男性乳がんにおける内分泌療法の第II相無作為化試験/JAMA Oncol

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 ホルモン受容体(HR)陽性の男性乳がん患者において、標準的内分泌療法によるエストラジオール値の変化は不明である。今回、ドイツ・Kliniken Essen-MitteのMattea Reinisch氏らが第II相無作為化試験で調べたところ、アロマターゼ阻害薬(AI)またはタモキシフェンにゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)を併用した群では、エストラジオール値が持続的に低下することが示された。JAMA Oncology誌オンライン版2021年2月4日号に掲載。

 本研究の対象は、ドイツ国内のブレストユニット24施設から2012年10月~2017年5月に組み入れられたHR陽性乳がんの男性患者56例で、タモキシフェン単独、タモキシフェン+GnRHa、AI+GnRHaの3群に無作為に割り付けた。主要評価項目はベースラインから3ヵ月後のエストラジオール値の変化、副次評価項目は6ヵ月後のエストラジオール値の変化と、他の内分泌パラメータ、有害事象、性機能、生活の質の3ヵ月および6ヵ月後の変化とした。

 主な結果は以下のとおり。

・男性患者(年齢中央値:61.5歳、範囲:37~83歳)56例中52例が治療を開始し、3例(各群1例)が早期に治療中止した。50例が主要評価項目について評価可能であった。
・3ヵ月後のエストラジオール値の中央値は、タモキシフェン群では67%増加(+17.0 ng/L)、タモキシフェン+GnRHa群では85%減少(-23.0ng/L)、AI+GnRHa群では 72%減少(-18.5ng/L)がみられた(p<0.001)。
・6ヵ月後のエストラジオール値の中央値は、タモキシフェン群では41%増加(+12 ng/L)、タモキシフェン+GnRHa群では61%減少(-19.5ng/L)、AI+GnRHa群では64%減少(-17.0ng/L)がみられた(p<0.001)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Reinisch M, et al. JAMA Oncol. 2021 Feb 4. [Epub ahead of print]

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低・中所得国は、がん手術後の転帰が不良/Lancet

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 がん患者の80%が手術を必要とするが、術後の早期の転帰に関する低~中所得国(LMIC)の比較データはほとんどないという。英国・エディンバラ大学のEwen M. Harrison氏らGlobalSurg Collaborative and NIHR Global Health Research Unit on Global Surgeryの研究グループは、とくに疾患の病期や合併症が術後の死亡に及ぼす影響に着目して、世界の病院のデータを用いて乳がん、大腸がん、胃がんの術後転帰を比較した。その結果、(1)LMICでは術後の死亡率が高いが、これは病期が進行した患者が多いことだけでは十分に説明できない、(2)術後合併症からの患者救済能力(capacity to rescue)は、有意義な介入のための明確な機会をもたらす、(3)術後の早期死亡は、一般的な合併症の検出と介入を目指した、周術期の治療体制の強化に重点を置いた施策によって抑制される可能性があることなどが示された。Lancet誌2021年1月21日号掲載の報告。

82ヵ国428病院の前向きコホート研究

 研究グループは、全身麻酔または脊髄幹麻酔(neuraxial anaesthesia)下に施行される皮膚の切開を要する手術を受けた原発性の乳がん、大腸がん、胃がんの成人患者を対象に、国際的な多施設共同前向きコホート研究を実施した(英国国立健康研究所[NIHR]グローバル健康研究ユニットの助成による)。

 主要転帰は、術後30日以内の死亡または重度合併症とした。マルチレベルロジスティック回帰により、病院および国別の患者における3段階のネストモデル内の関連性を解析した。病院レベルのインフラストラクチャー効果は、3要因媒介分析で評価した。

 2018年4月~2019年1月の期間に、82ヵ国の428病院から1万5,958例(乳がん8,406例[52.7%]、大腸がん6,215例[38.9%]、胃がん1,337例[8.4%])が登録された。高所得国(31ヵ国)が9,106例、高中所得国(23ヵ国)が2,721例、低・低中所得国(28ヵ国)が4,131例であった。

低・低中所得国で、胃がん、大腸がん、合併症による死亡率が高い

 LMICは高所得国に比べ、より進行した病変を持つ患者が多かった。30日死亡率は、胃がんが低・低中所得国(補正後オッズ比[aOR]:3.72、95%信頼区間[CI]:1.70~8.16)で高く、大腸がんは高中所得国(2.06、1.11~3.83)および低・低中所得国(4.59、2.39~8.80)で高かった。乳がんでは死亡率の差は認められなかった。

 重度合併症の発現後に死亡した患者の割合は、低・低中所得国(aOR:6.15、95%CI:3.26~11.59)および高中所得国(3.89、2.08~7.29)で高かった。

 合併症発現後の術後死亡は、60%が患者要因で、40%は病院または国の要因で説明が可能であった。LMICでは、一貫して利用可能な術後ケア施設がないことが、重度合併症100件当たり7~10件以上という高い死亡率と関連していた。また、がんの病期だけでは、国別の死亡率や術後合併症発現の早期のばらつきは、ほとんど説明がつかなかった。

 著者は、「LMICでは、周術期死亡率が過度に高く、これががん生存の劣悪さに寄与している。術後の一般的な合併症の発現後に、回避可能な死亡を防ぐには、LMICの医師の主導により、実践的な周術期介入を緊急に評価する必要がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

GlobalSurg Collaborative and National Institute for Health Research Global Health Research Unit on Global Surgery. Lancet. 2021;397:387-397.

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バーチャル開催のJSMO2021、注目演題を発表/日本臨床腫瘍学会

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 2021年2月18日(木)~21日(日)、第18回日本臨床腫瘍学会学術集会が完全バーチャル形式で開催される。これに先立ち、プレスセミナーが開催され、今回の学術集会の取り組みや注目演題等が発表された。

 この中で、会長を務める西尾 和人氏(近畿大学医学部ゲノム生物学教室 教授)が学会の概要を説明。昨年夏にいち早く完全バーチャル形式での開催を決めた本学会は、例年より長めの日程となり、海外演者も数多く登壇予定だ。「朝は7時から夜は23時まで多くの演題を用意し、勤務のある方でも参加しやすくした」(西尾氏)。

 学会のテーマは「Evolving Treatment Paradigms for Precision Oncology」で、2019年にがん遺伝子パネル検査が保険収載となってから1年半あまりで、がんの臨床現場を大きく変えたゲノム医療についてリアルワールドデータやアジア各国のとの協働研究の結果が報告される。また、15の学術部会による教育シンポジウムや患者支援企画、国際学会としてASCO(米国腫瘍学会)やESMO(欧州腫瘍学会)とのジョイントセミナーや少人数で各国の腫瘍内科医とディスカッションする「Meet the Experts」も多数設けられた。その他の注力テーマとしては「COVID-19流行下におけるがん診療」と、リキッドバイオプシーや人工知能(AI)の臨床応用といった「新しいテクノロジーにおけるがん医療の変革」が設定され、いずれも複数のセッションが予定されている。

 続けて、中川 和彦氏(近畿大学医学部内科学教室 教授)が、900題にのぼる一般演題の中で、とくに注目される3つのPresidential Sessionについて、詳細を解説した。

Presidential Session 1
2月19日(金) 14:00~15:55 「免疫チェックポイント阻害剤の治療開発」
1)進行食道がんに対するペムブロリズマブ+化学療法 KEYNOTE-590:原 浩樹氏(埼玉県立がんセンター)
2)MSI-high/dMMR の転移のある大腸がんに対するペムブロリズマブvs.化学療法KEYNOTE-177:吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院)
3)進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対するニボルマブ+プラチナ化学療法+ベバシズマブ 日本人サブ解析:樋田 豊明氏(愛知県がんセンター)
4)肺肉腫に対する2つの抗PD-1抗体(ニボルマブとペムブロリズマブ):板橋 耕太氏(国立がん研究センター中央病院)
5)R/R AML患者におけるAMG330:Farhad Ravandi氏(米MDアンダーソンがんセンター)

Presidential Session 2
2月20日(土) 15:30~15:35 「分子標的治療と殺細胞性抗がん剤治療」
1)術後ハイリスク頭頸部がんに対する化学療法 :田原 信氏(国立がん研究センター東病院)
2)EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するベバシズマブ+エルロチニブ OSとctDNA解析:福原 達朗氏(宮城県立がんセンター)
3)HER2陽性進行乳がんへのペルツズマブ再投与:遠山 竜也氏(名古屋市立大学)
4)再発または転移のある子宮頸がんに対するtisotumab:Robert L. Coleman氏(米国立がん研究所)
5)進行大腸がんにおけるAMG510:久保木 恭利氏(国立がん研究センター東病院)

Presidential Session 3
2月21日(日) 14:50~16:50 「ゲノム医療と希少がん」
1)進行胃がんにおけるctDNAによる遺伝子異常 SCRUM-Japan MONSTAR SCREEN:舛石 俊樹氏(愛知県がんセンター)
2)泌尿生殖器がんにおけるctDNAによるゲノム解析:野々村 祝夫氏(大阪大学)
3)日本におけるがんゲノム医療における初期エキスパートパネルのパフォーマンス:角南 久仁子氏(国立がん研究センター中央病院)
4)原発不明がんに対するNGSを用いた遺伝子発現解析と遺伝子変異による原発巣推定に基づくSite-Specific Treatment:新井 誠人氏(千葉大学)
5)小児がん患者における抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐予防としてのパロノセトロン:古賀 友紀氏(九州大学)

 19~21日には、その日に発表された演題の中から、とくに注目すべきものを識者が解説する「Highlight of the Day」(1時間)も予定されている。

◆第18回日本臨床腫瘍学会学術集会
ライブ配信:2021年2月18日(木)~21日(日)
オンデマンド配信:2021年3月1日(月)~31日(水)

(ケアネット 杉崎 真名)


【参考文献・参考サイトはこちら】

第18回日本臨床腫瘍学会学術集会

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乳がん関連遺伝子バリアントのリスクを評価/NEJM

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 乳がんの遺伝性の病原性バリアントを有する女性のリスク評価と管理では、がん素因遺伝子の生殖細胞系列の病原性バリアントと関連する、集団ベースの乳がんリスクの推定がきわめて重要とされる。米国・メイヨークリニックのChunling Hu氏らCARRIERS(Cancer Risk Estimates Related to Susceptibility)コンソーシアムは、同国の一般集団において、既知の乳がん素因遺伝子の病原性バリアントと関連する乳がんの有病率とリスクの評価を行った。その結果、BRCA1BRCA2の病原性バリアントは乳がんリスクが最も高いことを示した。NEJM誌オンライン版2021年1月20日号掲載の報告。

米国の集団ベースの症例対照研究

 同コンソーシアムは、乳がん女性3万2,247例(乳がん診断時平均年齢62.1歳、乳がん家族歴あり20.4%)と、マッチさせた非乳がん女性(対照)3万2,544例(試験登録時平均年齢61.2歳、乳がん家族歴あり14.3%)を対象に、集団ベースの症例対照研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]と乳がん研究財団[BCRF]の助成による)。

 多遺伝子アンプリコンベースのカスタムパネルを用いてシークエンスを行い、28のがん素因遺伝子の生殖細胞系列の病原性バリアントを同定した。次いで、個々の遺伝子の病原性バリアントと乳がんリスクの関連を評価した。

BRCA12バリアントの生涯乳がんリスクは約50%

 12の確立された乳がん素因遺伝子の病原性バリアントが、乳がん群の5.03%(1,621例)および対照群の1.63%(531例)で検出された。

BRCA1BRCA2の病原性バリアントは乳がんリスクが最も高く、BRCA1のオッズ比(OR)は7.62(95%信頼区間[CI]:5.33~11.27、p<0.001)、BRCA2のORは5.23(4.09~6.77、p<0.001)だった。また、PALB2の病原性バリアントの乳がんリスクは中等度(OR:3.83、2.68~5.63)であった。

BRCA1BRCA2、およびPALB2の病原性バリアントはいずれも、エストロゲン受容体陽性乳がん(OR[95%CI]:BRCA1 3.39[2.17~5.45]、BRCA2 4.66[3.52~6.23]、PALB2 3.13[2.02~4.96])、同陰性乳がん(26.33[17.28~41.52]、8.89[6.36~12.47]、9.22[5.63~15.25])、およびトリプルネガティブ乳がん(42.88[26.56~71.25]、9.70[5.97~15.47]、13.03[7.08~23.75])のリスクが高かった。

 一方、BARD1(OR[95%CI]:2.52[1.18~5.00])、RAD51C(2.19[0.97~4.49])、およびRAD51D(3.93[1.40~10.29])の病原性バリアントはエストロゲン受容体陰性乳がんのリスクが高く、BARD1(3.18[1.16~7.42])はトリプルネガティブ乳がんのリスクも高かったのに対し、ATM(1.96[1.52~2.53])、CDH1(3.37[1.24~10.72])、およびCHEK2(2.60[2.05~3.31])はエストロゲン受容体陽性乳がんのリスクが増大していた。

 ミスマッチ修復遺伝子(MLH1MSH2MSH6)やNBNを含む16の乳がん素因遺伝子候補は、いずれも乳がんリスクの増加とは関連がなかった。また、BRCA1BRCA2の病原性バリアントの生涯乳がんリスクは約50%で、PALB2は約32%だった。

 著者は、「これらの知見は、一般集団におけるがん素因遺伝子の病原性バリアントを有する女性において、がんのスクリーニングやリスク管理戦略に有益な情報をもたらすと考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Hu C, et al. N Engl J Med. 2021 Jan 20. [Epub ahead of print]

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「がん診療と新型コロナウイルス感染症」、患者向けQ&Aを改訂/日本臨床腫瘍学会

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 2021年1月25日、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で「がん診療と新型コロナウイルス感染症 がん患者さん向けQ&A」の改訂3版を公開した。これは3学会合同連携委員会の新型コロナウイルス(COVID-19)対策ワーキンググループがまとめたもので、「がん患者は新型コロナウイルスに感染しやすいのか」「検査はどこまですべきなのか」「現在の治療を延期したほうがよいのか」といった、多くのがん患者が抱える疑問に答える内容となっている。今回は各種文献やガイドラインのアップデートを反映した改訂となる。

 ASCO(米国臨床腫瘍学会)やESMO(欧州臨床腫瘍学会)が提唱する基本治療方針へのリンクや、「血液がん」「肺がん」「乳がん」といったがん種別に分けたうえで細かく治療方針を解説する項目もあり、がん治療中の患者にとって必要な情報が網羅的にまとまっている。

(ケアネット 杉崎 真名)


【参考文献・参考サイトはこちら】

日本癌治療学会,日本癌学会,日本臨床腫瘍学会(3学会合同作成)がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A 改訂第3版

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乳がんリスクが高い9遺伝子を推定/NEJM

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 英国・ケンブリッジ大学のLeila Dorling氏らBreast Cancer Association Consortium(BCAC)の研究チームは、乳がんリスクのゲノム関連解析の結果、乳がんリスクを予測する遺伝子パネルに組み込む臨床的に最も役立つ遺伝子を特定し、遺伝カウンセリングを導入するためのタンパク質切断型変異による乳がんリスクを推定した。乳がん感受性遺伝子検査は広く用いられるようになったが、多くの遺伝子は乳がんとの関連性に関するエビデンスが弱く、リスク推定値は不正確で、信頼できる亜型特異的リスクのデータも不足していた。NEJM誌オンライン版2021年1月20日号掲載の報告。

11万3,000例以上を対象に、34の乳がん感受性遺伝子を解析

 研究グループは、BCACの研究に参加している乳がん患者6万466例、および対照者5万3,461例の検体を対象に、感受性遺伝子と考えられている34の遺伝子パネルを用いDNAシークエンシングを実施した。

 遺伝子変異は、タンパク質切断型変異とまれなミスセンス変異についてそれぞれ解析し、すべての乳がんおよびサブタイプ別のオッズ比を推定するとともに、ミスセンス変異の関連性を評価した。

遺伝子間のリスクの差が明らかに

 5つの遺伝子(ATMBRCA1BRCA2CHEK2PALB2)のタンパク質切断型変異は、乳がん全体のリスクと関連していた(p<0.0001)。4つの遺伝子(BARD1RAD51CRAD51DTP53)のタンパク質切断型変異も乳がん全体のリスクと関連していた(p<0.05およびベイズ偽陽性確率<0.05)。残り25遺伝子のうち19のタンパク質切断型変異は、乳がん全体のオッズ比の95%信頼区間上限値が2.0未満であった。

ATMおよびCHEK2のタンパク質切断型変異では、エストロゲン受容体(ER)陰性乳がんと比較して、ER陽性乳がんの発症リスクが高かった。BARD1BRCA1BRCA2PALB2RAD51CRAD51Dのタンパク質切断型変異では、ER陽性乳がんと比較してER陰性乳がんの発症リスクが高かった。

ATMCHEK2TP53のまれなミスセンス変異は、乳がん全体のリスクと関連していた(p<0.001未満)。BRCA1BRCA2TP53については、標準的な基準に従い病的変異に分類される可能性があるミスセンス変異が、乳がん全体のリスクと関連しており、そのリスクはタンパク質切断型変異と同程度であった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Breast Cancer Association Consortium. N Engl J Med. 2021 Jan 20. [Epub ahead of print]

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アベマシクリブ+内分泌療法、高齢乳がん患者での有効性と安全性(MONARCH-2、-3)

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 ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がんに対する、アベマシクリブと内分泌療法(ET)の併用は、第III相MONARCH-2試験(フルベストラント)およびMONARCH-3試験(アナストロゾールまたはレトロゾール)で有効性が示されている。米国・メイヨー・クリニックのMatthew P Goetz氏らは、両試験の年齢別サブグループ解析を実施。高齢患者における有効性と安全性について、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2021年1月3日号で報告した。

 MONARCH-2および-3試験における探索的解析が、3つの年齢グループ(<65歳、65~74歳、および≧75歳)に対して行われた。安全性については両試験からのプールデータが用いられ、有効性についてはPFSのサブグループ解析を各試験データでそれぞれ実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・プールされた安全性データは、1,152例について利用可能であった。
・臨床的に関連する下痢(Grade2/3)は、アベマシクリブ+ET群で多く発生し、65歳以上の2つのグループでより多くみられた(<65歳:39.5%、65~74歳:45.2%、≧75歳:55.4%)。プラセボ+ET群では、<65歳:6.8%、65~74歳:4.5%、≧75歳:16.0%。
・VTE発生率(全Grade)は、アベマシクリブ+ET群では<65歳(4.1%)および65~74歳(5.0%)となり、≧75歳(13.3%)でより高い傾向がみられた。プラセボ群では<65歳:0.5%、65~74歳:0.9%、≧75歳:2.0%。
・悪心や食欲不振は、アベマシクリブ+ET群で多く発生し、65歳以上の2グループでやや増加する傾向がみられた。
・一方、好中球減少症、貧血、白血球減少症などの血液毒性(全Grade)は、プラセボ群と比較してアベマシクリブ+ ET群で多かったが、年齢グループ間で発生率に差はみられなかった。
・アベマシクリブ+ ET群での用量調整(<65歳:63.1%、65~74歳:74.4%、≧75歳:75.9%)および有害事象(AE)による治療中止(<65歳:8.8%、65~74歳:14.2%、≧75歳:24.1%)は、65歳未満と比較して65歳以上でやや増加していた。
・アベマシクリブ+ ET群は、患者の年齢に関係なく、プラセボ+ ET群と比較してPFSを改善し、3つの年齢グループ間で治療効果に有意差はみられなかった(MONARCH-2:相互作用のp=0.695、MONARCH- 3:相互作用のp=0.634)。推定ハザード比は、0.523~0.633(MONARCH-2)および0.480~0.635(MONARCH-3)の範囲であった。

 著者らは、高齢の患者ではより高い割合の有害事象が報告されたが、それらは用量調整と併用薬で管理可能であり、すべての年齢層で一貫した有効性の利点が観察されたと結論づけている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Goetz MP, et al. Breast Cancer Res Treat. 2021 Jan 3. [Epub ahead of print]

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コーヒーは乳がん発症を抑制するか~大規模メンデルランダム化研究

提供元:CareNet.com

 コーヒーの摂取と乳がんリスクの関連がない、または弱いことが観察研究で報告されている。そこで、英国・Imperial College LondonのMerete Ellingjord-Dale氏らが、大規模なメンデルランダム化(MR)研究を実施した。その結果、遺伝的に予測されるコーヒー摂取と乳がんリスクとの関連は認められなかったが、弱い関連の存在は除外できないとしている。PLoS One誌2021年1月19日号に掲載。

 著者らは、UKバイオバンクに参加しているホワイトブリティッシュ系の女性21万2,119人に関するゲノムワイド関連研究からコーヒー摂取に関連する33の一塩基多型(SNP)を使用して、コーヒー摂取と乳がんリスクとの関係を2サンプルMR法で検討した。症例は12万2,977例(うちER陽性が6万9,501例、ER陰性が2万1,468例)、対照はヨーロッパ系の10万5,974例。乳がんリスク推定値は、Breast Cancer Association Consortium(BCAC)で公開されているゲノムワイド関連の要約統計量から取得した。感度分析と一緒に変量効果逆分散加重(IVW)MR分析を行い、潜在的なMR仮定違反の影響を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・女性において遺伝的に予測されるコーヒー摂取量の1日1杯の増加は、乳がん全体(IVW変量効果におけるオッズ比[OR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.80~1.02、p=0.12)、ER陽性乳がん(OR:0.90、95%CI:0.79~1.02、p=0.09)、ER陰性乳がん(OR:0.88、95%CI:0.75~1.03、p=0.12)のリスクと関連していなかった。
・MR-Egger(乳がん全体におけるOR:1.00、95%CI:0.80~1.25)、加重中央値(OR:0.97、95%CI:0.89~1.05)、加重モード(OR:1.00、95%CI:0.93~1.07)を用いた感度分析においても関連が認められなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Ellingjord-Dale M, et al. PLoS One. 2021;16:e0236904.

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日本のがん遺伝子パネル検査、初回評価の結果は?/Int J Clin Oncol

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 日本では2019年6月にがん遺伝子パネル検査が保険収載され、専門家で構成されるmolecular tumor board(エキスパートパネル)を備えた施設が検査実施施設として当局より指定されている。その実績に関する評価の結果が報告された。エキスパートパネルの標準化は、臨床現場でのがんゲノム医療の実装に重要な課題である。国立がん研究センター中央病院の角南 久仁子氏らは、中核病院でのエキスパートパネルの実績について初期評価を行い、臨床的意義付けの標準化についてさらに調査が必要であることを示した。International Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2021年1月1日号掲載の報告。

 研究グループは、2019年6月~2020年1月に中核病院11施設においてがん遺伝子パネル検査を実施した連続症例のデータを収集し、検査結果に基づいて治験薬を含む遺伝子異常に合致する治療を行った症例、および遺伝カウンセリングが推奨された症例の割合を調査。また、模擬症例2例について各エキスパートパネルがアノテーションを実施。そのレポートについて中央評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・エキスパートパネルの主要メンバーが事前に結果レポートをレビューしておくことによって、エキスパートパネル会議が双方向かつ効率的となり、時間を節約できたと報告された。
・がん遺伝子パネル検査の実施数は計747例で、このうち28例(3.7%)が遺伝子異常に合致する治療を受けた。
・遺伝カウンセリングの紹介に至った症例は17例(2.3%)であった。
・模擬症例に関するアノテーションレポートは各エキスパートパネルで異なっており、とくに、推奨される治験数は、臨床試験への実際の参加者数に関連していると考えられた。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Sunami K, et al. Int J Clin Oncol. 2021 Jan 1. [Epub ahead of print]

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がんに存在する異常なmRNAの全長構造を同定/国立がん研究センター

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 東京大学大学院新領域創成科学研究科の関 真秀特任助教と鈴木 穣教授らのグループは、国立がん研究センター先端医療開発センター免疫療法開発分野・中面哲也分野長らとの共同研究により、ナノポアシークエンサーで肺がんに存在する異常なmRNAの網羅的な同定をして、異常なmRNAから生じるペプチドが免疫細胞に認識されることを示した。

 従来のシークエンサーは、RNAをばらばらに短くしてから配列を読み取っていたため、mRNAの全長配列を読み取ることはできなかった。それに対して、長い配列を読み取れるナノポアシークエンサーは、mRNAの全長配列を読み取ることができる。

 今回、肺がんにナノポアシークエンサーを用いて、正常な組織に存在しない異常なmRNAの全長構造をカタログ化した。さらに、異常なmRNAから生じるペプチド配列が免疫細胞によって認識されることを示した。異常mRNAの蓄積が、がん免疫療法が効くかどうかの新たな指標となる可能性がある。

 同研究成果は、2021年1月4日(月)に英国科学雑誌「Genome Biology」のオンライン版で掲載された。

■参考
国立がん研究センタープレスリリース

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Oka M,et al. Genome Biol. 2021 Jan 4.

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