アテゾリズマブ、早期TN乳がんの術前化学療法で主要評価項目を達成/中外

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 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役会長 CEO:小坂 達朗)は6月18日、早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブに関する第III相IMpassion031試験において、主要評価項目を達成したことを発表。早期 TNBCにおけるアテゾリズマブの有用性を示したのは初となる。

 IMpassion031試験は、早期TNBCの術前薬物療法において、アテゾリズマブと化学療法(パクリタキセル[アルブミン懸濁型]、ドキソルビシン、シクロホスファミド)の併用と化学療法単独とを比較する多施設共同二重盲検無作為化試験。333例が1:1の割合で無作為に各群に割り付けられ、主要評価項目は、ITT解析集団およびPD-L1の発現が認められる症例における病理学的完全奏効(pCR)である。

 今回、同試験において、PD-L1の発現状況を問わない早期TNBC患者集団で、統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるpCRの改善を示し、主要評価項目を達成した。また、アテゾリズマブと化学療法の併用における安全性は、これまでにそれぞれの薬剤で認められている安全性プロファイルと同様であり、本併用療法による新たな安全性上の懸念は示されなかった。IMpassion031試験の成績の詳細は、今後の医学系学会にて発表される予定となっている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

IMpassion031試験(Clinical Trials.gov)

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StageIV乳がんに早期局所療法は予後を改善するか(ECOG-ACRIN 2108)/ASCO2020

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 未治療のStageIV乳がんに対する早期の局所療法による予後改善効果についての報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で、米国・Northwestern Memorial HospitalのSeema A. Khan氏より発表された。

 本試験はECOG-ACRIN臨床試験グループが実施したもの(ECOG-ACRIN 2108試験)で、第III相の無作為化比較試験である。

・対象:標準薬物療法を施行し、4~8ヵ月間転移巣の病勢進行がなかったStageIV乳がん症例
・試験群:原発巣に対する局所療法(切除断端陰性を確認し、その後の放射線療法は許容)を施行(ELT群)
・対照群:当初の全身療法を継続(CST群)
・評価項目:
[主要評価項目]全生存期間(OS)
[副次評価項目]局所の増悪までの期間、QOLなど
・両群とも5年間の追跡期間とした。

 主な結果は以下のとおり。

・2011~15年に390例が一次登録され、そのうち256例がCST群(131例)とELT群(125例)に無作為化割り付けされた。
・CST群とELT群の間の全体的なクロスオーバー施行率は14%であった。
・ELT群では、125例中109例が手術を受け、切除断端が陰性だったのは87例、その後の放射線療法を受けたのは74例であった。また、CST群では、131例中25例が手術を受けた。
・追跡期間中央値は53ヵ月(データカットオフ2019年12月)で、OS中央値は54ヵ月、ハザード比(HR)1.09(90%信頼区間[CI]:0.80~1.49)、p=0.63で、両群間にOSの統計学的な有意差は認められなかった。
・各サブタイプ(TNBC、HER2陽性、ホルモン陽性)においても、両群間のOSの有意な差は検出されなかった。
・無増悪生存期間(PFS)においては、データカットオフ時点で178例が病勢進行または死亡し、p=0.40であった。
・乳房内再発や胸壁への浸潤、領域リンパ節への転移などの局所再発/増悪の累積発現率は、CST群25.6%(95%CI:18.6~34.5)、ELT群10.2%(95%CI:5.9~17.3)で、HR0.37(95%CI:0.19~0.73)p=0.003と、CST群で有意に高かった。
・FACT-B評価による健康関連QOLは、18ヵ月時点で、ELT群がCST群に比し、有意に低下していた(p=0.001)が、その他の時間軸では、両群間の差は認められなかった。

 演者のKhan氏は「未治療のStageIV乳がんの原発巣に対する局所療法は、生存期間延長などのベネフィットは期待すべきではない。また、本試験と同様のデザインで進行中の日本のJCOG-1017の結果が待たれる」と結んだ。

(ケアネット)


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オリゴ転移乳がん、局所併用療法 vs.全身療法(OLIGO-BC1)/ASCO2020

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 日本、中国、韓国によるアジア圏での国際後ろ向きコホート研究の結果、オリゴ転移乳がんに対する局所療法と全身療法併用の生存に対するベネフィットが示された。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で、がん研究会有明病院の上野 貴之氏がOLIGO-BC1試験の結果を発表した。

・対象:ABCガイドラインで定義されたオリゴ転移を有する乳がん患者(転移個数が少なく[5個以下]、サイズが小さい、腫瘍量の少ない転移疾患。転移臓器の数は定義されていない)
・主な除外基準:脳、胸膜、腹膜への転移、あるいは切除不能な皮膚および胸壁への再発症例/胸水貯留を認めた症例/生理的腹水を超えて腹水貯留を認めた症例/心外膜液貯留を認めた症例/同側乳房内再発症例/他臓器の浸潤がんの既往がある症例/重篤な併存症(心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、自己免疫疾患など)を有する再発症例
・試験群:局所療法(外科的切除、放射線療法、焼灼療法および経カテーテル動脈(化学)焼灼療法など)と全身療法(化学療法、内分泌療法、抗HER2療法など)の併用
・対象群:全身療法のみ
・評価項目:
[主要評価項目]全生存期間(OS)
 ※以前の報告から5年OSを50%、40%とそれぞれ仮定した場合、両側の有意水準で併用療法の優位性を検出するために、少なくとも698例、検定力80%が必要とされた
[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、長期的なPFSおよびOSを定義する臨床的、解剖学的および病理学的分析、局所療法に関連する重篤な有害事象

 主な結果は以下のとおり。

・2018年2月~2019年5月に1,295例が登録され、除外基準に基づき1,200例が分析対象(中国、日本、韓国からそれぞれ573、529、98例)とされた。
・HR+HER2-が526例(44%)、HR+HER2+が189例(16%)、HR-HER2+が154例(13%)に、HR-HER2-が166例(14%)、その他は161例(13%)であった。
・オリゴ転移数1が578例(48%)、2が289例(24%)、3が154例(13%)、4が102例(9%)、5が77例(6%)であった。
・内臓転移のみが387例(32%)、骨転移のみが301例(25%)、局所再発のみが83例(7%)、局所領域再発は25例(2%)、複数部位の転移が404例(34%)であった。
・局所療法および全身療法は495例、全身療法は705例で行われた。
・追跡期間中央値4.9年における、5年OS率は併用療法59.6%、全身療法41.9%(p<0.01)。調整後のハザード比(HR)は0.60(95%信頼区間[CI]:0.51~0.71)であった。
・多変量解析の結果、全身療法の種類(化学療法-内分泌療法:HR0.59[0.44~0.78])、若年(20~39歳:HR0.72[0.59~0.88]、40~49歳:HR0.72[0.60~0.86])、ECOG PS0(HR0.68[0.55~0.86])、ステージI(HR0.72[0.54~0.96])、非トリプルネガティブ乳がん(HR+HER2-:HR0.82[0.64~1.04]、HR+HER2+:HR0.68[0.52~0.90]、HR-HER2+:HR0.76[0.57~1.02])、転移部位の少なさ(1:HR0.71[0.59~0.86]、2:HR0.95[0.78~1.18])、局所再発(HR0.69[0.49~0.97])、無病生存期間の長さ(≦1:HR2.01[1.52~2.68]/4≦:HR1)が、予後良好因子であった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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OLIGO-BC1試験(UMIN-CTR)

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CDK4/6i治療歴のあるHR+/HER2-進行乳がん、alpelisib併用が有効性示す(BYLieve)/ASCO2020

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 CDK4/6阻害薬を含む治療歴のあるホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対し、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラントの併用療法が、臨床的有効性を示した。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)包括的がんセンターのHope S. Rugo氏が第II相BYLieve試験の結果を発表した。

・対象:CDK4/6阻害薬を含む治療後に増悪した、PIK3CA遺伝子変異陽性、ECOG PS≦2、測定可能病変あるいは溶骨性病変を有する、男性あるいは女性(閉経後/閉経前)のHR+/HER2-進行乳がん患者 
・試験群(コホートA):直前の治療としてCDK4/6阻害薬+アロマターゼ阻害薬(AI)の投薬を受けた患者 
alpelisib 300mg/日+フルベストラント500mgを1サイクル28日でDay1に投与(1サイクル目のみDay1、15)
※BYLieve試験ではコホートB(直前の治療がCDK4/6阻害薬+フルベストラントの患者、alpelisib+レトロゾールを投与)およびコホートC(AIで増悪後全身化学療法を受けた患者または直前の治療が内分泌療法だった患者、alpelisib+フルベストラントを投与)についても登録中。今回はコホートAの結果について発表された。
・評価項目:
[主要評価項目]RECISTv1.1に基づく6ヵ月時点の各コホートでの無増悪生存率
[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、PFS2、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、奏効期間(DOR)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・2017年8月14日~2019年12月17日に、少なくとも6ヵ月以上の追跡期間のある患者127例がコホートAに登録された(追跡期間中央値は11.7ヵ月)。このうち、PIK3CA遺伝子変異陽性が確認された121例が解析対象とされた。
・ベースライン特性は女性が100%、年齢中央値は58歳(範囲:33~83)。白色人種63.8%、アジア人種9.4%、黒色人種4.7%。ECOG PS 0が62.2%であった。
・転移病変に対する治療歴数0(術後療法としてCDK4/6阻害薬を投与)が11.8%、1が70.1%、2が16.5%、3が1.6%。転移病変に対する内分泌療法歴数0が11.8%、1が77.2%、2が11.0%であった。
・試験登録時のprimary endocrine resistance(転移・再発乳がんに対する一次内分泌療法を開始して6ヵ月以内にPD、または術後内分泌療法を開始して2年以内の再発)症例が20.5%を占めていた。
・6ヵ月時点の無増悪生存率は50.4%(95%信頼区間[CI]:41.2~59.6)となり、あらかじめ設定された95%信頼区間の下限(>30%)を超え、臨床的有効性が示された。
・PFS中央値は7.3ヵ月(95%CI:5.6~8.3)であった。
・ORRは17.4%、CBRは45.5%。CRは0例、PRは21例、SDは55例であった。
・Grade 3以上の有害事象は、高血糖28.3%、発疹9.4%、下痢5.5%など。有害事象による治療中止は20.5%で起き、治療中止につながった有害事象で最も多かったのは皮疹であった(3.9%)。
・抗ヒスタミン薬を事前に投与されなかった患者(117例)で皮疹が発生しなかったのは53.0%だったのに対し、事前に投与された患者(10例)では70.0%で発生せず、またGrade 3以上の皮疹の発生率も低かった(21.4% vs.10.0%)。同様の傾向がSOLAR-1試験でも観察され、予防的抗ヒスタミン剤が皮疹の発生と重症度を低下させる可能性があることが示唆された。
・米国Flatiron Health Foundation Medicineのデータベースを利用した、リアルワールドデータとのマッチド解析の結果、リアルワールドでの標準治療と比較して、コホートAの治療法はPFSを改善した。

 SOLAR-1試験において、CDK4/6阻害薬による治療歴のあった少数のサブグループでは、alpelisib併用群で6ヵ月時点の無増悪生存率は44.4%、PFS中央値は5.5ヵ月であった。研究者らは、今回のBYLieve試験からの報告はSOLAR-1試験の結果をサポートするもので、CDK4/6阻害薬治療後のalpelisibとフルベストラントの併用療法が、臨床的に意味のある有効性と管理可能な毒性を示したとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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BYLieve試験(Clinical Trials.gov)

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HER2陽性DCISへの放射線療法、トラスツズマブの上乗せ効果は?(NSABP B-43試験)/ASCO2020

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 乳房温存手術を受けHER2陽性非浸潤性乳管がん症例(DCIS)において、術後放射線療法にトラスツズマブを併用投与することの有用性を検討したNRG oncology/NSABP B-43試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で米国・Rush University Cancer CenterのMelody A. Cobleigh氏より発表された。本試験はNSABP臨床試験グループが実施した、オープンラベル第III相無作為化比較試験である。

・対象:中央判定によりHER2陽性が確認されたDCIS患者(切除断端陰性)
・試験群:放射線療法(全乳房照射±ブースト照射)にトラスツズマブの併用投与(RT群)
 トラスツズマブは初回8mg/kg、その後は3週間隔で6mg/kgを放射線療法に併用投与
・対照群:放射線療法(全乳房照射±ブースト照射)のみ(R群)
・評価項目:
[主要評価項目]同側乳房内再発(IBTR)の発生率
[副次評価項目]無病生存期間(DFS)、非再発生存期間(RFI)、全生存期間(OS)

 主な結果は以下のとおり。

・2008年12月~2014年12月に7,888例が検査され、そのうち2,751例(35%)がHER2陽性と判定され、2,014例が無作為割り付けされた。さらにそのうち1,998例(99.2%)のデータが収集でき、 その追跡期間中央値は79.2ヵ月であった。
・両群間に、患者背景(年齢、核異型度、閉経状況、ホルモン療法の併用率)のばらつきはなかった。
・IBTR発生率は、RT群で5.0%、R群で6.3%、ハザード比(HR)は0.805(95%CI:0.557~1.165)、p=0.26であった。
・IBTRの累積発生率は5年時点でRT群が3.9%、R群が4.9%で、HR 0.81、p=0.26であった。これを、再発が浸潤性がんか非浸潤性がんかで分けて調べたところ、浸潤性では5年時点でRT群1.2%、R群1.4%で、HR 1.11、p=0.74であり、非浸潤性ではそれぞれ2.9%と4.1%、HR 0.68、p=0.10であった。
・5年時DFS率はRT群90.6%、R群88.4%、HR 0.84、p=0.13であった。
・5年時OS率はRT群99%(死亡22例)、R群98.9%(死亡26例)で、HR 0.85、p=0.59であった。
・IBTRに関するサブグループ解析(閉経状況、ホルモン療法の投与状況、核異型度など)でも、両群間に統計学的な有意差は検出されなかった。
・Grade3の有害事象がRT群は4.9%、R群は3.9%であった。また、各群2例ずつGrade3の心機能障害が認められた。またR群で1例、浸潤性のIBTRが認められ、その症例は術後療法(アントラサイクリン、タキサン、トラスツズマブ)を受けた後、急性骨髄性白血病を発症した。

 演者のCobleigh氏は「DCISに対する放射線療法へのトラスツズマブの併用は、統計学的な有意差は示せなかったものの、19%のIBTR抑制を示し、毒性も低かった。今後の研究はゲノム分類などを用いて、より高リスク群に焦点を当てるべきだろう」と述べた。

(ケアネット)


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HER2+転移乳がんへのpyrotinib+カペシタビン、ラパチニブ併用よりPFS延長(PHOEBE)/ASCO2020

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 トラスツズマブと化学療法の治療歴のある転移を有するHER2陽性乳がんに対して、pan-ErbB阻害薬pyrotinibとカペシタビンの併用が、ラパチニブとカペシタビンの併用より無増悪生存期間(PFS)を延長したことが、第III相PHOEBE試験で示された。中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのBinghe Xu氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表した。

 pyrotinibは、EGFRHER2HER4を標的とする不可逆的pan-ErbB受容体チロシンキナーゼ阻害薬である。第I/II相試験で、カペシタビンとの併用で転移を有するHER2陽性乳がん患者における臨床的ベネフィットと許容可能な忍容性が確認されている。今回、ラパチニブとカペシタビンとの併用と比較した多施設無作為化非盲検第III相試験であるPHOEBE試験の結果が報告された。

・対象:トラスツズマブとタキサンおよび/またはアントラサイクリンの治療歴のある転移を有するHER2陽性乳がん患者(転移後の化学療法は2ラインまで)
・試験群:pyrotinib(400mg、1日1回経口)+カペシタビン(1,000mg/m2、1日2回経口、Day 1~14、21日ごと)134例(pyrotinib併用群)
・対照群:ラパチニブ(1,250mg、1日1回経口)+カペシタビン(試験群と同じ)132例(ラパチニブ併用群)
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央判定によるPFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、無増悪期間(TTP)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・PFS中央値は、ラパチニブ併用群の6.8ヵ月に比べて、pyrotinib併用群が12.5ヵ月と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.39、95%CI:0.27~0.56、片側p<0.0001)。
・トラスツズマブ抵抗性症例におけるPFS中央値も、ラパチニブ併用群6.9ヵ月に比べてpyrotinib併用群12.5ヵ月と延長する傾向がみられた(HR:0.60、95%CI:0.29~1.21)。
・ORRはpyrotinib併用群67.2% vs.ラパチニブ併用群51.5%、CBRは73.1% vs.59.1%、DOR中央値は11.1ヵ月 vs.7.0ヵ月であった。
・OS中央値は両群とも未達だが、1年OSはpyrotinib併用群91.3%、ラパチニブ併用群77.4%で、pyrotinib併用群で大きく改善する傾向がみられた。
・Grade 3以上の治療関連有害事象は、pyrotinib併用群が57.5%に、ラパチニブ併用群が34.1%に発現し、下痢(30.6% vs.8.3%)および手足症候群(16.4% vs.15.2%)が多かった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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PHOEBE(ClinicalTrials.gov)

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高リスクHER2+乳がんの術後補助療法、T-DM1+ペルツズマブの効果(KAITLIN)/ASCO2020

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 高リスクのHER2陽性早期乳がんの術後補助療法で、アントラサイクリン投与後、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)+ペルツズマブは、標準治療であるトラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサンに比べて、無浸潤疾患生存期間(IDFS)を延長しなかったことが、第III相無作為化非盲検試験であるKAITLIN試験で示された。ドイツ・ミュンヘン大学のNadia Harbeck氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表した。

 HER2陽性早期乳がんの術後補助療法における標準治療である化学療法と1年間のHER2標的治療には、とくに高リスク患者における再発や化学療法関連有害事象などの課題がある。本試験では、タキサンとトラスツズマブをT-DM1に置き換えた場合の有効性と安全性を検討した。

・対象:HER2陽性の早期乳がんで、リンパ節転移陽性またはリンパ節転移陰性かつホルモン感受性(HR)陰性かつ腫瘍径2cm超の患者
・試験群:手術後9週間以内にアントラサイクリンを3~4サイクル投与後、T-DM1(3.6 mg/kg)+ペルツズマブ(420mg、初回840mg)を3週ごとに18サイクル(1年間)投与(AC-KP群)928例
・対照群: 手術後9週間以内にアントラサイクリンを3~4サイクル投与後、タキサンを3~4サイクル投与と同時にトラスツズマブ(6mg/kg、初回8mg/kg)+ペルツズマブ(420mg、初回840mg)を3週ごとに18サイクル(1年)投与(AC-THP群)918例
・評価項目:
[主要評価項目]リンパ節転移陽性患者、ITT集団でのIDFS
[副次評価項目]リンパ節転移陽性患者、ITT集団での全生存期間(OS)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフは2019年11月27日で、観察期間中央値はAC-THP群で57.1ヵ月、AC-THP群で57.0ヵ月であった。両群とも白人が約60%、アジア人が約30%であった。
・主要評価項目であるリンパ節転移陽性患者におけるIDFSは、ハザード比(HR)が0.97(95%CI:0.71~1.32、p=0.8270)で有意差が認められなかった。3年IDFSはAC-KP群92.8%、AC-THP群94.1%であった。
・ITT集団におけるIDFSにおいても同様でHRが0.98(95%CI:0.72~1.32)で、3年IDFSはAC-KP群93.1%、AC-THP群94.2%であった。
・Grade 3以上の有害事象(AE)は、AC-KP群(51.8%)、AC-THP群(55.4%)と差はなかった。AEのためにT-DM1またはトラスツズマブを中止した割合は、AC-KP群(26.8%)がAC-THP群(4.0%)より高かった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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KAITLIN(ClinicalTrials.gov)

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veliparib、gBRCA変異のないBRCA-like型TN乳がんでPFS改善(SWOG S1416)/ASCO2020

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 転移を有するトリプルネガティブ(TN)乳がんで、生殖細胞系列BRCA遺伝子(gBRCA)変異はないが、相同組み換え修復不全(HRD)スコアや体細胞系列BRCA1/2変異などの分析でBRCA-like型に分類された患者に対し、PARP阻害薬veliparibをシスプラチンに追加することで無増悪生存期間(PFS)が延長したことが、第II相SWOG S1416試験で示された。米国・University of Kansas Medical CenterのPriyanka Sharma氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表した。

 PARP阻害薬は、gBRCA1/2変異のある進行乳がんでPFSを改善することが報告されている。また、TN乳がんの40~60%はHRDを示し、HRDはPARP阻害薬の感受性に関連することが示唆されている。

・対象:転移/局所再発のTN乳がんまたはgBRCA1/2変異HER2陰性の進行乳がん患者
・試験群:シスプラチン(75mg/m2)+veliparib(300mg経口投与、1日2回、Day 1~14)、3週ごと(veliparib群)
・対照群:シスプラチン(75mg/m2)+プラセボ(プラセボ群)
・評価項目:
[主要評価項目]3グループ(gBRCA陽性、BRCA-like、非BRCA-like)におけるPFS
[副次評価項目]奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性

 3グループの分類については、veliparib群とプラセボ群に割り付けた後にgBRCA検査を実施し、変異がない場合は追加のバイオマーカー分析(myChoiceによるHRDスコアが42以上、体細胞系列BRCA1/2変異、BRCA1遺伝子プロモーター領域のメチル化、生殖細胞系列の相同組み換え修復遺伝子変異)を実施し、gBRCA変異あり、BRCA-like(追加のバイオマーカー分析で陽性であった患者)、非BRCA-likeに分類した。

 主な結果は以下のとおり。

・無作為に割り付けられた335例中、321例(95.8%)が有効性評価の適格基準を満たした(veliparib 群161例[50.2%]、プラセボ群160[49.8%])。
・平均年齢は56歳、TNBCが95%、白人が76%、未治療患者が69%であった。
・gBRCA変異ありが37例(11.5%)、BRCA-like が99例(30.8%)、非BRCA-like が110例(34.3%)、未分類が75例(23.4%)であった。
・gBRCA変異ありにおいて、veliparib群のPFS中央値が6.2ヵ月、プラセボ群6.4ヵ月で有意差が認められなかった(HR:0.66、95%CI:0.30~1.44、p=0.29)
・gBRCA-likeにおいて、veliparib群のPFS中央値が5.9ヵ月、プラセボ群4.2ヵ月に比べて有意に延長した(HR:0.53、95%CI:0.34~0.83、p=0.006)。
・非BRCA-like、未分類では、PFSの有意な改善は見られなかった。
・サブグループ解析では、BRCA-likeにおいて、veliparibを1次治療で投与された患者のPFS中央値が、veliparib群が6.1ヵ月でプラセボ群の4.2ヵ月より有意に延長し(HR:0.49、95%CI:0.29~0.83、p=0.008)、OS中央値もveliparib群が17.8ヵ月とプラセボ群の10.3ヵ月より有意に延長した(HR:0.53、95%CI:0.28~0.99、p=0.048)。さらにHRDスコアが42以上のPFS中央値も、プラセボ群4.2ヵ月に対してveliparib群6.1ヵ月と有意に延長していた(HR:0.53、95%CI:0.31~0.89、p=0.016)。
・Grade3/4の有害事象は、好中球減少症(46% vs.19%)、貧血(23% vs.7%)、白血球減少症(27% vs.7%)、血小板減少症(19% vs.3%)において、veliparib群でプラセボ群より有意に発現率が高かった(すべてp<0.001)。

 Sharma氏は、gBRCA変異ありのグループで有意差が見られなかった理由として、患者数が37例と少ないことによるパワー不足を挙げ、第III相BROCADE3試験ではveliparibの追加でPFSが改善していることを紹介した。最後に、BRCA-likeのTN乳がんにおける有効性を示した本試験は、PARP阻害薬の役割をgBRCA変異を越えて広げるための大きな前進である、と結んだ。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

SWOG S1416(ClinicalTrials.gov)

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非浸潤性乳管がん、浸潤性病変・乳がん死に長期リスク/BMJ

提供元:CareNet.com

 イングランドでは、乳がん検診で非浸潤性乳管がん(DCIS)が発見された女性は、診断されていない一般人口の女性に比べ、全死因死亡率が低いにもかかわらず、診断後20年以上にわたり浸潤性乳がん(IBC)および乳がん死の長期的なリスクが高いことが、英国・オックスフォード大学のGurdeep S. Mannu氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年5月27日号に掲載された。DCISの発生率は、近年、実質的に上昇しており、とくに乳がん検診プログラムの導入以降の増加が著しいという。その一方で、検診で発見されたDCISにおける手術後のIBCおよび乳がん死の長期的リスクは知られていない。

イングランド女性3万5,024人のコホート研究

 研究グループは、乳がん検診でDCISと診断された女性におけるIBCの発生および乳がん死の長期的リスクを評価する目的で、人口ベースの観察的コホート研究を行った(Cancer Research UKなどの助成による)。

 解析には、英国のNational Health Service(NHS)Breast Screening Programme(NHSBSP)と、National Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)のデータを用いた。対象は、NHSBSP(1988年の開始時から2014年3月まで)でDCISと診断されたイングランドの女性3万5,024人であった。

 乳がん検診でDCISと診断された女性におけるIBCおよび乳がん死の発生を、診断されていない一般人口における期待値と比較した。

 主要アウトカムは、IBCおよび乳がん死であった。

IBCは期待値の約2.5倍、乳がん死は1.7倍に

 乳がん検診で初発DCIS診断時の年齢は、55歳未満が32%、55~59歳が22%、60~64歳が23%、65歳以上は24%であった。2014年12月の時点で、追跡期間が5年までの女性は1万3,606人、5~9年は1万998人、10~14年は6,861人、15~19年は2,620人、20年以上は939人だった。

 これらの女性のうち、2,076人でIBCが発生した(同側乳房1,029人、対側乳房860人、不明187人)。IBCの年間発生率は1,000人当たり8.82人(95%信頼区間[CI]:8.45~9.21)であり、一般人口における全国的ながん発生率の期待値の2.5倍以上であった(期待値に対する観測値の比:2.52、95%CI:2.41~2.63、p<0.001)。このIBCの増加は、DCIS診断から2年後には始まっており、フォローアップ終了まで持続した。

 同じ集団の女性のうち、310人が乳がんで死亡した。乳がん死の年間発生率は1,000人当たり1.26人(95%CI:1.13~1.41)であり、全国的乳がん死亡率の期待値よりも70%高かった(観測値/期待値比:1.70、95%CI:1.52~1.90、p<0.001)。

 DCIS診断から最初の5年間では、乳がん死亡率は全国的な死亡率の期待値とほぼ同等であった(観測値/期待値比:0.87、95%CI:0.69~1.10)が、その後は増加に転じ、5~9年の観測値/期待値比は1.98(1.65~2.37)、10~14年は2.99(2.41~3.70)、15年以降は2.77(2.01~3.80)に達した。

 手術を受けた片側乳房のDCIS患者2万9,044人のうち、より強度の高い治療(乳房切除術、乳房温存術後の放射線照射、エストロゲン受容体陽性病変への内分泌療法)を受けた女性や、最終的な腫瘍切除断端の幅が広い女性は、IBCの発生率が低かった。

 著者は、「悪性度が低~中のDCISでも、長期的には浸潤性病変のリスクがあることを示すエビデンスが得られた」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Mannu GS, et al. BMJ. 2020;369:m1570.

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ER+/HER2-乳がんのアジュバントへのS-1上乗せ効果、リスク別解析(POTENT)/ASCO2020

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 エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性乳がんの術後ホルモン療法へのS-1の上乗せ効果は、再発リスクが中〜高リスクの患者で大きく、5年無浸潤疾患生存率(iDFS)で約7〜8%の上乗せ効果が得られたことが、第III相POTENT試験の探索的解析で報告された。京都大学の高田 正泰氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)のポスターセッションで発表した。

 POTENT試験は医師主導による国内多施設共同非盲検無作為化比較第III相試験である。2019年のサンアントニオ乳がんシンポジウムにおいて、ER陽性HER2陰性乳がんのアジュバントで標準的ホルモン療法にS-1を追加することにより5年iDFSを改善したことを報告している。今回は、S-1の追加投与に適した患者を特定するために、被験者を再発リスク(複合リスク)スコアで分類しS-1上乗せによるiDFSの改善効果を評価した。

・対象:Stage I~IIIBのER陽性HER2陰性乳がん患者(リンパ節転移状況は問わず)1,930例
・試験群:S-1(1日2回経口、3週ごと)+標準的ホルモン療法(S-1併用群)957例
・対照群:標準的ホルモン療法 973例
・主要評価項目:iDFS

 1930例中、データ欠損のない1,897例について解析された。各患者の再発リスク(複合リスク)は、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、グレード、ER発現、Ki-67発現レベルを組み込んだCoxモデルで決定した。また、複合リスクスコアにより低リスク群(下位四分位数以下、677例)、中リスク群(四分位範囲、767例)、高リスク群(上位四分位数超、453例)に分け、各群におけるS-1の上乗せ効果を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・5年iDFSは、複合リスクスコアによる低リスク群、中リスク群、高リスク群の順に、標準的ホルモン療法群が91.6%、82.0%、67.2%、S-1併用群が92.5%、88.7%、75.3%であった。
・S-1追加によるiDFSの差は、低リスク群、中リスク群、高リスク群の順に0.9%、6.7%、8.1%で、ハザード比はそれぞれ0.86(95%CI:0.45~1.63、p=0.642)、0.51(95%CI:0.34~0.78、p=0.001)、0.71(95%CI:0.49~1.02、p=0.064)であった。

 主任研究者の戸井 雅和氏(京都大学)は、「参加研究者全体も高い興味を持って取り組んでおり、重要な知見と捉えている」とコメントしている。

(ケアネット 金沢 浩子)


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