30歳以下の早期乳がんの予後、高齢患者と比較

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 30歳以下で乳がんと診断された患者のデータを後ろ向きに収集し、高齢患者を対照として症例対照研究を実施したところ、若年患者は高齢患者よりも無病生存率(DFS)が短い傾向にあったことを、台湾・National Cheng Kung UniversityのWei-Pang Chung氏らが報告した。全生存期間(OS)には差がみられなかった。Medicine(Baltimore)誌2021年1月8日号に掲載。

 本研究は、手術方法・病期・サブタイプをマッチさせた、症例(若年患者)と対照(高齢患者)が1:3の症例対照研究。主要評価項目はDFS、副次評価項目はOSで、単変量および多変量解析で予後因子を検討した。分析対象は若年群(年齢中央値:28.5歳)18例と高齢者群(同:71歳)54例。

 主な結果は以下のとおり。

・5年DFS率は若年群で68.8%、高齢者群で84.6%だった(p=0.080)。
・5年OS率は若年群87.1%、高齢者群91.2%だった(p=0.483)。
・多変量解析から「腫瘍径が大」「トリプルネガティブ乳がん」が、若年患者のDFS不良となる主な予後因子であることが示された。

 著者らは「乳がん初期段階にある若年患者への積極的な治療が予後を改善するだろう」と述べている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Chung WP, et al. Medicine (Baltimore). 2021;100:e24076.

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若手研究者に国際的がん教育を「国際がん研究シンポジウム」開催/近畿大学

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 近畿大学医学部を主幹とする「7大学連携個別化がん医療実践者養成プラン」は、2021年1月18日~2月17日、オンラインにて「第4回国際がん研究シンポジウム」を開催する。同シンポジウムは、2013年3月に「第2期がんプロ」の取組の中で開催し、これまでに8回の開催実績がある。

 国際がん研究シンポジウムは「教育講演」と「一般演題」の2部構成。「教育講演」では国内外の著名な研究者が各分野の最新の話題をわかりやすく伝える。「一般演題」では若手研究者がそれぞれのデータを持ち寄り発表すると共に、各分野の精鋭コメンテーターからの質問が待ち受ける。若手研究者はこれらの質問に英語で対応。質疑応答を含め、全体として優秀であると評価された演題にはセッションごとにアワードが贈られる。

 ライブ配信(教育講演と一般口演)は、平日の19〜21時と各研究機関の医療従事者が参加しやすい時間帯としている。優秀演題選出の投票については視聴者も行う。

 開催担当者は、「このシンポジウムの目的は『教育』。国際学会において英語がハードルとならないようにするには、普段から英語で発表し、英語で自分の意見を述べるというトレーニングが欠かせません。このシンポジウムがそういった機会になることを期待しています。」と述べている。

 同シンポジウムへの参加は無料。視聴には事前登録が必要。

【オンライン開催】
・期間:2021年1月18日~2月17日
・ライブ配信:2021年1月25日~27日、2月1日~3日の19:00〜21:00
 ・Educational Lecture 1~10(ゲノム、肺、消化器、血液など)
 ・一般口演Session1~6 若手研究者の発表 16演題(TR、ゲノム、消化器、放射線、肺、血液)
・オンデマンド配信:1月18日~ 2月17日(ホームページ上で閲覧可能)
 ・若手研究者の発表 21演題(放射線、肺、ゲノムなど)
・対象:医療従事者
・参加費:無料
・参加方法:ホームページより参加登録
・問い合わせ:第4回国際がん研究シンポジウム事務局
 ・近畿大学医学部がんプロ事務局 ganpro@med.kindai.ac.jp
 ・特定非営利活動法人 近畿がん診療推進ネットワーク k-ccnet@med.kindai.ac.jp

■参考
第4回国際がん研究シンポジウム ホームページ
第4回国際がん研究シンポジウム プログラム
参加登録

(ケアネット)


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BRCA1/2変異女性の乳がんリスク、60歳以降は?

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 BRCA1もしくはBRCA2変異キャリアの60~80歳の乳がんリスクについて、カナダ・Toronto-Sunnybrook Regional Cancer CenterのNeda Stjepanovic氏らの遺伝性乳がん臨床研究グループが大規模前向き研究を実施した結果、どちらの変異キャリアにおいても60歳以降も乳がん発症リスクは高いままであることが示された。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2021年1月10日号に掲載。

 本研究の被験者は、60歳時にがん既往歴がなく両側とも乳房の手術をしていない女性699人。乳がんの診断、予防的な両側乳房切除術、もしくは死亡するまで追跡し、60~80歳における乳がん(浸潤性およびin situ)の年発生率と累積発生率を計算した。また、ホルモン補充療法、乳がん家族歴、両側卵巣摘出術と乳がんリスクとの関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・平均追跡期間7.9年間に、61例が浸潤性乳がん、20例がin situ乳がんと診断された。
・浸潤性乳がんの平均年発生率は、BRCA1変異キャリアで1.8%、BRCA2変異キャリアで1.7%だった。
・60~80歳の浸潤性乳がんの累積リスクは、BRCA1変異キャリアで20.1%、BRCA2変異キャリアで17.3%であった。
・ホルモン補充療法、家族歴および卵巣摘出術は、乳がんリスクとは関連していなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Stjepanovic N, et al. Breast Cancer Res Treat. 2021 Jan 10. [Epub ahead of print]

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BRCA1/2変異女性の乳がんリスク、60歳以降は?

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 BRCA1もしくはBRCA2変異キャリアの60~80歳の乳がんリスクについて、カナダ・Toronto-Sunnybrook Regional Cancer CenterのNeda Stjepanovic氏らの遺伝性乳がん臨床研究グループが大規模前向き研究を実施した結果、どちらの変異キャリアにおいても60歳以降も乳がん発症リスクは高いままであることが示された。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2021年1月10日号に掲載。

 本研究の被験者は、60歳時にがん既往歴がなく両側とも乳房の手術をしていない女性699人。乳がんの診断、予防的な両側乳房切除術、もしくは死亡するまで追跡し、60~80歳における乳がん(浸潤性およびin situ)の年発生率と累積発生率を計算した。また、ホルモン補充療法、乳がん家族歴、両側卵巣摘出術と乳がんリスクとの関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・平均追跡期間7.9年間に、61例が浸潤性乳がん、20例がin situ乳がんと診断された。
・浸潤性乳がんの平均年発生率は、BRCA1変異キャリアで1.8%、BRCA2変異キャリアで1.7%だった。
・60~80歳の浸潤性乳がんの累積リスクは、BRCA1変異キャリアで20.1%、BRCA2変異キャリアで17.3%であった。
・ホルモン補充療法、家族歴および卵巣摘出術は、乳がんリスクとは関連していなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Stjepanovic N, et al. Breast Cancer Res Treat. 2021 Jan 10. [Epub ahead of print]

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ゾレドロン酸の顎骨壊死発生率とリスク因子/JAMA Oncol

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 ゾレドロン酸は、骨転移のあるがん患者において骨修飾薬(BMA)として用いられている。米国の多施設共同前向き観察コホート試験(SWOG Cancer Research Network S0702)の結果、投与後累積3年の顎骨壊死の発生率は2.8%であることが明らかにされた。JAMA Oncology誌オンライン版2020年12月17日号掲載の報告。

 試験は、BMA治療が限定的または治療歴がなく、試験登録から30日以内、ゾレドロン酸の使用などの治療計画があり、骨転移のあるがん患者を対象とした。ベースラインおよび6ヵ月ごとに提出された医学的、歯科学的および患者によるアウトカム報告に基づき、顎骨壊死(確立された基準で定義)の発生を3年間にわたり追跡評価した。
 主要評価項目は、確認された顎骨壊死の累積発生率で、頭蓋領域への同時放射線療法が行われていない状態で8週間以上、顎領域に骨の露出領域が認められた場合と定義した。

 主な結果は以下のとおり。

・SWOG S0702試験には、3,491例が登録された(女性1,806例[51.7%]、年齢中央値63.1歳)。1,120例が乳がん、580例が骨髄腫、702例が前立腺がん、666例が肺がん、423例がその他の悪性腫瘍であった。
・ベースラインの歯科学的検査が行われたのは2,263例(64.8%)であった。
・全体で、顎骨壊死の確定発生は90例であった。累積発生率は1年時0.8%(95%信頼区間[CI]:0.5~1.1)、2年時2.0%(1.5~2.5)、3年時2.8%(2.3~3.5)であった。
・3年累積発生率は、骨髄腫の患者で最も高率だった(4.3%、95%CI:2.8~6.4)。
・ゾレドロン酸の投与計画間隔が5週間未満だった患者は、5週間以上だった患者と比べて顎骨壊死の発生が有意に多かった(ハザード比[HR]:4.65、95%CI:1.46~14.81、p=0.009)。
・顎骨壊死の発生率の高さは、歯の総数が少ないこと(HR:0.51、95%CI:0.31~0.83、p=0.006)、義歯(入れ歯)があること(1.83、1.10~3.03、p=0.02)、現在喫煙(2.12、1.12~4.02、p=0.02)と関連していた。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Van Poznak CH, et al. JAMA Oncol. Dec 17. [Epub ahead of print]

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HR+閉経後乳がんへのAI追加投与、至適治療期間は?~メタ解析

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 5年間の内分泌療法終了後、ホルモン受容体陽性(HR+)の閉経後早期乳がん患者に対するアロマターゼ阻害薬(AI)追加投与の至適治療期間を検討したメタ解析結果が報告された。中国・北京協和医学院のJuan Chen氏らが、Breast Cancer誌オンライン版2021年1月2日号で発表した。

 著者らは、適格基準を満たした無作為化比較試験を、内分泌療法の全期間に応じて3つのカテゴリーに分類(10年 vs.5年/7~8年 vs.5年/10年 vs.7~8年)。各カテゴリーについて、無増悪生存期間(DFS)と全生存期間(OS)のハザード比(HR)、および有害事象の発生率のリスク比(RR)のプール解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・計9件のRCT、HR陽性乳がんの閉経後女性計2万2,313例が対象とされた。
・内分泌療法の治療期間を5年から7~8年に延長すると、DFSの改善がみられた(HR:0.79 [0.69~0.91])。この傾向は特にタモキシフェンのみの投与(HR:0.40 [0.22~0.73])、タモキシフェン後のAI投与(HR:0.82 [0.71~0.95])、リンパ節転移陽性(HR:0.72 [0.56~0.93])、エストロゲン受容体(ER)陽性およびプロゲステロン受容体(PR)陽性(HR:0.61 [0.47~0.78])、および腫瘍径≧2cm(HR:0.72 [0.51~0.98])の患者でみられた。
・一方、内分泌療法の治療期間を7~8年から10年に延長しても、DFSの改善はみられなかった(HR:0.79 [0.69~0.91])。
・内分泌療法の延長はOSの改善とは関連しなかったが、骨折と骨減少症/骨粗鬆症リスクの増加と関連した。

 著者らは、AIによる5年間の治療後、リンパ節転移陰性、ER+/PR-またはER-/PR+、腫瘍径2 cm未満の患者は、長期のAI追加投与を実施する必要はなく、タモキシフェンのみあるいはタモキシフェン後AIによる計5年間の治療後、リンパ節転移陽性、ER+/PR+、腫瘍径2 cm以上の患者では、2~3年のAI追加投与が必要で、期間はそれで十分である可能性が示されたと結論づけている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Chen J, et al. Breast Cancer. 2021 Jan 2. [Epub ahead of print]

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早期TNBC、低用量カペシタビン維持療法で転帰が改善/JAMA

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 標準的な術後補助療法を受けた早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)女性において、低用量カペシタビンによる1年間の維持療法は経過観察と比較して、5年無病生存率を有意に改善し、有害事象の多くは軽度~中等度であることが、中国・中山大学がんセンター(SYSUCC)のXi Wang氏らが行った「SYSUCC-001試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2020年12月10日号で報告された。乳がんのサブタイプの中でも、TNBCは相対的に再発率が高く、標準治療後の転帰は不良であり、再発および死亡のリスクを低減する効果的な維持療法が求められている。低用量カペシタビンによる化学療法は、2つの転移の機序(血管新生、免疫逃避)を標的とすることでTNBC女性の再発を抑制する可能性が示唆されているが、再発抑制に要する長期の治療の有効性と受容性については不確実性が残るという。

中国の13施設が参加した非盲検無作為化第III相試験

 研究グループは、早期TNBC女性において、標準的な術後補助療法後の低用量カペシタビンによる維持療法の有効性と有害事象を評価する目的で、非盲検無作為化第III相試験を実施した(Sun Yat-sen University Clinical Research 5010 Programなどの助成による)。中国の13施設が参加し、2010年4月~2016年12月の期間に患者登録が行われ、最終フォローアップ日は2020年4月30日だった。

 対象は、病理学的に確定された浸潤性乳管がんで、ホルモン受容体とERBB2が陰性であり、鎖骨上リンパ節・内胸リンパ節に転移がなく、ステージがT1b-3N0-3cM0の早期の腫瘍を有し、標準治療として胸筋温存乳房切除術または乳房温存術が施行され、術前または術後に化学療法と放射線治療を受けた患者であった。

 被験者は、標準的な術後補助療法終了後に、カペシタビン(650mg/m2、1日2回、経口)を1年間投与する群または経過観察群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは5年無病生存率とした。無病生存は、無作為化の時点から局所再発、遠隔転移、対側乳がん、全死因死亡の初回発生までの期間と定義された。副次エンドポイントは、遠隔無病生存(無作為化から遠隔再発、対側乳房の浸潤性乳がん、全死因死亡までの期間)、全生存(無作為化から全死因死亡までの期間)、局所領域無再発生存(無作為化から局所領域の浸潤性乳がん再発または死亡までの期間)、有害事象であった。

再発・死亡リスクが36%低減、Grade 3手足症候群は7.7%

 443例が無作為化の対象となり、434例が最大の解析対象集団(FAS)とされた。年齢中央値は46歳(範囲:24~70)で、閉経前が66.8%であった。86.4%が乳房切除術を受けた。アントラサイクリン系またはタキサン系薬剤ベースのレジメンによる術前化学療法を受けた患者が5.8%、同レジメンによる術後化学療法を受けた患者は78.8%であり、T1/T2が93.1%、リンパ節転移陰性が61.8%、Grade3が72.8%だった。

 フォローアップ期間中央値61ヵ月(IQR:44~82)の時点で、無病生存に関するイベントは94件観察された。カペシタビン群は38件(再発37件、死亡32件)、観察群は56件(56件、40件)であった。推定5年無病生存率は、カペシタビン群が82.8%と、観察群の73.0%と比較して有意に優れた(再発または死亡のリスクのハザード比[HR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.42~0.95、p=0.03)。事前に規定されたサブグループのすべてで、無病生存率はカペシタビン群で良好な傾向がみられた。

 また、推定5年遠隔無病生存率(カペシタビン群85.8% vs.観察群75.8%、遠隔転移または死亡のリスクのHR:0.60、95%CI:0.38~0.92、p=0.02)はカペシタビン群で有意に良好であったのに対し、推定5年全生存率(85.5% vs.81.3%、死亡リスクのHR:0.75、95%CI:0.47~1.19、p=0.22)および推定5年局所領域無再発生存率(85.0% vs.80.8%、局所領域再発および死亡のリスクのHR:0.72、95%CI:0.46~1.13、p=0.15)には、両群間に有意な差は認められなかった。

 カペシタビン群で最も頻度の高い有害事象は手足症候群(45.2%)で、このうちGrade3は7.7%であった。このほか、白血球減少(23.5%)、ビリルビン値上昇(12.7%)、腹痛/下痢(6.8%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値・アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)値上昇(5.0%)の頻度が高かったが、いずれもGrade1または2であった。

 著者は、「カペシタビンの1年間の投与は、多くの女性にとって忍容可能であり、毒性による投与中止はほとんどなかった。80%以上の参加者が1年間の投与を完了し、何らかの理由で投与の中断を要したのは4分の1未満であった」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Wang X, et al. JAMA. 2020 Dec 10. [Epub ahead of print]

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血液による乳がん検診法開発へ、初の大規模試験開始/国立がん研究センター

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 血液中マイクロRNAがんマーカーの乳がん検診での応用を検証する、3,000人対象の大規模臨床試験が全国 4 道県でスタートする。研究班は国立がん研究センターを中心に、国立国際医療研究センター、東京医科大学、日本対がん協会、東レの研究者らで構成し、北海道と福井県、愛媛県、鹿児島の各日本対がん協会支部、がん専門病院、大学病院などの協力を得て実施される。12月14日、国立がん研究センターがプレスリリースで発表した。

 本試験で用いるのは、各検診機関での乳がん検診受診者の血液検体。がん等の疾患にともなって種類や量が変動することが明らかになっている血液中のマイクロRNAを東レの3Dジーンという技術で測定する。この測定には、13 種類のがんを対象にした「体液中マイクロ RNA 測定技術基盤開発」(2014~18 年度)で開発された診断モデルと検出技術が用いられる。本試験は、この基礎研究での成果を実際のがん検診で応用できるかどうかを検証するために計画されたもので、13 種類一つひとつのがんについて精度を検証していく必要があるとの考えから、まずは検出方法の開発が先行している乳がんを対象に初めて実施される。

[開始時期・場所(終了はいずれも2022年3月)]
愛媛県
開始:2020年12月下旬より本格化(2019年8月より試行的に実施)
場所:(検診)愛媛県総合保健協会、(精密検査)四国がんセンター、愛媛県立中央病院
鹿児島県
開始:2021年1月より開始
場所:(検診)鹿児島県民総合保健センター、(精密検査)鹿児島大学病院
北海道
開始:準備が整い次第
場所:(検診)北海道対がん協会、(精密検査)北海道がんセンター
福井県
開始:準備が整い次第
場所:(検診)福井県健康管理協会、(精密検査)福井県立中央病院

[参加対象]
各検診機関で乳がん検診を受診する40歳から69歳の方で文書による同意が得られた方

[登録目標]
3,000人(マンモグラフィーで要精検と判定された方2,000人、精検不要と判定された方1,000人)

[実施方法]
参加者は全員、マンモグラフィーのほか、乳腺エコー検査を実施(マンモグラフィーで「要精検」と判断された方は精密検査で、「精検不要」と判断された方には本研究による乳腺エコー検査)。採血は9mLで、マイクロRNAがんマーカーを測定。

[評価]
マンモグラフィーの結果、乳腺エコーの結果、マイクロRNAがんマーカーの測定結果を比較し、分析を行う。がんの発見については、まず精密検査による発見で分析し、最終的にはがん登録の情報をもとに分析される。
※マイクロRNAの測定結果は、参加者への公開はされない。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

国立がん研究センタープレスリリース

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HER2+進行乳がんへのペルツズマブ再投与でPFS延長(PRECIOUS)/SABCS2020

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 ペルツズマブ、トラスツズマブ、および化学療法治療歴のある、局所進行または転移を有するHER2陽性乳がんに対し、3次/4次治療としてのペルツズマブ再投与が無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが報告された。熊本大学の山本 豊氏が、第III相JBCRG-M05(PRECIOUS)試験の結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。

・対象:1次/2次治療としてペルツズマブ、トラスツズマブ、および化学療法による治療歴のある局所進行または転移を有するHER2陽性乳がん(ECOG PS 0-2、治療歴<4レジメン[直近のレジメンでペルツズマブ投与なし]、ベースライン時のLVEF≧50%)217例
・試験群:ペルツズマブ+トラスツズマブ+主治医選択による化学療法 108例
・対照群:トラスツズマブ+主治医選択による化学療法 109例
*ドセタキセル、パクリタキセル、ナブパクリタキセル、ビノレルビン、エリブリン、カペシタビン、ゲムシタビンから選択
・評価項目:
[主要評価項目]治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]独立レビュアー評価によるPFS、直近のレジメンでT-DM1が投与された患者のPFS、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、健康関連QOL(HR-QoL)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・2015年10月~2018年12月に、日本国内の93施設から219例を登録。217例(ペルツズマブ群108例、対照群109例)が解析対象とされた。
・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値:ペルツズマブ群57歳 vs.対象群60歳、ECOG PS 0:72.2% vs.67.0%、化学療法歴(2ライン:56.5% vs.59.6%、3ライン:42.6% vs.38.5%)、抗HER2療法歴(ペルツズマブ:両群とも99.1%、トラスツズマブ:両群とも99.1%、T-DM1:96.3% vs.99.1%、ラパチニブ:13.9% vs.13.8%)。
・主要評価項目である治験責任医師評価によるPFS中央値(追跡期間中央値14.2ヵ月)は、ペルツズマブ群5.3ヵ月 vs.対照群4.2ヵ月(ハザード比[HR]:0.755[片側95%CI上限:0.967]、片側p[層別log-rank検定]=0.0217)となり、ペルツズマブ群で有意な改善がみられた。
・直近のレジメンでT-DM1投与を受けた患者におけるPFS中央値は、ペルツズマブ群5.3ヵ月 vs.対照群4.2ヵ月(HR:0.801[片側95%CI上限:1.061]、片側層別log-rank検定p=0.0952)であった。
・OS中央値は、ペルツズマブ群28.8ヵ月 vs. 対照群23.4ヵ月(HR:0.713[片側95%CI上限:1.026]、片側層別log-rank検定p = 0.062)。さらなるフォローアップが必要だが、ペルツズマブ群でより長くなる傾向がみられた。
・測定可能病変を有する患者におけるORRは、ペルツズマブ群(90例)18.9% vs.対照群(92例)19.6%で、差はみられなかった。
・重篤な有害事象の発生率について両群で差はみられなかった(17.9% vs.21.3%)。また、心血管イベントを含む新たな安全性シグナルは検出されていない。
・FACT-Bスコアを用いたHR-QoLの評価においても、両群に有意な差はみられなかった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

PRECIOUS試験(ClinicalTrials.gov)

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TN乳がん1次治療でのipatasertib+PTX、PIK3CA/AKT1/PTEN変異を持つ患者でPFS改善せず(IPATunity130)/SABCS2020

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 PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を持つ、手術不能な局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の1次治療において、経口AKT阻害薬ipatasertibとパクリタキセル(PTX)の併用は、PTXのみと比較してPFSの改善がみられなかった。シンガポール・国立がんセンターのRebecca Dent氏が、第III相IPATunity130試験コホートAの結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。

 同治療法については、第II相LOTUS試験において無増悪生存期間(PFS)の改善が報告され、なかでもPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を有する患者でより顕著な効果が得られていた。

・対象:PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を持ち、測定可能病変のある、手術不能な局所進行または転移を有する、化学療法未治療([術前]術後化学療法終了から12ヵ月以上)のTNBC患者(ECOG PS:0/1、タキサン単剤療法への適格性あり)
・試験群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+ipatasertib 400mg(Day1~21)を1サイクル28日として投与(ipatasertib群)168例
・対照群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+プラセボ(Day1~21)(プラセボ群)87例
・評価項目:
[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS
[主要副次評価項目]全生存期間(OS)
[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性など
・層別化因子:[術前]術後化学療法の有無、地域(アジア vs.欧州 vs.北米 vs.その他)、腫瘍の変異状態(PIK3CA/KT1 活性型変異 vs. PIK3CA/AKT1 活性型変異のないPTEN異常)

 主な結果は以下のとおり。

・2018年2月~2020年4月に計255例が登録され、ipatasertib群とプラセボ群に2:1の割合で無作為に割り付けられた。
・ベースライン時の患者特性は、[術前]術後化学療法歴有がipatasertib群48% vs.プラセボ群55%、手術不能・局所進行がんが21% vs.13%。PD-L1陽性が29% vs.40%、PIK3CA /AKT1活性型変異を有する患者が両群とも51%で、両群間で有意な差がある項目はなかった。
・追跡期間中央値8.3ヵ月において、主要評価項目のPFS中央値は、ipatasertib群7.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~8.5) vs.プラセボ群6.1ヵ月(95%CI:5.5~9.0)であった(層別ハザード比[HR]:1.02、95%CI:0.71~1.45、log-rank検定のp=0.9237)。
・ORRはipatasertib群39% vs.プラセボ群35%、CBRは47% vs.プラセボ群45%。
・ipatasertib/プラセボによる治療期間中央値は5.9ヵ月 vs. 5.6ヵ月と差はみられず、PTX治療期間も両群で差はなかった。
・安全性については、以前の報告と一致していた。

 同試験ではOSのフォローアップが進行中のほか、ipatasertibによるベネフィットを受けうるバイオマーカーの探索が行われている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

IPATunity130(ClinicalTrials.gov)

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