HBOC予防的切除の保険適用後、医師に求められている役割(中村清吾氏)第4回

  遺伝子パネル検査の広がりやオラパリブの適応拡大により、遺伝性腫瘍の診療は大きな変化の中にあります。HBOCの予防的切除が保険適用となって約1年、昭和大学病院 乳腺外科教授/昭和大学病院ブレストセンター長の中村清吾氏に、今、現場の医師に求められる対応についてお話いただきます。
  第4回では、 ゲノム検査の今後の広がりについてお伺いしました。

 

ゲノム検査の今後の広がりについて

 

[演者紹介]

中村 清吾(なかむら せいご)

[所属・役職]
昭和大学病院 乳腺外科教授/昭和大学病院ブレストセンター長

[学会・役職]
日本乳癌学会理事長
日本外科学会理事
NPO法人日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)監事
NPO法人日本HBOCコンソーシアム理事長
NPO法人日本乳がん情報ネットワーク代表理事
日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会副理事長
日本癌治療学会代議員
日本医学会評議員
Breast Surgery International (BSI)カウンシルメンバー

全がん・がん種別の10年生存率を初集計/国立がん研究センター

提供元:CareNet.com

 国立がん研究センターは、全国のがん診療連携拠点病院等から収集した院内がん登録情報を用いて、2008年に診断された患者の10年生存率を発表した。がん診療連携拠点病院等をはじめとする国内240施設約24万例の登録データを集計したもので、10年生存率が発表されるのは初、既存の10年生存率集計としては最大規模となる。

 がん種別には、胃がん、大腸がん、肝細胞がん・肝内胆管がん、小細胞肺がん・非小細胞肺がん、女性乳がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮頸がん・子宮内膜がん、膀胱がん。肺がんや子宮がんをさらに分類した上で、Stage別のデータも集計された。

 全がんの10年相対生存率は59.4%、がん種別で最も10年生存率が高かったのは前立腺がん(98.7%)、女性の乳がん(87.5%)、子宮内膜がん(83.0%)が続いた。最も低かったのは膵臓がん(6.5%)、続いて小細胞肺がん(9.1%)、肝内胆管がん(10.9%)となった。

 リリースでは、これまで治癒の目安として5年生存率が用いられることが多かったが、肝細胞がんなど、がんによっては5年以降も長期的にフォローアップしていくことが必要、としている。

誰もが使える「がん登録生存率集計結果閲覧システム」を公開

 あわせて、3年・5年生存率データを簡易に検索できる「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」が公開された。

 このシステムでは、胃がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、肝がん(肝細胞がん・肝内胆管癌)、肺がん(小細胞肺がん・非小細胞肺がん)、乳がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、膀胱がん、甲状腺乳頭・濾胞がん、甲状腺未分化がん、甲状腺髄様がん、胆嚢がん、喉頭がん、腎がん、腎盂尿管がん、卵巣がんについてがん種類の生存率を検索できる。さらに詳細条件として性別、Stage(全体or Ⅳ期)、年齢、手術の有無の条件を設定したうえで、細かく調べることもできる。

(ケアネット 杉崎 真名)


【参考文献・参考サイトはこちら】

がん診療連携拠点病院等 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム初公開 /国立がん研究センター

院内がん登録生存率集計結果閲覧システム

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難治性乳がん・膵がんに有効なsiRNAの開発に成功/東大医科研

提供元:CareNet.com

 東京大学医科学研究所は、2021年4月20日、記者会見にて同研究グループが、乳がん、膵がんで発現が亢進している転写因子PRDM14遺伝子を標的とするsiRNA核酸抗がん医薬を開発したと発表。

 この核酸医薬候補は新規の薬効成分であるPRDM14遺伝子配列に特異性の高いキメラ型 siRNA(一部をDNAに置換)と核酸の病変部位への送達を可能にしたYshaped block co-polymer(YBC)から構成され、非臨床試験において腫瘍径の増大の抑制を認め、遠隔転移 モデルにおいて、転移巣の減少、生存期間の延長が認められた。

 PRDM14分子はがん組織にのみ発現し、乳がんの6割、膵がんでは4割に発現し、がん幹細胞性形質(抗がん剤耐性、転移・浸潤、血管新生等)を腫瘍細胞に付与することが見出されていた。

 一方、PRDM14 siRNAは、安全性・血中安定性が高く十分なRNA干渉効果が得られる「キメラ型siRNA」とし、off target効果を排除した治療用配列を選定した。さらに、新たに開発された核酸ナノキャリアであるYBCを用いることで、がん組織への高い集積性を示すことに成功した。

 難治性トリプルネガティブ乳がん、膵がんのPRDM14陽性動物モデルで、同siRNA核酸医薬候補の治療効果を評価した結果、腫瘍径の増大を抑制。その効果は抗がん剤との併用(乳がんはドセタキセル、膵がんはゲムシタビン)で相乗的な治療効果を呈した 。さらに、遠隔転移モデルでは、転移巣の減少、生存期間の延長が認められた。また、安全性試験 (非臨床試験)において、重篤な有害事象は認められなかった。

 この成果を受け、がん研究会有明病院において、治癒的切除不能または遠隔転移を有する再発乳がんに対して、第I相の医師主導治験が現在進行中である。

 試験の内容はInternational Journal of Cancer誌2021年4月13日オンライン版に発表された。

(ケアネット 細田 雅之)


【原著論文はこちら】

Hiroaki Taniguchi H, et al.Int J Cancer. 2021 Mar 30.[Epub ahead of print]

【参考文献・参考サイトはこちら】

東京大学医科学研究所プレスリリース

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ファイザー製新型コロナワクチン、免疫チェックポイント阻害薬投与がん患者での安全性

提供元:CareNet.com

 全身薬物療法で治療後もしくは治療中のがん患者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡リスクが高いため、ワクチン接種の優先度が高いグループと見なされる。しかし、がん患者におけるワクチンの安全性および有効性データはない。また、一部の専門家から、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与患者において、ワクチンで免疫関連有害事象を誘発または増強する可能性が指摘されている。今回、イスラエル・Tel Aviv Sourasky Medical CenterのBarliz Waissengrin氏らは、ICIで治療されたがん患者におけるファイザー社製ワクチン(BNT162b2 mRNAワクチン)の安全性について調査した。Lancet Oncology誌オンライン版2021年4月1日号に掲載。

 Tel Aviv Sourasky Medical CenterおよびBnei-Zion Medical Centerでは、積極的治療を受けているがん患者すべてに対し、病期、PS、余命に関係なくワクチン接種を推奨した(SARS-CoV-2感染歴のある患者、感染している患者、免疫関連有害事象が制御されていない患者は除外)。本調査では、この2施設において、ICIで治療された患者におけるBNT162b2mRNAワクチンの有害事象を対照群(性別および生まれ年をマッチさせた健康成人)と比較した。2021年1月11日~2月25日に、ICIで治療されていたがん患者170例のうち、副反応を恐れて接種を拒否した33例を除いた137例が初回のワクチン接種を受け、うち134例が2回目のワクチン接種を受けた。ワクチンは1日目と21日目に標準用量で接種し、アンケートは電話で行った。

 主な結果は以下のとおり。

・初回投与後に3例が死亡し、うちCOVID-19による死亡が1例、がんの進行による死亡が2例だった。初回投与後に最も多かった有害事象は注射部位の痛みで、134例中28例(21%)にみられた。全身性では倦怠感(4%)、頭痛(2%)、筋肉痛(2%)、悪寒(1%)などがみられた。
・2回目の投与後の観察期間中に、134例中4例(3%)が入院した(がん関連の合併症3例、発熱1例)が、全例が治療後に退院した。初回より2回目のほうが、全身性および局所性の有害事象が多く観察された。主な有害事象は、局所性では注射部位の痛み(63%)、局所発疹(2%)、局所腫脹(9%)で、全身性では筋肉痛(34%)、倦怠感(34%)、頭痛(16%)、発熱(10%)、悪寒(10%)、消化器合併症(10%)、インフルエンザ様症状(2%)で、入院または特別な介入は必要な例はなかった。
・がん治療はICIのみが116例(87%)、ICIと化学療法の併用が18例(13%)だったが、全身性の有害事象はどちらも同程度だった。免疫関連有害事象の新規発現、既存の免疫関連有害事象の悪化はみられなかった。
・筋肉痛はがん患者で有意に多かったが、それ以外はがん患者群と対照群で類似していた。両群ともワクチン接種後に免疫関連筋炎はみられなかった。
・ワクチン接種前に免疫関連有害事象を報告していた患者(54%)と報告しなかった患者で、2回目接種後に全身性の有害事象を報告した患者数に有意な差はなかった(p=0.94)。過去に免疫関連有害事象を経験した患者でもワクチン関連有害事象は軽度で、入院や治療中止に至らなかった。

 著者らは、「これらのデータは、ICIで治療されたがん患者におけるBNT162b2 mRNAワクチンの短期的な安全性を示唆している」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Waissengrin B, et al. Lancet Oncol. 2021 Apr 1.[Epub ahead of print]

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海外研修留学便り 【米国留学記(大場 崇旦氏)】第2回

[ レポーター紹介 ]
大場  崇旦(おおば たかあき )

2009年3月 信州大学医学部医学科卒業
2009年4月 JA長野厚生連長野松代総合病院初期臨床研修
2011年4月 信州大学医学部外科学教室医員
2013年4月 信州大学医学部外科学教室乳腺内分泌外科学分野医員
2017年3月 信州大学大学院医学系研究科修了 博士号(医学)取得
2018年8月 Roswell Park Comprehensive Cancer Center, Center for immunotherapy, Postdoctoral fellow
2020年8月 信州大学医学部外科学教室乳腺内分泌外科学分野診療助教

 外科医としてキャリアをスタート後、米国Roswell Park Comprehensive Cancer Centerに基礎研究留学され、現在は帰国して信州大学外科学教室で乳腺内分泌外科学分野の診療助教として勤務する大場 崇旦氏に、日米の研究環境の違い、帰国後のキャリアプランニングなどについてレポートいただきます。第2回では留学直後、学生時代は避けがちだったという免疫学に英語で真っ向から向き合った苦労や、実際の研究内容についてお伺いしました。

 

がん免疫研究に特化したラボで研究生活スタート、最初の関門となったのは…

 留学先のlabであるRoswell Park Conmprehensive Cancer Center, Center for immunotherapyはその名の通り、がん免疫の研究に特化した研究室でした。免疫チェックポイント阻害薬の登場以降、がん治療をrevolutionizeしたがん免疫療法は米国でもhot topicとなり、悪性黒色腫や肺がんといった免疫療法が効きやすいがん腫に対する研究はものすごい勢いで進み、多くの知見が得られていますが、留学した当時の2018年は、乳がんや膵がんといった免疫療法抵抗性のいわゆる“cold tumor”に対する研究がまさにがん免疫研究のhot topicとなっているように感じました。

 しかし、ここにきて学生時代から免疫学というと、なんとなく難しそうだなと避けてしまい、しっかり勉強してこなかったことを後悔したものです。免疫学の「め」の字も知らずに渡米してしまったようなものですから、留学当初はとても苦労しました。おそらく日本語で考えても理解が難しい実験系を、英語で説明し、説明され、考え、自分で行えるようになるまでには本当に大変でしたが、数ヵ月経ったころからはなんとか自分ひとりでできる実験が増えてきて、自分主導のprojectも任されるようになりました。

 

無我夢中で取り組む日々、良好な結果に思わず手が震えた経験も

 任された研究projectは、“抗原提示能力に特化したBatf3-dependent conventional type1 dendritic cells(cDC1)という特殊な樹状細胞を用いて、免疫療法抵抗性の乳がんを免疫療法反応性に変える”ことを目的とした研究で、臨床にも繋がりうるとても魅力的なprojectと感じました。

  実際には乳がんマウスモデルを用いて、Flt3LというcDC1への分化に必要なサイトカインを腫瘍内に打ち込み、cDC1を腫瘍内誘導し、放射線治療や補助シグナルの刺激でそれらを活性化することで腫瘍特異的な免疫を誘導し、免疫チェックポイント阻害剤耐性を解除する、という内容の研究でした。初めて、この治療法をマウスに試して、腫瘍の大きさを確認に行った日のことは今でも鮮明に覚えています。本当にこれで腫瘍が小さくなるかなぁ、と半信半疑でラボに行きましたが、実際にマウスを手に取ってみると明らかに腫瘍が小さくなっており、思わず 「すごい…!」、と動物舎で声を出してしまい、手も震えました。

  そこから先は、とんとん拍子で解析が進み、サイトカインの注入は毎日しなければならなかったので、平日、休日問わずにラボにいくのが当たり前にはなってしまいましたが、毎日結果を見るのが楽しみで、2年間の研究生活は本当に楽しく、充実したものであったと思います。無事に論文もpublishすることができました(Nat Commun. 2020 27;11(1):5415)。留学当初の苦労など忘れ、無我夢中で研究に取り組めた2年間は本当に幸せだったと思います。

 


非浸潤性乳がん、浸潤性がんへの進展リスク因子は?日本人患者の分析から

提供元:CareNet.com

 乳房の非浸潤性乳がん(DCIS)は、浸潤性乳がん(IDC)の前駆病変と臨床的には位置づけられ、DCISが見つかった場合、現在では一様に切除手術が行われている。しかしこのDCIS集団中には、真に浸潤性がんに進展するDCIS(真のDCIS 群)だけでなく、浸潤性がんには進展しない症例が含まれることが明らかになってきており、両群を区別する因子の同定が求められている。東京大学学大学院新領域創成科学研究科の永澤 慧氏らは、DCISの進展に関係する候補因子として、臨床病理学的因子に加え、遺伝子因子としてGATA3遺伝子の機能異常を同定した。Communications biology誌オンライン版2021年4月1日号の報告より。

 主な結果は以下のとおり。

・2007~2012年に聖マリアンナ医科大学で手術を受けたDCIS患者431例(年齢中央値:48歳、追跡期間中央値:6.1年、ER陽性:87.0%/HER2陽性:18.8%、4.6%が追跡期間中にIDCに進行)のデータが分析された。その結果、年齢(45歳未満)とHER2陽性が浸潤性がん再発と関連するリスク因子であると示された。
・21症例のDCIS原発病変と再発前後のペア検体を用いた全エクソンシークエンスを実施した結果、GATA3遺伝子変異が浸潤性がんへの進展に関与する遺伝子候補とされた。
・この結果を、全エクソンシークエンスの結果より作成した180遺伝子ターゲットパネルを用いて、72例のターゲットシークエンスを行い確認した(オッズ比[OR]:7.8、95%信頼区間[CI]:1.17~88.4)。
GATA3遺伝子変異をもつDCIS症例の空間トランスクリプトーム解析を行った結果、GATA3遺伝子変異をもつDCIS細胞では、異常を持たない細胞に比べて上皮間葉転換(EMT)や血管新生などのがん悪性化関連遺伝子の活性化を認め、浸潤能を獲得していることが明らかとなった。
GATA3遺伝子変異をもつDCIS細胞におけるPgR(プロゲステロンレセプター)の発現量を確認したところ、有意にその発現が低下していることがわかった。
・ER陽性症例をPgRの発現レベルで2群にわけて再発予後を検討したところ、ER陽性かつPgR陰性のDCISでは有意に予後が悪いことが明らかになった(ハザード比[HR]:3.26、95%CI:1.25~8.56、p=0.01)。
・これらの結果から、ER陽性DCISにおけるGATA3遺伝子変異は、PgR発現がそのサロゲートマーカーになる可能性が示唆された。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Nagasawa S, et al. Commun Biol. 2021 Apr 1;4:438. [Epub ahead of print]

【参考文献・参考サイトはこちら】

国立がん研究センタープレスリリース:非浸潤性乳がんの進展に関わるゲノム科学的リスク因子を同定―治療層別化のための新たな診断基準になる可能性―(2021年4月1日)

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オマリズマブ、免疫チェックポイント阻害薬および抗HER2薬のそう痒症を改善/Ann Oncol

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 IgE阻害薬オマリズマブ(商品名:ゾレア)はアトピー性皮膚炎、蕁麻疹などのそう痒症に有効である。がん領域におけるそう痒関連皮膚有害事象(paCAE)は、免疫チェックポイント阻害薬や抗HER2薬で多くみられる。これらの薬剤による難治性paCAEを伴うがん患者に対してオマリズマブを評価する多施設後ろ向き研究の結果が発表された。

・対象:免疫チェックポイント阻害薬または抗HER2薬によるGrade2〜3の掻痒を有し、局所ステロイドと1つ以上の全身療法に抵抗性の患者
・介入:オマリズマブを月1回投与
・主要評価項目:paCAEのGrade0〜1への改善

 主な結果は以下のとおり。

・34例(女性50%、年齢中央値67.5歳)、がん治療関連paCAE(免疫チェックポイント阻害薬71%、抗HER2薬29%)に対するオマリズマブ投与を受けた。
・対象は、すべて固形腫瘍(乳房29%、泌尿生殖器29%、肺15%、その他26%)で、64%に蕁麻疹が認められた。
・オマリズマブの奏効は34例中28例(82%)に認められた。
・paCAEの支持療法として経口コルチコステロイドを投与された患者の割合は、50%から9%に減少した(P<0.001)。
・皮膚毒性のために腫瘍治療を中断した患者は31%(32例中10例)であった。
・オマリズマブに関連するアナフィラキシーまたは過敏反応の報告は認められなかった。

(ケアネット 細田 雅之)


【原著論文はこちら】

Barrios DM, et al. Ann Oncol. 2021 Mar 3.[Epub ahead of print]

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非浸潤性乳がん患者における浸潤性がんのリスク

提供元:CareNet.com

 非浸潤性乳がん(BCIS)患者は浸潤性乳がんリスクが高いという報告があるが、乳がんを除く浸潤性がんの潜在リスクに関する報告は一致していない。今回、スイス・チューリッヒ大学のNena Karavasiloglou氏らが、組織的なマンモグラフィ検診プログラムのないチューリッヒ州におけるBCIS患者のデータを調査したところ、BCIS患者は一般集団に比べ、浸潤性乳がんは6.85倍、乳がんを除く浸潤性がんは1.57倍、リスクが高いことが示された。また、70歳以上でのBCIS診断が乳がんを除く浸潤性がんのリスクと関連していたが、浸潤性乳がんとは関連していなかった。Frontiers in Oncology誌2021年3月18日号に掲載。

 2003~15年に初めてのがんの診断が原発性のBCISであったチューリッヒ州在住の女性1,082例のデータを調査した。原発性のBCIS患者における浸潤性乳がんまたは乳がんを除く浸潤性がんのリスクを、成人女性集団の対応リスクと比較するため、標準化罹患比(SIR)を計算した。SIRは全体および患者と腫瘍の特徴ごとに計算した。Cox比例ハザード回帰モデルを使用し、その後の浸潤性乳がんまたは乳がんを除く浸潤性がんの潜在的な危険因子(診断時の年齢、治療など)を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・BCIS患者は一般集団と比較して、浸潤性乳がんと診断されるリスクが6.85倍(95%CI:5.52~8.41)高かった。また、乳がんを除く浸潤性がんのリスクは1.57倍(同:1.12~2.12)高かった。
・SIRは、浸潤性乳がんおよび乳がんを除く浸潤性がんのどちらも、BCIS診断時50歳未満の患者で高かった。
・70歳以上でのBCIS診断は、その後の乳がんを除く浸潤性がん診断と有意に関連していた。

 これらの結果は、これまで報告されているBCIS患者のがんリスク増加を裏付けている。著者らは、「今後の研究が、BCISに続く浸潤性がんの危険因子を確立し、この集団における集中的なモニタリングの必要性を強調し、遠隔転移を全身療法で予防可能なBCIS患者を区別するのに役立つだろう」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Karavasiloglou N, et al. Front Oncol. 2021;11:606747.

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非浸潤性乳がん患者、乳がん以外の浸潤性がんリスクが1.6倍

提供元:CareNet.com

 非浸潤性乳がん(BCIS)患者は浸潤性乳がんリスクが高いという報告があるが、乳がんを除く浸潤性がんの潜在リスクに関する報告は一致していない。今回、スイス・チューリッヒ大学のNena Karavasiloglou氏らが、組織的なマンモグラフィ検診プログラムのないチューリッヒ州におけるBCIS患者のデータを調査したところ、BCIS患者は一般集団に比べ、浸潤性乳がんは6.85倍、乳がんを除く浸潤性がんは1.57倍、リスクが高いことが示された。また、70歳以上でのBCIS診断が乳がんを除く浸潤性がんのリスクと関連していたが、浸潤性乳がんとは関連していなかった。Frontiers in Oncology誌2021年3月18日号に掲載。

 2003~15年に初めてのがんの診断が原発性のBCISであったチューリッヒ州在住の女性1,082例のデータを調査した。原発性のBCIS患者における浸潤性乳がんまたは乳がんを除く浸潤性がんのリスクを、成人女性集団の対応リスクと比較するため、標準化罹患比(SIR)を計算した。SIRは全体および患者と腫瘍の特徴ごとに計算した。Cox比例ハザード回帰モデルを使用し、その後の浸潤性乳がんまたは乳がんを除く浸潤性がんの潜在的な危険因子(診断時の年齢、治療など)を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・BCIS患者は一般集団と比較して、浸潤性乳がんと診断されるリスクが6.85倍(95%CI:5.52~8.41)高かった。また、乳がんを除く浸潤性がんのリスクは1.57倍(同:1.12~2.12)高かった。
・SIRは、浸潤性乳がんおよび乳がんを除く浸潤性がんのどちらも、BCIS診断時50歳未満の患者で高かった。
・70歳以上でのBCIS診断は、その後の乳がんを除く浸潤性がん診断と有意に関連していた。

 これらの結果は、これまで報告されているBCIS患者のがんリスク増加を裏付けている。著者らは、「今後の研究が、BCISに続く浸潤性がんの危険因子を確立し、この集団における集中的なモニタリングの必要性を強調し、遠隔転移を全身療法で予防可能なBCIS患者を区別するのに役立つだろう」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Karavasiloglou N, et al. Front Oncol. 2021;11:606747.

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転移乳がんにおけるBRCA1/2変異、予後への影響は?/JCO

提供元:CareNet.com

 転移を有する乳がん患者において、がん感受性遺伝子の生殖細胞系列変異の頻度や、これらの変異の臨床的関連性は不明である。今回、ドイツ・University Hospital ErlangenのPeter A. Fasching氏らは、転移を有する乳がん患者の前向きコホートで、BRCA1BRCA2を含む乳がん素因遺伝子変異の頻度と変異患者の臨床的特徴を調べ、変異が転帰に及ぼす影響を検討した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2021年3月29日号に掲載。

 本研究の対象は、PRAEGNANTレジストリに登録された転移を有する乳がん患者2,595例。生殖細胞系列DNAのがん素因遺伝子変異を評価し、乳がん素因遺伝子変異の頻度を転移のない乳がん患者の前向きレジストリの結果と比較した。変異の状況について腫瘍の特徴、無増悪生存期間、全生存期間との関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・12の乳がん素因遺伝子の生殖細胞系列変異が271例(10.4%)に認められ、BRCA1もしくはBRCA2の変異が129例(5.0%)に認められた。
・脳転移の割合は、BRCA1変異キャリア(27.1%)のほうが非キャリア(12.8%)より高かった。
・本レジストリの患者(転移のある乳がん患者)は、転移のない乳がん患者に比べて変異の割合が有意に高かった(10.4% vs.6.6%、p<0.01)。
・転移のある乳がん患者の無増悪生存期間や全生存期間に、変異による有意な変化はなかった。

 著者らは、「転移のある乳がん患者において、変異キャリアと非キャリアの予後は類似していたが、腫瘍の特徴でみられた違いは治療および今後の分子標的療法の研究に影響する」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Fasching PA, et al. J Clin Oncol. 2021 Mar 29;JCO2001200. [Epub ahead of print]

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