早期TN乳がんの術前化療後のctDNA検出が再発と関連/SABCS2019

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 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)で術前化学療法(NAC)後に手術を受けた女性において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)検出が遠隔無病生存期間(DDFS)および全生存期間(OS)に関連することが示された。米国・Indiana University Simon Cancer CenterのMilan Radovich氏が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で発表した。

 本研究では、第II相BRE12-158試験(NAC後に残存病変を有する早期TNBC患者を、遺伝子に基づく治療と主治医選択の治療に無作為に割り付け)に登録された患者から採取した血漿サンプルを分析した。本試験には196例が参加し、FoundationOne Liquidにより142例のctDNA配列が解析された。ctDNA検出とDDFSおよびOSとの関連について、log-rank検定による単変量解析およびCox比例ハザードモデルを使用した多変量解析で評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・142例のうち90例(63%)で変異したctDNAが検出され、最も多い変異はTP53であった。
・追跡期間中央値17.2ヵ月において、ctDNA検出がDDFSと有意に関連し、ctDNA陽性例ではDDFS中央値が32.5ヵ月であったのに対し、陰性例では未到達であった。
・24ヵ月後のDDFS率は、ctDNA陰性例81%に対し、陽性例では56%であった。多変量解析においても、残存腫瘍量、リンパ節転移の数、腫瘍の大きさ、ステージ、悪性度、年齢、人種を含む共変量を調整後、ctDNA検出とDDFSの間に独立した関連が認められ、ctDNA陽性例は陰性例に比べて遠隔再発リスクが3倍高かった。
・ctDNA検出はOSの低下にも関連しており、ctDNA陽性例は陰性例に比べ死亡リスクが4.1倍高かった。

 SABCS2019のプレスリリースで、本研究のシニアオーサーであるBryan P. Schneider氏(Indiana University)は「この結果は、術前化学療法後にctDNAが検出された早期TNBC患者は再発リスクが高いことを証明している」と述べている。

(ケアネット 金沢 浩子)


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乳房温存手術後の同側再発の抑制に、加速乳房部分照射は有効か/Lancet

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 乳房温存手術では、腫瘍摘出術後の加速乳房部分照射(APBI)は全乳房照射と比較して、同側乳房腫瘍再発(IBTR)のコントロールにおいて同等性の判定基準を満たさないことが、米国・NRG OncologyのFrank A. Vicini氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌2019年12月14日号に掲載された。早期乳がんに対する乳房温存手術後の全乳房照射はIBTRを抑制し、乳房全切除術と同等の結果をもたらす。一方、腫瘍のある四分円にのみ照射するAPBIは治療期間の短縮をもたらすが、その効果が乳房全切除術と同等かは知られていない。

4ヵ国で行われた無作為化同等性試験

 本研究は、4ヵ国(米国、カナダ、アイルランド、イスラエル)の154施設が参加した無作為化第III相同等性試験(NSABP B-39/RTOG 0413)であり、2005年3月21日~2013年4月16日の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上の女性で、早期(Stage 0/I/II、遠隔転移はないが最大3個の腋窩リンパ節が転移陽性)の乳がん(腫瘍径≦3cm、すべての組織型、多病巣性乳がん)が認められ、腫瘍摘出術後の切除断端が陰性(がん細胞が検出されない)の患者であった。

 被験者は、APBIまたは全乳房照射を受ける群に無作為に割り付けられた。APBIは、8日以内に5治療日で、小線源治療(34Gy)または外照射療法(38.5Gy)を行った。全乳房照射は、外照射療法により総線量50Gyを25日に分けて5週間で照射した(腫瘍床への追加照射の有無にかかわらず)。患者、担当医、統計解析者には治療割り付け情報がマスクされた。

 主要アウトカムは、初回の浸潤性または非浸潤性IBTRとし、脱落例を除くintention-to-treat集団で解析が行われた。同等性の検定は、相対リスクのマージンの50%増加とし、ハザード比(HR)の90%信頼区間(CI)が0.667~1.5の範囲内の場合に同等と判定した。

10年累積IBTR発生率の絶対差は1%未満

 4,216例(APBI群2,107例、全乳房照射群2,109例)が登録され、4,125例(2,089例、2,036例)が主要アウトカムの解析に含まれた。追跡期間中央値は10.2年(IQR:7.5~11.5)。

 ベースラインの全体の年齢中央値は54歳(IQR:47~64)、2,587例(61%)が閉経後、3,788例(90%)が白人で、3,185例(76%)が浸潤性乳がん、1,031例(24%)が非浸潤性乳管がん(DCIS)であり、浸潤性のうち2,518例(79%)とDCISの908例(88%)がホルモン受容体(ER、PgR)陽性であった。

 IBTRの発生率は、APBI群が4%(90/2,089例)、全乳房照射群は3%(71/2,036例)であった。HRは1.22(90%CI:0.94~1.58)であり、APBI群の同等性の判定基準は満たされなかった。10年累積IBTR発生率は、APBI群が4.6%(95%CI:3.7~5.7)、全乳房照射群は3.9%(3.1~5.0)であり、両群間の絶対差はわずか0.7%であった。

 10年無再発生存率(APBI群91.8%、全乳房照射群93.4%、HR:1.33、95%CI:1.04~1.69、p=0.02)は全乳房照射群で良好であったが、10年無遠隔病変生存率(96.7%、97.1%、1.31、0.91~1.91、p=0.15)、10年生存率(90.6%、91.3%、1.10、0.90~1.35、p=0.35)、10年無病生存率(78.1%、79.7%、1.12、0.98~1.29、p=0.10)は両群間に差はなかった。乳がんの再発による死亡率は、APBI群が2%(49例)、全乳房照射群も2%(44例)だった。

 サブグループ解析(探索的事後解析)では、腫瘍径≦10mmの浸潤性乳がんで、APBI群の10年IBTR発生率が良好な傾向が認められた(APBI群2.0%、全乳房照射群3.9%、HR:0.58、95%CI:0.27~1.22、交互作用のp=0.01)。

 APBI群で、最も高い毒性のグレードが1の患者は40%、2は44%、3は10%、全乳房照射群ではそれぞれ31%、59%、7%であり、Grade4/5は10例(<1%)および6例(<1%)で発現した。1つ以上の2次原発がん(APBI群9%[192例]、全乳房照射群10%[200例]、HR:0.93、95%CI:0.76~1.13、p=0.46)の頻度は両群間で類似しており、このうち対側乳がんと同側の乳房肉腫は、APBI群が33%(63例)、全乳房照射群は36%(72例)で認められた(0.83、0.59~1.17、p=0.29)。治療関連死はみられなかった。

 著者は、「これらの知見は、乳房温存手術における腫瘍摘出術後の全乳房照射を支持するものだが、10年累積IBTR発生率の絶対差は1%未満であり、一部の女性ではAPBIが許容可能な代替法となる可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Vicini FA, et al. Lancet. 2019;394:2155-2164.

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新規ADC薬のDS-8201、既治療HER2+乳がんで腫瘍縮小効果/NEJM

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 多くの前治療歴(レジメン数中央値6)のある転移を有するHER2陽性乳がんの治療において、trastuzumab deruxtecan(DS-8201)は持続的な腫瘍縮小効果(奏効率60.9%、奏効期間中央値14.8ヵ月)をもたらすことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏らが行った「DESTINY-Breast01試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年12月11日号に掲載された。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。trastuzumab deruxtecanは、トラスツズマブと同じアミノ酸配列を持ち、HER2を特異的な標的とするヒト化モノクローナル抗体と、細胞傷害性薬剤(ペイロード)である強力なトポイソメラーゼI阻害薬を、開裂可能なテトラペプチドベースのリンカーを介して結合した抗体薬物複合体(ADC)。既治療のHER2陽性進行乳がんの第I相用量設定試験(DS8201-A-J101試験)では、奏効率59.5%、奏効期間中央値20.7ヵ月と報告されている。

8ヵ国で行われた2部構成の単群第II相試験

 本研究は、北米、日本を含むアジア、欧州の8ヵ国72施設が参加した2部構成の多施設共同非盲検単群第II相試験であり、2017年10月~2018年9月の期間に患者登録が行われた(Daiichi SankyoとAstraZenecaの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上(日本と韓国は20歳以上)の切除不能または転移を有するHER2陽性乳がんで、全身状態(ECOG PS)が0/1であり、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)による治療歴のある患者であった。

 試験の第1部では、被験者はtrastuzumab deruxtecanの3つの用量(5.4、6.4、7.4mg/kg、3週ごとに静脈内投与)に無作為に割り付けられ、推奨用量が決定された。第2部では、推奨用量による治療の有効性と安全性の評価が行われた。

 主要評価項目は、中央判定による奏効率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])とし、主な副次評価項目は病勢コントロール率(DCR、CR+PR+安定[SD])、臨床的有用率(CBR、CR+PR+6ヵ月以上持続するSD)、奏効期間、無増悪生存(PFS)期間、安全性などであった。

DCR 97.3%、CBR 76.1%、間質性肺疾患に注意が必要

 第1部では、trastuzumab deruxtecanの第2部での推奨用量が5.4mg/kgと決定された。

 5.4mg/kg群(184例)の年齢中央値は55.0歳(範囲:28.0~96.0)で、23.9%が65歳以上であり、97例(52.7%)がホルモン受容体陽性腫瘍であった。前治療レジメン数中央値は6(2~27)で、全例にT-DM1とトラスツズマブの治療歴があり、121例(65.8%)がペルツズマブ、100例(54.3%)がその他の抗HER2療法を受けていた。

 治療期間中央値は10.0ヵ月(範囲0.7~20.5)で、追跡期間中央値は11.1ヵ月(範囲0.7~19.9)であり、128例(69.6%)が6ヵ月以上の治療を受けていた。

 第2部では、184例中112例で奏効が得られ、奏効率は60.9%(95%信頼区間[CI]:53.4~68.0)であった。内訳はCRが6.0%、PRは54.9%であった。DCRは97.3%、CBRは76.1%だった。

 T-DM1投与中または投与後に増悪した180例のうち、奏効が確認されたのは61.1%であった。また、T-DM1投与の直後にtrastuzumab deruxtecanの投与を受けた56例中36例(64%)で奏効が得られた。

 奏効期間中央値は14.8ヵ月(95%CI:13.8~16.9)、PFS期間中央値は16.4ヵ月(12.7~未到達)であった。また、6ヵ月の時点での全生存(OS)率の推定値は93.9%(89.3~96.6)、1年OS率は86.2%(79.8~90.7)であり、OS期間中央値には未到達であった。

 最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、好中球数の減少(基本語として好中球数減少[neutrophil count decreased]と好中球減少[neutropenia]を含む)であり、20.7%(38/184例)に認められた。次いで、貧血が8.7%(16例)、悪心が7.6%(14例)にみられた。発熱性好中球減少は3例で発現した。独立判定委員会により、13.6%(25例)が試験薬関連の間質性肺疾患(Grade1/2:10.9%、Grade3/4:0.5%、Grade5:2.2%)と判定された。

 著者は、「間質性肺疾患のリスクを考慮し、肺症状への配慮と注意深いモニタリングが求められる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Modi S, et al. N Engl J Med. 2019 Dec 11. [Epub ahead of print]

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ribociclib+フルベストラント、進行乳がんのOS延長/NEJM

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 ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がん患者において、CDK 4/6阻害薬ribociclib+フルベストラント併用療法はプラセボ+フルベストラントと比較し、全生存(OS)を有意に改善することが示された。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校David Geffen医学校のDennis J. Slamon氏らが、国際多施設共同無作為化第III相試験「MONALEESA-3試験」のOSに関する第2回中間解析結果を報告した。同試験の初期解析結果では、ribociclib+フルベストラント併用療法によりフルベストラント単独療法と比較し、主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間が延長することが報告されていた。NEJM誌オンライン版2019年12月11日号掲載の報告。

ribociclib+フルベストラントvs.プラセボ+フルベストラント

 試験は2015年6月~2016年6月に、未治療または1次治療の内分泌療法歴のある、18歳以上の閉経後女性または男性でホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がん患者726例を、フルベストラント+ribociclib併用療法群(484例)またはフルベストラント+プラセボ群(242例)に、2対1の割合で無作為に割り付け行われた。生存について、Kaplan-Meier法を用いて要約し層別log-rank検定で評価した。

42ヵ月推定OS率はribociclib群57.8%、プラセボ群45.9%

 今回の解析は、第2回中間解析データカットオフ日2019年6月3日、死亡が275例に達した時点で実施された。死亡率は、ribociclib併用群34.5%(167/484例)、プラセボ群44.6%(108/242例)であった。

 42ヵ月時点の推定OS率は、ribociclib併用群57.8%(95%信頼区間[CI]:52.0~63.2)、プラセボ群45.9%(36.9~54.5)であった。死亡の相対リスクの群間差は28%(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.57~0.92、片側p=0.00455)で、ribociclib併用群はプラセボ群に比べOSが有意に優れていた。片側p値は事前に規定した優越性マージン(p=0.01129)を下回っており、ribociclib併用のフルベストラント単独に対する優越性が示された。

 OS中央値は、ribociclib併用群は未到達、プラセボ群は40.0ヵ月(95%CI:37.0~推定不能)であった。OSの有益性は、ほとんどのサブグループで一貫していた。

 最新の解析において、未治療患者集団におけるPFS中央値は、ribociclib併用群33.6ヵ月(95%CI:27.1~41.3)、プラセボ群19.2ヵ月(14.9~23.6)であった。新たな安全性シグナルは確認されなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


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Slamon DJ, et al. N Engl J Med. 2019 Dec 11. [Epub ahead of print]

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転移を有するHER2+乳がん、トラスツズマブ+カペシタビンにtucatinib追加でPFS改善/NEJM

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 トラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の治療を受けた、脳転移を含む転移のあるHER2陽性乳がん患者に対して、トラスツズマブ+カペシタビンにtucatinibを追加投与することはプラセボの追加投与と比較して、無増悪生存(PFS)および全生存(OS)アウトカムが良好であったことが示された。ただしtucatinib追加投与群では下痢とALT値上昇のリスクが高かった。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのRashmi K. Murthy氏らによる国際共同無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年12月11日号で発表された。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。転移のあるHER2陽性乳がん患者で、複数のHER2標的薬で治療後に病勢進行が認められた場合の治療選択肢は限られる。tucatinibは開発中の高度に選択的な経口HER2阻害薬。第Ib相の用量漸増試験で、脳転移を含む転移のあるHER2陽性乳がん患者において、トラスツズマブ+カペシタビンへの併用が抗腫瘍効果を示し有望視されていた。

15ヵ国612例を対象にプラセボ対照試験

 試験は2016年2月23日~2019年5月3日に、15ヵ国155施設で被験者612例を登録して行われた。適格要件は、18歳以上、脳転移を問わず転移のあるHER2陽性乳がんで、トラスツズマブ、ペルツズマブ、T-DM1による治療後に病勢進行が認められた、ECOG PSスコア(5点評価で高点数ほど機能障害大)が0または1の患者で、トラスツズマブ+カペシタビンにtucatinib(410例)またはプラセボ(202例)を併用投与する群に無作為に割り付け追跡した。

 主要評価項目は、無作為化開始後480例の患者におけるPFSとした。副次評価項目は、全登録被験者(612例)におけるPFSおよびOS、またベースラインで脳転移のあった患者におけるPFS、確定的な客観的奏効(完全奏効または部分奏効を有したベースラインで測定可能疾患があった患者の割合。評価は盲検下で独立中央のレビューによる)、そして安全性の評価であった。

1年時点の推定PFS率、tucatinib併用群33.1%、プラセボ併用群12.3%

 1年時点の推定PFS率は、tucatinib併用群33.1%(95%信頼区間[CI]:26.6~39.7)、プラセボ併用群12.3%(6.0~20.9)であった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.54、95%CI:0.42~0.71、p<0.001)。PFS期間の中央値はそれぞれ7.8ヵ月、5.6ヵ月であった。

 2年時点のOSは、tucatinib併用群44.9%、プラセボ群26.6%であり(死亡のHR:0.66、95%CI:0.50~0.88、p=0.005)、OS期間中央値はそれぞれ21.9ヵ月、17.4ヵ月であった。

 脳転移のある患者の1年時のPFS率はtucatinib併用群24.9%、プラセボ併用群0%であり(HR:0.48、95%CI:0.34~0.69、p<0.001)、PFS期間の中央値はそれぞれ7.6ヵ月、5.4ヵ月であった。

 tucatinib併用群では、下痢、手足症候群、悪心、疲労感、嘔吐などの有害事象が高頻度にみられた。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Murthy RK, et al. N Engl J Med. 2019 Dec 11. [Epub ahead of print]

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ペルツズマブ+トラスツズマブ+化学療法のHER2+乳がん術後療法、引き続き有用(APHINITY)/SABCS2019

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 HER2陽性乳がんに対する術後療法としての、ペルツズマブとトラスツズマブと標準化学療法の併用を評価する第III相APHINITY試験の更新データが、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、ベルギー・Institut Jules BordetのMartin Piccart氏より発表された。

 APHINITY試験は、2011年11月~2013年8月に症例登録された国際共同無作為化比較試験。2017年に初回解析結果が発表され、今回は2回目の解析データの発表。2017年の発表(症例追跡期間中央値45.4ヵ月時点)では、無浸潤疾患生存期間(iDFS)はハザード比(HR)が0.81(95%信頼区間[CI]:0.66~1.00、p=0.045)と、有意にペルツズマブ・トラスツズマブ・標準化学療法併用群(HP群)が良好な結果であった。とくに、リンパ節転移陽性群ではHR 0.77(95%CI:0.62~0.96、p=0.019)と、またホルモン受容体陽性群でもHR 0.76(95%CI:0.56~1.04、p=0.085)と、HP群が良い傾向を示していた。

・対象:HER2陽性乳がん患者4,805例 (リンパ節転移状況、ホルモン受容体状況は問わず)
・試験群:ペルツズマブ・トラスツズマブ・標準化学療法の併用群(HP群)2,400例
・対照群:プラセボ・トラスツズマブ・標準化学療法の併用群(H群)2,405例
・評価項目:
[主要評価項目]iDFS
[副次評価項目]無病生存期間、全生存期間(OS)、無再発期間、安全性、健康関連QOLなど
標準化学療法は、78%がアントラサイクリンを含むレジメン、そのほかはドセタキセル+カルボプラチンなど。ペルツズマブとトラスツズマブの投与期間は1年間。

 主な結果は以下のとおり。

・2019年6月のデータカットオフ(追跡期間中央値:74.1ヵ月)時のデータで、2回目のOS解析が実施された。
・6年OS率はHP群94.8%、H群93.9%で、OSのHRが0.85(95%CI:0.67~1.07、p=0.170)と両群間に統計学的な有意差はなかった(今回のOS解析での統計学的有意差の閾値はp=0.0012)。
・6年iDFS率はHP群90.6%、H群87.8%で、iDFSのHRが0.76(95%CI:0.64~0.91)と、前回の解析よりHP群の効果が明確になっていた。とくに、遠隔再発率はHP群5.9%対H群7.7%、局所再発率はHP群1.2%対H群2.0%と、HP群で良好であった。
・リンパ節転移の有無、ホルモン受容体の有無別のiDFSのHRは、2017年時の発表と同様、リンパ節転移陽性群では0.72(95%CI:0.59~0.87)、またホルモン受容体陽性群では0.73(95%CI:0.59~0.92)、さらにホルモン受容体陰性群でも0.83(95%CI:0.63~1.10)と、引き続きHP群が良好であった。しかし、リンパ節転移陰性群では1.02(95%CI:0.69~1.53)で、6年iDFS率もHP群95.0%対H群94.9%と差がなかった。
・心機能イベントについては、HP群で0.8%、H群で0.3%と安全性に大きな問題はなかった。

 SABCS2019のプレスリリースでPiccart氏は、「今回の解析により、HER2陽性乳がん患者の術後療法におけるトラスツズマブ+化学療法へのペルツズマブの追加は、さらに堅固なエビデンスとなった」と述べている。

(ケアネット)


【参考文献・参考サイトはこちら】

von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2017 Jul 13;377:122-131.

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リンパ節転移陽性の早期TN乳がん、術前にペムブロリズマブ追加でpCR改善(KEYNOTE-522)/SABCS2019

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 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前補助化学療法にペムブロリズマブを追加すると病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善したことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告されている(KEYNOTE-522試験)。12月10~14日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)では、本試験のサブグループにおけるpCR率が報告され、リンパ節転移陽性例においてもpCR率が有意に改善したことが示された。英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が発表。

 本試験は、2017年3月~2018年9月に新規に診断された21カ国の18歳以上の転移のない早期TNBC患者1,174例が対象。術前補助療法として、ペムブロリズマブ+化学療法(ペムブロリズマブ群)またはプラセボ+化学療法(プラセボ群)に2:1に無作為に割り付けた。術前補助療法後、根治的手術を実施、適応があれば放射線療法を実施した。その後、再発または許容できない毒性が発現するまで、ペンブロリズマブまたはプラセボを投与した。主要評価項目は、pCRおよび無イベント生存(EFS)。

 ESMO2019では、PD-L1の発現に関係なく、ペムブロリズマブ群(64.8%)はプラセボ群(51.2%)と比べpCR率が有意に高いことが報告された。今回のサブグループ解析ではリンパ節転移陽性例においても、ペムブロリズマブ群(64.8%)がプラセボ群(44.1%)に比べ有意に高いことが示された。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-522(Clinical Trials.gov)

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HR+乳がんへの術後化療、ゲノム解析結果に年齢も加味すべきか(MINDACT)/SABCS2019

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 ホルモン受容体(HR)陽性乳がんにおいて、多重遺伝子解析を用いた術後化学療法の適応有無の判断に、年齢も考慮に入れる必要がある可能性が示唆された。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、ベルギー・ブリュッセル自由大学のMartine J. Piccart氏らによるMINDACT試験の計画外サブグループ解析の結果が発表された。

 多重遺伝子解析結果と年齢、化学療法の適応の関係については、TAILORx試験の2次分析からの報告がある1)。MINDACT試験で定義された臨床リスクとの統合に基づく解析が行われ、21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)による高再発スコア(高RS;26〜100点)は、40〜50歳の女性における高臨床リスクおよびRS16~20、または臨床リスクとは独立してRS21~25に相当する可能性が示唆され、9年時の遠隔再発リスクにおける化学療法追加の無視できないベネフィットが示された。

 今回の報告は、上記の結果を受けて計画外に実施されたMINDACT試験のサブグループ解析による。MINDACT試験は、HR陽性HER2陰性乳がん患者を対象に、術後補助化学療法の対象の選択において、Adjuvant! Onlineに基づく臨床リスク(c)と70遺伝子アッセイ(Mammaprint)に基づくゲノムリスク(g)の臨床的有用性を前向きに評価する無作為化第III相試験。本解析は無作為化によって割り当てられた治療群(化学療法ありまたは化学療法なし)ごとに行われ、MINDACT試験の主要評価項目が使用された(5年時の無遠隔転移生存率[DMFS])。

 主な結果は以下のとおり。

・登録された乳がん患者6,693例のうち、HR陽性は5,402例(81.7%)。
・そのうち、臨床リスクが高く(cH)/ゲノムリスクが低い(gL)のは1,358例で、年齢別の内訳は40歳未満が53例、40~50歳が411例、50歳超が894例であった。
・40歳未満のグループはイベント発生が少なく(2例)、結果は示されなかった。
・40~50歳の399例、50歳超の865例が化学療法ありまたは化学療法なしの両群に無作為に割り付けられた。
・腫瘍サイズの中央値は、両年齢層で2.2cmであった(T1/T2は40~50歳:35.9%/58.4%、50歳超:41.2%/55.5%)。リンパ節転移の有無は、両年齢層の約半数で陰性であった(40~50歳:50.9%、50歳超:51.8%)。大多数の患者がグレード2またはグレード3の腫瘍を有していた(40〜50歳:グレード2が63.9%/グレード3が26.6%、50歳超:66.6%/26.9%)。
・40~50歳では、化学療法ありの203例中8例でイベントが発生し、Kaplan-Meier法による5年DMFSは96.2%(95%信頼区間[CI]:91.5~98.3)。化学療法なしの196例中16例でイベントが発生し、5年DMFSは92.6%(95%CI:87.7~95.7)であった。
・50歳超では、化学療法ありの425例中23例でイベントが発生し、5年DMFSは95.2%(95%CI:92.4~97.0)。化学療法なしの440例中23例でイベントが発生し、5年DMFSは95.4%(95%CI:92.8~97.1)であった。

 研究者らは、閉経後の患者は主にアロマターゼ阻害薬が投与されており、若い女性では補助内分泌療法として主にタモキシフェンが投与され、LHRHアナログが投与されていたのは7.0%のみであったことを明らかにした。本解析のイベント数の少なさと信頼区間の幅の広さ、計画外のサブグループ解析であることの限界に触れたうえで、それにもかかわらずTAILORx試験と同様の傾向が示され、(おそらく閉経前に分類される)40〜50歳およびcH/gLリスクの患者において、タモキシフェン単独では過小治療となる可能性が示唆されたと結論づけている。

 また、化学療法を追加することによるベネフィットが年齢依存性となる理由として、卵巣機能抑制(OFS)によるものである可能性を指摘。ただし、最適な内分泌療法(すなわち、OFS+タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬など)の場合の化学療法の付加価値は、MINDACTまたはTAILORx試験の結果で評価することはできず、さらなる研究が必要としている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1) Sparano JA, et al. N Engl J Med. 2019 Jun 20;380:2395-2405.

2) MINDACT試験(Clinical Trials.gov)

3) SABCS 2019プレスリリース

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転移性脊髄圧迫への放射線療法、単回照射vs.分割照射/JAMA

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 固形がん患者のがん転移に伴う脊柱管圧迫に対する放射線療法において、単回照射は5日間分割照射と比較し、主要評価項目である8週時の歩行に関して非劣性基準を満たさなかった。ただし、信頼区間の下限が非劣性マージンと重なっており、単回照射の臨床的重要性の解釈には留意すべき点もあることが示された。英国・Mount Vernon Cancer CentreのPeter J. Hoskin氏らが、多施設共同非劣性無作為化臨床試験「The single-fraction radiotherapy compared to multifraction radiotherapy trial:SCORAD試験」の結果を報告した。がんの骨転移等による脊髄圧迫は、可動性の維持や痛みの軽減のため放射線療法で管理されるが、これまで標準照射レジメンはなかった。JAMA誌2019年12月3日号掲載の報告。

約690例を単回照射と5分割照射に無作為化、8週時の歩行状態を比較

 研究グループは、英国42施設およびオーストラリア5施設の放射線治療センターにおいて、脊髄または馬尾圧迫を有する転移のあるがん患者で平均余命が8週超あり同部位に放射線治療歴がない686例を、単回照射群(8Gy単回照射、345例)または分割照射群(20Gyを5分割連続5日間照射、341例)に無作為化した。登録期間は2008年2月~2016年4月、最終追跡調査は2017年9月であった。


 主要評価項目は、治療後8週時の歩行状態で、4段階のうちGrade1(補助具なしで歩行可能および筋力スケールが5段階のうちGrade5)またはGrade2(補助具ありで歩行可能または筋力スケールがGrade4)とし、群間差の非劣性マージンを-11%に設定した。また、副次評価項目として、1、4および12週時の歩行状態と全生存期間などを評価した。

8週時の歩行状態がGrade1/2の割合は69.3% vs.72.7%、非劣性基準を満たさず

 無作為化された686例(年齢中央値70歳[四分位範囲:64~77]、男性503例[73%]、前立腺がん44%、肺がん19%、乳がん12%)のうち、主要評価項目の解析対象は342例(49.8%)であった(255例が8週の評価前に死亡)。
 8週時に歩行状態がGrade1またはGrade2を達成した患者の割合は、単回照射群69.3%(115/166例)、分割照射群72.7%(128/176例)であった(群間差:-3.5%、片側95%信頼区間[CI]:-11.5~∞、非劣性のp=0.06)。

 一方、副次評価項目である各評価時の歩行状態がGrade1またはGrade2を達成した患者の割合は、単回照射群と分割照射群でそれぞれ、1週時63.9% vs.64.3%(群間差−0.4%、片側95%CI:-6.9~∞、非劣性のp=0.004)、4週時66.8% vs.67.6%(群間差−0.7%、片側95%CI:-8.1~∞、非劣性のp=0.01)、12週時71.8% vs.67.7%(群間差4.1%、片側95%CI:-4.6~∞、非劣性のp=0.002)であった。また、12週時の全生存率は単回照射群50%、分割照射群55%であった(層別化ハザード比:1.02、95%CI:0.74~1.41)。

 解析された他の副次評価項目は、群間差が有意差なしまたは非劣性基準を満たさなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Hoskin PJ, et al. JAMA. 2019;322:2084-2094.

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乳がん患者の肥満、化学療法のRDIに影響/JAMA Oncol

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 化学療法は体表面積や体重で投与量を決定することが多いが、筋肉や脂肪組織の量および分布といった体組成が耐性やアドヒアランスと関連すると考えられている。今回、米国Kaiser PermanenteのElizabeth M. Cespedes Feliciano氏らは、体組成がアントラサイクリンおよびタキサンベースの化学療法のRelative Dose Intensity(RDI)や血液毒性と関連しているかどうかを評価した。その結果、内臓や筋肉内の脂肪過多が低RDIと関連し、さらにRDIの低下が肥満と乳がん生存率低下との関連を一部媒介することが示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2019年12月5日号に掲載。

 著者らは、Kaiser Permanente Northern Californiaで電子医療記録データを前向きに収集して観察コホート研究を実施した。本研究の参加者は、2005年1月1日~2013年12月31日に乳がんと診断され、アントラサイクリンおよびタキサンベースの化学療法で治療された転移のない乳がん女性1,395例。データ解析は2019年2月25日~9月4日に行った。診断時にCTスキャンにより、筋肉内脂肪、内臓脂肪、皮下脂肪および骨格筋を調べた。主要評価項目は低RDI(0.85未満)で、RDIは点滴記録から化学療法のレジメン用量に対する実際の注入量の割合から算出した。血液毒性は臨床検査値から評価した。全死亡および乳がん死亡との関連は、年齢および体表面積で調整されたロジスティック回帰モデルと、年齢、人種/民族、肥満、チャールソン併存疾患指数スコア、腫瘍Stageとサブタイプで調整されたCox比例ハザードモデルを用いた。媒介割合は差分法で計算した。

 主な結果は以下のとおり。

・参加した乳がん女性1,395例の診断時の平均(SD)年齢は52.8(10.2)歳であった。
・内臓脂肪(SD当たりのオッズ比[OR]:1.19、95%CI:1.02~1.39)および筋肉内脂肪(SD当たりのOR:1.16、95%CI:1.01~1.34)が増加すると、低RDI(0.85未満)のオッズが上昇した。
・筋肉量が多いと血液毒性のオッズが低下した(SD当たりのOR:0.84、95%CI:0.71~0.98)。
・RDIが0.85未満の場合、死亡リスクが30%上昇した(HR:1.30、95%CI:1.02~1.65)。
・低RDIは、肥満と乳がん死亡率との関連を部分的に説明した(媒介割合:0.20、95%CI:0.05~0.55)。

 著者らは「化学療法の有効性を減少させうる血液毒性およびそれによる投与延期や投与量減少がおこりやすい患者の特定に、体組成が役立つかもしれない」と考察している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Elizabeth M, et al. JAMA Oncol. 2019 Dec 5.[Epub ahead of print]

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