がん患者の脱毛軽減に有用な頭皮冷却装置、国内初の製造販売承認

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 2020年7月10日、「抗がん剤治療の副作用による脱毛を低減・抑制する国産初の『頭皮冷却装置』発表記者会見」が開催された(株式会社毛髪クリニックリーブ21主催)。小林 忠男氏(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 招へい教授)が「乳がん化学療法患者さんにおけるリーブ21 CellGuard(セルガード、頭皮冷却装置)を用いた脱毛の軽減化について」を、渡邉 隆紀氏(仙台医療センター乳腺外科医長)が「乳がんにおける化学療法と脱毛の問題点」について講演した。

 がん化学療法に伴う容姿変化が原因で治療介入に対し消極的となる患者も存在する。そのような患者のサポートを行う上でエビデンスが集約され治療に役立つのが、「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」である。これには脱毛をはじめ、爪の変形や皮膚への色素沈着などへの対応法がまとめられ、たとえば、脱毛に関しては“CQ1:脱毛の予防や重症度の軽減に頭皮冷却は有用か”の項で、頭皮冷却の推奨はC1a(科学的根拠はないが、行うように勧められる)とされている。しかし、日本は海外に比べ、医療施設への頭皮冷却装置の導入が遅れているのが現状であるー。

頭皮冷却装置でがん患者の満足度アップ

 小林氏は化学療法に誘発される脱毛(CIA:Chemotherapy induced-alopecia)のメカニズムについて、頭皮冷却の理論的根拠(温度低下により血管が収縮→血流低下により薬剤濃度低下、または反応速度低下→毛根細胞生存の維持)や脱毛頻度の高い抗がん剤開発と頭皮冷却の歴史を交えて解説。CIAが女性患者にもたらす影響として以下を述べた。

●身体的また精神的な悪影響
●心理学的な症状
●ボディイメージの低下
●乳房を失うよりも強いトラウマ
●QOLの低下:Identityと個性に強い影響を及ぼす
●治療後も持続的な髪質の変化(くせ毛・量・太さ)

 これらの悩みを解決するべく誕生したのがセルガードであり、この特徴として、「制御付き頭皮冷却のデジタルシステムである。頭皮温度を氷点下で維持することで毛根周囲の血管を収縮させて、毛根周辺毛細血管に到達する抗がん剤の量を抑制することができる。また、1台で2名が利用でき外来化学療法に有用」と説明した。上田 美幸氏らが第18回日本乳癌学会学術総会(2010年)で報告した『頭皮冷却キャップ装着に伴う変化 患者満足度アンケート』によると、装着の問題、使用中の気分不快、頭痛について調査し大多数で満足が得られているほか、加藤乳腺クリニックの29例を対象とした調査では、NCI-CTC scale Grade0は8例、Grade1は17例、Grade2は4例という結果が得られた。これを踏まえ同氏は、「セルガードによる頭皮冷却法がCIAに効果的であると証明された。今後、患者のQOLを向上させるだけではなく、より良い治療へ貢献する可能性がある」と語った。

脱毛に関する不安、患者と医療者で大きな差

 脱毛の臨床的な見解を示した渡邉氏は、がん化学療法を受けた患者の苦痛調査1,2,3,4)から「脱毛は、この30年間で常に上位に位置するほど患者の大きな悩み。また、別の調査5)でも治療時の不安において、患者は脱毛を4番目に挙げる一方、看護師は9番目、医師は12番目に挙げた」と、がん患者・看護師・医師の認識の乖離を指摘。なかでも、乳がんは患者の増加、初発年齢の若さ、適格な診断・予後の良さに加え、近年では外来化学療法が主流となっているが、体毛すべてに影響を及ぼす乳がん再発予防の治療は患者に大きな負担をもたらしている。同氏らが行った調査6)によると乳がん患者が脱毛した場合、再発毛しても頭髪8割以上の回復は60%、頭髪5~8割の回復は25%、頭髪5割未満の回復は15%で、再発毛不良部位は前頭部と頭頂部が圧倒的に多いことが明らかになった。また、ウイッグの使用期間は平均12.5±9.7ヵ月で、60ヵ月以上もウィッグを手放せない患者も存在した。このことから同氏は「脱毛程度の軽減、再発毛の促進に頭皮冷却装置の効果を期待する」と締めくくった。

日本人向け脱毛防止装置で苦痛開放へ

 日本での冷却装置導入の遅れに注目したリーブ21代表取締役社長の岡村 勝正氏は、「女性にとって乳がん治療はがん告知、乳房、髪の毛を失う三重の苦しみがあると言われている。欧米で発売されている頭皮冷却装置は日本人に適さないことから、脱毛で悩む日本人を救うため開発を行った」とし、「同製品は本年秋頃、全国のがん診療連携拠点病院に対してプロモーションを予定している」と話した。

■参考
リーブ21:頭皮冷却装置<セルガード> 
1)Coates A, et al. Eur J Cancer Clin Oncol. 1983;19:203-208.
2)Griffin AM, et al. Ann Oncol. 1996;7:189-195.
3)Dennert MB, et al. Br J Cancer. 1997;76:1055-1061.
4)Carelle N, et al. Cancer. 2002;95:155-163.
5)Mulders M, et al. Eur J Oncol Nurs. 2008;12:97-102.
6)Watanabe T, et al. PLoS One.2019;14:e0208118.

(ケアネット 土井 舞子)


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閉経後ホルモン補充療法、乳がんへの長期影響は?/JAMA

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 2件の無作為化試験の長期フォローアップの解析から、子宮摘出術を受けた女性において、結合型エストロゲン(CEE)単独療法を受けた患者群はプラセボ群と比較して、乳がん発生率および乳がん死亡率の低下と有意に関連していることが明らかにされた。また、子宮温存療法を受けた女性において、CEE+メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)療法を受けた患者群はプラセボ群と比較して、乳がん発生率は有意に高く、乳がん死亡率に有意な差はみられなかった。米国・Harbor-UCLA Medical CenterのRowan T. Chlebowski氏らによる報告で、これまで閉経後ホルモン療法の乳がんへの影響は、観察研究と無作為化試験の所見が一致せず結論には至っていなかったことから、一般閉経後女性を対象としたホルモン補充療法の大規模前向き無作為化試験「Women’s Health Initiative」参加者の長期追跡評価試験を行い、CEE+MPA療法またはCEE単独療法の乳がん発生・死亡への影響を調べる検討を行った。JAMA誌2020年7月28日号掲載の報告。

CEE単独またはCEE+MPA療法の対プラセボ評価を20年超追跡

 2件のプラセボ対照無作為化試験の長期追跡評価は、乳がんの既往がなく、ベースラインのマンモグラフィで陰性が確認された50~79歳の閉経後女性2万7,347例を対象に行われた。対象者は、1993~98年に米国内40ヵ所のセンターで登録され、2017年12月31日まで追跡を受けた。

 このうち、子宮が温存されている1万6,608例を対象とした試験では、8,506例がCEE 0.625mg/日+MPA 2.5mg/日を投与され、8,102例がプラセボを投与された。また、子宮摘出術を受けていた1万739例を対象とした試験では、5,310例がCEE 0.625mg/日単独投与を、5,429例がプラセボ投与を受けた。

 CEE+MPA試験は、中央値5.6年後の2002年に中止となり、CEE単独試験は中央値7.2年後の2004年に中止となっている。

 主要評価項目は、乳がんの発生(プロトコールは有害性についての主要モニタリングアウトカムと規定)、副次評価項目は、乳がん死および乳がん後の死亡であった。

 対象者2万7,347例はベースラインの平均年齢63.4(SD 7.2)歳で、累積フォローアップ中央値20年超において98%以上の死亡情報の入手・利用が可能であった。

子宮摘出CEE単独は発生率・死亡率とも低下、子宮温存CEE+MPAは発生率上昇

 子宮摘出術を受けていた1万739例において、CEE単独療法はプラセボと比較して、統計学的に有意に乳がんの発生率が低かった(238例[年率0.30%]vs.296例[0.37%]、ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.65~0.93、p=0.005)。また、乳がん死も統計学的に有意に低率だった(30例[0.031%]vs.46例[0.046%]、0.60、0.37~0.97、p=0.04)。

 対照的に、子宮が温存されていた1万6,608例において、CEE+MPA療法はプラセボと比較して、統計学的に有意に乳がんの発生率が高く(584例[年率0.45%]vs.447例[0.36%]、HR:1.28、95%CI:1.13~1.45、p<0.001)、乳がん死の有意差はみられなかった(71例[0.045%]vs.53例[0.035%]、1.35、0.94~1.95、p=0.11)。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Chlebowski RT, et al. JAMA. 2020;324:369-380.

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併存症のある高齢乳がん患者、補助化学療法と生存は関連するか/JAMA Oncol

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 複数の併存疾患を有する高齢乳がん患者において、補助化学療法は生存と関連するのか。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのNina Tamirisa氏らは、併存疾患を有する70歳以上の乳がん患者を対象に、補助化学療法と生存の関連を評価する、後ろ向きの大規模コホート研究を実施した。JAMA Oncology誌オンライン版2020年7月16日号に掲載の報告より。

 対象は米国国立がんデータベースに登録された、70歳以上のエストロゲン受容体陽性、ERBB2陰性、Charlson/Deyo併存疾患指数が2または3の乳がん患者。2010年1月1日~2014年12月31日にリンパ節転移陽性乳がんの手術を受けていた。

 年齢、併存症スコア、施設タイプ、施設の場所、病理学的TおよびN分類、補助内分泌療法と放射線療法の有無に基づく傾向スコアを用いた、二重ロバストCox比例ハザード回帰モデルにより、補助化学療法と全生存との関連が推定された。データ分析期間は、2018年12月13日~2020年4月28日。

 主な結果は以下のとおり。

・データベースに含まれる計244万5,870例のうち、1,592例(平均年齢:77.5[SD 5.5]歳、女性:96.9%)が包含基準を満たした。
・これらの患者のうち、350例(22.0%)で化学療法が実施され、1,242例(78.0%)では実施されなかった。
・化学療法グループと比較して、化学療法なしのグループは若く(平均年齢:74 vs.78歳、p<0.001)、原発腫瘍が大きく(pT3/T4:72例[20.6%] vs.182例 [14.7%]、p = 0.005)、リンパ節転移数が多かった(pN3:75例[21.4%]vs.81例[6.5%]、pN1:182例[52.0%]vs.936例[75.4%]、p<0.001)。
・化学療法グループでより多く、他の術後療法も行われていた:内分泌療法(309例 [88.3%] vs.1,025例[82.5%]、p=0.01)、放射線療法(236例[67.4%]vs.540例[43.5%]、p<0.001)。
・追跡期間中央値43.1ヵ月(95%CI:39.6~46.5ヵ月)において、化学療法グループと化学療法なしのグループの全生存期間中央値に、統計的有意差はみられなかった(78.9ヵ月[95%CI:78.9ヵ月~NR]vs.62.7ヵ月[95%CI:56.2ヵ月~NR]、p = 0.13)。
・潜在的な交絡因子で調整後、化学療法の実施と生存率改善が関連した(ハザード比:0.67、95%CI:0.48~0.93、p=0.02)。

 著者らは、複数の併存症を有するリンパ節転移陽性、エストロゲン受容体陽性の高齢乳がん患者において、化学療法の実施が全生存期間の改善に関連することが明らかになったとし、選択バイアスによる調整後これらの結果が得られたことからは、補助化学療法から治療効果が得られる可能性が高い患者を医師が慎重に選択したことが示唆されていると結論づけている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Tamirisa N, et al. JAMA Oncol. 2020 Jul 16. [Epub ahead of print]

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日本のがん患者のカウンセリングニーズは?1万件超の電話相談を分析

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 日本のがんサバイバーらのアンメットニーズを、電話相談の主訴から、男女差を主眼に解析し、その特徴をあぶりだした神奈川県立がんセンター 臨床研究所 片山佳代子氏らの研究が、Patient Education and Counseling誌2020年5月16日に掲載された。

 分析されたがん患者の電話相談は10,534件。男女別相談者別にデータのコーディングを行い、複数の関連コードをまとめ主要な19のカテゴリーを生成した。属性と生成されたカテゴリーのクロス集計を行い、語句と性別の関係をコレスポンディング分析によって可視化している。またテキストマイニング手法を使い出現頻度の高かった単語「不安」と「心配」の係受け関係となるkeywordを抽出し可視化することで男女差を浮き彫りにした。

 主な結果は以下のとおり。

・全相談件数のうち、約7割が女性から相談であった。
・男性は胃がん(11.8%)、女性では乳がん(18.4%)の相談が多く、男女共にがんの確定診断のないものからの相談が20%を占めた。
・男女に共通して多かった相談カテゴリーは「治療」(各々21.6%、31.0%)、「がんの疑い」(各25.2%)、「医療者への不信感/コミュニケーションの欠如」(20.2%、20.8%)、「手術」について(19.5%、30.2%)となった。
・男性は女性と比べて検査や医療施設に関する質問や、転院相談、一般的ながん情報の収集が多く、日常生活への不安や精神的なサポートのニーズは少なかった。男性サバイバーは的確な情報を収集し、自分で解決するスタイルを好むようである。医療者への不満に対して見切りも早く、そのため転院相談が多いのではないかと関連が考えられる。
・男性は精神的サポートを必要としていないのか、あってもしないのかは本研究からは不明としている。
・一方女性は、広範囲な事柄について直接的な支援を求めており、心配や不安に感じる事柄が多岐に渡る。妻として夫の禁煙相談や飲酒に関する相談や、遠隔地で独居している親の相談など家族の代表としての相談も多い。こうしたことを鑑みると、地域の患者会やピアサポートを紹介することは理にかなっているようである。

 筆者は、日本のがんの相談支援には性別による特有のスタイルを理解し、それに対応する必要があると述べている。ピアサポーターの養成等、相談現場での活用が望まれる。

 男性の場合、一般には的確な情報を渡しつつ、一方 で 嗜癖物の乱用 がないか医療現場や相談支援者が確認すること、またがん情報の発信においても、患者視点のニーズを把握し、患者目線の情報を提供するオンラインプラットフォームが必要であると述べている。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Katayama K, et al. Patient Educ Couns. 2020 May 16「Epub ahead of print]

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ASCO作成COVID-19流行下のがん治療の指針、和訳版を公開/日本癌治療学会

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 日本癌治療学会は7月9日、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が作成した「ASCOスペシャルレポート:COVID-19の世界的流行下におけるがん治療の実施に関する指針」をホームページ上で公開した。この指針は、COVID-19 の世界的大流行への対応を継続する中で患者および医療スタッフの安全性を保護するため、がん診療で実施可能な即時および短期の措置についてASCOが世界的視野に立ち作成、5月19日に発表されたもの。

 和訳版は全22ページからなり、下記20項目について知見がまとめられている:
・トリアージ/スクリーニング
・COVID-19検査中/陽性の患者
・COVID-19診断検査
・感染防止対策
・勤務者
・リソースおよび資材
・医療機関における留意事項
・指定区域でのサービスおよび診療時間
・COVID-19感染が急増した場合の計画
・衛生関連手順
・サポートサービス
・健康および安全性に関する患者教育
・遠隔医療
・腫瘍内科
・腫瘍放射線治療
・付帯的サービス
・がんスクリーニング
・手術
・治験
・その他 役立つ参考文献

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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早期乳がんの全乳房5分割照射、10年後の結果(FAST)/JCO

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 早期乳がんに対する術後寡分割放射線療法において、従来の50Gy/25回/5週レジメンの晩期有害事象の軽減の観点から、総線量を減らした週1回5分割レジメンを検討した多施設無作為化第III相FAST試験。今回、放射線治療後5年の乳房の外観変化と10年の正常組織への影響(NTE)と腫瘍アウトカムについて、英国・University Hospitals of North Midlands NHS TrustのAdrian Murray Brunt氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年7月14日号に掲載。

 本試験では、50歳以上の低リスク浸潤性乳がん(pT1-2 pN0)の女性を、乳房温存手術後の全乳房照射のレジメンを、50Gy/25回/5週、30Gy/5回/5週(週1回6.0Gy)、28.5Gy/5回/5週(週1回5.7Gy)の3群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、2年後と5年後の写真での乳房外観の変化、副次評価項目は医師によるNTE評価と局所腫瘍制御であった。縦断的分析によるオッズ比(OR)でレジメンを比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・2004~07年に英国の放射線治療センター18施設から915例が組み入れられた。
・適格患者862例中615例(71%)で5年後の写真を入手できた。
・写真での外観変化について、50Gyに対するORは、30Gyで1.64(95%CI:1.08~2.49、p=0.019)、28.5Gyで1.10(95%CI:0.70~1.71、p=0.686)であった。
・写真の評価項目におけるα/β推定値は2.7Gy(95%CI:1.5〜3.9 Gy)で、28Gy(95%CI:26〜30Gy)/5回は50Gy/25回と同一効果をもたらすと推定された。
・医師評価による中程度または著しい乳房NTE(萎縮、硬結、毛細血管拡張、浮腫)について、50Gyに対するORは、30Gyで2.12(95%CI:1.55~2.89、p<0.001)、28.5Gyで1.22(95%CI:0.87~1.72、p=0.248)であった。
・追跡期間中央値9.9年までに、同側乳がんが11例に発生し(50Gy:3例、30Gy:4例、28.5Gy:4例)、96例が死亡した(50Gy:30例、30Gy:33例、28.5Gy:33例)。

 今回の報告において、10年時のNTE率は従来の50Gy/25回と比べて、28.5Gy/5回で有意な差はなかったが30Gy/5回では高かった。著者らは、「今回の結果により、治療後3年時に発表した、全乳房放射線療法の週1回5分割照射がNTEに関して従来のレジメンと放射線生物学的に同等であることを示した結果が確認された」と述べている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Brunt AM, et al. J Clin Oncol. 2020 Jul 14. [Epub ahead of print]

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日医・中川会長「身体が震えるほどの怒り」、乳腺外科医の控訴審判決

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 15日、日本医師会の記者会見で、今村 聡副会長が乳腺外科医の控訴審判決に関する日医の見解について言及した。

一審無罪から一転、控訴審では懲役2年の有罪判決

 手術直後の女性患者への準強制わいせつ罪に問われた執刀医が、逮捕勾留・起訴された事件では、一審で無罪判決が言い渡されたが、検察は控訴。7月13日に控訴審判決が行われた。東京高等裁判所は、一審の無罪判決を破棄し、懲役2年の実刑判決を言い渡した。

 報道によれば、控訴審判決ではせん妄の診断基準について、学術的にコンセンサスが得られているDSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)に当てはめずに、独自の基準でせん妄や幻覚の可能性を否定した医師の見解が採用されたというという。

 今村氏は、自身の麻酔科医としての経験も踏まえ、「全身麻酔からの回復過程で生じるせん妄や幻覚は、患者にとって非常にリアルな実体験になる。現実と幻覚の区別が付かなくなる場面は、全国の医療機関で起こる可能性がある」とし、実際にそのような場面では、医療従事者が患者の精神的ケアに当たっていると説明した。

日本医師会として、判決に抗議する姿勢を明確に示した

 今回の裁判で大きな争点となっているのは、(1)患者の被害証言に対する術後せん妄の影響、(2)検体の鑑定に関する科学的許容性の2点だ。今村氏は、「鑑定結果は再現性に乏しく、ずさんと思わずにいられないデータ。今回の判決は、世間での常識から大きく乖離している」と語気を強めた。

 最も危惧されているのは、医師への有罪判決の確定によって、医療機関や医療従事者が、全身麻酔下での手術に安心して携われなくなる恐れがあることだ。「医療機関の運営や勤務医の就労環境に影響が出ることは、結果的に患者の健康にも悪影響を及ぼしかねない。医師代表の機関として、有罪判決には非常に強く抗議をしていきたい」と同氏はあらためて強調した。

 「医療機関としては、全身麻酔をかける前に、患者本人とご家族に、せん妄・幻覚の可能性などについて十分な説明をしていく必要が当然ある。こういったことを徹底していかなければならない」とまとめた。

 今回の判決について、中川 俊男会長は、「聞いたとき、身体が震えるほどの怒りを覚えた。今回の判決はきわめて遺憾であることを明確に申し上げる」と語り、日本医師会として、今後、医師側を全力で支援する姿勢を示した。

(ケアネット 堀間 莉穂)


【参考文献・参考サイトはこちら】

乳腺外科医控訴審判決に関する日医の見解について(日本医師会)

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男性のBRCA変異、1と2でがん発症に違い/JAMA Oncol

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 生殖細胞系列BRCA1/2の病原性変異体(pathogenic variant:PV)を持つ男性のがん早期発見とリスク低減のために、イタリア・Sapienza University of RomeのValentina Silvestri氏らは、BRCA1BRCA2のそれぞれのPVキャリアにおけるがんスペクトルと頻度を調査した。その結果、がん発症者(とくに乳がん、前立腺がん、膵がん)および複数の原発腫瘍発症者は、BRCA1 PVキャリアよりBRCA2 PVキャリアである可能性が高かった。JAMA Oncology誌オンライン版2020年7月2日号に掲載。

 本研究は後ろ向きコホート研究で、Consortium of Investigators of Modifiers of BRCA1/2(CIMBA)を通じて共同研究している世界33ヵ国53グループにより、1966~2017年にがん遺伝学クリニックで集めた18歳以上の6,902人(BRCA1 PVキャリア3,651人、BRCA2 PVキャリア3,251人)が対象。臨床データと病理学的特徴を収集した。オッズ比(OR)はすべて、年齢、出身国、初回面接の暦年で調整した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象の男性6,902人(年齢中央値:51.6歳、範囲:18~100歳)のうち、1,376人(19.9%)に1,634件のがんが診断され、1,376人中922人(67%)がBRCA2 PVキャリアであった。
・何らかのがんを発症した人は、BRCA1 PVキャリアよりBRCA2 PVキャリアの可能性が高く(OR:3.23、95%信頼区間[CI]:2.81~3.70、p<0.001)、原発腫瘍が2つ発症(OR:7.97、95%CI:5.47~11.60、p<0.001)および3つ発症(OR:19.60、95%CI:4.64~82.89、p<0.001)でも同様であった。
・乳がん(OR:5.47、95%CI:4.06~7.37、p<0.001)および前立腺がん(OR:1.39、95%CI:1.09~1.78、p=0.008)の頻度は、BRCA2 PVキャリアである可能性と関連していた。
・乳がん、前立腺がん以外では、膵がんがBRCA2 PVキャリアである可能性が高く(OR:3.00、95%CI:1.55~5.81、p=0.001)、大腸がんはBRCA2 PVキャリアである可能性が低かった(OR:0.47、95%CI:0.29~0.78、p=0.003)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Silvestri V, et al. JAMA Oncol. 2020 Jul 2. [Epub ahead of print]

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ドセタキセルベースの乳がん術後化療、BMIでベネフィットに差/JCO

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 タキサンなどの脂溶性薬剤は、脂肪組織に対して高い親和性を持ち、分布容積が増す。大規模アジュバント試験BIG 2-98の再分析が実施され、ベースライン時のBMIにより、乳がん患者におけるドセタキセルベースの術後化学療法のベネフィットが異なる可能性が示唆された。ベルギー・Laboratory for Translational Breast Cancer ResearchのChristine Desmedt氏らが、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年7月2日号に報告した。

 BIG 2-98は、リンパ節転移陽性乳がん患者の術後化学療法として、ドセタキセルベースと非ドセタキセルベースの治療法を比較したインターグループ無作為化第III相試験。今回、研究者らは同試験の全患者(2,887例)のデータを後ろ向きに再分析し、ベースライン時のBMI値に従って、ドセタキセルベースの術後化学療法のベネフィットが非ドセタキセルベースの術後化学療法と異なるかどうかを評価した。

 BMI(kg/m2)は以下のように分類されている。

・やせ型:18.5~<25.0
・過体重:25.0 ~<30.0
・肥満:30.0 以上

 主要評価項目は無病生存期間(DFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)。二次交互作用として、治療法、BMI、およびエストロゲン受容体(ER)の発現状態について評価された。

 主な結果は以下のとおり。

・非ドセタキセル群では、BMIに応じたDFSまたはOSの違いはみられなかったが、ドセタキセル群では、BMI分類が上がるにつれ、DFSおよびOSの低下が観察された。
・DFSおよびOSの調整ハザード比は、過体重 vs.やせ型で1.12(95%信頼区間[CI]:0.98~1.50、p=0.21)および1.27(95%CI:1.01~1.60、p=0.04)。肥満 vs.やせ型で1.32(95%CI:1.08~1.62、p=0.007)および1.63(95%CI:1.27~2.09、p<0.001)であった。
・ER陰性とER陽性を別々に検討した場合、およびドセタキセルの相対用量強度(RDI)≧85%の患者のみを検討した場合にも、同様の結果が得られた。
・治療効果に対するBMIおよびER状態の共修正の役割は、DFS(調整後のp=0.06)およびOS(調整後のp=0.04)で明らかであった。

 研究者らは、ベースライン時のBMIによるドセタキセルに対する反応の違いが強調される結果とまとめている。乳がんにおけるタキサン使用のリスクベネフィット比の、身体組成に基づく再評価が求められるとし、今回の結果は追加試験による確認が必要としている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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Desmedt C, et al. J Clin Oncol. 2020 Jul 2. [Epub ahead of print]

【参考文献・参考サイトはこちら】

BIG 2-98試験(Clinicaltrials.gov)

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緑茶・コーヒー・アルコールと乳がんリスク~日本人女性

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 日本の全国多施設前向きコホート研究であるJapan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk(JACC)Studyにおいて、緑茶・コーヒー・アルコールと乳がんリスクの関連を調べた結果、アルコール摂取と乳がんリスク増加との関連がみられた一方、乳がんリスクとの関連の結論が出ていない緑茶やコーヒーについては関連がみられなかった。Asian Pacific Journal of Cancer Prevention誌2020年6月1日号に掲載。

 本研究の対象は、JACC Studyにおける国内24地域の40〜79歳の日本人女性3万3,396人。20年以上の追跡期間中に乳がんが255例に発症した。乳がんリスクと緑茶、コーヒー、アルコールの摂取の間の独立した関連性を評価するために、多変量ロジスティック回帰分析を行った。緑茶とコーヒーについては、毎日摂取しない人を基準として、毎日摂取する人のオッズ比(OR)を算出した。アルコール摂取については、摂取しない人を基準として、週当たりの摂取頻度(1回未満、1~2回、3~4回、毎日)およびアルコールの種類(日本酒、ビール、ワイン、ウイスキー)別のORを算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・最も多く摂取されていたのは緑茶(参加者の81.6%)で、次いでコーヒー(34.7%)、アルコール(23.6%)であった。
・緑茶(OR:1.15、95%信頼区間[CI]:0.82~1.60)およびコーヒー(OR:0.84、95%CI:0.64~1.10)の摂取量と乳がんリスクの間に有意な関連はみられなかった。
・アルコール摂取は、乳がんリスクが有意に増加し(OR:1.46、95%CI:1.11~1.92)、週1回以下の飲酒でも乳がんリスクが増加した(OR:2.07、95%CI:1.39~3.09)。
・アルコールの種類別では、日本酒とビールでは有意な増加はみられなかった。ワイン(OR:1.79、95%CI:0.99~3.23)とウイスキー(OR:1.68、95%CI:0.91~3.08)ではORが高かったが、統計学的に有意ではなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Sinnadurai S, et al. Asian Pac J Cancer Prev. 2020;21:1701-1707.

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