乳腺密度の経時的な上昇や高濃度の持続、乳がんリスクと関連/BMJ

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 韓国・漢陽大学のBoyoung Park氏らは、40歳以上の女性において乳腺密度の経時的変化が異なる5つのグループを特定し、各グループの乳がんリスクが異なること、乳腺密度の上昇や、高濃度状態の持続が乳がんリスクの上昇と関連することを明らかにした。結果を踏まえて著者は、「乳腺密度の経時的な変化を、乳がんのリスク分類において慎重に検討すべきであり、今後リスクモデルに組み込むべきである」と述べている。先行研究により、乳腺密度は乳がんリスクの増加と関連することが知られており、また定期的にマンモグラフィスクリーニングを受けている大規模集団における、乳腺密度の縦断的変化についての研究報告は限られている。BMJ誌2024年12月30日号掲載の報告。

40歳以上の韓国女性、乳腺密度の変化の軌跡と乳がんアウトカムとの関連を評価

 研究グループは、韓国の国民健康保険サービスのデータベースに組み込まれている全国乳がんスクリーニングプログラムのデータを用いて、4回の縦断的評価で類似の乳腺密度の変化を示す女性の集団を特定し、それらの変化とその後の乳がんリスクとの関連を調べる後ろ向きコホート研究を行った。

 対象としたのは、2009~16年に隔年で4回のマンモグラフィスクリーニングを受けた40歳以上の女性。Breast Imaging Reporting and Data System(BI-RADS)の4つのカテゴリー(1:脂肪性、2:乳房散在、3:不均一高濃度、4:きわめて高濃度)を用いて乳腺密度を評価。2021年12月31日までに判定された乳がん発症を調べ、Cox比例ハザードモデルを用いて、交絡因子を補正後、乳腺密度の変化の軌跡と乳がんアウトカムとの関連を評価した。

グループ1と比べてグループ2~5の乳がんリスクは1.60~3.07倍

 174万7,507例(平均年齢61.4歳)の女性コホートにおいて、5つの乳腺密度の変化の軌跡を特定した。グループ1には「一貫してBI-RADSカテゴリー1~2であった女性」が包含され、グループ2には「ベースラインでBI-RADSカテゴリー1~2であったが、時間の経過とともに乳腺密度が上昇した女性」が包含された。グループ3には「ベースラインでBI-RADSカテゴリー2~3であったが、時間の経過とともに乳腺密度が減少した女性」が、グループ4には「ベースラインでBI-RADSカテゴリー2~3であり、その後も同レベルが持続していた女性」が、グループ5には「一貫してBI-RADSカテゴリー3~4であった女性」が包含された。

 グループ2の女性はグループ1の女性と比べて、乳がんリスクが1.60倍(95%信頼区間[CI]:1.49~1.72)であった。グループ3~5の女性もグループ1の女性と比べて乳がんリスクは高く、補正後ハザード比はそれぞれ1.86(95%CI:1.74~1.98)、2.49(2.33~2.65)、3.07(2.87~3.28)であった。

 同様の結果は、いずれの年齢群でも、また閉経状態やBMIの違いに関係なく確認された。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Park B, et al. BMJ. 2024;387:e079575.

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HR+乳がん、dose-dense術後補助化学療法が有益な患者の同定/JCO

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 リンパ節転移陽性のエストロゲン受容体陽性(ER+)乳がん患者の一部は化学療法による効果が小さいことを示すエビデンスが増えてきている。米国・ダナファーバーがん研究所のOtto Metzger Filho氏らは、術後補助化学療法におけるdose-dense化学療法の有用性を検討したCALGB 9741試験において、12年間のアウトカムおよび内分泌療法への感受性を示すSET2,3スコアによりdose-dense化学療法が最も有益と考えられる患者を同定した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年1月2日号に掲載。

 CALGB 9741試験は1,973例がdose-dense化学療法群と通常化学療法群に無作為に割り付けられた。化学療法スケジュールと予後および効果予測の交互作用のハザード比(HR)は、長期の無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)のCoxモデルから推定した。内分泌転写活性を示すバイオマーカーであるSET2,3の検査はER+乳がん女性のRNAサンプル682個に実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・dose-dense化学療法は、全集団においてDFSを23%改善し(HR:0.77、95%信頼区間[CI]:0.66~0.90)、OSを20%改善した(HR:0.80、95%CI:0.67~0.95)。
・dose-dense化学療法の有益性はER+およびER-のサブセットで認められ、治療群とERの状態との間に有意な交互作用は認められなかった。
・SET2,3スコアが低いと予後不良だったが、閉経状態に関係なくdose-dense化学療法による予後は改善した(交互作用のp:DFS 0.0998、OS 0.027)。具体的には、内分泌転写活性が低いことがdose-dense化学療法の有益性を予測した。しかし、分子サブタイプによる腫瘍負荷および増殖によるシグネチャーは予測しなかった。

 本研究の結果、SET2,3スコアがdose-dense化学療法の有益な患者を同定し、具体的には、腫瘍負荷、分子サブタイプ、閉経状態よりも、内分泌転写活性の低さでその有益性が予測されることが示唆された。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Metzger Filho O, et al. J Clin Oncol. 2025 Jan 2. [Epub ahead of print]

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早期/局所進行TNBCの術前補助療法、camrelizumab追加でpCR改善/JAMA

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 早期または局所進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の術前補助療法において、化学療法単独と比較して化学療法に抗PD-1抗体camrelizumabを追加すると、病理学的完全奏効(pCR)の割合を有意に改善し、術前補助療法期に新たな安全性シグナルは発現しなかったことが、中国・復旦大学上海がんセンターのLi Chen氏らが実施した「CamRelief試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年12月13日号に掲載された。

中国の無作為化プラセボ対照第III相試験

 CamRelief試験は、早期または局所進行TNBCの術前補助療法におけるcamrelizumab追加の有益性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年11月~2023年5月に中国の40病院で患者を登録した(Jiangsu Hengrui Pharmaceuticalsの助成を受けた)。

 年齢18~75歳、StageIIまたはIIIの浸潤性TNBCの女性(性別は自己申告)で、乳がんに対する全身治療を受けておらず、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS、0~5点、点数が高いほど機能障害が重度)のスコアが0または1点の患者を対象とした。

 これらの患者を、術前補助療法(24週間)として、化学療法(2週ごと)との併用でcamrelizumab(200mg、2週ごと)またはプラセボの静脈内投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。化学療法は、最初の16週間はnab-パクリタキセル(100mg/m2)とカルボプラチン(曲線下面積[AUC]1.5)を28日間(1サイクル)の1、8、15日目に投与し、次の8週間はエピルビシン(90mg/m2)とシクロホスファミド(500mg/m2)を2週ごとに投与した。その後、手術を行い、術後補助療法として、camrelizumab群はcamrelizumab 200mgを2週ごとに最長1年間投与+標準治療、プラセボ群は標準治療のみを受けた。

 主要評価項目はpCRで、両乳房とリンパ節に浸潤性腫瘍がない状態(ypT0/Tis ypN0)と定義した。

副次評価項目のデータは不十分

 441例(年齢中央値48歳[範囲:22~75]、StageIII 158例[35.8%]、リンパ節転移あり331例[70.5%])を、camrelizumab群(222例)またはプラセボ群(219例)に無作為に割り付けた。camrelizumab群の198例(89.2%)とプラセボ群の200例(91.3%)が手術を受けた。無作為化後の追跡期間中央値は14.4ヵ月(範囲:0.0~31.8)だった。

 pCRを達成した患者は、プラセボ群で98例(44.7%)であったのに対し、camrelizumab群では126例(56.8%)と有意に達成患者割合が高かった(達成率の群間差:12.2%、95%信頼区間[CI]:3.3~21.2、片側p=0.004)。

 データカットオフ(2023年9月30日)の時点で、副次評価項目である無イベント生存、無病生存、遠隔無病生存のデータは不十分であったが、18ヵ月無イベント生存率はcamrelizumab群86.6%、プラセボ群83.6%(ハザード比:0.80、95%CI:0.46~1.42)、12ヵ月無病生存率はそれぞれ91.9%および87.8%(0.58、0.27~1.24)、12ヵ月遠隔無病生存率は91.9%および88.4%(0.62、0.29~1.33)だった。

 また、手術前の画像上の奏効は、camrelizumab群が194例(87.4%)、プラセボ群は181例(82.6%)で達成された(群間差:4.7%、95%CI:-1.8~11.1)。

術後補助療法期にも新たな安全性シグナルは認めない

 術前補助療法期に、Grade3以上の有害事象はcamrelizumab群198例(89.2%)、プラセボ群182例(83.1%)に発現した。両群とも血液毒性が主で、白血球数の減少がそれぞれ73.4%および67.6%、好中球数の減少が80.2%および77.2%、貧血が30.2%および21.9%に認めた。また、重篤な有害事象は、それぞれ77例(34.7%)および50例(22.8%)に発現し、camrelizumab群で致死的有害事象を2例(0.9%)に認めた。

 camrelizumab群では、205例(92.3%)に免疫関連有害事象を認め、21例(9.5%)がGrade3以上であった。最も頻度が高かったのはreactive capillary endothelial proliferation(195例[87.8%])で、このうちGrade3以上は5例(2.3%)だった。

 また、術後補助療法期のcamrelizumabの継続投与では、Grade3以上の有害事象、重篤な有害事象、免疫関連有害事象に関して、新たな安全性シグナルは認めなかった。

 著者は、「これらの結果を先行研究と統合すると、とくに高リスクの患者における強力化学療法レジメンと併用した場合のcamrelizumabの有益性が示され、早期または局所進行TNBCの新たな治療選択肢となる可能性を支持する知見と考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Chen L, et al. JAMA. 2024 Dec 13. [Epub ahead of print]

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ダトポタマブ デルクステカン、HR陽性/HER2陰性乳がんに承認/第一三共

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 第一三共は、抗TROP-2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン(商品名:ダトロウェイ)について、2024年12月27日、「化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」を適応として日本で製造販売承認を取得したと発表。

 同剤は上記(HR陽性/HER2陰性)患者を対象とした第III相臨床試験(TROPION-Breast01)の結果に基づき、承認された。同剤の承認は世界で初めてで、日本においてHR陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんを対象とするTROP-2を標的とした薬剤として初めて承認された。

・販売名:ダトロウェイ点滴静注用100mg
・一般名:ダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)
・製造販売承認日 :2024年12月27日
・効能又は効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
・用法及び用量:通常、成人にはダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回6mg/kgを90分かけて3週間間隔で点滴静注する。初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する。

(ケアネット 細田 雅之)


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リンパ節転移陰性の浸潤性乳がん、腋窩手術省略vs.センチネルリンパ節生検/NEJM

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 リンパ節転移陰性のcT1またはcT2浸潤性乳がん患者では、腋窩郭清術を省略してもセンチネルリンパ節生検に対して非劣性であった。ドイツ・ロストック大学のToralf Reimer氏らがドイツの142施設およびオーストリアの9施設で実施した前向き無作為化非劣性試験「Intergroup Sentinel Mamma:INSEMA試験」の追跡期間中央値6年の解析結果を報告した。乳房温存療法の一環として、生存率を損なうことなく腋窩手術を省略できるかどうかは不明のままであった。NEJM誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。

主要評価項目は無浸潤疾患生存期間

 研究グループは、18歳以上で浸潤性乳がんを有し乳房温存術を受ける予定の女性で、腫瘍径≦5cmのcT1またはcT2、かつ臨床的評価および画像診断でリンパ節転移陰性(cN0、iN0)の患者を、腋窩手術省略群とセンチネルリンパ節生検群に1対4の割合で無作為に割り付けた(初回無作為化)。その後、センチネルリンパ節生検群でセンチネルリンパ節転移陽性と診断された患者を、腋窩リンパ節郭清実施群と非実施群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

 本論では、初回無作為化の結果が報告された。主要評価項目は、初回無作為化における無浸潤疾患生存期間(iDFS)で、per-protocol解析を行った。腋窩手術省略群のセンチネルリンパ節生検群に対する非劣性は、5年iDFS率が85%以上で、浸潤性疾患または死亡のハザード比の95%信頼区間(CI)の上限が1.271未満と規定した。

腋窩手術省略はセンチネルリンパ節生検に対して非劣性

 2015年9月~2019年4月に5,502例が初回無作為化を受け、4,858例がper-protocol解析集団となった(腋窩手術省略群962例、センチネルリンパ節生検群3,896例)。

 追跡期間中央値73.6ヵ月において、per-protocol集団における5年iDFS率は腋窩手術省略群91.9%(95%CI:89.9~93.5)、センチネルリンパ節生検群91.7%(90.8~92.6)であった。ハザード比は0.91(95%CI:0.73~1.14)であり、事前に規定された非劣性マージンを満たした。

 主要評価項目のイベント(浸潤性疾患の発症または再発、あるいは死亡)は525例(10.8%)に発生した。腋窩手術省略群とセンチネルリンパ節生検群の間で、腋窩再発発生率(1.0% vs.0.3%)、および死亡率(1.4% vs.2.4%)について、明らかな違いが認められた。

 安全性については、腋窩手術省略群はセンチネルリンパ節生検群と比較して、リンパ浮腫の発現率が低く、腕の可動域が大きく、腕や肩の動きに伴う痛みが少なかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


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Reimer T, et al. N Engl J Med. 2024 Dec 12. [Epub ahead of print]

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低リスクDCIS、積極的モニタリングvs.標準治療/JAMA

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 低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)に対する積極的モニタリング(6ヵ月ごとに乳房画像検査と身体検査を実施)は、ガイドラインに準拠した治療(手術±放射線治療)と比較して、追跡2年時点の同側乳房浸潤がんの発生率を上昇せず、積極的モニタリングの標準治療に対する非劣性が示された。米国・デューク大学のE. Shelley Hwang氏らCOMET Study Investigatorsが前向き無作為化非劣性試験「COMET試験」の結果を報告した。JAMA誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。

グレード1/2のDCIS女性を対象、同側浸潤がん診断の2年累積リスクを評価

 研究グループは、2017~23年にUS Alliance Cancer Cooperative Groupのクリニック試験地100ヵ所で、ホルモン受容体陽性(HR+)グレード1/2のDCISと新規診断された40歳以上の女性995例を登録して試験を行った。

 被験者は、積極的モニタリング群(484例)またはガイドライン準拠治療群(473例)に無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは、同側浸潤がん診断の2年累積リスクで、事前に計画されたITT解析およびper-protocol解析で評価した。非劣性マージンは0.05%。

2年累積発生率、積極的モニタリング群4.2%、ガイドライン準拠治療群5.9%

 957例が解析対象となった。積極的モニタリング群は63.7歳(95%信頼区間[CI]:60.0~71.6)、ガイドライン準拠治療群は63.6歳(55.5~70.5)であり、全体では15.7%が黒人女性、75.0%が白人女性であった。

 事前規定された主要解析(追跡期間中央値36.9ヵ月)において、DCISの手術を受けたのは346例で(積極的モニタリング群82例、ガイドライン準拠治療群264例)、浸潤がんと診断されたのは46例(19例、27例)であった。

 Kaplan-Meier法による同側浸潤がんの2年累積発生率は、積極的モニタリング群4.2%、ガイドライン準拠治療群5.9%で、群間差は-1.7%(95%CI上限0.95%)であり、積極的モニタリングのガイドライン準拠治療群に対する非劣性が示された。

 浸潤がんの腫瘍特性は、両群間で統計学的な有意差はなかった。

 また、全体として68.4%(665例)が内分泌療法の開始を報告していた(積極的モニタリング群345例[71.3%]、ガイドライン準拠治療群310例[65.5%])。これら内分泌療法を受けたサブグループの同側浸潤がんの発生率は、積極的モニタリング群3.21%、ガイドライン準拠治療群7.15%で、群間差は-3.94%(95%CI:-5.72~-2.16)であった。

 著者は、「より長期の試験を行うことで、積極的モニタリングが永続的な安全性と忍容性を提供するかを明らかにできるだろう」とまとめている。
(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Hwang ES, et al. JAMA. 2024 Dec 12. [Epub ahead of print]

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オンコタイプDX再発スコア≧31のHR+/HER2ー乳がん、アントラサイクリンによるベネフィット得られる可能性(TAILORx)/SABCS2024

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 21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)による再発スコア(RS)≧31の、リンパ節転移のないホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性乳がん患者における術後療法として、タキサン+シクロホスファミド(TC)療法と比較したタキサン+アントラサイクリン/シクロホスファミド(T-AC)療法の5年無遠隔再発期間(DRFI)および無遠隔再発生存期間(DRFS)における有意なベネフィットが確認された。とくに明確にこのベネフィットが認められたのは、腫瘍径>2cmの患者であった。TAILORx試験の事後解析結果を、米国・シカゴ大学のNan Chen氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。

 TAILORx試験では、Oncotype DXによるRSに基づき低リスク(RS:0〜10)、中間リスク(同:11〜25)、高リスク(同:26〜100)に分類している。今回の解析では中~高リスク患者のうち、T-ACまたはTCによる化学療法を受けた患者のデータが分析された。中間リスクの患者は内分泌療法のみまたは内分泌療法+医師選択による化学療法のいずれかに無作為に割り付けられ、高リスクの患者は内分泌療法+医師選択による化学療法を受けていた。

 年齢、RS、腫瘍グレード、腫瘍サイズ、エストロゲン/プロゲステロン受容体の状態による調整ハザード比(aHR)を使用して、T-AC群とTC群におけるDRFI率、DRFS率、および全生存期間(OS)を比較。結果はRS<31または≧31で層別化された。

 主な結果は以下のとおり。

・本解析の適格条件を満たした2,549例のうち、438例がT-AC療法、2,111例がTC療法を受けていた。
・患者特性は年齢中央値がT-AC群53.0歳vs.TC群55.1歳、閉経後が58.4% vs.64.4%、RS 11〜25が44.7% vs.73.6%/26〜30が15.8% vs.11.9%/31〜100が39.5% vs.14.5%であった。
・T-AC療法群でのレジメンは、dose-dense AC-T療法が42.5%、標準的AC-T療法が25.1%、TAC療法が13.0%、その他のアントラサイクリン/タキサンレジメンが19.4%であった。
・5年DRFI率は、RS<31の患者ではT-AC群97.0% vs.TC群97.6%(aHR:1.24、p=0.484)、RS≧31の患者では96.1% vs.91.0%(aHR:0.32、p=0.009)となり、RS≧31の患者においてT-AC群で有意に改善した。
・RS≧31の患者における5年DRFS率はT-AC群95.4% vs.TC群89.8%とT-AC群で有意に改善し(aHR:0.47、p=0.031)、5年OS率は97.3% vs.93.5%とT-AC群で良好な傾向がみられた(aHR:0.546、p=0.167)。
・RS≧31の患者における5年DRFI率およびDRFS率のサブグループ解析の結果、DRFI率はすべてのサブグループにおいてT-AC群で良好な傾向がみられたが、DRFS率については腫瘍径>2cmではT-AC群で良好(HR:0.23、95%信頼区間[CI]:0.08~0.69)であった一方、≦2cmではTC群で良好な傾向がみられた(HR:1.32、95%CI:0.51~3.43)。
・RS≧31の患者において、閉経状態ごとに5年DRFI率をみると、閉経前の患者でT-AC群96.9% vs.TC群84.4%(aHR:0.20、p=0.032)、閉経後の患者で95.6% vs.93.4%(aHR:0.25、p=0.028)であり、閉経状態によらずT-AC群で良好な傾向がみられた。
・スプライン回帰モデルによりTC療法と比較したT-AC療法のDRFIへの影響は、RS 20ではaHR:0.96(95%CI:0.53~1.75)、RS 30ではaHR:0.79(95%CI:0.45~1.39)、RS 40ではaHR:0.60(95%CI:0.34~1.05)、RS 50ではaHR:0.45(95%CI:0.21~0.96)と推定され、RSの増加に伴いアントラサイクリンによるベネフィットが増すことが示唆された。

 Chen氏は、事後解析であるため今回のエンドポイントを評価するために設計されていないことなどを限界として挙げたうえで、多遺伝子アッセイで高リスク、リンパ節転移陰性のHR陽性HER2陰性乳がん患者では、アントラサイクリンの使用が検討されるべきではないかとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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TAILORx試験(ClinicalTrials.gov)

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乳がん再発予測、ctDNA検査はいつ実施すべき?示唆を与える結果(ZEST)/SABCS2024

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 血中循環腫瘍DNA(ctDNA)陽性で再発リスクが高いStageI~IIIの乳がん患者に対するPARP阻害薬ニラパリブの有効性を評価する目的で実施された第III相ZEST試験において、試験登録者のctDNA陽性率が低く、また陽性時点での再発率が高かったために登録が早期終了したことを、英国・Royal Marsden Hospital and Institute of Cancer ResearchのNicholas Turner氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。

 ZEST試験では、治療可能病変に対する標準治療完了後の、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)または腫瘍組織のBRCAtBRCA)病的バリアントを有するHR+/HER2-乳がん患者(StageI~III)を対象に、血液を用いた微小残存腫瘍検出専用の遺伝子パネル検査(Signatera)を実施。ctDNA陽性で放射線学的に再発のない患者を、ニラパリブ群(200または300mg/日)およびプラセボ群に無作為に割り付けた。ctDNA検査は2~3ヵ月ごとに実施された。主要評価項目はニラパリブ群の安全性と忍容性で、無再発生存期間(RFS)も評価された(当初は無病生存期間が主要評価項目とされていたが、登録の早期中止に伴い変更)。

 主な結果は以下のとおり。

・2024年5月8日時点で2,746例が事前スクリーニングに参加、1,901例がctDNA検査を受け、147例(8%)がctDNA陽性であった。
・1,901例の患者特性は、年齢中央値が52.0歳、TNBCが88.5%、tBRCA病的バリアントを有するHR+乳がんが11.5%、術前補助療法歴ありが32.7%、術後補助療法歴ありが33.8%、術前・術後補助療法歴ありが31.2%であった。
・ctDNA陽性率が低く、また陽性時点での再発率が高かったために登録は早期終了した。
・ctDNA陽性となった患者の割合は1回目の検査で5.2%、2回目以降の検査で4.4%、再発率はそれぞれ52.5%、43.8%であり、再発率はctDNAレベルの高さと関連していた。
・根治的治療完了からctDNA陽性までの期間は3ヵ月未満が最も多く、TNBCにおいてはctDNA陽性者の60%が根治的治療完了から6ヵ月以下で検出されていた。
・ctDNA陽性者では、リンパ節転移陽性、Non-pCR、StageIII、術前・術後補助療法歴を有する傾向がみられた。
・ctDNA陽性者のうち、50%(73/147例)はctDNA検出時に再発が確認された。
・ctDNA陽性者のうち40例がニラパリブ群(18例)またはプラセボ群(22例)に無作為に割り付けられた。90%がTN乳がん、10%がtBRCA病的バリアントを有するHR+乳がんであった。
・RFS中央値は、ニラパリブ群11.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.7~18.2) vs.プラセボ群5.4ヵ月(95%CI:2.8~9.3)であった(ハザード比:0.66、95%CI:0.32~1.36)。
・ニラパリブ群において、新たな安全性シグナルは確認されなかった。

 Turner氏は、十分な登録患者数が得られず早期終了したため、ニラパリブの有効性について結論を出すことはできないが、本試験が直面した課題は今後の臨床試験の設計に影響を与えるものだと指摘。ctDNA陽性者の半数がすでに再発していたことを踏まえると、今後の研究では、術前療法終了前にctDNA検査を開始すべきではないかとコメントした。これはとくにTNBCが該当するとして、術前療法で効果が得られない場合、早期に再発する可能性があると指摘している。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

ZEST試験(ClinicalTrials.gov)

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TN乳がん術前化学療法への周術期アテゾリズマブ上乗せ、EFSを改善せず/SABCS2024

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 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対して、術前化学療法に術前・術後アテゾリズマブを上乗せした場合の有効性と安全性を評価した第III相NSABP B-59/GBG-96-GeparDouze試験の結果、術前アテゾリズマブ+化学療法→術後アテゾリズマブは、術前プラセボ+化学療法→術後プラセボと比較して、主要評価項目である無イベント生存期間(EFS)を有意に改善しなかったことを、米国・ピッツバーグ大学のCharles Geyer氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。

<NSABP B-59/GBG-96-GeparDouze試験>
・試験デザイン:第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験
・対象:StageII/III、ER/PR/HER2陰性のTNBC患者
・試験群:アテゾリズマブ1,200mg(3週ごと)+パクリタキセル80mg/m2(毎週)+カルボプラチンAUC5(3週ごと)を12週間→アテゾリズマブ1,200mg(3週ごと)+AC/EC療法(2または3週ごと)を8~12週間→手術→アテゾリズマブ1,200mg(3週ごと)を1年間(アテゾリズマブ群:777例)
・対照群:上記のアテゾリズマブの代わりにプラセボを投与(プラセボ群:773例)
・評価項目:
[主要評価項目]EFS
[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)、全生存期間(OS)、安全性など
・層別化因子:地域、腫瘍サイズ、AC/EC療法のスケジュール、リンパ節転移の有無
・統計解析:主要評価項目であるEFSについて、アテゾリズマブとプラセボのハザード比(HR)0.7を検出するようにデザインされ、両側α値5%で80%の検出力を有していた。

 主な結果は以下のとおり。

・2017年12月~2021年5月に1,550例が1:1に無作為化された。患者プロファイルは両群でバランスがとれており、年齢中央値が49.0(22~79)歳、白人が89.9%、女性が99.9%(男性は1例)、リンパ節転移陽性が41.2%、原発腫瘍3cm超が41.3%、PD-L1陰性が63.8%、TILs ≧30%が37.6%であった。
・追跡期間中央値46.9ヵ月時点の4年EFS率は、アテゾリズマブ群85.2%(95%信頼区間[CI]:82.4~87.7)、プラセボ群81.9%(95%CI:78.9~84.6)で有意差は認められなかった(HR:0.8[95%CI:0.62~1.03]、p=0.08)。
・サブグループ解析では、リンパ節転移陽性の患者ではアテゾリズマブ群のほうがEFSが良好であった(p=0.039)。
・pCR率は、アテゾリズマブ群63.3%(95%CI:59.9~66.7)、プラセボ群57.0%(95%CI:53.5~60.5%)で、アテゾリズマブ群で良好であった(補正後のp=0.0091)。
・4年EFS率は、アテゾリズマブ群のpCR例が93%(95%CI:90.3~95)、non-pCR例が70.5%(95%CI:64.3~75.9)で、プラセボ群はそれぞれ91%(95%CI:87.8~93.4)、68.9%(95%CI:63.2~74)であった。
・4年OS率は、アテゾリズマブ群90.2%(95%CI:87.7~92.3)、プラセボ群89.5%(95%CI:86.9~91.5)であった(HR:0.86[95%CI:0.62~1.19])。
・試験治療下における有害事象(TEAE)はアテゾリズマブ群100%、プラセボ群99.7%に発現した。Grade3/4のTEAEは75.3%および73.4%、死亡に至ったTEAEは0.3%および0.4%であった。安全性に関する新たな懸念は認められなかった。

 これらの結果より、Geyer氏は「主要評価項目の有効性基準は満たさなかったが、この結果は、術前/術後療法を受けるTNBC患者のサブセットを同定するためのバイオマーカーのトランスレーショナル研究を支持するものである」とまとめた。

(ケアネット 森)


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導入療法後に病勢進行のないHR+/HER2+転移乳がん1次治療、パルボシクリブ追加でPFS改善(PATINA)/SABCS2024

提供元:CareNet.com

 導入療法後に病勢進行のないホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陽性(HER2+)転移乳がん患者における1次治療として、抗HER2療法と内分泌療法へのパルボシクリブの追加は無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善した。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のOtto Metzger氏が、第III相無作為化非盲検PATINA試験の結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。

・対象:HR+/HER2+転移乳がん患者(6~8サイクルの導入化学療法+トラスツズマブ±ペルツズマブ後に病勢進行なし)
・試験群:パルボシクリブ125mgを1日1回経口投与(3週間)+トラスツズマブ±ペルツズマブ+内分泌療法(パルボシクリブ追加群、261例)
・対照群:トラスツズマブ±ペルツズマブ+内分泌療法(抗HER2療法+内分泌療法群、257例)
・評価項目:
[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS
[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など
・層別化因子:ペルツズマブ投与の有無、術後(術前)補助療法としての抗HER2療法の有無、導入療法への反応(CR/PR vs.SD)、内分泌療法の種類(フルベストラントvs.アロマターゼ阻害薬[AI])

 主な結果は以下のとおり。

・患者登録は2017年6月~2021年7月に行われた。
・ベースラインの患者特性は、年齢中央値がパルボシクリブ追加群53.5歳vs.抗HER2療法+内分泌療法群53.0歳、導入療法のサイクル数中央値がともに6、ペルツズマブ投与ありが96.9% vs.97.7%、術後(術前)補助療法としての抗HER2療法ありが72.8% vs.70.8%、導入療法への反応はCR/PRが68.6% vs.68.5%、内分泌療法の種類はAIが90.8% vs.91.1%であった。
・治験責任医師評価によるPFS中央値は(データカットオフ:2024年10月15日)、パルボシクリブ追加群44.3ヵ月vs.抗HER2療法+内分泌療法群29.1ヵ月で、パルボシクリブ追加群における有意な改善がみられた(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.58~0.94、片側p=0.0074)。
・PFSのサブグループ解析では、ペルツズマブ投与や術後(術前)補助療法としての抗HER2療法歴の有無、導入療法への反応や内分泌療法の種類によらず、パルボシクリブ追加群で良好であった。
・奏効率(ORR)はパルボシクリブ追加群29.9% vs.抗HER2療法+内分泌療法群22.2%(p=0.046)、臨床的有用率(CBR)は89.3% vs.81.3%(p=0.01)でいずれもパルボシクリブ追加群で良好であった。
・OS中央値(中間解析)はパルボシクリブ追加群NE vs.抗HER2療法+内分泌療法群77ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.6~1.24)、3年OS率は87.0% vs.84.7%、5年OS率は74.3% vs.69.8%であった。
・パルボシクリブ追加群で最も多くみられた有害事象はGrade3の好中球減少症(63.2%)で、Grade2および3の疲労、口内炎、下痢も多くみられた。Grade4の有害事象発現率はパルボシクリブ追加群12.3% vs.抗HER2療法+内分泌療法群8.9%で有意差はなく(p=0.21)、治療関連の死亡は両群ともに報告されていない。

 Metzger氏は同療法について、HR+/HER2+転移乳がん患者に対する新たな標準治療となる可能性があると結んでいる。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

PATINA試験(ClinicalTrials.gov)

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