内分泌療法後の転移乳がん、T-DXdがPFSを有意に改善(DESTINY-Breast06)/NEJM

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 内分泌療法を1ライン以上受けた、ホルモン受容体(HR)陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移を有する乳がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は医師選択の化学療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、新たな安全性シグナルは確認されなかった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAditya Bardia氏らDESTINY-Breast06 Trial Investigatorsが多施設共同無作為化非盲検第III相試験「DESTINY-Breast06試験」の結果を報告した。内分泌療法後の進行に対し、従来の化学療法の有効性は限定的となっている。T-DXdは、化学療法歴のあるHER2低発現の転移を有する乳がんに対する有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2024年9月15日号掲載の報告。

主要評価項目はHER2低発現集団におけるPFS

 研究グループは、324施設において、HR陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移を有する乳がんに対する内分泌療法で、病勢進行が認められた成人患者をT-DXd群または医師選択の化学療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

 被験者の適格基準は、進行または転移乳がんに対する化学療法歴がなく、2ライン以上の内分泌療法で病勢進行が認められた患者、術後補助内分泌療法の開始から24ヵ月以内に病勢進行した患者、または内分泌療法とCDK4/6阻害薬による1次治療の開始から6ヵ月以内に病勢進行が認められた患者であった。

 HER2低発現は、免疫組織化学染色(IHC)で1+または2+、in situハイブリダイゼーション(ISH)陰性と定義し、HER2超低発現は膜染色を伴うIHC 0(>0および<1+)と定義した。

 主要評価項目は、HER2低発現集団における盲検下独立中央判定(BICR)によるRECIST 1.1に基づくPFS、副次評価項目はBICRによるITT集団(無作為化されたすべての患者、すなわちHER2低発現およびHER2超低発現集団)におけるPFS、ならびにHER2低発現集団およびITT集団における全生存期間(OS)、安全性などであった。

HER2低発現集団におけるPFS中央値はT-DXd群13.2ヵ月、化学療法群8.1ヵ月

 2020年8月20日~2024年3月18日の間に、計866例がT-DXd群(436例)および化学療法群(430例)に割り付けられた。化学療法群では、カペシタビンが59.8%、nab-パクリタキセルが24.4%、パクリタキセルが15.8%であった。HER2低発現集団は713例、HER2超低発現集団は153例であった。

 HER2低発現集団において、PFS中央値はT-DXd群13.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.4~15.2)、化学療法群8.1ヵ月(7.0~9.0)であり、T-DXd群が有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比:0.62、95%CI:0.51~0.74、p<0.001)。この結果は、ITT集団、ならびにHER2超低発現集団においても一致していた。

 OSについては、データが未成熟であった。

 Grade3以上の有害事象は、T-DXd群で52.8%、化学療法群で44.4%に発現した。間質性肺疾患または肺炎は、それぞれ49例(11.3%、3例はGrade5)、1例(0.2%、Grade2)に認められた。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Bardia A, et al. N Engl J Med. 2024 Sep 15. [Epub ahead of print]

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早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブ、最終OS結果(KEYNOTE-522)/NEJM

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 高リスク早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、ペムブロリズマブ+化学療法による術前補助療法およびペムブロリズマブ単独による術後補助療法は、術前化学療法単独と比較して、全生存期間(OS)を有意に延長した。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏らKEYNOTE-522 Investigatorsが、21ヵ国181施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「KEYNOTE-522試験」の結果を報告した。KEYNOTE-522試験では、プラチナ製剤を含む化学療法にペムブロリズマブを追加することで、病理学的完全奏効(pCR)率と無イベント生存期間(EFS)が有意に改善することが示されており、今回はOSについての最終結果が報告された。NEJM誌オンライン版2024年9月15日号掲載の報告。

術前・術後ペムブロリズマブ併用の有効性をプラセボ併用と比較

 研究グループは、未治療の高リスク早期TNBC患者(T1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0~1)を、ペムブロリズマブ+化学療法群とプラセボ+化学療法群に2対1の割合で無作為に割り付けた。

 術前補助療法として、ペムブロリズマブ+化学療法群では、ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、週1回)+カルボプラチン(AUC 1.5、週1回またはAUC 5、3週ごと)を4サイクル、その後ペムブロリズマブ+シクロホスファミド(600mg/m2)+ドキソルビシン(60mg/m2)またはエピルビシン(90mg/m2)を3週ごと4サイクル投与し、プラセボ+化学療法群ではペムブロリズマブの代わりにプラセボを上記化学療法とともに投与した。

 根治手術後は術後補助療法として、適応があれば放射線療法を行うとともに、それぞれペムブロリズマブまたはプラセボを3週ごと9サイクル投与した。

 主要評価項目は、pCR率およびEFS、副次評価項目はOSで、ITT解析を行った。

5年OS率は86.6% vs.81.7%

 2017年3月~2018年9月に計1,174例が無作為化された(ペムブロリズマブ+化学療法群784例、プラセボ+化学療法群390例)。

 計画されていた今回の第7回中間解析(データカットオフ日:2024年3月22日)における追跡期間中央値は75.1ヵ月(範囲:65.9~84.0)で、死亡はペムブロリズマブ+化学療法群で115例(14.7%)、プラセボ+化学療法群で85例(21.8%)に認められた。

 5年OS率は、ペムブロリズマブ+化学療法群が86.6%(95%信頼区間[CI]:84.0~88.8)、プラセボ+化学療法群は81.7%(95%CI:77.5~85.2)であり、ペムブロリズマブ+化学療法群においてOSの有意な延長が認められた(p=0.002、層別log-rank検定、有意水準α=0.00503)。

 有害事象については、これまでに報告されているペムブロリズマブおよび化学療法の安全性プロファイルと一致していた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Schmid P, et al. N Engl J Med. 2024 Sep 15. [Epub ahead of print]

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サシツズマブ ゴビテカン、トリプルネガティブ乳がんに承認/ギリアド

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 ギリアド・サイエンシズは2024年9月24日、化学療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(トリプルネガティブ)乳がんの治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)の日本における製造販売承認を取得したと発表した。

 今回の承認は、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンと医師選択治療の有効性と安全性を比較した海外での第III相臨床試験(ASCENT)と、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンの有効性と安全性を評価した国内の第II相臨床試験(ASCENT-J02)の結果に基づくものである。

 トリプルネガティブ乳がんは、転移・再発を起こしやすく、予後不良とされる。近年使用可能になった免疫チェックポイント阻害薬のほかに、新しい治療選択肢の登場が待たれていた。

(ケアネット 細田 雅之)


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ASCENT-J02試験(Clinical Trials.gov)

ASCENT試験(ClinicalTrials.gov)

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StageIのTN乳がんにおける術前化療後のpCR率とOSの関係/ESMO2024

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 StageIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)において、術前化学療法後のpCR率は良好な長期転帰と関連することが示され、同患者における術前化学療法の実施が裏付けられた。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのManon De Graaf氏が、1,000例以上のTNBC患者を対象としたレジストリ研究の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。

 本研究では、2012~22年に術前化学療法後に手術が施行されたcT1N0のTNBC患者をオランダがん登録のデータから特定し、pCR率と全生存期間(OS)との関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・アントラサイクリンおよびタキサンベースの術前化学療法を受けた患者1,144例が特定された。
・年齢中央値は50.0(22.0~77.0)歳、94.1%がcT1c腫瘍で、90.5%が乳管がんであった。41.3%がプラチナベースの術前化学療法を受け、24.7%が術後カペシタビン療法を受けていた。
・全体のpCR達成率は57.3%(656例)であった。
・多重ロジスティック回帰分析の結果、若年(50歳未満vs.50歳以上、オッズ比[OR]:1.75、95%信頼区間[CI]:1.36~2.26)および腫瘍グレードの高さ(グレード3 vs.1または2、OR:2.07、95%CI:1.55~2.76)はpCR率の高さと関連していたが、小葉がんはpCR率の低さと関連していた(小葉がんvs.乳管がん、OR:0.18、95%CI:0.03~0.69)(いずれもp<0.05)。
・プラチナベースの術前化学療法は、pCR率の改善と有意な関連はみられなかった(プラチナベースの術前化学療法ありvs.なし、57.6% vs.57.1%、OR:1.02、95%CI:0.80~1.29、p=0.9)。
・4年時OSは、pCR達成群で98% vs.残存病変群で93%となり、pCR達成群で有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.29、95%CI:0.15~0.36、log-rank検定のp<0.001)。
・残存病変群における術後カペシタビン療法の有無によるOSへの影響をみると、4年時OSはカペシタビン群93% vs.術後化学療法なし群91%であった(HR:0.65、95%CI:0.31~1.39、log-rank検定のp=0.3)。

 Graaf氏は、StageIのTNBC患者のうち術前化学療法が必要な患者を決めるため、またTILsや免疫関連遺伝子シグネチャ―などの予測バイオマーカーを評価するために、さらなる研究が必要と結んでいる。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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HR+/HER2+の閉経前乳がん、卵巣機能抑制で予後改善/ESMO2024

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 術前または術後補助化学療法を受けた閉経前のHR+/HER2+の早期乳がん患者において、内分泌療法に卵巣機能抑制を追加することで予後が有意に改善したことを、韓国・延世大学校医科大のSung Gwe Ahn氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。

 これまでの研究により、卵巣機能抑制と内分泌療法の併用により、閉経前のHR+の早期乳がん患者の無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)が改善することが示されている。しかし、これらの対象の多くはHER2-の乳がん患者であり、HER2+の乳がん患者におけるデータは限られている。

 そこで研究グループは、国際共同第III相HERA試験のデータを後ろ向きに解析し、HR+/HER2+の閉経前の早期乳がん患者に卵巣機能抑制を追加することで予後が改善するかどうかを評価した。また、卵巣機能抑制に併用した内分泌療法(タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬)による予後を比較した。

 患者を、下記の4群に分け、(1)のタモキシフェン単独群vs.(2~4)の内分泌療法+卵巣機能抑制群、および(2)のタモキシフェン併用群vs.(3、4)のアロマターゼ阻害薬併用群のDFSとOSを評価した。追跡期間中央値は11.0年であった。
(1)タモキシフェン単独 501例
(2)タモキシフェン+卵巣機能抑制 269例
(3)タモキシフェン+アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制 140例
(4)アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制 55例

 主な結果は以下のとおり。

タモキシフェン単独vs.内分泌療法+卵巣機能抑制
・解析には965例が含まれ、そのうち501例(51.9%)はタモキシフェン単独で、464例(48.1%)は卵巣機能抑制と内分泌療法(タモキシフェン269例[27.9%]、エキセメスタン195例[20.2%])を併用していた。
・内分泌療法+卵巣機能抑制群の10年DFS率は70.9%、タモキシフェン単独群は59.6%で、内分泌療法の追加は予後の改善と独立して関連していた(ハザード比[HR]:0.68[95%信頼区間[CI]:0.53~0.88]、p<0.001)。
・10年OS率は、内分泌療法+卵巣機能抑制群84.7%、タモキシフェン単独群74.0%で、併用群で有意に良好であった(HR:0.64[95%CI:0.46~0.89]、p<0.001)。
・これらの結果は、トラスツズマブ併用の有無によらず同様の傾向にあった。

タモキシフェンvs.アロマターゼ阻害薬
・解析には、タモキシフェン+卵巣機能抑制群269例、タモキシフェン+アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群とアロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群(以下、アロマターゼ阻害薬+免疫機能抑制群)195例が含まれた。
・10年DFS率は、アロマターゼ阻害薬+免疫機能抑制群が78.7%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群が65.2%であり、アロマターゼ阻害薬併用のほうが良好であった(HR:0.54[95%CI:0.38~0.75])。
・10年OS率は、アロマターゼ阻害薬+免疫機能抑制群91.3%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群79.7%であった(HR:0.48[95%CI:0.30~0.77])。
・これらの結果は、トラスツズマブ併用の有無によらず同様の傾向にあった。

(ケアネット 森)


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ClinicalTrials.gov(ABIGAIL試験)

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T-DXdによる遅発期・延長期の悪心・嘔吐抑制にオランザピン6日間併用が有効(ERICA)/ESMO2024

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 HER2陽性/低発現の転移乳がんへのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)治療による遅発期および延長期の悪心・嘔吐を、オランザピン6日間投与と5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの併用が抑制する可能性が、日本で実施された多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第II相比較試験(ERICA)で示唆された。昭和大学の酒井 瞳氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表し、Annals of Oncology誌オンライン版に同時掲載された。

・対象:T-DXd治療を予定しているHER2陽性/低発現の転移/再発乳がん患者
・試験群:T-DXd投与1~6日目にオランザピン5mg(1日1回)を5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾン(1日目に6.6mg静脈内投与または8mg経口投与)と併用
・対照群:オランザピンの代わりにプラセボを投与
・評価項目:
[主要評価項目]遅発期(T-DXd投与後24~120時間)の完全奏効(嘔吐なし、レスキュー治療なし)割合
[副次評価項目]急性期(0~24時間)/延長期(120~504時間)の完全奏効割合、急性期・遅発期・延長期の完全制御(嘔吐なし、レスキュー治療なし、悪心なし/軽度)割合、急性期・遅発期・延長期の総制御(嘔吐なし、レスキュー治療なし、悪心なし)割合、急性期・遅発期・延長期の悪心なし割合、1日毎の完全奏効割合、PRO-CTCAEによる患者報告症状、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・2021年11月~2023年9月に国内43施設で168例が登録され、162例(オランザピン群80例、プラセボ群82例)がプロトコールに組み入れられた。
・遅発期の完全奏効割合は、オランザピン群(70.0%)がプラセボ群(56.1%)より有意に高く(p=0.047)、主要評価項目を達成した。
・副次評価項目のすべての項目において、遅発期および延長期でオランザピン群のほうが高かった。
・1日毎の完全奏効割合および悪心なし割合も、21日間の観察期間を通してオランザピンのほうが高かった。
・初回の悪心発現までの期間中央値はオランザピン群6.5日/プラセボ群3.0日、悪心発現患者における悪心期間中央値はオランザピン群4.0日/プラセボ群8.0日、レスキュー治療を実施した患者割合はオランザピン群38.8%/プラセボ群56.6%だった。
・PRO-CTCAEによる患者自身の評価では、食欲不振がオランザピン群で少なかった。
・有害事象はオランザピンの以前の報告と同様で、新たな安全性シグナルはみられなかった(傾眠:オランザピン群25.0%/プラセボ群10.8%、高血糖:オランザピン群7.5%/プラセボ群0%)。

 これらの結果から、酒井氏は「オランザピンをベースとした3剤併用療法は、T-DXd治療により引き起こされる遅発期および延長期の悪心・嘔吐を抑制する有効な制吐療法と思われる」とまとめた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Sakai H, et al. Ann Oncol. 2024 Sep 14. [Epub ahead of print]

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高悪性度のHR+/HER2-進行乳がん1次治療、化学療法と比べアベマシクリブ+ETが早期ORR良好(ABIGAIL)/ESMO2024

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 予後不良の関連因子を有する、悪性度の高いホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する1次治療として、アベマシクリブと内分泌療法(ET)の併用は、化学療法に続いて同併用療法を実施する場合と比較して早期の奏効率(ORR)が高いことが示された。スペイン・Hospital San Juan de Dios de CordobaのJuan De la Haba Rodriguez氏は、非盲検無作為化多施設共同非劣性試験である第II相ABIGAIL試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。

・対象:高悪性度の基準(術後ET完了時の再発またはアロマターゼ阻害薬ベースのレジメン終了から36ヵ月以内、内臓転移、グレード3またはPgR陰性、LDH>1.5ULN)を1つ以上満たすHR+/HER2-進行乳がん患者(進行がんに対する治療歴なし、ECOG PS 0~1) 
・試験群:アベマシクリブ(28日サイクルで1日2回、150mg)+レトロゾール(1日1回、2.5mg)またはフルベストラント(1、15、29日目、その後は月1回、500mg) 80例
・対照群:パクリタキセル(28日サイクルで1、8、15日目、90mg/m2)を12週→アベマシクリブ+レトロゾールまたはフルベストラント 82例
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による12週時点でのORR
[副次評価項目]全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時点での患者背景は両群でバランスがとれており、年齢中央値が試験群57歳vs.対照群60歳、ECOG PS 0が65% vs.64.3%、閉経後が68.7% vs.75.6%であった。
・12週時点でのORRは試験群58.8% vs.対照群40.2%(オッズ比:2.11、95%信頼区間:1.13~3.96、p=0.0193)で、主要評価項目は達成された。
・12週時点で、完全奏効(CR)はともに0%、部分奏効(PR)は試験群58.8% vs.対照群40.2%、安定(SD)は30.0% vs.45.2%、進行(PD)は1.2% vs.8.5%であった。
・12週時点での試験治療下における有害事象(TEAE)は、両群でそれぞれ予測されたものであり、下痢(試験群68% vs.対照群23%)を除き、試験群でより良好または同等であった。

 同試験は現在も進行中で、PFSを含むその他の副次評価項目や長期の有効性が評価される予定となっている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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ClinicalTrials.gov(ABIGAIL試験)

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未治療TN乳がんへのカピバセルチブ、化学療法への上乗せ効果示さず(CAPItello-290)/ESMO2024

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 切除不能な局所進行または転移を有する未治療のトリプルネガティブ(TN)乳がん患者を対象に、1次治療としてのカピバセルチブ+パクリタキセル併用療法の有効性および安全性を、プラセボ+パクリタキセルと比較した第III相CAPItello-290試験の結果、全生存期間(OS)は有意に改善しなかったものの、無増悪生存期間(PFS)の改善は認められたことを、米国・UT Southwestern Medical CenterのHeather L. McArthur氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。

・試験デザイン:第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験
・対象:切除不能な局所進行または転移を有し、全身療法を受けていないTN乳がん患者。6ヵ月以内(タキサン系の場合は12ヵ月以内)の術前・術後化学療法歴がある患者は除外された。
・試験群(カピバセルチブ群):カピバセルチブ 400mgを1日2回(4週間サイクルの1~3週目の2~5日目)+パクリタキセル 80mg/m2(4週間サイクルの1~3週目の1日目) 404例
・対照群(プラセボ群):プラセボを1日2回(4週間サイクルの1~3週目の2~5日目)+パクリタキセル 80mg/m2(4週間サイクルの1~3週目の1日目) 408例
・評価項目:
[主要評価項目]全患者集団およびPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を有する患者集団におけるOS
[主要副次評価項目]全患者集団およびPIK3CA/AKT1/PTEN変異を有する患者集団におけるPFS、安全性
・層別化因子:内臓転移の有無、術前または術後化学療法歴の有無、地域
・データカットオフ:2024年3月18日

 主な結果は以下のとおり。

・2019年7月~2022年2月に812例がランダム化された。
・年齢中央値はカピバセルチブ群が54.0(範囲:26~85)歳、プラセボ群が53.0(範囲:25~87)歳、閉経後が65.1%および64.2%、内臓転移ありが70.3%および69.6%、de novoが39.9%および41.2%、術前または術後化学療法歴があったのは両群とも50.0%であった。
PIK3CA/AKT1/PTEN変異を認めたのは、カピバセルチブ群30.7%(124例)、プラセボ群30.6%(125例)であった。
・全患者集団におけるOS中央値は、カピバセルチブ群17.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.6~20.3)、プラセボ群18.0ヵ月(95%CI:15.3~20.3)であった(ハザード比[HR]:0.92[95%CI:0.78~1.08]、p=0.3239)。
PIK3CA/AKT1/PTEN変異を有する集団におけるOSは、カピバセルチブ群20.4ヵ月(95%CI:15.7~23.4)、プラセボ群20.4ヵ月(95%CI:14.6~26.9)であった(HR:1.05[95%CI:0.77~1.43]、p=0.7602)。
・全患者集団におけるPFS中央値は、カピバセルチブ群5.6ヵ月(95%CI:5.4~7.1)、プラセボ群5.1ヵ月(95%CI:3.9~5.4)であった(HR:0.72[95%CI:0.61~0.84])。
PIK3CA/AKT1/PTEN変異を有する集団におけるPFS中央値は、カピバセルチブ群7.5ヵ月(95%CI:5.6~9.3)、プラセボ群5.6ヵ月(95%CI:5.3~5.7)であった(HR:0.70[95%CI:0.52~0.95])。
・全患者集団における奏効率(ORR)は、カピバセルチブ群50.1%、プラセボ群37.6%であった(オッズ比[OR]:1.68[95%CI:1.27~2.23])。完全奏効(CR)は2.2%および1.2%、部分奏効(PR)は47.9%および36.3%であった。
PIK3CA/AKT1/PTEN変異を有する集団におけるORRは、カピバセルチブ群54.1%、プラセボ群41.9%であった(OR:1.63[95%CI:0.99~2.72])。CRは2.5%および1.6%、PRは51.6%および40.3%であった。
・全患者集団における有害事象は、カピバセルチブ群98.0%(うちGrade3以上が58.0%)、プラセボ群95.1%(うちGrade3以上が38.8%)に発現した。新たな安全シグナルは認められなかった。

(ケアネット 森)


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CAPItello-290試験(ClinicalTrials.gov)

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乳がん脳転移例へのT-DXd、安定/活動性によらず良好な結果(DESTINY-Breast12)/ESMO2024

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 脳転移の有無を問わず、前治療歴のあるHER2陽性(+)の転移を有する乳がん患者を対象とした第IIIb/IV相DESTINY-Breast12試験の結果、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は脳転移を伴う患者で全身および中枢神経系における良好な抗腫瘍活性を示し、その活性は持続的であったことを、米国・ダナファーバーがん研究所のNancy U. Lin氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表し、Nature Medicine誌オンライン版2024年9月13日号に同時掲載された。

 これまで、T-DXdのDESTINY-Breast01、02、03試験において、ベースライン時に脳転移があるHER2+乳がん患者の探索的プール解析の結果、既治療で安定した脳転移患者および未治療で活動性の脳転移患者で高い頭蓋内奏効率(ORR)が得られたことが報告されている。DESTINY-Breast12試験は、ベースライン時に脳転移がある患者とない患者の2つの別々のコホートによって、脳転移の有無を問わずにT-DXdの有効性と安全性を前向きに評価した非比較研究である。対象は、抗HER2療法の前治療歴があるHER2+の転移乳がん患者であった。脳転移を有するHER2+の転移乳がん患者を含めたT-DXdの前向き研究としては最大規模となる。最終データカットオフは2024年2月8日。

 主な結果は以下のとおり。

コホート1(脳転移例)
・既治療で安定状態、または即時の局所治療を必要としない活動性(未治療、既治療/増悪)の脳転移を有するHER2+の転移乳がん患者263例に、T-DXd 5.4mg/kgを3週ごとに投与した。データカットオフ時点の追跡期間中央値は15.4(範囲:0.1~33.0)ヵ月であった。
・年齢中央値は52(範囲:28~86)歳、HR+が62.7%、測定可能な病変が75.3%であった。転移に対する前治療のライン数中央値は1.0(範囲:0~4)で0ラインが7.6%、1ラインが50.2%、2ラインが41.4%、≧3ラインが0.8%であった。頭蓋内放射線治療歴のある患者において、最後の頭蓋内放射線治療から治療開始までの期間の中央値は164日であった。
・コホート1の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は17.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:13.7~22.1)であった。12ヵ月PFS率は全体が61.6%(54.9~67.6)、安定状態群が62.9%(54.0~70.5)、活動性群が59.6%(49.0~68.7)であった。活動性群のうち、未治療群は47.0%(29.6~62.7)、既治療/増悪群が66.7%(53.4~76.9)であった。
・12ヵ月中枢神経系PFS率は58.9%(95%CI:51.9~65.3)であった。安定状態群(57.8%[48.2~66.1])と活動性群(60.1%[49.2~69.4])は同等であった。
・ORRは51.7%(95%CI:45.7~57.8)で、完全奏効(CR)は4.2%、部分奏効(PR)は47.5%であった。安定状態群のORRは49.7%(41.9~57.5)、活動性群のORRは54.7%(45.2~64.2)であった。
・中枢神経系ORRは、全体が71.7%(95%CI:64.2~79.3)、安定状態群が79.2%(70.2~88.3)、活動性群が62.3%(50.1~74.5)であった。活動性群のうち、未治療群は82.6%(67.1~98.1)、既治療/増悪群は50.0%(34.1~65.9)であった。
・12ヵ月全生存(OS)率は90.3%(95%CI:85.9~93.4)であった。
・Grade3以上の有害事象は51.0%に発現した。治験責任医師が報告した間質性肺疾患/肺臓炎は16%(うちGrade3以上が3.0%)であった。

コホート2(非脳転移例)
・脳転移を有さないHER2+の転移乳がん患者241例に、T-DXd 5.4mg/kgを3週ごとに投与した。データカットオフ時点の追跡期間中央値は16.1(範囲:0.8~28.4)ヵ月であった。
・年齢中央値は54(範囲:24~87)歳、HR+が62.2%、測定可能な病変が89.2%であった。転移に対する前治療のライン数中央値は1.0(範囲:0~4)で0ラインが7.5%、1ラインが51.5%、2ラインが39.8%、≧3ラインが1.2%であった。
・コホート2の主要評価項目であるORRは62.7%(95%CI:56.5~68.8)で、CRが9.5%、PRが53.1%であった。
・12ヵ月OS率は90.6%(95%CI:86.0~93.8)であった。
・Grade3以上の有害事象は49.0%に発現した。治験責任医師が報告した間質性肺疾患/肺臓炎は12.9%(うちGrade3以上が1.2%)であった。

(ケアネット 森)


【参考文献・参考サイトはこちら】

Harbeck N, et al. Nat Med. 2024 Sep 13. [Epub ahead of print]

DESTINY-Breast12試験(ClinicalTrials.gov)

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この20年間、18~26歳で急増しているがんは?

提供元:CareNet.com

 過去20年間の生活習慣の変化により、若者ががんの危険因子にさらされる機会が増えている可能性があるが、データベースによる研究報告はない。今回、イタリア・Institute of Biochemistry and Cell Biology, National Council of ResearchのAlessandro Cavazzani氏らが、米国・国立がん研究所のがん登録データベース(SEER22)を用いて、部位別のがん罹患率の2000~20年の傾向を調べたところ、18~26歳の女性における膵がん罹患率の平均年変化率が最も高く、年に10%近く増加していた。BMC Medicine誌2024年9月4日号に掲載。

 本研究では、SEER22から2000~20年のがん罹患データ(1,018万3,928例)を収集し、膵がん、胃がん、肺/気管支がん、脳/その他の神経系のがん、骨髄腫、大腸がん、悪性黒色腫、子宮頸がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、精巣がんの罹患率の平均年変化率を、性別・年代別(18~34歳、35~54歳、55歳以上)に算出した。さらに18~34歳を18~26歳および27~34歳に分けて算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・すべてのがんの中で18~34歳の女性の膵がん罹患率の平均年変化率が6.22%(95%信頼区間[CI]:5.2~7.24、p<0.0001)と最も高かった。
・胃がん、多発性骨髄腫、大腸がんにおいても、18~34歳の女性が最も高かった。
・18~34歳の年代を18~26歳と27~34歳に分けて算出すると、18~26歳における膵がん罹患率の平均年変化率は、女性が9.37%(95%CI:7.36~11.41、p<0.0001)と、男性の4.43%(95%CI:2.36~6.53、p<0.0001)に比べて2倍以上だった。27~34歳の女性(4.46%、95%CI:3.62~5.31、p<0.0001)は男性と同様だった。

 著者らは、「致死率の高いがんにおける新たなリスク集団を知ることは、早期発見と効果的な疾患管理のためにきわめて重要」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Cavazzani A, et al. BMC Med. 2024;22:363.

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