCアッセイ、Dako PD-L1 IHC 22C3アッセイでの分析結果と無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を評価したところ、SP142陽性の患者群において臨床ベネフィットが最大であることが示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が発表した。

 IMpassion130は、PD-L1陽性転移mTNBCへの1次治療として、アテゾリズマブ+nab-PTXとプラセボ+nab-PTXを比較した第III相試験であり、免疫療法による臨床ベネフィットが初めて示された試験である。本試験におけるPD-L1陽性の定義は、SP142アッセイによるPD-L1免疫染色細胞が腫瘍細胞の1%以上とされ、本アッセイがアテゾリズマブ追加によるベネフィットが見込まれるmTNBC患者を決定する検査として承認されている。今回、本試験のサンプルを用いてバイオマーカーに関する探索的事後解析を実施し、SP142アッセイ、SP263アッセイ(どちらも腫瘍浸潤免疫細胞[IC]≧1%で陽性)、22C3アッセイ(複合陽性スコア[CPS] ≧1で陽性)の分析が一致するかを検討し、さらに臨床ベネフィットの予測能力について評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・614例(ITT集団の68%)のPD-L1状態について、3種類のアッセイを使用して評価可能であった。
・PD-L1陽性率は、SP142陽性が46%、22C3陽性が81%、SP263陽性が75%であった。
・SP142と22C3もしくはSP263との全体的な割合の一致(overall percentage agreement)はそれぞれ64%、69%で、分析一致率は基準以下(90%未満)となり同等ではなかった。
・PFSのハザード比(HR)は、SP142陽性群で0.60(95%信頼区間[CI]:0.47~0.78)、22C3陽性群で0.68(95%CI:0.56~0.82)、SP263陽性群で0.64(95%CI:0.53~0.79)、またOSでは、SP142陽性群で0.74(95%CI:0.54~1.01)、22C3陽性群で0.78(95%CI:0.62~0.99)、SP263陽性群で0.75(95%CI:0.59~0.96)であり、どちらもSP142陽性群で最も小さかった。
・SP142陰性/SP263陽性群、SP142陰性/22C3陽性群では、どちらも陽性であった群に比べて、アテゾリズマブ追加によるPFSおよびOSへのベネフィットが少なかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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IMpassion130(Clinical Trials.gov)

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ribociclib+フルベストラント、HR+/HER2-閉経後乳がんでOS延長(MONALEESA-3)/ESMO2019

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 ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)の閉経後進行乳がんに対する、ribociclib+フルベストラント併用療法の有効性を検討した第III相MONALEESA-3試験の最新結果が発表され、全生存(OS)期間を有意に延長したことが明らかになった。スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、米国・David Geffen School of MedicineのDennis J. Slamon氏が発表した。ribociclibについては、HR+/HER2-の閉経前進行乳がんにおいて、内分泌療法との併用がOSを有意に延長したことがMONALEESA-7試験により示されている。

・対象:未治療または1ラインの内分泌療法を受けた、閉経後女性または男性のHR+/HER2-進行乳がん患者
・試験群:以下の2群に2対1の割合で無作為に割り付け
 ribociclib群:ribociclib(600mg/日を3週投与、1週休薬)+フルベストラント(500mg、28日を1サイクルとして1サイクル目のDay 1、Day 15、それ以降はDay 1) 484例
 プラセボ群:プラセボ+フルベストラント 242例
・評価項目:
[主要評価項目]RECIST v1.1評価に基づく無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・2019年6月3日のデータカットオフ時点で、153例(ribociclib群121例、プラセボ群32例)が投薬継続中であった。追跡期間中央値は39.4ヵ月。
・OS中央値は、ribociclib群NRに対しプラセボ群40.0ヵ月で、ハザード比(HR):0.724、95%信頼区間(CI):0.568~0.924、p<0.00455であった。あらかじめ規定された境界値(p<0.01129)を下回り、ribociclib群における優越性が示された。
・サブグループ解析の結果、1次治療(NR vs.45.1ヵ月、HR:0.700、95%CI:0.479~1.021)、早期再発および2次治療(40.2 vs.32.5ヵ月、HR:0.730、95%CI:0.530~1.004)の患者でともにribociclib群のOSにおけるベネフィットが確認された。肺、肝転移の有無を含む、すべてのサブグループでOSにおけるベネフィットは一貫していた。
・PFS中央値についてもアップデートされ、初期解析結果と一致する結果が報告された(20.6ヵ月vs.12.8ヵ月、HR:0.587、95%CI:0.488~0.705)。治療ライン数によらずribociclib群でPFS中央値の延長が確認され、1次治療の患者では、プラセボ群19.2ヵ月に対しribociclib群で33.6ヵ月に達している(HR:0.546、95%CI:0.415~0.718)。
・後治療については、ribociclib群の81.5%、プラセボ群の84.7%で何らかの治療が行われた。ribociclib群で多かったのは内分泌療法単独(26.0%)、化学療法単独(23.2%)、プラセボ群で多かったのは内分泌療法+その他(29.2%)、化学療法単独(20.1%)であった。後治療としていずれかのラインでほかのCDK4/6阻害薬の投与があったのは、ribociclib群11%、プラセボ群25%であった。
・初回化学療法までの期間中央値は、ribociclib群でNR、プラセボ群29.5ヵ月でribociclib群で長かった(HR:0.696、95%CI:0.551~0.879)。
・PFS2(無作為化から最初の後治療後の増悪あるいは死亡までの期間)中央値は、ribociclib群39.8ヵ月に対しプラセボ群29.4ヵ月で、HR:0.670、95%CI:0.542~0.830であった。
・約40ヵ月の追跡期間において、ribociclib群で新たに報告された有害事象はなく、安全性プロファイルは以前の報告と一貫していた。ribociclib群で多くみられたGrade3/4の有害事象は、好中球減少症(57.1% vs.0.8%)、肝胆道系障害(13.7% vs.5.8%)、QTc延長(3.1% vs.1.2%)であった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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MONALEESA-3試験(Clinical Trials.gov)

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アベマシクリブ+フルベストラント、HR+/HER2-乳がんのOS延長(MONARCH-2)/ESMO2019

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 ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がんを対象とした、CDK4/6阻害薬アベマシクリブ+フルベストラントの併用療法とフルベストラント単独療法との比較試験(MONARCH-2試験)の結果が、スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・スタンフォード大学のGeorge W.Sledge氏によって発表された。

・国際共同二重盲検第III相比較試験
・対象:HR陽性HER2陰性乳がんで、術前ホルモン療法中か術後ホルモン療法の12ヵ月以内に再発・病勢進行(PD)が認められた症例、または進行再発がんに対する1次内分泌療法中のPD症例(閉経状況問わず。進行再発がんに対する化学療法薬の投与は認められていない)
・試験群:アベマシクリブ150mg×2回/日+フルベストラント500mg/回(アベマシクリブ群)
・対照群:プラセボ×2回/日+フルベストラント500mg/回(プラセボ群)
・アベマシクリブ群とプラセボ群に2対1の割合で割り付け
・評価項目:
[主要評価項目]主治医判定による無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]全生存期間(OS)
[探索的解析]化学療法施行までの期間

 主要評価項目のPFSについては、過去に統計学的に有意にアベマシクリブ群が有効であることの発表がなされていた。今回は副次評価項目であるOSの発表がメインであり、これは事前に規定された中間解析の結果である。

 主な結果は以下のとおり。

・今回のアップデートでもPFS中央値はアベマシクリブ群16.9ヵ月、プラセボ群9.3ヵ月、ハザード比(HR):0.536、95%信頼区間(CI):0.445~0.645、p<0.0001とアベマシクリブ群の有意性が再現されていた。
・データカットオフは2019年6月20日で、観察期間中央値は47.7ヵ月。登録症例数はアベマシクリブ群で446例、プラセボ群で223例の合計669例であった。この時点ではまだアベマシクリブ群の17%、プラセボ群の4%の症例で投薬が継続中であった。
・OS中央値は、アベマシクリブ群で46.7ヵ月、プラセボ群で37.3ヵ月と9.4ヵ月の延長が見られ、HRは0.757(95%CI:0.606~0.945)、p=0.0137とアベマシクリブ群が有意にOSを延長していた。この中間解析では、統計学的に意味のあるp値は0.0208と設定されており、今回の解析結果はこれを下回っていた。
・探索的解析である化学療法までの期間中央値は、アベマシクリブ群50.2ヵ月、プラセボ群22.1ヵ月で、HR:0.625(95%CI:0.501~0.779)、p<0.0001と、有意にアベマシクリブ群で延長していた。
・投薬中止後の治療は、分子標的薬がアベマシクリブ群28.5%、プラセボ群43.9%、内分泌療法がアベマシクリブ群41.7%、プラセボ群57.0%で行われ、化学療法がアベマシクリブ群44.8%、プラセボ群61.0%で行われた。逐次的にCDK4/6阻害薬の投与を受けたのは、アベマシクリブ群で5.8%、プラセボ群で17.0%であった。
・安全性については、既報と同様の内容であり、新たな有害事象の発現はなかった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】
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Sledge GW Jr, et al. JAMA Oncol. 2019 Sep 29. [Epub ahead of print]

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ESMO2019レポート現地速報 乳がん

提供元:CareNet.com

2019年9月27日から10月1日まで開催のESMO2019の乳がんトピックを愛知県がんセンター病院 岩田 広治氏が現地バルセロナからオンサイトレビュー。

レポーター紹介

岩田 広治 ( いわた ひろじ ) 氏
愛知県がんセンター病院 副院長・乳腺科部長

転移TN乳がん、GEM/CBDCAにtrilaciclib追加でOSが大きく改善/ESMO2019

提供元:CareNet.com

 強力なCDK4/6阻害薬であるtrilaciclibは、その作用機序および前臨床試験から骨髄毒性の抑制および抗腫瘍作用の改善効果が期待されている。今回、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対する多施設無作為化非盲検第II相試験において、ゲムシタビン/カルボプラチン(GEM/CBDCA)にtrilaciclibを追加することにより、全生存期間(OS)を有意に改善したことが報告された。一方、主要評価項目である好中球減少症の有意な抑制効果は示されなかった。スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Texas Oncology-Baylor Sammons Cancer CenterのJoyce O’Shaughnessy氏が発表。なお、本試験結果はLancet Oncology誌オンライン版9月28日号に同時掲載された。

・対象:再発/転移乳がんに対して0~2レジメンの化学療法を受けたmTNBC患者
・試験群:以下の3群に無作為に割り付け
 グループ1:GEM/CBDCA(Day1、8) 34例
 グループ2:GEM/CBDCA(Day1、8)+trilaciclib(Day1、8) 33例
 グループ3:GEM/CBDCA(Day2、9)+trilaciclib(Day1、2、8、9) 35例
 病勢の進行(PD)もしくは不耐の毒性発現まで21日ごとに投与
・評価項目:
 [主要評価項目]GEM/CBDCAによる好中球減少症の抑制(1サイクル目におけるGrade4の好中球減少症の期間、治療期間におけるGrade4の好中球減少症の発症)
 [副次評価項目]奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、OSなど

 主な結果は以下のとおり。

・52.0%がECOG PS 0、37.3%が化学療法を受けていた。
・追跡期間中央値は10.5ヵ月(範囲:0.1~25.8ヵ月)であった。
・薬物曝露期間の中央値は、グループ1(3.3ヵ月、4サイクル)に比べ、グループ2(5.3ヵ月、7サイクル)およびグループ3(5.5ヵ月、8サイクル)で延長した。
・1サイクル目のGrade4の好中球減少症の平均日数、治療期間におけるGrade4の好中球減少症の患者割合とも有意な差がみられず、trilaciclibによる骨髄抑制の有意な改善は認められなかった。
・ORRは、グループ1の33.3%に対して、グループ2(50.0%)、グループ3(36.7%)とも有意な差はなかった。
・PFSは、グループ1に対してグループ2(HR:0.60、95%信頼区間[CI]:0.30~1.18、p=0.13)およびグループ3(HR:0.59、95%CI:0.30~1.16、p=0.12)で有意な改善は認められなかったが、グループ2と3の合計では改善傾向がみられた(HR:0.59、95%CI:0.33~1.05、p=0.063)。
・OSは、グループ1に対してグループ2(HR:0.33、95%CI:0.15~0.74、p=0.028)、グループ3(HR:0.34、95%CI:0.16~0.70、p=0.0023)、グループ2と3の合計(HR:0.36、95%CI:0.19~0.67、p=0.0015)とも有意に改善した。
・trilaciclib関連の重篤な有害事象はみられなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【 参考文献・参考サイトはこちら 】
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Clinical Trials.gov
Antoinette RT, et al.Lancet Oncol. 2019 September 28[Epub ahead of print]

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