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本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。
対数変換を行い、新たな変数を作成する
前回まで、仮想データ・セットを用い、無料の統計解析ソフトであるEZR(Eazy R)の操作手順も交えて、変数の型とデータ・セット記述方法の使い分け(連載第46回参照)、表1(患者背景表)の作成方法(連載第47回参照)について解説しました。
今回からは、いよいよ多変量解析の実践的な手法について、EZR(Eazy R)の操作手順を含めて解説していきたいと思います。
これまでに、われわれのResearch Question(RQ)の交絡因子として下記の要因を挙げることにしました(連載第45回参照)。
・年齢、性別、糖尿病の有無、血圧、eGFR、蛋白尿定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値
これらの要因のうち、蛋白尿定量(UP)は連続変数データですが、その分布は右に裾を引いたような歪んだ分布であることを、ヒストグラム(度数分布図)を描いて示しました(連載第46回参照)。このような分布が歪んだデータは、対数変換を行って正規分布に近似させることができます。多変量解析において、対数変換は重要な前準備の1つです。変数を必要に応じて対数変換することにより、外れ値の影響を減らし多変量解析モデルが安定化する、などの意義があります。
ここでは、EZRを用いて
1.対数変換を実行
2.新たな変数を作成
3.対数変換後のデータ分布を比較
する方法について説明します。
はじめに、オリジナルの仮想データ・セットを以下の手順でEZRに取り込みます。
※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。
・「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」
次に
・「アクティブデータセット」→「変数の操作」→「連続変数を対数変換する」を選択
そうすると下記のポップアップウィンドウが開きます。
「変数(1つ以上選択)」では「UP」を選択します。「対数変換の底」は「自然対数(底はe)」を選んでください(詳細は省略しますが、生物統計学の領域では常用対数より自然対数を用いることが多いようです)。「新しい変数名または複数の変数に対する接頭文字列」には、たとえば「Loge_UP」と入力してみましょう。そして、「OK」ボタンをクリックすると、下図の出力ウィンドウで、新しい変数として「Loge_UP」が作成されたことが示されます。
Rコマンダーの画面(下図)からデータセットの「表示」をクリックし、「Loge_UP」が追加されたことも確認してみてください。
それでは、歪んだ分布であったUPを対数変換したLoge_UPのヒストグラムをEZRの以下の手順で比較してみましょう(連載第46回参照)。
・「グラフと表」→「ヒストグラム」を選択
下記のポップアップウィンドウが開きますので、「変数(1つ選択)」はそれぞれ「UP」と「Loge_UP」を、「群別する変数(0~1つ選択)」は「treat」を指定してください。その他はデフォルト設定のままで「OK」をクリックしてみましょう。
下のようなUP、Loge_UPのヒストグラム(比較群分けごと)が描けたでしょうか。右に裾を引いたような歪んだUPの分布が、対数変換(Loge_UP)することにより正規分布に近似したものとなりました。
講師紹介
長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和大学臨床疫学研究所 所長・教授
昭和大学大学院医学研究科 衛生学・公衆衛生学分野/腎臓内科学分野 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授
[略歴]
1996年昭和大学医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。
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