ASCO、ESMOでここまで多くのエビデンスが発表されてしまうと、San Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS)では薬物療法の話題は枯れてしまって、局所療法の話題が中心となるのではないかと思っていた。ところが。蓋を開けてびっくり、今回のSABCSでは新しい標準治療のエビデンスが多数発表された。以下に、厳選した5演題の結果を解説する。なお、SABCS2024からBest of SABCSのサイトで各演題の解説が見られるようになっている。登録が必要であるが無料なので、詳細を知りたい方はアクセスしてみてはいかがだろうか。なお、今回から日本のエキスパートによる日本語の解説も聞けるようである(私は未聴講)。
サシツズマブ・ゴビテカン(SG)はHR+HER2-ならびにトリプルネガティブ(TN)MBCの3次治療以降でPFSならびにOSを有意に改善した、TROP-2をターゲットとした抗体薬物複合体(ADC)である(Bardia A, et al. N Engl J Med. 2021;384:1529-1541.)。ASCENT-07試験はHR+HER2-MBCの化学療法の1次治療において、SGを主治医選択化学療法(TPC)と比較した第III相試験である。
本試験ではHER2+MBCに化学療法の1次治療としてトラスツズマブ+ペルツズマブ(HP)およびタキサンの併用療法(THP)を受け、4~8サイクルまでのTHP中に病勢進行しなかった患者を対象として、HPにtucatinib 300mg BIDもしくはプラセボを維持療法として投与した。主要評価項目は主治医判断によるPFS、副次評価項目はOSや盲検化PFS、中枢神経(CNS)-PFSなどとされた。326例がtucatinib群、328例がプラセボ群に割り付けられ、HR+患者では内分泌療法の併用が許容された。PSは0が60%強、HRは陽性が50%程度、脳転移の既往が約12%に認められた。De novo StageIVが約70%であり、再発例は30%にとどまった。
本試験をもって、HER2+MBCに対するTHPによる導入療法の後のHP+tucatinib療法が標準治療の候補となった。一方で、HER2+MBCの1次治療としてはDB-09試験(Tolaney SM, et al. N Engl J Med. 2025 Oct 29. [Epub ahead of print])の結果からT-DXd+ペルツズマブも今後有力な候補になってくる。HER2+MBCの1次治療はPFSの延長に伴い、治療期間が以前と比べて大幅に延長している。これらの薬剤の使い分けに当たっては、有効性は当然のことながら有害事象の程度、頻度、重篤度も十分に加味して選択する必要がある。
山形大学医学部 卒業 東京医療センター 外科研修医 慶應義塾大学 一般・消化器外科 乳腺班 国際医療福祉大学/医療法人順和会 山王病院 乳腺外科 帝京大学医学部 外科 がん研究会有明病院 乳腺外科 University of Hawai`i Cancer Center, Translational and Clinical Research, Cancer Biology, Research Scholar
アメリカでは、とにかく感謝の言葉を口にします。「メールをくれてありがとう」「対応してくれてありがとう」、さらには相手が遅刻した場合でも「Thank you for your patience」と伝えます。日本であれば「すみません」と言ってしまいそうな場面が、こちらでは「サンキュー」になる。この違いはとても象徴的だと感じました。
DESTINY-Breast09(第III相、トラスツズマブ デルクステカン[T-DXd]+ペルツズマブ[T-DXd+PER群]vs.標準療法:タキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ[THP群])は、ASCO2025で、すでにその主要評価項目が発表され、T-DXd+PER群のTHP群に対するPFSの優越性が検証された。今回ESMO Congress 2025では、すべてのサブグループでT-DXd+ペルツズマブがPFSを大きく延長したことが報告された。T-DXd+PER群のPFSのHRや中央値は既存標準治療を大きく上回る結果で、今後、1次治療の標準になる可能性が示された。
POSITIVE(Pregnancy Outcome and Safety of Interrupting Therapy for young oNco‐breast cancer patients)は、若年HR+乳がん患者において、術後内分泌療法を一時中断して、再発リスクを増やさずに妊孕(妊娠を試みること)可能かを検証した前向き試験である。ESMO Congress 2025では、5年フォローアップ成績が報告されており、“妊娠試みによる内分泌療法中断”が少なくとも5年時点では再発リスクを有意に増加させていないという結果が報告された。