コーヒー摂取量と乳がんリスク

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 コーヒーと乳がんリスクの関連については数多くの研究がなされている。今回、スペイン・ハエン大学のCristina Sanchez-Quesada氏らがSUN(Seguimiento Universidad de Navarra)前向きコホートの約1万人の女性で検討したところ、閉経後女性においてコーヒー摂取量と乳がんリスクの間に逆相関が観察された。European Journal of Nutrition誌オンライン版2020年1月18日号に掲載。

 本研究の対象はナバーラ大学を卒業したスペイン人女性で、ベースラインで乳がんではなかった1万812人。コーヒー摂取量は、136品目食事摂取頻度調査票(FFQ)で評価した。ベースラインにおけるコーヒー摂取量と追跡期間中の乳がん発症率との関係について、Cox回帰モデルを用いて評価した。また、閉経前後で層別解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・11万5,802人年の追跡期間中に101例が乳がんを発症した。
・閉経後女性では、コーヒー摂取量が1日1杯より多い女性は1杯以下の女性と比較して、乳がん発症率が低かった(調整後ハザード比:0.44、95%信頼区間:0.21~0.92)。
・閉経前女性では有意差は認められなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Sanchez-Quesada C, et al. Eur J Nutr. 2020 Jan 18. [Epub ahead of print]

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術前化療で乳房温存療法が適応になる割合は/JAMA Surgery

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 StageII~III乳がんでは乳房温存療法を可能にするべく術前化学療法が実施されることが多い。今回、米国・Brigham and Women’s HospitalのMehra Golshan氏らは、BrighTNess試験の2次解析からトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において術前化学療法により53.2%が乳房温存療法の適応になったことを報告した。また、北米では乳房温存治療適応患者でも乳房温存率が低く、生殖細胞系BRCA(gBRCA)変異のない患者での両側乳房切除率が高いことがわかった。JAMA Surgery誌オンライン版2020年1月8日号に掲載。

 本研究は、多施設二重盲検無作為化第III相試験(BrighTNess)において事前に示されていた2次解析である。BrighTNess試験には、北米、欧州、アジアにおける15ヵ国145施設において、手術可能なStageII〜IIIのTN乳がんで術前化学療法開始前にgBRCA変異検査を受けた女性634例が登録された。登録患者をパクリタキセル+カルボプラチン+veliparib、パクリタキセル+カルボプラチン、パクリタキセル単独に無作為に割り付け、12週間投与後、ドキソルビシン+シクロホスファミドを4サイクル投与した。乳房温存療法の適応については、術前化学療法の前後に外科医が臨床およびX線写真により評価した。データは2014年4月1日~2016年12月8日に収集し、2018年1月5日~2019年10月28日に2次解析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・634例(年齢中央値:51歳、範囲:22〜78歳)のうち、604例で術前化学療法前後の評価が可能であった。
・ベースラインで乳房温存療法が不適応と判断された141例のうち、75例(53.2%)が術前化学療法後に適応となった。
・全体として、術前化学療法後、乳房温存療法の適応と判断された502例のうち、342例(68.1%)が実際に乳房温存療法を受けた。このうち、乳房温存療法が非適応から適応に変わった75例では42例(56.0%)が実際に温存治療を受けた。
・欧州およびアジアの患者は、北米の患者より乳房温存療法実施率が高かった(オッズ比:2.66、95%CI:1.84~3.84)。
・gBRCA変異陰性で乳房切除術を受けた患者の対側乳房予防切除実施率は、北米の患者が70.4%(81例中57例)と、欧州およびアジアの患者の20.0%(30例中6例)に比べて高かった(p<0.001)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Golshan M, et al. JAMA Surg. 2020:e195410. [Epub ahead of print]

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紫外線は乳がん予防に有効か~メタ解析

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 太陽紫外線(UVR)曝露が乳がん発症リスクを減少させるという仮説がある。今回、カナダ・クイーンズ大学のTroy W. R. Hiller氏らが行った系統的レビューとメタ解析から、夏の数ヵ月間に太陽の下で1日1時間以上過ごすことで、乳がん発症リスクを減らせる可能性が示唆された。Environmental Health Perspectives誌2020年1月号に掲載。

 本研究では、Medline、EMBASE、Web of Scienceで太陽UVRへの曝露と乳がんリスクの関連を調査した研究すべてを検索し、太陽の下で過ごした時間と周囲のUVR(居住地の太陽の強さ)の推計値を使用して個別に分析した。関連はランダム効果モデルのDerSimonian-Laird法を用いて推定し、異質性はサブグループ解析とI2統計量で調べた。

 主な結果は以下のとおり。

・14件の研究が系統的レビューの対象に、そのうち13件がメタ解析の対象になった。うち8件が北米で実施された研究であった。
・生涯もしくは成人期に夏の数ヵ月間、1日1時間以上太陽の下で過ごすと、1時間未満と比べて乳がんリスクが減少した(統合相対リスク[RR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.77~0.91)。
・太陽の下で過ごす時間が1日1時間未満と比べて、2時間以上(RR:0.83、95%CI:0.75~0.93)と1時間以上2時間未満(RR:0.83、95%CI:0.78~0.89)において同等の保護効果がみられた。
・青年期での曝露(RR:0.83、95%CI:0.71~0.98)は、45歳以上での曝露(RR:0.97、95%CI:0.85~1.11)よりも乳がんリスクが低かった。
・周囲のUVRは、乳がんリスクと関連していなかった(RR:1.00、95%CI:0.93~1.09)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Hiller TWR, et al. Environ Health Perspect. 2020;128:16002.

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日本人トリプルネガティブ乳がんのMSI-H頻度は?

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 日本人のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者におけるMSI-H頻度は高くはないものの、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)のターゲットとなる患者が存在することが示唆された。九州大学の倉田 加奈子氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年1月6日号掲載の報告より。

 本邦では、MSI-HまたはdMMRを有する進行固形がんに対しペムブロリズマブが承認されている。また、ゲノム不安定性を有する腫瘍はPD-1 / PD-L1阻害に良好な反応を示し、難治性乳がんの有望なターゲットとなりうることが示唆されている。しかし、日本人TNBCにおけるMSI-H頻度は明らかになっていない。

 本研究では、2004年1月から2014年12月の間に、国内3施設で術前化学療法なしで切除を実施した女性TNBC患者228例を対象に、MSI-H頻度を後ろ向きに評価した。MSI解析には、5種類のマイクロサテライトマーカー(BAT-26、NR-21、BAT-25、MONO-27、NR-24)によるMSI Analysis System Version 1.2(Promega)を使用している。

 主な結果は以下のとおり。

・228検体のうち、222検体(97.4%)がマイクロサテライト安定性、4検体(1.7%)がMSI-L(いずれか1種類のマーカーで不安定性を示す)、2検体(0.9%)がMSI-H (2種類以上のマーカーで不安定性を示す)であった。
・MSI-Hの2検体では、ともにBAT-26、NR21およびBAT-25の3つのマーカーで不安定性を示した。これらの腫瘍はそれぞれT1N0およびT2N0であり、NG3およびKi-67高値(>30%)といった予後不良とされる特徴を有し、基底細胞様、non-BRCAnessに分類された。1検体でのみPD-L1発現が確認され、2検体でTIL低値およびCD8陰性であった。
・MSI-Lの4検体では、不安定性を示したマーカーはそれぞれ異なり、4検体が基底細胞様、2検体のみnon-BRCAnessに分類された。また、1検体のみPD-L1発現がありTIL高値、そのほか3検体はTIL低値であった。

 著者らは、日本人TNBCにおけるMSI-H頻度は稀ではあるものの、ICIの潜在的なターゲットとなる患者は存在し、包括的なゲノムプロファイリングのプラットフォームを使用してピックアップしていく必要があると結論付けている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Kurata K, et al. Breast Cancer. 2020 Jan 6. [Epub ahead of print]

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trastuzumab deruxtecan(DS-8201)、米国で乳がんの承認取得/第一三共

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 第一三共とアストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ)は、2019年12月23日、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)trastuzumab deruxtecanについて、米国食品医薬品局(FDA)より「転移乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能又は転移乳がん」を適応として販売承認を取得したと発表。

 本適応は、T-DM1治療を受けたHER2陽性の再発・転移乳がんを対象としたグローバル第II相臨床試験(DESTINY-Breast01)の奏効率および奏効期間の結果に基づき、迅速審査のもとで承認された。本適応での承認取得は条件付きであり、第III相臨床試験における臨床的有用性の検証が必要となる。同剤については、2019年10月にFDAより承認申請が受理されていた。

(ケアネット 細田 雅之)


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閉経後ルミナールB乳がんへの術前療法、ribociclib+レトロゾール併用が有望(CORALLEEN)/SABCS2019

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 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)の閉経後乳がんに対する術前療法として、ribociclibとレトロゾールの併用投与が、術前化学療法と同様の効果を示す可能性があるとの試験結果が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、スペインInstituto Valenciano de OncologiaのJoaquin Gavila氏より発表された。この結果はLancet Oncology誌オンライン版2019年12月11日号に同時掲載された。

 本試験(CORELLEEN試験)は、2017年7月~2018年12月にスペイン国内(21施設)で実施された、オープンラベル無作為化比較の第II相試験である。

・対象:Stage I~IIIAのHR+/HER2-ルミナールBタイプの閉経後乳がん患者(ルミナールBタイプは遺伝子発現プロファイル検査法PAM50で判定)
・試験群:ribociclib+レトロゾール群(R群) 52例
・対照群:ドキソルビシン+シクロホスファミド後にパクリタキセル逐次投与群(CT群) 54例
・評価項目:
[主要評価項目]手術時にPAM50によりROR(Risk Of Recurrence)-lowと判定される割合
[副次評価項目]組織学奏効率(pCR)、残存腫瘍量(RCB)とPEPI(Preoperative Endocrine Prognostic Index)スコア、PAM50によるサブタイプ変化、奏効率、QOL、安全性、バイオマーカー検索など

 両群共に6ヵ月の投薬期間後に手術を施行。ROR-Lowの判定は、リンパ節転移陰性(n0)の場合、RORスコア40以下、リンパ節転移1~3個(n1-3)の場合、15以下とした。同様にn0でRORスコアが41~60、n1~3で16~40をIntermediateとした。

 主な結果は以下のとおり。

・遺伝子検査の解析対象はR群49例、CT群51例であった。
・手術時のROR-lowの割合は、R群46.9%(95%信頼区間[CI]:32.5~61.7)、CT群:46.1%(95%CI:32.9~61.5)であった。
・RORスコアの中央値は、R群18、CT群25であった。中央判定によるKi67の中央値は、R群3、CT群10であった。
・pCR率はR群0%(95%CI:0~7.2)、CT群5.8%(95%CI:1.4~16.6)、PEPIスコア0はR群22.4%(95%CI:11.7~36.6)、CT群17.3%(95%CI:8.6~31.4)であった。
・手術時におけるサブタイプ変化は、R群の87.8%、CT群の82.7%がルミナールAとなっており、ルミナールBはR群で8.2%、CT群で15.4%であった。
・ベースラインと薬剤投与15日目のRORの変化を見たところ、R群の1例以外はすべて減少しており、CT群に比べ大きなRORの低下がみられた。
・Grade3以上の有害事象(AE)の発現率は、R群で56.9%、CT群で69.2%、重篤なAEはR群で3.9%、CT群で15.4%であった。また、AEによる投与中止はR群で15.7%、CT群で19.2%であった。

Gavila氏はSABCSのプレスリリースで、「ハイリスクのルミナールB乳がん患者に対するribociclibとレトロゾールの併用による術前内分泌療法は有害事象も少なく、術前化学療法と同等の臨床的効果があり、今後は術前化学療法にとって代わる可能性がある」と述べている。

(ケアネット)


【参考文献・参考サイトはこちら】

Prat A, et al. Lancet Oncol. 2019 Dec 11.[Epub ahead of print]

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乳房温存手術後の同側再発の抑制に、加速乳房部分照射は有効か/Lancet

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 乳房温存手術後の放射線療法において、温存乳房内再発(IBTR)の予防に関して、加速乳房部分照射(APBI)の全乳房照射(WBI)に対する非劣性が示された。ただし、APBIでは急性毒性の発現は少ないものの、中等度の晩期有害事象の増加と整容性不良が認められた。カナダ・マックマスター大学およびJuravinski Cancer CenterのTimothy J. Whelan氏らが、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのがんセンター33施設で実施した多施設共同無作為化非劣性試験「RAPID試験」の結果を報告した。WBIは、整容性が良好で局所再発を低下させるものの、乳房温存手術後3~5週間にわたり1日1回照射が必要であることから、より簡便な方法として腫瘍床に1週間照射するAPBIが開発された。Lancet誌2019年12月14日号掲載の報告。

乳がん患者2,135例をAPBI群とWBI群に無作為化、IBTR率を評価

 研究グループは、乳房温存手術を受けた非浸潤性乳管がんまたはリンパ節転移陰性の40歳以上の乳がん患者を、APBI群(38.5Gy/10回、1日2回で5~8日間)またはWBI群(42.5Gy/16回、1日1回21日間、または50Gy/25回、1日1回35日間)に1対1の割合で無作為に割り付けた(非盲検)。

 主要評価項目はIBTRで、APBIのWBIに対する非劣性マージンは、IBTRハザード比(HR)の両側90%信頼区間(CI)上限値が2.02未満とした。

 2006年2月7日~2011年7月15日に2,135例が登録され、APBI群1,070例、WBI群1,065例に無作為化された。APBI群のうち6例は治療前に同意撤回、4例は放射線治療を受けず、16例はWBIを受け、WBI群では16例が同意撤回、2例が放射線治療を受けなかった。また、追跡不能および追跡期間中の撤回が、APBI群で14例および9例、WBI群でそれぞれ20例および35例であった。

APBIはWBIに対して非劣性

 追跡期間中央値8.6年(IQR:7.3~9.9)において、8年累積IBTR率はAPBI群で3.0%(95%CI:1.9~4.0)、WBI群で2.8%(95%CI:1.8~3.9)であった。WBIに対するAPBIのHRは1.27(90%CI:0.84~1.91)であり、非劣性が認められた。

 急性放射線毒性(放射線療法開始後3ヵ月以内、Grade2以上)の発現率は、APBI群(28%、300/1,070例)がWBI群(45%、484/1,065例)より有意に低かった(p<0.0001)。

 一方、晩期放射線毒性(3ヵ月以降、Grade2以上)の発現率は、APBI群(32%、346/1,070例)がWBI群(13%、142/1,065例)より有意に高かった(p<0.0001)。
 また、整容性不良(fairまたはpoor)の患者の割合も、APBI群がWBI群より3年時(絶対群間差:11.3%、95%CI:7.5~15.0)、5年時(16.5%、12.5~20.4)および7年時(17.7%、12.9~22.3)のいずれにおいても高率であった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Whelan TJ, et al. Lancet. 2019;394:2165-2172.

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アナストロゾール5年投与の乳がん予防効果、11年後も(IBIS-II)/Lancet

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 乳がん発症リスクが高い閉経後女性において、アナストロゾールの予防効果は投与終了後も長期にわたり維持されており、新たな遅発性の副作用は報告されなかったことが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のJack Cuzick氏らによる長期追跡試験「IBIS-II試験」で示された。「MAP.3」および「IBIS-II」の2件の大規模臨床試験において、アロマターゼ阻害薬投与後最初の5年間で高リスク女性の乳がん発症率が低下することが報告されていたが、アナストロゾール投与終了後の長期的な乳がん発症率についてはこれまで不明であった。Lancet誌オンライン版2019年12月12日号掲載の報告。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。

乳がん発症高リスク閉経後女性約3,900例で、アナストロゾール5年投与による乳がん発症率をプラセボと比較

 IBIS-II試験(International Breast Cancer Intervention Study II)は、乳がん高リスク閉経後女性におけるアナストロゾールの乳がん(浸潤性乳がんまたは非浸潤性乳管がん)に対する発症予防効果および安全性を評価する、国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。

 研究グループは、2003年2月2日~2012年1月31日の間に、40~70歳の乳がん発症高リスク閉経後女性(一般女性に対する乳がん相対リスクが40~44歳は4倍以上、45~60歳は2倍以上、60~70歳は1.5倍以上)3,864例を、アナストロゾール(1mgを1日1回経口投与)群(1,920例)またはプラセボ群(1,944例)に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ5年間投与した。

 治療完遂後、年1回追跡調査を行い、乳がん発症、死亡、その他のがんの発症、主要有害事象(心血管イベントおよび骨折)に関するデータを収集した。主要評価項目は、すべての乳がん発症で、Cox比例ハザードモデルを用いてintention-to-treat解析を行った。

アナストロゾール群で追跡期間約11年の乳がん発症率が49%低下

 追跡期間中央値131ヵ月(IQR:105~156)において、乳がん発症率はアナストロゾール群で49%減少した(85例vs.165例、ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.39~0.66、p<0.0001)。

 乳がん発症率の低下は、最初の5年間が大きかったが(35例vs.89例、HR:0.39、95%CI:0.27~0.58、p<0.0001)、5年以降も有意であり(新規発症例:50例vs.76例、HR:0.64、95%CI:0.45~0.91、p=0.014)、最初の5年間と5年以降とで有意差はなかった(p=0.087)。

 エストロゲン受容体陽性浸潤性乳がんの発症率は54%低下し(HR:0.46、95%CI:0.33~0.65、p<0.0001)、治療完遂後に有意な効果が持続した。非浸潤性乳管がんは59%低下し(HR:0.41、95%CI:0.22~0.79、p=0.0081)、とくにエストロゲン受容体陽性で著しかった(HR:0.22、95%CI:0.78~0.65、p<0.0001)。

 観察された全死亡(69例vs.70例、HR:0.96、95%CI:0.69~1.34、p=0.82)、または乳がん死亡(2例vs.3例)について、両群で有意差は確認されなかった。非乳がんの発症率は、アナストロゾール群で有意な低下が確認され(147例vs.200例、オッズ比:0.72、95%CI:0.57~0.91、p=0.0042)、とくに非黒色腫皮膚がんの発症率低下が大きかった。

 骨折または心血管疾患のリスク増加は確認されなかった。

 結果を踏まえて著者は、「さらなるフォローアップを行い、乳がん死亡への効果を評価することが必要だ」と述べている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Cuzick J, et al. Lancet. 2019 Dec 12. [Epub ahead of print]

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乳がん病期分類と微量栄養素の関係

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 乳がん治療は、治療法の種類によって酸化ストレスレベル増加や抗酸化物質の枯渇を招く可能性がある。乳がんの病期分類が進行するにつれて、血清の微量栄養素濃度の有意な低下がみられることが、ブラジル・リオデジャネイロ連邦大学のCintia Rosa氏らの調査で明らかとなった。「微量栄養素間の相乗効果は、利益を最大化し、正常細胞への照射の悪影響を最小化するために考慮されなければならない」と報告している。Nutrients誌オンライン版2019年12月4日号掲載の報告。

 研究グループは放射線治療前の乳がん患者を対象とした横断観察研究を行い、乳がんの病期分類(TNM分類)と微量栄養素(レチノール、β-カロテン、亜鉛)の血清濃度の相関関係を調査、放射線治療前に行われるさまざまな治療法とこれらの微量栄養素間の相乗効果について検討した。患者は、グループ1:乳房温存手術、グループ2:化学療法のみ、グループ3:乳房温存手術と化学療法の3グループに割り付けられ、それぞれのグループにおいて、レチノール、β-カロテン、および亜鉛の血清濃度を定量化した。

 主な結果は以下のとおり。

・230例の患者を評価した。
・疾患の病期分類が進行するにつれ、微量栄養素の血清濃度が低下した。
・手術のみの場合でも、レチノールは血清濃度に大きな悪影響を及ぼした。
・放射線治療前の治療を考慮すると、手術のみと術後化学療法を受けている患者では、β-カロテンとレチノールの欠乏率が高かった。
・亜鉛、レチノール、およびβ-カロテンの濃度間に正の相関があり、これらの微量栄養素間の相乗効果が示された。

(ケアネット 土井 舞子)


【原著論文はこちら】

Rosa C, et al. Nutrients. 2019 Dec 4.[Epub ahead of print]

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HR+乳がん、術後ホルモン療法に1年のS-1併用が有効(POTENT)/SABCS2019

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 ホルモン受容体陽性乳がん(HRBC)に対する術後療法として、5年間のホルモン療法に1年間のS-1の併用が有効であるとの試験結果が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、京都大学の戸井 雅和氏より発表された。

 本試験(POTENT試験)は、2012年2月~2016年2月に症例登録がなされた、国内多施設共同(139施設)のオープンラベル無作為化比較の第III相試験である。中間解析時に主要評価項目の閾値を達成したため早期に試験が中止され、今回の発表となった。

・対象:StageI~IIIBのエストロゲン陽性かつHER2陰性再発リスク中~高の乳がん患者1,959例 (リンパ節転移状況は問わず)
・試験群:S-1(2週連日投与1週休薬を1年間)と標準的ホルモン療法の併用群(S-1群) 解析対象957例
・対照群:標準的ホルモン療法群(E群) 解析対象973例
・評価項目:
[主要評価項目]無浸潤疾患生存期間(iDFS)
[副次評価項目]無病生存期間、全生存期間、安全性、バイオマーカー検索など

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値51ヵ月時点の5年時iDFS率はS-1群86.9%、E群81.6%で、ハザード比(HR)が0.63(95%信頼区間[CI]:0.49~0.81、p<0.0001)と、S-1群が統計学的に有意に良好な結果を示した。
・各サブグループの解析(閉経状況、術前/術後の化学療法の有無、Ki-67値など)においても、ほぼ一貫してS-1群は良好な結果を示した。
・安全性の報告に関しては、好中球減少、肝機能障害、消化器症状、色素沈着などがS-1群で多く報告されたが、いずれも対応可能であった。

 SABCSのプレスリリースで戸井氏は「本試験の対象は日本人症例だけであり、安全性プロファイルに人種差がある可能性もあるが、HRBCへの術後ホルモン療法にS-1を併用することで、iDFSを有意に改善できる」と述べている。

(ケアネット)


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