HR+HER2-転移・再発乳がん、ベバシズマブ+パクリタキセル導入療法後に内分泌療法+カペシタビン維持療法の戦略で長期のOSを確認/日本臨床腫瘍学会

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 ホルモン受容体陽性(HR+)HER2 陰性(HER2-)転移・再発乳がんに対するベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後の維持療法の有効性を検討した国内多施設無作為化第II相試験(KBCSG-TR1214)において、内分泌療法+カペシタビン併用維持療法が内分泌療法単独に比べ無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことがすでに報告されている。今回、この治療戦略の全生存期間(OS)への影響を評価するために、本試験を事後解析した結果について、大阪大学の吉波 哲大氏が第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。

[KBCSG-TR1214試験]
・対象:HR+HER2-の遠隔転移があるか手術適応とならない再発乳がん(PS 0または1)で、転移・再発がんへの化学療法歴が1レジメン以下の患者
・方法:導入化学療法としてベバシズマブ+パクリタキセルを4~6サイクル実施し、病勢進行を認めなかった90例を、維持療法として内分泌療法+カペシタビン(EC群)または内分泌療法(E群)に無作為に割り付けた。維持療法で病勢進行した場合は、ベバシズマブ+パクリタキセル再導入療法を実施した。
・評価項目:
[主要評価項目]維持療法のPFS
[副次評価項目]無作為化からのTime to failure of strategy(TFS)、導入療法からの全生存期間(OS)、再導入療法からのPFSなど

 事前に計画された解析には無作為化に至らなかった26例は含まれておらず、今回は、ベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法を開始した116例(E群46例、EC群44例、非無作為化26例)のデータを解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・116例全例におけるOS中央値は34.5ヵ月(95%CI:28.0~43.2)だった。
・主に病勢進行のため無作為化されなかった26例におけるOS中央値は15.7ヵ月(95%CI:7.75~30.8)で、E群34.9ヵ月(同:23.3~NA)、EC群43.8ヵ月(同:33.7~NA)より短い傾向があった。
・本治療を1次治療で受けた102例のOS中央値は36.0ヵ月(95%CI:29.2~46.2)、2次治療で受けた14例では25.7ヵ月(同:17.6~37.5)だった。

 本解析から、ベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後に維持療法を実施する治療戦略により、導入化学療法での病勢進行例を含めても長期のOSが達成されることが示された。

(ケアネット 金沢 浩子)


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早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブによるEFS、アジア人での解析(KEYNOTE-522)/日本臨床腫瘍学会

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 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象に、術前補助療法としてペムブロリズマブ+化学療法併用を化学療法単独と比較、さらに術後補助療法としてペムブロリズマブとプラセボを比較した第III相KEYNOTE-522試験において、4回目の中間解析までにペムブロリズマブ群が術前補助療法による病理学的完全奏効率(pCR)および無イベント生存期間(EFS)を有意に改善した。今回、本試験のアジア人集団の 4 回目の中間解析結果について、北海道大学/国立病院機構北海道がんセンターの高橋 將人氏が、第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。

[KEYNOTE-522試験]
・対象:治療歴がなく、原発巣の腫瘍径2cm以下でリンパ節転移あり(T1c、N1~2)またはリンパ節転移に関係なく腫瘍径2cm超(T2~4d、N0~2)で、遠隔転移がない(M0)ECOG PS 0/1のTNBC患者
・試験群:術前に化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)+ペムブロリズマブ(3週ごと)、術後にペムブロリズマブ(3週ごと)を9サイクルあるいは再発または許容できない毒性発現まで投与(ペムブロリズマブ群)
・対照群: 術前に化学療法+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群)
・評価項目:
[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS
[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、全生存期間(OS)、PD-L1陽性例におけるpCR・EFS・OS、安全性

 アジア人集団における主な結果は以下のとおり。

・アジア(韓国、日本、台湾、シンガポール)から216 例が組み入れられた(ペムブロリズマブ群136例、プラセボ群80例)。
・データカットオフ(2021年3月23日)時点で、観察期間中央値は39.7ヵ月(範囲:10.0~46.9)、ペムブロリズマブ群およびプラセボ群でEFSイベントは13例(9.6%)および20 例(25.0%)で観察された。
・EFSのハザード比(HR)は、全集団の0.63(95%信頼区間[CI]:0.48~0.82)に対し、アジア人集団では0.35(95% CI:0.17~0.71)だった。
・術前補助療法でpCRを達成した患者と得られなかった(non-pCR)患者に分けて評価した場合、3年EFSは、pCR達成患者ではプラセボ群94.4%に対してペムブロリズマブ群100%、non-PCR患者ではプラセボ群62.8%に対してペムブロリズマブ群77.7%であった。
・安全性プロファイルは、アジア人集団において各レジメンや以前の解析と同様であった。

 高橋氏は、EFSの結果がアジア集団でより有効に見えることについて、「アジア人集団は症例数が少ないので差があるとは言えず、ただ全集団と少なくとも同等の効果が期待できると言える」と述べた。また、non-pCRの場合の術後補助療法におけるカペシタビンの使用については、「ペムブロリズマブにカペシタビンを追加するのか、ペムブロリズマブを中止してカペシタビンを投与するのかは、トランスレーショナルに検討していく必要がある」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-522試験(Clinical Trials.gov)

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がん治療のバイオシミラーのエビデンス、先発品より質が高い?/JAMA Oncol

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 がん治療における3剤の先発バイオ医薬品のバイオシミラーに関する31試験をメタ解析したところ、バイオシミラーの試験のほうが先発品の主要試験に比べ、平均症例数が多く、無作為化、二重盲検化された試験が多かった。また、すべてのがん種で先発品と有効性が同等であることが示された。米国・Brigham and Women’s HospitalのDoni Bloomfield氏らが、JAMA Oncology誌オンライン版2022年2月3日号で報告した。

 本研究では、がん治療における先発バイオ医薬品とそのバイオシミラーにおける有効性もしくは代替指標を比較した英語論文と要旨を、Embase、PubMed/MEDLINE、ClinicalTrials.govで、2021年4月18日まで系統的に検索した。母集団の大きさ、盲検化、無作為化などの試験特性について、バイオシミラーでの試験と先発品の主要試験を比較した。さらに、バイオシミラーとその先発品について、無増悪生存期間などの代替指標に対する相対的変化のリスク比を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・3剤の先発品のバイオシミラーに関する31試験(計1万2,310例)が本研究の対象となった。
・7つのサブグループすべてにおいて、有効性の代替指標に関してバイオシミラーは先発品と差がなかった。
・バイオシミラーの試験は先発品の試験(6試験、1,811例)と比べて、平均症例数が多く(397例vs.302例)、単試験/観察研究より無作為化試験が多く(100%[31/31]vs.50%[3/6])、非盲検試験より二重盲検試験が多かった(84%[26/31]vs.17%[1/6])。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Bloomfield D, et al. JAMA Oncol. 2022 Feb 3.[Epub ahead of print]

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TN乳がん1次治療におけるペムブロリズマブ+化学療法、アジア人解析結果(KEYNOTE-355)/日本臨床腫瘍学会

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 未治療の手術不能または転移を有するPD-L1 CPS 10以上のトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において、ペムブロリズマブ+化学療法はプラセボ+化学療法と比較して、全生存(OS)期間を有意に改善したことが、ESMO 2021で発表されている。同試験のアジア人サブグループの解析結果を、がん研有明病院の高野 利実氏が、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。なお本邦では、PFSを有意に改善した同試験の中間解析結果を基に、2021年8月に承認されている。

[KEYNOTE-355試験]
・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のTN乳がん(ECOG PS 0/1)
・試験群(2:1の割合で下記2群に無作為に割り付け):
ペムブロリズマブ群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)
プラセボ群:プラセボ+化学療法 
・層別化因子:化学療法の種類(タキサンかゲムシタビン/カルボプラチン)、PD-L1発現(CPS≧1かCPS<1)、術前/術後化学療法の有無
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるOSと無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性

 アジア人サブセットにおける主な結果は以下のとおり。

・データカットオフは2021年6月15日。ITT集団における追跡期間中央値は43.8ヵ月だった。
・アジア人サブセットには160例(ペムブロリズマブ群113例、プラセボ群47例)が含まれた(日本人は87例)。
・ベースライン特性を全体集団と比較すると、ECOG PS1の患者および化学療法としてタキサンの投与を受けた患者の割合が若干少なく、同クラスの化学療法歴のある患者がプラセボ群に若干多かった。
[OS中央値]
CPS≧10:ペムブロリズマブ群26.7ヵ月 vs.プラセボ群17.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.28~1.04)
全体集団では23.0ヵ月 vs.16.1ヵ月(HR:0.73、95% CI:0.55~0.95、p=0.0093)
CPS≧1:22.0ヵ月 vs.16.9ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.40~0.97)
全体集団では17.6ヵ月 vs.16.0ヵ月(HR:0.86、95% CI:0.72~1.04、p=0.0563)
ITT集団:24.1ヵ月 vs.17.2ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.39~0.84)
全体集団では17.2ヵ月 vs.15.5ヵ月(HR:0.89、95% CI:0.76~1.05)
[PFS中央値]
CPS≧10: 17.3ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.48、95% CI:0.24~0.98)
全体集団では9.7ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.66、95% CI:0.50~0.88)
CPS≧1:7.7ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.58、95%CI:0.37~0.91)
全体集団では7.6ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.75、95% CI:0.62~0.91]
ITT集団:8.8ヵ月 vs.6.7ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.44~0.99)
全体集団では7.5ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.82、95% CI:0.70~0.98)
・Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群77.9% vs.プラセボ群78.7%と全体集団と比較して若干多く報告された(全体集団では68.1% vs. 66.9%)が、安全性について全体の傾向は同様で、管理可能であった。

 高野氏は、ペムブロリズマブ群におけるベネフィットがアジア人でより大きい傾向がみられることについて、症例数の限られたサブグループ解析であり、慎重に解釈する必要があるとの見解を示しつつ、新たな臨床研究で検討すべき重要なポイントであると述べた。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-355試験(Clinical Trials.gov)

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早期TN乳がん、術前PEM+化学療法と術後PEMでEFS改善/NEJM

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 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対し、術前補助療法でペムブロリズマブ+化学療法→術後補助療法でペムブロリズマブによる治療は、術前補助療法での化学療法のみと比較して、無イベント生存期間(EFS)を有意に延長することが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏らが21ヵ国181施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「KEYNOTE-522試験」で示された。すでに本試験の最初の解析において、術前補助化学療法にペムブロリズマブを追加することで、根治的手術実施時に病理学的完全奏効(pCR)(乳房内に浸潤がんがなく、リンパ節転移陰性と定義)を得られた患者の割合が有意に増加することが報告されていた。NEJM誌2022年2月10日号掲載の報告。

術前化学療法へのPEM追加+術後PEMの有効性を、プラセボと比較

 研究グループは、未治療の早期TNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)を、ペムブロリズマブ+化学療法群とプラセボ+化学療法群に2対1の割合で無作為に割り付けた。

 ペムブロリズマブ+化学療法群では、術前補助療法としてペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、週1回)+カルボプラチン(AUC 1.5、週1回またはAUC 5、3週ごと)を4サイクル投与後、ペムブロリズマブ+シクロホスファミド(600mg/m2)+ドキソルビシン(60mg/m2)またはエピルビシン(90mg/m2)を3週ごとに4サイクル投与し、術後補助療法としてペムブロリズマブを3週ごとに9サイクル投与した。プラセボ+化学療法群では、術前補助療法でプラセボ+化学療法(同上)、術後補助療法でプラセボを投与した。

 主要評価項目は、pCRおよびEFS(無作為化から、根治的手術不能となる病勢進行、局所または遠隔再発、2次原発がんの発生、または全死因死亡までの期間と定義)とし、安全性についても評価した。

3年EFS率は84.5% vs.76.8%

 2017年3月~2018年9月に計1,174例が割り付けられた(ペムブロリズマブ+化学療法群784例、プラセボ+化学療法群390例)。

 計画されていた今回の第4回中間解析(データカットオフ日:2021年3月23日)における追跡期間中央値は39.1ヵ月(範囲:30.0~48.0)で、EFSのイベントはペムブロリズマブ+化学療法群で123例(15.7%)、プラセボ+化学療法群で93例(23.8%)に認められた。
 3年無イベント生存率は、ペムブロリズマブ+化学療法群84.5%(95%信頼区間[CI]:81.7~86.9)、プラセボ+化学療法群76.8%(72.2~80.7)であった(イベントまたは死亡のハザード比:0.63、95%CI:0.48~0.82、p<0.001)。

 有害事象は主に術前補助療法期に発現し、ペムブロリズマブおよび化学療法ですでに確立されている安全性プロファイルと一致していた。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Schmid P, et al. N Engl J Med. 2022;386:556-567.

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HER2+乳がん2次治療へのT-DXd vs.T-DM1、アジア人サブグループ解析結果(DESTINY-Breast03)/日本臨床腫瘍学会

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 DESTINY-Breast03試験の中間解析結果がESMO2021で発表され、トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移を有する乳がん(mBC)患者に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)がトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した。同試験のアジア人サブグループ解析結果を、韓国・Seoul National University HospitalのSeock-Ah Im氏が、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。

[DESTINY-Breast03試験]
・対象:トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2+mBC患者
・試験群:以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付け
 T-DXd群:3週間間隔で5.4mg/kg投与 261例
 T-DM1群:3週間間隔で3.6mg/kg投与 263例
・層別化因子:ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無
・評価項目:
[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]OS、BICRおよび治験実施医師評価による客観的奏効率(ORR)、BICR評価による奏効期間(DOR)、治験実施医師評価によるPFS、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・2021年5月21日までに15カ国から524例が無作為化され、うち309例(59%、T-DXd 群149例、T-DM1群160例)がアジアからの参加者だった(日本人は68例)。
・アジア人サブグループにおける追跡期間中央値は、T-DXd 群16.5ヵ月、T-DM1群15.8ヵ月だった。
・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はT-DXd 群54.0歳vs.T-DM1群53.4歳、HER2status 3+が92.6% vs.88.8%、ホルモン受容体陽性が45.6% vs.46.3%、脳転移有が16.1% vs.18.8%、内臓転移有が76.5% vs.72.5%だった。
・治療歴については全体集団と大きな差はみられなかったが、4ライン以上の治療歴を有する患者、抗HER2TKIによる治療歴を有する患者がアジア人サブグループで多かった。
・主要評価項目のBICR評価によるPFS中央値は、T-Dxd群NE(95%信頼区間[CI]:16.8~NE) vs.T-DM1群5.6ヵ月(4.1~6.9)、ハザード比(HR):0.27(0.20~0.38)だった(全体集団ではNE vs. 6.8ヵ月、HR:0.28、p=7.8×10-22)。12ヵ月時点でのPFS率はT-Dxd群72.6%(64.3~79.3)vs.T-DM1群26.0%(18.6~34.1)となり(全体集団では75.8% vs. 34.1%)、アジア人においてもT-Dxdの有用性が示された。
・副次評価項目の治験実施医師評価によるPFS中央値は、T-Dxd群25.1ヵ月(20.9~NE)vs.T-DM1群7.0ヵ月(5.5~8.1)、HR:0.26(0.19~0.37)だった(全体集団では25.1ヵ月vs. 7.2ヵ月、HR:0.27、p=6.5×10-24)。
・OSデータは未成熟だが、T-Dxd群NE(19.9~NE)vs.T-DM1群NE(17.4~NE)、HR:0.51(0.25~1.02)だった(全体集団ではNE vs. NE、HR:0.56、p=0.007172)。
・ORRはT-Dxd群76.5% vs.T-DM1群31.3%(全体集団では79.7% vs.34.2%)。
・Grade3以上の治療関連有害事象はT-Dxd群46.9% vs.T-DM1群46.5%で発現し、全体集団(45.1% vs. 39.8%)と概ね一致していた。
・T-Dxd群のGrade3以上の治療関連有害事象として多かったのは好中球減少症(24.5%)、血小板減少症(11.6%)、白血球減少症(9.5%)、吐き気(8.2%)だった(全体集団ではそれぞれ19.1%、7.0%、6.6%、5.8%)。
・T-Dxd群でのILDは16例(10.9%)報告されたが(全体集団では10.5%)、Grade4以上の報告はない。日本人集団についてみると、Grade1~2のILD が8例(22.2%)報告されている。

 Im氏は、全体集団と同様にアジア人集団においても、T-DXdはT-DM1と比較して臨床的に意味のあるPFSベネフィットを示したとし、安全性プロファイルについても全体集団と一致していたと結論付けている。一方で、日本人集団において全体集団およびアジア人集団と比較するとILDの報告が多い傾向がみられた点に触れ、Grade4以上は報告されていないものの、ILDについては注意深いモニタリングが必要としている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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DESTINY-Breast03試験(Clinical Trials.gov)

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閉経前ER+早期乳がん患者への卵巣抑制+AI vs.タモキシフェン/Lancet Oncol

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 卵巣機能抑制療法を受けているエストロゲン受容体(ER)陽性の閉経前早期乳がん患者における、アロマターゼ阻害薬とタモキシフェンの有効性について、Early Breast Cancer Trialists’Collaborative group(EBCTCG)が4つの無作為化試験のメタ解析により比較した。Lancet Oncology誌オンライン版2022年2月3日号に掲載の報告より。

 LH-RHアゴニスト(ゴセレリンまたはトリプトレリン)または卵巣摘出術を受けている閉経前のER陽性乳がん患者を対象に、アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、エキセメスタン、またはレトロゾール)とタモキシフェンを3~5年間比較した無作為化試験の患者データを用いてメタ解析を行った。ベースライン特性、乳がんの再発または二次原発がん発生の日付と部位、および死亡の日付と原因に関するデータが収集された。

 主要評価項目は、乳がんの再発率(遠隔、局所、または対側)、乳がんによる死亡、再発のない死亡、および全死因死亡とされた。標準的なITTログランク解析により、初回イベントのリスク比(RR)とその信頼区間を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・1999年6月17日~2015年8月4日までに登録されたER陽性の乳がん患者7,030例を含む、4つの試験(ABCSG XII、SOFT、TEXT、およびHOBOE試験)からデータを取得した。
・追跡期間中央値は8.0年(IQR:6.1~9.3)。
・乳がん再発率は、アロマターゼ阻害薬群でタモキシフェン群よりも低かった(RR:0.79、95%信頼区間[CI]:0.69~0.90、p=0.0005)。
・アロマターゼ阻害薬による再発に対するベネフィットは、治療法が異なる0~4年目にみられ(RR:0.68、99%CI:0.55~0.85、p<0.0001)、5年再発リスクの絶対値が3.2%(95%CI:1.8~4.5)低下した(アロマターゼ阻害薬群6.9% vs.タモキシフェン群10.1%)。
・5~9年目(RR:0.98、99%CI:0.73~1.33、p=0.89)および10年目以降では、さらなるベネフィットなし、およびベネフィットなしであった。
・遠隔転移の再発率はアロマターゼ阻害薬群で低かった(RR:0.83、95%CI:0.71~0.97、p=0.018)。
・乳がんによる死亡(RR:1.01、95%CI:0.82~1.24、p=0.94)、再発のない死亡(RR:1.30、95%CI:0.75~2-25、p=0.34)、全死因死亡(RR:1.04、5%CI:0.86~1.27、p=0.68)に治療間の有意差は認められなかった。
・アロマターゼ阻害薬群でタモキシフェン群よりも骨折が多かった(6.4% vs. 5.1%、RR:1.27、95%CI:1.04~1.54、p=0.017)。
・乳がん以外の死亡(0.9% vs. 0.7%、RR:1.30、95%CI:0.75~2.25、p=0.36)と子宮内膜がん(0.2% vs. 0.3%、RR:0.52、95%CI:0.22~1.23、p=0.14)はまれであった。

 著者らは、卵巣機能抑制療法を受けている閉経前の早期乳がん患者においては、タモキシフェンよりもアロマターゼ阻害薬の使用で、乳がんの再発リスクが低下することが示唆されたが、死亡率への影響を評価するには、より長いフォローアップが必要と考察している。

 本論文へのDoctors’ Picksでのコメントはこちら

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group (EBCTCG). Lancet Oncol. 2022 Feb 3:S1470-2045.00758-0. [Epub ahead of print]

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乳がんリスクの高い9遺伝子、腫瘍サブタイプや悪性度との関連は?/JAMA Oncol

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 乳がんとの関連が報告されている9つの生殖細胞系列の遺伝子変異について、それぞれ腫瘍サブタイプや悪性度にどんな特徴があるのか? 多施設共同症例対照研究(BRIDGES研究)の結果を、英国・ケンブリッジ大学のNasim Mavaddat氏らがJAMA Oncology誌オンライン版2022年1月27日号に報告した。

 本研究は1991~2016年の間に実施され、遺伝子解析と分析は2016~21年に行われた。ATMBARD1BRCA1BRCA2CHEK2PALB2RAD51CRAD51D、およびTP53の9つの遺伝子変異について、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、ERBB2の状態および腫瘍の悪性度(組織型、サイズ、TNM病期、リンパ節転移)によって定義された5つの乳がんサブタイプ(HR+ERBB2-低悪性度、HR+ERBB2+、HR+ERBB2-高悪性度、HR-ERBB2+、トリプルネガティブ)との関連が解析された。

 主な結果は以下のとおり。

・ヨーロッパまたは東アジアの38の研究から、家族歴とは無関係にサンプリングされた18~79歳の女性で構成される4万2,680人の乳がん患者と4万6,387人の対照参加者が含まれた。
・面接(対照者)および診断(乳がん症例)時の平均(SD)年齢は、それぞれ55.1(11.9)歳および55.8(10.6)歳だった。
・遺伝子変異別のサブタイプの分布にはかなりの不均一性がみられた。
RAD51C(OR:6.19、95%信頼区間[CI]:3.17~12.12)、RAD51D(OR:6.19、95%CI:2.99~12.79)、およびBARD1(OR:10.05、95%CI:5.27~19.19)の変異は、主にトリプルネガティブ乳がんと関連していた。
CHEK2の変異は、トリプルネガティブ乳がんを除くすべてのサブタイプ(OR:2.21~3.17)に関連していた。
ATMの変異は、HR+ERBB2-高悪性度サブタイプとの関連が最も強かった(OR:4.99、95%CI:3.68~6.76)。
BRCA1の変異はすべてのサブタイプのリスク増加と関連していたが、オッズ比は大きく異なり、トリプルネガティブ乳がんで最も高かった(OR:55.32、95%CI:40.51~75.55)。
BRCA2およびPALB2の変異もトリプルネガティブ乳がんと関連していた。
TP53の変異は、HR+ERBB2+およびHR-ERBB2+サブタイプと最も強く関連していた。
・病的バリアント保持者で発生する腫瘍は、より高悪性度だった。
・ほとんどの遺伝子変異とサブタイプでは、年齢が高くなるごとにオッズ比の低下が観察された。
・9つの遺伝子変異は40歳以下の女性におけるトリプルネガティブ乳がんの27.3%に関連していた。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Breast Cancer Association Consortium. JAMA Oncol. 2022 Jan 27. [Epub ahead of print]

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HR+/HER2-乳がん術後薬物療法におけるアベマシクリブ、その位置付けは?

提供元:CareNet.com

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける術後薬物療法として、CDK4/6阻害薬アベマシクリブ(商品名:ベージニオ)が2021年12月24日に追加承認を取得した。1月21日「ベージニオに新たな適応症が追加 HR+/HER2-乳癌の術後薬物療法の新しい選択肢とは」と題したメディアセミナー(主催:日本イーライリリー)が開催され、座長として大野 真司氏が登壇、原 文堅氏(ともにがん研究会有明病院)が術後薬物療法における同薬の位置付けについて講演した。

 アベマシクリブは2018年9月に、HR+/HER2-の手術不能または再発乳がんに対する治療薬として承認されている。骨髄での造血管細胞の成熟に関連するCDK6-サイクリンD3よりも、乳がんの増殖に関連するCDK4-サイクリンD1をより高く阻害するため、パルボシクリブと比較して骨髄抑制が軽く、連日内服が可能という点が特徴となっている。用法・用量としては1回150mgの1日2回経口投与であるが、術後薬物療法では投与期間は最大で24ヵ月間、状態に応じて適宜減量することとされた。 

術後薬物療法におけるアベマシクリブの有効性(monarchE試験)

 乳がん―とくにHR+乳がんにおいては、初回診断後5年経過以降も再発リスクがある。再発リスクに応じて、化学療法追加(オンコタイプDXなどの遺伝子検査で判定)、術後内分泌療法の延長(5年→10年)などにより予後は改善してきたが、リンパ節転移の個数が多い場合などの再発高リスクの患者では不十分であった。

 再発高リスクの患者を対象とした国際共同第III相monarchE試験では、術後薬物療法としてのアベマシクリブと内分泌療法による併用療法の有効性を検討。主要評価項目である無浸潤疾患生存期間(iDFS)は、2年時点でアベマシクリブ+内分泌療法群92.6%に対し内分泌療法群89.6%となり、有意にアベマシクリブ併用群で改善がみられた。3年時点では88.6%に対し82.9%とより差が開く形となり、原氏は「フォローアップ期間が延びてその差が広がるということは、それだけ併用療法の有効性が高いことを示している」と話した。

有害事象の頻度、管理は?

 有害事象については、転移・再発乳がんへの治療においてみられたものと同様の傾向で、下痢(82.2%)、好中球減少症(44.6%)、疲労(38.4%)などが多く報告された。日本人サブグループにおいても同様の傾向が報告されている。下痢については、投与初期の1~2サイクル目での報告が多くを占める。「ベージニオ適正使用ガイド」では、グレードに応じた用量調整の考え方が示されており、原氏は適切に休薬・減量をすることでマネジメントは可能との認識を示した。
 その他重大な副作用として、間質性肺疾患、肝機能障害(ALT/AST増加等)、骨髄抑制(好中球減少、白血球減少、貧血等)、静脈血栓塞栓症が挙げられる。原氏は、「適正使用ガイドでは胸部CT検査や肝機能検査、骨髄機能検査などアベマシクリブ投与中に必要な検査とその推奨時期が示されており、われわれはこれを遵守することが求められる」とした。
 間質性肺炎に関しては、monarchE試験の日本人集団では13例認められており、うち治験薬との因果関係が認められたのは1例。グレード2以上であれば投与中止(原則として再投与なし)が求められる。

 静脈血栓塞栓症は、日本人集団では2例報告されている。全体集団解析での発現率は2.3%で多くが非重篤であるが、原氏は「重篤な事象が起こりうるという認識の下で管理していくことが非常に重要」と指摘した。

 最後に同氏は、今後の検討課題として、真に本療法の恩恵に預かることのできる症例を選択するためのバイオマーカー探索、逆にmonarchE試験の対象外症例への適応拡大の可能性の検討、術後に本療法を実施した症例の再発時の治療法の検討を挙げ、講演を締めくくった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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JSMO2022の注目演題/日本臨床腫瘍学会

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 2022年1月21日、日本臨床腫瘍学会はオンラインプレスセミナーを開催し、会長の国立がん研究センター中央病院の大江 裕一郎氏らが、第19回学術集会の注目演題などを発表した。

 今回の学術集会のテーマは「Inspiring Asian Collaboration and the Next Generation in Oncology」。アジアとの協力関係と若手の活性化を目指したものだという。2022年2月17~19日に、現地(京都国際会館およびザ・プリンス京都宝ヶ池)開催を基本とし、webライブとオンデマンド配信を組み合わせたハイブリッド形式で行われる。演題数は1,000を超え、4分の1は海外からの演題とのこと。

4つのPresidenstial Session
 選ばれた優秀演題が発表されるPresidentialは1~4までのsessionで行われる。

 Session1は乳がんと婦人科がんで2月17日午前、Session2は肺がんで2月17日午後、Session3は消化器がんで2月18日午前、Session4は造血器腫瘍と希少がんのトピックで2月19日の午前に開催される。

COVID-19関連演題
 COVID-19関連は、主に2つの合同シンポジウムと2つの一般演題セッションで取り上げられる。

 同学会と日本癌学会/日本癌治療学会のがん関連3学会の合同シンポジウム「COVID-19流行のがんマネジメント」が2月17日午後に行われる。ここでは、新型コロナの流行によるがんのマネジメントへの影響について、さまざまな観点から議論する。

 ESMO(欧州臨床腫瘍学会)との合同シンポジウム「Oncology Trial and Practice with/post COVID-19 era」が上記シンポジウムに引き続いて行われる。ここでは海外演者と日本の演者が登壇し、コロナ禍でのがん臨床および治療開発をどのように行うべきかディスカッションが行われる。

 一般演題ではCOVID-19関連Mini Session1と2で国内外の演者による発表が行われる。

HPV関連がん
 2020年にワクチンの積極的勧奨が再開されたHPV関連がんについては、会長企画「HPV関連がんの予防と治療~日本とアジアの現状から見えてくるものとは~」で取り上げる。

 ここではHPVワクチンの安全性や近年増加しているHPV関連中咽頭がんについての新たな知見が紹介される。

(ケアネット)


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