TN乳がん1次治療でのipatasertib+PTX、PIK3CA/AKT1/PTEN変異を持つ患者でPFS改善せず(IPATunity130)/SABCS2020

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 PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を持つ、手術不能な局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の1次治療において、経口AKT阻害薬ipatasertibとパクリタキセル(PTX)の併用は、PTXのみと比較してPFSの改善がみられなかった。シンガポール・国立がんセンターのRebecca Dent氏が、第III相IPATunity130試験コホートAの結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。

 同治療法については、第II相LOTUS試験において無増悪生存期間(PFS)の改善が報告され、なかでもPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を有する患者でより顕著な効果が得られていた。

・対象:PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を持ち、測定可能病変のある、手術不能な局所進行または転移を有する、化学療法未治療([術前]術後化学療法終了から12ヵ月以上)のTNBC患者(ECOG PS:0/1、タキサン単剤療法への適格性あり)
・試験群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+ipatasertib 400mg(Day1~21)を1サイクル28日として投与(ipatasertib群)168例
・対照群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+プラセボ(Day1~21)(プラセボ群)87例
・評価項目:
[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS
[主要副次評価項目]全生存期間(OS)
[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性など
・層別化因子:[術前]術後化学療法の有無、地域(アジア vs.欧州 vs.北米 vs.その他)、腫瘍の変異状態(PIK3CA/KT1 活性型変異 vs. PIK3CA/AKT1 活性型変異のないPTEN異常)

 主な結果は以下のとおり。

・2018年2月~2020年4月に計255例が登録され、ipatasertib群とプラセボ群に2:1の割合で無作為に割り付けられた。
・ベースライン時の患者特性は、[術前]術後化学療法歴有がipatasertib群48% vs.プラセボ群55%、手術不能・局所進行がんが21% vs.13%。PD-L1陽性が29% vs.40%、PIK3CA /AKT1活性型変異を有する患者が両群とも51%で、両群間で有意な差がある項目はなかった。
・追跡期間中央値8.3ヵ月において、主要評価項目のPFS中央値は、ipatasertib群7.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~8.5) vs.プラセボ群6.1ヵ月(95%CI:5.5~9.0)であった(層別ハザード比[HR]:1.02、95%CI:0.71~1.45、log-rank検定のp=0.9237)。
・ORRはipatasertib群39% vs.プラセボ群35%、CBRは47% vs.プラセボ群45%。
・ipatasertib/プラセボによる治療期間中央値は5.9ヵ月 vs. 5.6ヵ月と差はみられず、PTX治療期間も両群で差はなかった。
・安全性については、以前の報告と一致していた。

 同試験ではOSのフォローアップが進行中のほか、ipatasertibによるベネフィットを受けうるバイオマーカーの探索が行われている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

IPATunity130(ClinicalTrials.gov)

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TN乳がん1次治療へのペムブロリズマブ上乗せ、化療レジメンによらず有効(KEYNOTE-355)/SABCS2020

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 手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性(CPS≧10)のトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療において、併用する化学療法の種類によらず、ペムブロリズマブの追加で無増悪生存期間(PFS)を改善することが明らかになった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)包括的がんセンターのHope S. Rugo氏が、第III相KEYNOTE-355試験の新たな解析結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。

 同試験については、CPS≧10のPD-L1陽性患者におけるPFS中央値が、ペムブロリズマブ+化学療法群9.7ヵ月 vs.化学療法単独群5.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.49~0.86、片側p=0.0012)と有意に改善したことが報告されている。今回は、探索的評価項目(併用化学療法別のPFS中央値)ならびに副次評価項目(ORR、DOR、DCR)の解析結果が発表された。

・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例
・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例
・対照群:プラセボ+化学療法 281例
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるPFSと全生存期間(OS)
[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性
[探索的評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団における併用化学療法の種類による治療効果の一貫性

 主な結果は以下のとおり。

・併用化学療法別のPFS中央値
[CPS≧10の患者]
全体(323例):ペムブロリズマブ群9.7ヵ月 vs.化学療法単独群5.6ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86)
ナブパクリタキセル(99例): 9.9ヵ月 vs. 5.5ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.34~0.95)
パクリタキセル(44例):9.6ヵ月 vs.3.6ヵ月(HR:0.33、95%CI:0.14~0.76)
ゲムシタビン/カルボプラチン(180例):8.0ヵ月 vs.7.2ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.53~1.11)
[CPS≧1の患者]
全体(636例):7.6ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.61~0.90)
ナブパクリタキセル(204例):6.3ヵ月 vs. 5.3ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.47~0.92)
パクリタキセル(84例):9.4ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.46、95%CI:0.26~0.82)
ゲムシタビン/カルボプラチン(348例): 7.5ヵ月 vs.7.5ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.66~1.11)
[ITT集団]
全体(847例):7.5ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.69~0.97)
ナブパクリタキセル(268例):7.5ヵ月 vs.5.4ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.51~0.93)
パクリタキセル(114例):8.0ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.35~0.93)
ゲムシタビン/カルボプラチン(465例):7.4ヵ月 vs.7.4ヵ月(HR:0.93、95%CI:0.74~1.16)
・ORRはCPS≧10の患者で53.2% vs.39.8%、CPS≧1の患者で45.2% vs.37.9%、ITT集団で41.0% vs.35.9%であった。
・ORRを併用化学療法別にみると、ITT集団のゲムシタビン/カルボプラチン併用を除いて(40.2% vs. 42.2%)、ペムブロリズマブ群で高かった。
・DCRはCPS≧10の患者で65.0% vs.54.4%、CPS≧1の患者で58.6% vs.53.6%、ITT集団で56.0% vs.51.6%であった。
・DOR中央値はCPS≧10の患者で19.3ヵ月 vs.7.3ヵ月、CPS≧1の患者で10.1ヵ月 vs.6.5ヵ月、ITT集団で10.1ヵ月 vs.6.4ヵ月であった。

 Rugo氏は、サブグループ解析の結果、化学療法レジメンの種類によらずペムブロリズマブの上乗せによりPFSは改善し、またその治療効果はPD-L1発現状況に応じて高まる傾向がみられると結論付けた。ディスカッサントを務めた米国・NYU Langone Medical CenterのSylvia Adams氏は、併用する化学療法レジメンの比較については、本サブ解析結果のみで判断するのはエビデンスとして十分ではないと述べている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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KEYNOTE-355(ClinicalTrials.gov)

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PD-L1陽性TN乳がん1次治療、ペムブロリズマブの上乗せ効果は?(KEYNOTE-355)/Lancet

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 未治療の局所再発手術不適応または転移のあるPD-L1 CPS 10以上のトリプルネガティブ乳がん患者において、ペムブロリズマブ+化学療法はプラセボ+化学療法と比べて、無増悪生存(PFS)期間が有意かつ臨床的意義のある改善を示した。スペイン・Quiron GroupのJavier Cortes氏らによる第III相の国際多施設共同プラセボ対照二重盲検試験「KEYNOTE-355試験」の結果で、Lancet誌2020年12月5日号で発表された。著者は、「今回示された結果は、転移のあるトリプルネガティブ乳がんの1次治療について、標準治療へのペムブロリズマブ上乗せの意義を示すものである」と述べている。先行研究で同患者へのペムブロリズマブ単剤療法が、持続的な抗腫瘍活性と管理可能な安全性を示しており、研究グループは、同患者へのペムブロリズマブの上乗せが、化学療法の抗腫瘍活性を増強するかを検討した。

29ヵ国209ヵ所の医療機関で試験

 KEYNOTE-355試験は、29ヵ国209ヵ所の医療機関を通じ、未治療の局所再発手術不適応または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者を無作為に2対1の2群に割り付け、一方にはペムブロリズマブ(200mg、3週間ごと)+化学療法(nabパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン+カルボプラチンのいずれか)、もう一方にはプラセボ+化学療法を行った。無作為化は、ブロック法(ブロックサイズは6つ)および統合Web応答機能付き対話型音声応答システムを用い、化学療法のタイプ(タキサン系またはゲムシタビン+カルボプラチン)、ベースラインでのPD-L1発現(CPS 1以上または1未満)、同クラス薬剤による化学療法歴(術前・術後)で層別化も行った。

 適格基準は、18歳以上、トリプルネガティブ乳がんを中央施設で確認、測定可能病変が1つ以上、中央検査施設でトリプルネガティブ乳がんの状態およびPD-L1の状態を免疫組織学的に検査するための新たな腫瘍病変が提供可能、ECOG PSが0または1、十分な臓器機能であった。試験のスポンサー、研究者、そのほか各地の試験スタッフ(マスクされなかった薬剤師は除く)および患者は、ペムブロリズマブまたはプラセボ投与について知らされず、患者ごとのPD-L1バイオマーカーの結果も知らされなかった。

 主要評価項目は2つで、PD-L1 CPSが10以上の患者、CPSが1以上の患者、ITT集団のそれぞれにおけるPFSと全生存(OS)だった。PFSは今回の中間解析で評価し、OSの評価は追跡を継続している。PFSの評価には階層テスト戦略が用いられ、最初にPD-L1 CPSが10以上の患者で行われ(今回の中間解析の事前規定の統計学的基準はα=0.00411)、その後にCPSが1以上の患者(今回の中間解析のα=0.00111、CPSが10以上の患者のPFSからの部分的α値を含む)、最後にITT集団(今回の中間解析のα=0.00111)で評価した。

CPS 10以上の無増悪生存、ペムブロリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月

 2017年1月9日~2018年6月12日に1,372例がスクリーニングを受け、847例が無作為に割り付けられた(ペムブロリズマブ群566例、プラセボ群281例)。2次中間解析(データカットオフは2019年12月11日)での追跡期間中央値は、ペムブロリズマブ群25.9ヵ月(IQR:22.8~29.9)、プラセボ群26.3ヵ月(22.7~29.7)だった。

 CPS 10以上の患者群では、PFS期間中央値はペムブロリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月だった(病勢進行または死亡に関するハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.49~0.86、片側p=0.0012)。

 CPS 1以上の患者群では、PFS期間中央値はそれぞれ7.6ヵ月、5.6ヵ月で有意差は示されなかった(HR:0.74、95%CI:0.61~0.90、片側p=0.0014)。ITT集団では、それぞれ7.5ヵ月、5.6ヵ月だった(0.82、0.69~0.97、有意性の検定は未実施)。

 ペムブロリズマブの治療効果として、PD-L1誘発の増大が確認された。

 Grade3~5の治療関連有害イベントの発生率は、ペムブロリズマブ群68%、プラセボ群67%だった。そのうち、死亡はペムブロリズマブ群1%未満、プラセボ群0%だった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)


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Cortes J, et al. Lancet. 2020;396:1817-1828.

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早期TN乳がんの術前化療+アテゾリズマブにおける患者報告アウトカム(IMpassion031)/SABCS2020

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 未治療の早期トリプルネガティブ(TN)乳がんの術前化学療法に、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブの追加を検討したIMpassion031試験における患者報告アウトカムの解析結果が報告された。米国・Brigham and Women’s Hospital Dana-Farber Cancer InstituteのElizabeth A. Mittendorf氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。

 本試験では、18歳以上で未治療のStageII~IIIのTN乳がん患者333例を、アテゾリズマブ(840mg、2週ごと)+nab-パクリタキセル(アテゾリズマブ群)またはプラセボ+nab-パクリタキセル(プラセボ群)に1対1で無作為に割り付けた。12週間(3サイクル)投与後、ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)との併用で8週間(2サイクル)投与し、手術を実施した。術後、アテゾリズマブ群はアテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと)を11回投与し、プラセボ群は経過観察を行った。主要評価項目の病理学的完全奏効(pCR)率については、PD-L1の有無にかかわらず、アテゾリズマブ群が57.6%とプラセボ群41.1%に比べて有意に改善(p=0.0044)したことがすでに報告されている。

 患者報告アウトカムの測定は、EORTC Quality of Life Questionnaire Core 30(QLQ-C30)およびFunctional Assessment of Cancer Therapy-General(FACT-G)single item GP5の質問票を用いて、術前療法および術後療法の各サイクルのベースライン・1日目・治療終了時、観察期間には1年目は3ヵ月ごと、2~3年目は6ヵ月ごと、その後は年に1回実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・両群のQLQ-C30完了率(ITT解析)は、ベースラインは100%、術前療法期間では90%以上、術後療法期間(16サイクルまで)では89%以上、GP5完了率は、ベースライン(2サイクル1日目)で98%以上、術前療法期間および術後療法期間で88%以上であった。
・ベースラインの平均値(95%CI)は、身体機能がアテゾリズマブ群91%(89~93)、プラセボ群90%(88~92)、役割機能がアテゾリズマブ群89%(86~93)、プラセボ群89%(86~92)、健康関連(HR)QOLがアテゾリズマブ群79%(76~82)、プラセボ群76%(73~79)と高かった。
・16サイクルまでの治療評価期間、観察期間を通じ、身体機能、役割機能、HRQOLの平均値とベースライン値からの平均変化は両群で類似していた。
・平均身体機能は、両群で3~5サイクル目の術前療法期間中に臨床的に重要な低下を示したが、術後療法期間に回復し、7サイクル目の開始を安定させた。
・平均役割機能は、アテゾリズマブ群では2サイクル目から、プラセボ群では3サイクル目から5サイクル目までの術前療法期間で臨床的に重要な低下を示したが、術後療法期間に回復し、プラセボ群のみ9サイクル目で安定した。
・平均HRQOLは、両群で3~5サイクル目の術前療法期間で臨床的に重要な低下を示したが、術後療法期間で回復し、6サイクル目から安定した。
・術前療法期間の疲労、下痢、悪心・嘔吐は、機能およびHRQOLにおけるベースライン値からの平均および平均変化と類似した傾向で、両群とも5サイクルを通じて悪化した。術後療法期間の平均症状スコアは、疲労を除いて両群ともベースラインと同様であった。

 Mittendorf氏は、「両群の治療関連症状は類似しており、化学療法へのアテゾリズマブの追加は新たな副作用はみられず忍容性があった。この解析結果から、nab-パクリタキセル後にACを投与する術前化学療法にアテゾリズマブを追加することで、患者に新たな治療負担を与えることなくpCRを改善することが示された」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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IMpassion031試験(ClinicalTrials.gov)

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「523遺伝子を搭載した国内完結型がん遺伝子パネル検査」先進医療に承認/岡山大学

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 新たながん遺伝子パネル検査に関する厚生労働省・先進医療技術【先進医療B】研究として、「国内完結型個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究」が厚生労働省より承認され、2020年12月1日より、岡山大学病院が全国で初めて実施することになった。523遺伝子を搭載した国内では最多となるがん遺伝子パネル検査となる。

 わが国で保険適応されている遺伝子パネル検査は2種類で、それぞれ114、324個の遺伝子を対象にしていた。しかし、がん種によっては十分な遺伝子が調べられないこともあった。
 
 今回、同研究で使用する新たな遺伝子パネルTruSightTM Oncology500(TSO500) は、 523遺伝子を調べることが可能。また、遺伝子の数が多いほど精度が高くなることが示されていることから、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を予測指標の1つである腫瘍遺伝子変異量(TMB)についても、より正確に測定することができるという。

 同研究の対象は、抗がん剤による標準治療を実施後の固形がんと診断された、16歳以上で腫瘍組織が得られる患者。研究は、2020年12月1日(予定)~2022年3月31日までの期間で実施し、予定参加患者は250人である。先進医療にかかる医療費は全額患者負担となり、約60万円程度。

(ケアネット 細田 雅之)


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岡山大学プレスリリース

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再発スコアの低いリンパ節転移陽性閉経後早期乳がん、術後化学療法は回避可能か(RxPonder)/SABCS2020

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 リンパ節転移1~3個でオンコタイプDX乳がん再発スコアが0~25の閉経後早期乳がん患者において、術後内分泌療法への化学療法追加のベネフィットが認められなかったことが、RxPonder試験(SWOG S1007)の中間解析で示された。米国・エモリー大学のKevin Kalinsky氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。RxPonder試験は、米国国立がん研究所(NCI)の支援でSWOG Cancer Research Networkが主導している前向き無作為化第III相試験。

 本試験の対象は、ホルモン受容体陽性HER2陰性でリンパ節転移1~3個の18歳以上の早期乳がんの女性。再発スコア0~25の女性を内分泌療法単独群と内分泌療法後に化学療法を追加する群に1:1で無作為化し、再発スコア(0~13と14~25)、閉経状態、リンパ節の術式(リンパ節郭清とセンチネルリンパ節生検)で層別化した。主要な目的は、化学療法が無浸潤疾患生存期間(iDFS)に及ぼす影響と、その影響が再発スコアに依存するかどうかの評価であった。

 主な結果は以下のとおり。

・2011年2月28日~2017年9月29日に登録された9,383例のうち5,083例(54.2%)が無作為化され、追跡期間中央値5.1年で、447のiDFSイベントが認められた。
・化学療法のベネフィットと再発スコアの交互作用は統計学的に有意ではなかった(p=0.30)。
・化学療法・再発スコア・閉経状態を含むモデルにおいて、再発スコアが高いほうがiDFSが悪化し(HR:1.06、p<0.001、95%CI:1.04~1.07)、化学療法がiDFSの改善と関連していた(HR:0.81、p=0.026、95%CI:0.67~0.98)。
・事前に設定された解析で、化学療法と閉経状態の間に有意な交互作用が確認され(p=0.004)、閉経状態による解析を行った。
・閉経後の患者(3,350例、67%)においては、再発スコアを調整すると、内分泌療法単独群に対する化学療法追加群のHR(0.97)は有意ではなく(p=0.82、95%CI:0.78~1.22、 5年iDFS率:91.6% vs.91.9%)、化学療法追加のベネフィットがないことが示された。
・閉経前の患者(1,665例、33%)においては、内分泌療法単独群に対する化学療法追加群のHR(0.54)が統計学的に有意であり(p=0.0004、95%CI:0.38~0.76、5年iDFS率:94.2% vs.89.0%)、化学療法追加のベネフィットが示された。

 これらの結果から、Kalinsky氏は「現時点のデータでは、リンパ節転移が1~3個で再発スコアが0~25の閉経後患者では、iDFSを悪化させることなく化学療法を回避することが可能だろう。一方、リンパ節転移陽性で再発スコアが0~25の閉経前患者は化学療法で有意なベネフィットがあるようだ」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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RxPonder(ClinicalTrials.gov)

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高リスク早期乳がんへの術後内分泌療法+パルボシクリブ、初回解析でiDFS改善みられず(PENELOPE-B)/SABCS2020

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 術前化学療法後に浸潤性病変が残存している高リスクのホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性早期乳がん患者に対する、術後内分泌療法へのパルボシクリブ併用療法は、内分泌療法単独と比較して無浸潤疾患生存期間(iDFS)の有意な改善を示さなかった。ドイツ・German Breast GroupのSibylle Loibl氏が、第III相PENELOPE-B試験の初回解析結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。

・対象:タキサンを含む術前化学療法後に病理学的完全奏効が得られず、再発リスクの高いHR+/HER2-の早期乳がん患者(術前補助療法後の残存浸潤性病変有、CPS-EGスコア≧3または 2、ypN+、術前化学療法≧16週、最終手術日から16週未満または放射線療法完了後10週未満)
・試験群:術後療法として、パルボシクリブ(125mg1日1回×3週投与1週休薬の28日を1サイクルとして、13サイクル)+標準的内分泌療法
・対照群:術後療法として、プラセボ(13サイクル)+標準的内分泌療法
・評価項目:
[主要評価項目]iDFS
[副次評価項目]二次性原発浸潤性非乳がんを除くiDFS、遠隔無再発生存期間、全生存期間(OS)、安全性など
・層別化因子:リンパ節転移の有無(ypN0-1 vs.ypN2-3)、年齢(50歳以下 vs.50歳超)、Ki-67値(15%超 vs.15%未満)、地域(アジア vs.非アジア)、CPS-EGスコア(3以上 vs.2かつypN+)

 主な結果は以下のとおり。

・2014年2月~2017年12月に計1,250例が登録され、パルボシクリブ群に631例、プラセボ群に619例が無作為に割り付けられた。
・年齢中央値は49(19~79)歳。ypN0-1が49.6%、G3は47.4%で報告され、Ki-67>15%は25.5%。59.4%がCPS-EGスコア3以上であった。ベースライン時の患者特性は両群でバランスがとれていた。
・13サイクルの治療を完了したのはパルボシクリブ群80.5%に対しプラセボ群84.5%。少なくとも7サイクルの治療を完了したのは88.6% vs.90.3%であった。相対用量強度は82.1% vs. 98.9%であった。
・追跡期間中央値42.8ヵ月において、主要評価項目であるiDFSの層別ハザード比は0.93(95%信頼区間[CI]:0.74~1.17、p=0.523)で有意な差はみられなかった。
・2年iDFS率はパルボシクリブ群88.3% vs.プラセボ群84.0%、3年iDFS率は81.2% vs. 77.7%、4年iDFS率73.0% vs. 72.4%であった。
・サブグループ解析の結果、パルボシクリブから高いベネフィットを受ける因子は特定されなかった。
・iDFSイベントは遠隔再発が全体の74%を占め、浸潤性局所再発、対側乳がん、二次性原発浸潤性非乳がん、イベント発生なしの死亡について、両群間に差はなかった。
・OSの層別ハザード比(中間解析)は0.87(95%CI:0.61~1.22、p=0.420)。2年OS率はパルボシクリブ群96.3% vs.プラセボ群94.5%、3年OS率は93.6% vs.90.5%、4年OS率は90.4% vs.87.3%であった。
・用量減量はパルボシクリブ群で多く、最終サイクルでは約50%が減量していた。
・Grade3/4の有害事象は、パルボシクリブ群79.6% vs.プラセボ群20.1%で発生。血液学的有害事象(Grade3/4)は73.1% vs.1.3%とパルボシクリブ群で多くみられたが、非血液学的有害事象(Grade3/4)は19.9% vs.19.0%と両群間に差はみられなかった。重篤な副作用(SAE)は、パルボシクリブ群9.3%、プラセボ群8.7%でみられた。

 ディスカッサントを務めた米国・ウィスコンシン大学マディソン校のRuth O’Regan氏は、monarchE試験、PALLAS試験との違いについて考察。PENELOPE-B試験では適格性の基準に解剖学的病期分類ではなくCPS-EGスコアが使われていること、PALLAS試験と比較してパルボシクリブのアドヒアランスが良好なこと、PENELOPE-B試験では治療期間が12ヵ月(PALLASとmonarchEは24ヵ月)であることなどを挙げ、アベマシクリブがより効果的な可能性があるが、リボシクリブのNATALEE試験も含め、各試験の長期結果をみていく必要があるとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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PENELOPE-B(ClinicalTrials.gov)

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AYA世代のがん発生率、42年間で3割増

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 AYA世代(15~39歳)のがんは、通常のがん集団とは異なる点が多いが、その疫学的特徴と傾向についてのデータは不足している。今回、米国・Penn State Cancer InstituteのAlyssa R. Scott氏らが、米国人口ベースの後ろ向き横断研究を実施したところ、AYA世代におけるがんの発生率は42年間で29.6%増加しており、腎がんが最も高い増加率だった。JAMA Network Open誌2020年12月1日号の報告。

 研究者らは、1973年1月1日~2015年12月31日のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースのレジストリデータ(SEER 9、SEER 18)を使用。最初の分析は、2019年1月1日~8月31日に実施された。

 主な結果は以下のとおり。

・本研究は、1973~2015年に診断された合計49万7,452例のAYA世代がん患者を対象とし、女性29万3,848例(59.1%)、男性20万3,604例(40.9%)で、79.9%が白人だった。

・がんと診断された患者の割合は、診断時の年齢とともに増加した(15~19歳:3万1,645例[6.4%]、35~39歳:19万7,030例[39.6%])。

・15~19歳を除くすべての年齢サブグループで、男性と比較して女性のほうがより多くがんと診断されていた(1万4,800例[46.8%]vs.1万6,845例[53.2%])。

・女性のAYA世代では、7万2,564例(24.7%)が乳がん、4万8,865例(16.6%)が甲状腺がん、3万3,828例(11.5%)が子宮頸部および子宮がんと診断されていた。

・男性のAYA世代では、3万7,597例(18.5%)が精巣がん、2万850例(10.2%)が悪性黒色腫、1万9,532例(9.6%)が非ホジキンリンパ腫と診断されていた。

・AYA世代のがんの発生率は、1973~2015年の42年間で29.6%増加し、10万人当たりの平均年間変化率(APC)は0.537(95%信頼区間[CI]:0.426~0.648、p<0.001)だった。腎臓がんにおけるAPCは、男性で3.572(95%CI:3.049~4.097、p<0.001)、女性で3.632(3.105~4.162、p<0.001)と、双方で最大の増加率となった。

 著者らは、「AYA世代のがんは独特の疫学的パターンを持ち、健康への懸念が高まっている。1973年から2015年にかけて多くのがんサブタイプの発生率が増加していた。本結果は、この集団における明らかな健康上の懸念を理解し、対処するために重要だ」と結論している。

(ケアネット 堀間 莉穂)


【原著論文はこちら】

Scott AR, et al. JAMA Netw Open. 2020;3:e2027738.

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高リスク早期乳がんへの術後内分泌療法+アベマシクリブ、iDFS改善が継続(monarchE)/SABCS2020

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 再発リスクの高いリンパ節転移陽性ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性の早期乳がんに対し、術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加の有効性を評価する第III相monarchE試験の追跡調査において、無浸潤疾患生存期間(iDFS)の改善が引き続き示され、Ki-67値20%以上の患者での有意な改善が示された。米国・ピッツバーグ大学のPriya Rastog氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。

 monarchE試験は中間解析(追跡期間中央値15.5ヵ月)でアベマシクリブ追加によるiDFSの有意な改善(p=0.0096、ハザード比[HR]:0.747、95%信頼区間[CI]:0.598~0.932)が報告されている。今回、iDFSの約390イベント発生後に計画されていた解析の結果が報告された。

・対象:再発リスクの高いHR+/HER2-の早期乳がん(リンパ節転移4個以上、リンパ節転移1~3個の場合はKi-67値20%以上・グレード3・腫瘍径5cm以上のいずれか)、術前/術後の化学療法は許容
・試験群:術後療法として、標準的内分泌療法+アベマシクリブ150mg×2/日投与。アベマシクリブは最長2年間投与(ET+アベマシクリブ群:2,808例)
・対照群:術後療法として、標準的な内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、LH-RHアゴニストなど。薬剤は主治医選択)を5年以上施行(ET群:2,829例)
・評価項目:
[主要評価項目]iDFS
[副次評価項目]遠隔無転移生存期間(DRFS)、全生存期間(OS)、安全性、患者報告アウトカム、薬物動態

 主な結果は以下のとおり。

・主要評価項目の解析における追跡期間中央値は両群で19ヵ月(中間分析+3.5ヵ月)であった。1,437例(25.5%)が2年間の治療期間を完了し、3,281例(58.2%)はまだ2年間の治療期間中だった。
・ITT集団において395例にiDFSイベントが観察され、ET+アベマシクリブ群はET群より優れたiDFSを示し、iDFSイベント発生リスクが28.7%減少した(p=0.0009、HR=0.713、95%CI:0.583~0.871)。2年iDFS率は、ET+アベマシクリブ群で92.3%、ET群で89.3%であった。事前に指定されたサブグループすべてにおいてET+アベマシクリブ群が優れていた。
・ITT集団で、中央測定機関評価のKi-67値が20%以上であった2,498例における有効性を評価したところ、ET+アベマシクリブ群(1,262例)では、ET群(1,236例)より優れたiDFSを示し、iDFSイベント発生リスクが30.9%減少した(p=0.0111、HR:0.691、95%CI:0.519~0.920)。2年iDFS率はそれぞれ91.6%、87.1%だった。
・ITT集団におけるDRFSについても、ET+アベマシクリブ群はET群より優れ、DRFSイベント発生リスクが31.3%減少した(p=0.0009、HR=0.687、95%CI:0.551~0.858)。2年DRFS率は、ET+アベマシクリブ群で93.8%、ET群で90.8%であった。
・安全性は、中間iDFS解析結果およびアベマシクリブの既知の安全性プロファイルと一致していた。有害事象による中止のほとんどが治療開始5ヵ月以内であった。
・現在OSは未到達であり、OSの最終解析まで試験は継続される。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

monarchE(ClinicalTrials.gov)

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姉の乳がん発症年齢で、妹の発症リスクも高まる可能性

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 姉が乳がん歴を有する場合、妹の乳がんスクリーニングにおいてはその発症年齢を考慮する必要がある可能性が示唆された。米国・国立環境衛生科学研究所のAnn Von Holle氏らが、2万例を超える姉妹コホートの前向き研究結果を、International Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年11月28日号に発表した。

 著者らは、2万3,145人の姉妹コホートを前向きに調査し、乳がん歴のある姉の診断時の年齢前後でその妹の乳がんリスクが変化したかどうかを調べた。Cox回帰モデルの年齢依存性共変数を使用して、参加者がその姉の診断年齢に近い場合の乳がん発症のハザード比を、姉が全く異なる年齢で診断された同年齢の女性と比較して推定した。なお、若年発症の家族性がんによる相関関係を除外するために、50歳以上で登録した女性を個別に調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・2万3,145人の女性のうち、追跡期間中(中央値9.5年)に1,412人が乳がんを発症した。
・姉の診断時の年齢における妹の乳がん発症の推定ハザード比は1.80(95%信頼区間:1.18~2.74)であり、姉が全く異なる年齢で診断された同年齢の女性と比較してリスクが大幅に増加していた。
・50歳以上で登録した女性へ制限した場合も同様の結果が得られた。

 著者らは、この家族内集積は、晩年であっても、乳がん発症のタイミングに影響を与える重要な遺伝的および/または初期の環境リスク要因が存在する可能性があることを示唆すると結論づけている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Holle AV, et al. Int J Epidemiol. 2020 Nov 28. [Epub ahead of print]

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