ESMO2025速報 乳がん

|企画・制作|ケアネット

2025年10月17~21日に開催されたESMO Congress2025の乳がんトピックを、がん研有明病院の尾崎 由記範氏が速報レビュー。


レポーター紹介

尾崎 由記範 ( おざき ゆきのり ) 氏
がん研究会有明病院 乳腺センター 乳腺内科/先端医療開発科


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

海外研修留学便り【米国留学記(高橋 洋子氏)】第3回

[レポーター紹介]
高橋 洋子(たかはし ようこ)

山形大学医学部 卒業
東京医療センター 外科研修医
慶應義塾大学 一般・消化器外科 乳腺班
国際医療福祉大学/医療法人順和会 山王病院 乳腺外科
帝京大学医学部 外科
がん研究会有明病院 乳腺外科
University of Hawai`i Cancer Center, Translational and Clinical Research, Cancer Biology, Research Scholar

米国ハワイでのがん研究の実際、重要な担い手となっているのは

 私の所属する University of Hawai`i Cancer Centerでは、PI(Principal Investigator)に数名の研究員が所属し、研究費に応じて複数のプロジェクトを進める形が一般的です。もともとハワイ大学は、ハワイや環太平洋エリアという地理的優位性を活かした海洋研究で成果を上げており、Cancer CenterでもPopulation Scienceという統計や疫学の研究が盛んに行われてきました。しかし近年では、基礎研究の成果も目立つようになっています。

 実際の研究を担うのは PhD studentやポスドク、そして学生ボランティアです。文化の違いもありますが、米国の大学生のプレゼンテーション能力は高く、またポスドクは長期に渡って研究に従事しており、研究をリードする能力にも優れています。ただし、ハワイは生活費が全米トップ3に入るほど高いため、一定期間を過ごした後に米国本土に戻る研究者も多く見かけます。

当センターはwet labを囲むようにデスクが配置してあります。ポスドクは2人で1部屋、PIは個室を使用しています。

 学生ボランティアは、将来の進路に有利な研究経験やネットワーク作りが主な目的です。米国の医学部進学は非常に競争が激しく、大学でのGPA(日本の内申書に当たる)が高いことがまず条件となります。GPAが低い場合には、再度大学に入り直して成績を取り直す方もいます。また、病院や研究への貢献度も重視され、medical schoolに進学するため、MCATという日本の共通テストに相当する試験も受けます。資料を見せてもらったところ、臨床試験の知識や生物学、遺伝学など、日本の国家試験レベルに近い内容も含まれており、非常に驚きました。このような背景のもと、CV(Curriculum Vitae)を整えるためにラボワークをボランティアとして行う学生も多く、ラボから見ても無料で仕事をしてもらえるため、互いにメリットのある関係となっています。ここは日本の医学部進学との大きな違いだと感じます。

 

研究費確保と米国の現状

wet labの室内。この日は研究助手さんが学生ボランティアにいろいろと教えていました

 この記事を書いている2025年10月7日現在、日本でいう「つなぎ予算」が議会で承認されなかったため、米国連邦政府はシャットダウンを始めて1週間が経過しました。essential worker以外は自宅待機となり、給与は再開時に支払われる(らしい)状況ですが、未払いとなっています。テレビやラジオでは、「誰がnon-essential workerなのか」といった皮肉も聞こえてきます。

 米国のPIは常にグラント申請書類の作成に追われています。前述のポスドクをはじめ、チーム全体で研究を進めながら申請書類も作成しており、その膨大な作業量には圧倒されます。支給される金額は日本とは桁違いで、RO1と呼ばれる大規模プロジェクトでは、5年間で年間数百万ドル規模の資金が得られることもあります。しかし現状では連邦施設の閉鎖に伴いグラント審査も一時停止となり、学長からは前日に「シャットダウンが現実になる」とのメールが届きました。予想される影響として、グラント審査の凍結や資金配布の遅延、さらにはグラントの金額が大きいだけに、ラボで雇用しているスタッフへの給与支払いの遅れも考えられる、とありました。政権交代からわずか8ヵ月しか経っていないうちに、ワシントンから最も遠いハワイにも直接影響が及んでいることを日々実感しています。ラボには現金の確保を指示され、困ったときには大学に相談するよう連絡がありました。こうした変化の速さも含め、米国で研究を行う現実を肌で感じる日々です。

日米の研究文化の違い

当センターと地域communityを繋ぐイベントを定期的に開催しています。この日は乳がんサバイバーの方ががんについて、そしてcancer researchの大切さを伝えるイベントでした。地元のメディアに取り上げていただいたり、施設への寄付につながるイベントでもあり、本当にその貢献度には頭が下がります

 日本の研究環境と比較すると、米国では自主性やリーダーシップが非常に重視されます。PhD studentやポスドクは、研究の計画から実施、結果の分析、プレゼンテーションまで主体的に行い、PIはサポートと資金確保に専念しています。一方、日本ではPIがより実務を管理するケースが多く、学生やポスドクが主体的に研究を進める文化は少ないように感じます。また、米国ではボランティアを含む学生の貢献度が研究者としての評価やキャリア形成に直結している点も大きな違いです。

 こうした環境は自由度が高い反面、自己管理能力や計画力を強く求められます。とくに留学生にとっては、英語でのコミュニケーションや報告も求められるため、日本での研究生活とは異なる学びや挑戦が毎日あります。

 

 

 


バックナンバー

3 海外研修留学便り【米国留学記(高橋 洋子氏)】第3回

2 海外研修留学便り【米国留学記(高橋 洋子氏)】第2回

1 海外研修留学便り【米国留学記(高橋 洋子氏)】第1回

生存時間分析 その4【「実践的」臨床研究入門】第58回

提供元:CareNet.com

本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。

Cox比例ハザード回帰モデルによる交絡因子調整の実際

 前回まで、筆者らが出版した臨床研究の事例論文をもとに、Cox比例ハザード回帰モデルによる交絡因子の調整の考え方を解説しました。今回からは、われわれのResearch Question(RQ)をCox比例ハザード回帰モデルの数式(連載第57回参照)に当てはめて考えてみます。

 アウトカムは「末期腎不全(透析導入)」であり(連載第49回参照)、生存時間分析においては、打ち切りの概念を含んだイベント発生の有無のデータに加え、at riskな観察期間のデータが必要でした(連載第37回第41回参照)。

・Censor:イベント発生の有無(イベント発生=1、打ち切り=0)
・Year:at riskな観察期間(連続変数)

 検証したい要因は、推定たんぱく質摂取量0.5g/kg標準体重/日未満(連載第49回参照)、すなわち「厳格低たんぱく食の遵守」です。

 交絡因子は以下の要因を挙げています(連載第49回参照)。

年齢、性別、糖尿病の有無、血圧、ベースラインeGFR、蛋白尿定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値

 これらの要因をCox比例ハザード回帰モデルの数式に当てはめると、次のようになります。

ht|treat、age、sex、dm、sbp、eGFR、Loge_UP、albumin、hemoglobin)
 =ht)×exp(β1treat)×exp(β2age)×exp(β3sex)×exp(β4dm)×exp(β5sbp)×exp(β6eGFR)×exp(β7Loge_UP)×exp(β8albumin)×exp(β9hemoglobin)
 =ht)×exp(β1treat+β2age+β3sex+β4dm+β5sbp+β6eGFR+β7Loge_UP+β8albumin+β9hemoglobin)

 treat:厳格低たんぱく食の遵守の有無(あり=1、なし=0)
 age:年齢(連続変数)
 sex:性別(男性=1、女性=0)
 dm:糖尿病の有無(あり=1、なし=0)
 sbp:収縮期血圧(連続変数)
 eGFR :ベースラインeGFR(連続変数)
 Loge_UP:蛋白尿定量_対数変換(連続変数)(連載第48回参照)
 albumin:血清アルブミン値(連続変数)
 hemoglobin:ヘモグロビン値(連続変数)
 βn:各説明変数に対応する回帰係数

 ここで求めたいのは、検証したい要因である厳格低たんぱく食の遵守の有無を示す変数treatに対応する回帰係数β1の指数変換値exp(β1)です。exp(β1)は、上述のようにモデルに投入したすべての説明変数(交絡因子)の影響を多変量解析で調整したハザード比(adjusted hazard ratio:aHR)を表します。すなわち、交絡因子を調整した後の厳格低たんぱく食遵守群と非遵守群のHRを示します。実際には、これらの回帰係数やaHRはEZR(Eazy R)などの統計解析ソフトを用いて、データ・セットから点推定値と95%信頼区間を推定します。

 さて、Cox比例ハザード回帰モデルを適用するためには「比例ハザード性」の仮定が必要であることはすでに説明しました(連載第55回参照)。まずはKaplan-Meier曲線を描いて、生存曲線が交差していないことを確認することも解説しました。しかし、「比例ハザード性」の検証には、二重対数プロット(log-log plot)を評価することが必須とされています。

 それでは、仮想データ・セットからEZRを使用して二重対数プロットを描いてみます。

 仮想データ・セットをダウンロードする

 まず、仮想データ・セットをダウンロードし、下記のデータが格納されていることを確認してください。

・A列:ID
・B列:Treat(1;厳格低たんぱく食遵守群、0;厳格低たんぱく食非遵守群)
・C列:Censor(1;アウトカム発生、0;打ち切り)
・D列:Year(at riskな観察期間)

 次に、以下の手順でEZRに仮想データ・セットを取り込みましょう。

「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」

 仮想データ・セットがインポートできたら、下記の手順で二重対数プロットを描画します。

「統計解析」→「生存期間の解析」→「生存曲線の記述と群間の比較(Logrank検定)」を選択

 下記のウィンドウが開いたら、以下のとおりにそれぞれの変数を選択してください。

・観察期間の変数:Year
・イベント(1)、打ち切り(0)の変数:Censor
・群別する変数を選択:Treat

 層別化変数は選択なし、その他の設定はとりあえずデフォルトのままで、「OK」ボタンをクリックします。

 ここまでのEZRのGraphic User Interface(GUI)操作ではKaplan-Meier曲線だけが出力されますが、その際に自動生成されるRスクリプトに少し手を加えて、二重対数プロットを出力するという手順になります。

 Rスクリプトのウィンドウに表示されたコードから、以下の行を探してください。

plot(km, bty=”l”, col=1:32, lty=1, lwd=1, conf.int=FALSE, mark.time=TRUE, xlab=”Year”, ylab=”Probability”)

 このコードの末尾に、二重対数プロットを描画するオプションのコード(fun=”cloglog”)を加え、またY軸ラベル(ylab)も、わかりやすいようにlog(-log(Probability)に変更します。

plot(km, bty=”l”, col=1:32, lty=1, lwd=1, conf.int=FALSE, mark.time=TRUE, xlab=”Year”, ylab=” log(-log(Probability))”, fun=”cloglog”)

 修正したコードをRスクリプトのウィンドウにコピペし、下図のようにカーソルを合わせた状態で「実行ボタン」をクリックします。

 下図のような二重対数プロットが描けましたか。

 各群の曲線を視覚的に確認し、この図のようにおおむね平行であれば「比例ハザード性」の仮定は成立すると判断でき、Cox比例ハザード回帰モデルの適用の妥当性が担保されます。

講師紹介

harasense

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和医科大学臨床疫学研究所 所長・教授
昭和医科大学大学院医学研究科 衛生学・公衆衛生学分野/腎臓内科学分野 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授

[略歴]
1996年昭和大学(現昭和医科大学)医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。


バックナンバー

58. 生存時間分析 その4

57. 生存時間分析 その3

56. 生存時間分析 その2

55. 生存時間分析 その1

54. 線形回帰(重回帰)分析 その5

53. 線形回帰(重回帰)分析 その4

52. 線形回帰(重回帰)分析 その3

51. 線形回帰(重回帰)分析 その2

50. 線形回帰(重回帰)分析 その1

49. いよいよ多変量解析 その2

48. いよいよ多変量解析 その1

47. 何はさておき記述統計 その8

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43. 何はさておき記述統計 その4

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40. 何はさておき記述統計 その1

39. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その2

38. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その1

37. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その2

36. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その1

35. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その2

34. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その1

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30. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その5

29. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その4

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17. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その3

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15. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その1

14. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その3

13. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その2

12. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用その1

11. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用その2

10. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用その1

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5. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その2

4. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その1

3. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビューその2

2. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー その1

1. 臨床上の疑問とリサーチ・クエスチョン

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掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

 

海外研修留学便り【米国留学記(高橋 洋子氏)】第2回

[レポーター紹介]
高橋 洋子(たかはし ようこ)

山形大学医学部 卒業
東京医療センター 外科研修医
慶應義塾大学 一般・消化器外科 乳腺班
国際医療福祉大学/医療法人順和会 山王病院 乳腺外科
帝京大学医学部 外科
がん研究会有明病院 乳腺外科
University of Hawai`i Cancer Center, Translational and Clinical Research, Cancer Biology, Research Scholar

アクセプトされた論文と投稿を断念した論文、論文執筆の面白さと難しさ

 私は現在、乳がんに関する研究に取り組んでおり、主に gene signature に関する研究を進めるのと並行して、炎症性乳がんに関するレビュー論文の執筆も行いました。幸運にも、このレビュー論文は npj Breast Cancer にアクセプトされ、出版に至りました。さまざまな論文を読みながら執筆を進める中で、新しい論文が次々に発表されるという、レビュー論文ならではのスピード感のある世界を経験することができました。

 渡米直後には、新しくチームに加わり、CDK4/6阻害薬に関するレビュー論文を中心となって作成し、投稿寸前まで進めたのですが、同じテーマの論文が狙っていた雑誌で先に出版されてしまい、チームで相談のうえ、投稿を断念した経験もあります。早く完成させた分、正直心が折れそうになりましたが、これも研究の現実として受け入れるしかないと感じました。

 gene signature に関する研究は、PIと共に働いてきた先生の基礎データを基に仮説を立てて進めました。製薬会社から提供された臨床試験データを用いて解析を行いましたが、残念ながら仮説を支持する明確な結果は得られず、わずかな傾向は見られたものの、結果としてはネガティブであり、公表には至りませんでした。留学直後から取り掛かり、時間をかけてデータ解析まで進めただけに、正直ネガティブデータとして公表できないかと模索しましたが、今後の研究展開を考えると、現時点で発表するべきではないと判断しました。

 ハワイでの研究生活については、よく「憧れる」と言われますが、実際にはワイキキに行くこともほとんどなく、地元の人々との生活が中心のため、観光気分を味わうことはほぼありません(笑)。ただし、気候は素晴らしく、毎日青い空を見られることは、研究でネガティブな結果が出ても少し救われるところでもあります。

研究の合間に週末はラボの仲間と月一でハイキングに。住む前はハワイのイメージといえば海でしたが、米国人にとってのハワイの島々は、絶景を伴うハイキングスポットだそうです

この日は日の出の時間に10人程度で集まってハイキング。岩に穴が空いているlocalのみぞ知るハイキングスポットへ

現在注目されている米国での研究トピック

実はハワイ大学のバレーボールチームは全米大学1位を2年連続でとったこともある強豪。卒業後イタリアプロリーグに進む人もいるほど。この日はがん関連のイベントがありCancer Centerメンバー数十人で、スペシャルシートへ。昨シーズンは優勝とはなりませんでしたが、勝利をおさめた瞬間です!

 米国での研究トピックとしては、やはり AI は外せません。私が現在行っている研究の1つは AI を用いた乳がん診断ですが、渡米前にもがん研究会と Google 社で行った研究に従事し AI 診断の難しさを感じていました。しかし、米国で画像を見てみると、高濃度乳房は少なく、AI 診断の可能性を強く感じます。近年では ChatGPT のような生成 AI も研究支援やデータ解析など幅広い用途で活用されており、臨床・研究の双方で注目されています。

 一方で、政策による補助金削減は組織にも大きな影響を及ぼしており、ハワイ大学でも新規採用の凍結や、バチェラー以上の学歴者のみ採用可能といった変化が見られます。渡米してまだ半年程度ですが、日々大きな環境変化を肌で感じています。また、入国審査がいつ厳しくなるかわからないため、大学では海外からの学生やスタッフに対して原則米国を出ることを認めない方針が取られており、日本に帰ることもなかなか叶いません。

 こうした状況の中でも、日々の研究や執筆を通じて新しい知見を得ることは、臨床経験とはまた異なる学びを与えてくれます。特に乳がん分野では、遺伝子解析や AI の活用といった新しい技術が急速に進展しており、これらを臨床に応用するための研究は今後ますます重要になると感じています。 

 

 

 


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3 海外研修留学便り【米国留学記(高橋 洋子氏)】第3回

2 海外研修留学便り【米国留学記(高橋 洋子氏)】第2回

1 海外研修留学便り【米国留学記(高橋 洋子氏)】第1回

生存時間分析 その3【「実践的」臨床研究入門】第57回

提供元:CareNet.com

本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。

Cox比例ハザード回帰モデルによる交絡因子の調整

 前回まで、Cox比例ハザード回帰モデルの基本的な考え方を説明しました。今回は、Cox比例ハザード回帰モデルによる交絡因子(連載第45回参照)の調整について、前回に引き続き筆者らが出版した実際の臨床研究論文1)のリサーチ・クエスチョン(RQ)を例にして解説します。

 Cox比例ハザード回帰モデルは、イベント発生までの時間(生存時間)に対する多変量解析手法です(連載第50回参照)。このモデルにより、特定の要因がハザード(ある瞬間におけるイベント発生のリスク、すなわち瞬間的なイベント発生率)に与える影響を評価できます(連載第55回参照)。

 Cox比例ハザード回帰モデルの基本的な形は以下のような積(かけ算)の式で表されます(連載第56回参照)。

ht|X)=h0t)×exp(β1X1+β2X2・・・+βnXn
 ht|X):特定の説明変数のセットXを持つ個体の時点tにおけるハザード
 h0t):基準ハザード関数
 X1X2、…、Xn:交絡因子を含む説明変数
 β1、β2、…、βn:各説明変数に対応する回帰係数

 上記のように、Cox比例ハザード回帰モデルを用いた交絡因子の調整は、回帰モデルの式に交絡因子を説明変数として含めることで行われます。

 たとえば、事例論文1)の要因である透析導入前腎専門医診療(Pre-Nephrology Visit:PNV)の有無という変数X1が透析導入後早期(1年以内)の死亡のハザード(アウトカム)に与える影響を評価する際に、糖尿病(DM)の有無(X2)が交絡因子であるとします。この場合、回帰モデルの式は以下のようになります。

ht|X1X2)=h0t)×exp(β1X1)×exp(β2X2)=h0t)×exp(β1X1+β2X2
 X1:PNVの有無(あり=1、なし=0)
 X2:DMの有無(あり=1、なし=0)

 この回帰モデルでは、回帰係数β1は、DMの有無(X2)の効果であるexp(β2X2)を調整したうえでの、PNVの有無(X1)がハザードに与える影響を推定します(連載第55回第56回参照)。DMという交絡因子の影響を取り除いたPNVの調整ハザード比(adjusted hazard ratio:aHR)は exp(β1)となります。

 事例論文1)では、交絡因子として、年齢、性別、血液検査データ(ヘモグロビンや血清アルブミンなど)やDMを含む14の並存疾患などの要因を交絡因子として調整したと記載されています。したがって、この研究で実際に使用されたCox比例ハザード回帰モデルの簡略化された概念的な式は、以下のようになります。

ht|PNV、Age、Sex、…、DM)=h0(t)×exp(βPNV・PNV+βAge・Age+βSex・Sex+・・・+βDM・DM)

 βPNVの指数変換 exp(βPNV)がPNVのaHRとなり、事例論文1)で点推定値は0.57と報告されています 。95%信頼区間(95%confidence interval:95%CI)は0.50〜0.66と1をまたいでおらず、p<0.0001と統計学的にも有意差を認めました。

 これは、すべての交絡因子を統計的に調整した後でも、PNVを受けた患者群はPNVを受けなかった患者群と比較して、透析導入後早期(1年以内)死亡のリスクが43%低いことを意味します(1-0.57=0.43)。腎臓内科医の存在意義? の1つを示す解析結果を出せた、と安堵しました。

【 引用文献 】


講師紹介

harasense

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和医科大学臨床疫学研究所 所長・教授
昭和医科大学大学院医学研究科 衛生学・公衆衛生学分野/腎臓内科学分野 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授

[略歴]
1996年昭和大学(現昭和医科大学)医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。


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58. 生存時間分析 その4

57. 生存時間分析 その3

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55. 生存時間分析 その1

54. 線形回帰(重回帰)分析 その5

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47. 何はさておき記述統計 その8

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41. 何はさておき記述統計 その2

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39. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その2

38. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その1

37. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その2

36. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その1

35. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その2

34. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その1

33. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その8

32. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その7

31. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その6

30. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その5

29. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その4

28. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その3

27. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その2

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25. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その5

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17. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その3

16.リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その2

15. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その1

14. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その3

13. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その2

12. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用その1

11. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用その2

10. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用その1

9. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その3

8. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その2

7. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その1

6. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その3

5. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その2

4. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その1

3. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビューその2

2. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー その1

1. 臨床上の疑問とリサーチ・クエスチョン

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海外研修留学便り【米国留学記(高橋 洋子氏)】第1回

[レポーター紹介]
高橋 洋子(たかはし ようこ)

山形大学医学部 卒業
東京医療センター 外科研修医
慶應義塾大学 一般・消化器外科 乳腺班
国際医療福祉大学/医療法人順和会 山王病院 乳腺外科
帝京大学医学部 外科
がん研究会有明病院 乳腺外科
University of Hawai`i Cancer Center, Translational and Clinical Research, Cancer Biology, Research Scholar

 2023年9月より、米国のUniversity of Hawai`i Cancer Centerに留学しています。この連載の機会をいただきましたので、今後数回にわたり、私の留学経験や研究生活について共有させていただきます。

留学は本当に必要か、40代になってからの留学は遅いのか?

 医師として留学をすることは珍しくありませんが、その目的やタイミングについては人それぞれであり、正解はないことを自分の留学を通じて実感しています。

 私は慶應義塾大学病院で後期研修を受けていた際、基礎研究に従事する機会を得て、ドラッグデリバリーシステムについて、乳がん細胞株やマウスを使った研究に取り組みました。しかし、数年の研究を経て、臨床に専念し、患者さんとの関わりの中で医師としての充実感を感じていました。臨床試験の結果に基づき、治療法が日々進化するのを目の当たりにするうちに、臨床研究への興味が深まりました。

 がん研究会有明病院での勤務を通じて、臨床試験や研究が患者さんにどれほど影響を与えるかを実感し、研究の重要性を強く認識するようになりました。患者さんに研究や臨床試験の重要性を伝える中で、「がんになったことで、他の患者を助けるための道を切り開けるとは思わなかった」と言われたことがありました。この言葉を聞いたとき、医師として患者さんを救うことの素晴らしさと、さらに研究を通じてより多くの患者さんを救う可能性があることに気づかされました。

留学のモチベーション

 正直なところ、留学に対して興味はありましたが、留学が自分の人生に必須だとは考えていませんでした。しかしさまざまな経験を通じて、医師としてだけでなく人間としても成長でき、研究を通じて乳がん診療に貢献できるのであれば、それは外科医としての立場とは異なる方法で患者さんを救うことにつながるのではないかと感じるようになりました。このように、自分が医師として成長し、研究者として新たな貢献ができるかもしれないという希望が、留学を決意する大きな動機となりました。

チャンスは突然やってきた

University of Hawai`i Cancer Center正面玄関より
ハワイ大学マノア校は山側にありますが、Cacner Centerは海に面したKaka’akoキャンパスにあります。開放感があり吹き抜けの構造となっており気持ちがいい建物です

 University of Hawai`i Cancer Centerで新しい研究室が立ち上がるという話を聞き、臨床経験を活かした研究ができるのではないかと感じ、面接を受けることを決意しました。受け入れが決まったとき、まさか40代で留学をするとは思っていなかったので自分でも非常に驚きました。そして、非常に光栄なことだとも感じました。

 日本で奨学金を得て留学をしようとすると40歳未満が対象のものが多く、1つの目安は40歳になります。しかし、準備中に米国では年齢が問題にならないことを再認識しました。「年齢は数字に過ぎない」という言葉があるように、年齢が理由で不利になることはありませんでした。私が日本の乳腺外科医であったことが、こちらでの研究に役立っている場面もあり、その経験を求められることに感謝しています。

 

 

留学の準備と英語能力の証明

 留学が決まった後、正式な受け入れ許可を得るために必要な事務手続きが続きました。その中で英語能力の証明が求められ、TOEFLやTOEICのスコア、あるいは大学職員とのインタビューが必要でした。私は英語を勉強することを趣味として続けており、中学生の頃からNHKラジオ講座を聴いたり、カンファレンスなど英語に触れる機会を大切にしてきました。そのおかげで、面接も問題なくクリアできたと思います。ただ、自己アピールに不安があった私は、友人から「YouTubeで英語のinterview動画を見てみると良い」とアドバイスを受け、それが非常に役立ちました。日本の文化では謙遜が美徳とされますが、自己アピールの重要性を学んだことは貴重な経験でした。

研究に対する背景とアプローチ

 米国に来てから何度も説明してきたことの1つは、日本では専門医であっても、実際には画像診断に関わることが多いということです。とくに乳がん領域では、マンモグラフィ、超音波、MRIなど、米国では放射線科医が担当する読影を乳腺外科医が行うことが一般的でした。

 現在私は、乳がんの薬物治療だけでなく、診断技術の向上を目指す研究にも携わっています。University of Hawai`i Cancer Centerは、NIH(国立衛生研究所)関連のがんセンターとして、太平洋地域唯一の学術機関であり、ハワイを含むグアムやマーシャル諸島など、異なる文化や歴史を持つ地域をカバーしています。私の研究の一部は、乳がんの薬物治療に関するものですが、診断技術の向上にも力を入れています。実は、ハワイ以外の島嶼地域にはマンモグラフィ装置を管理する体制が整っていないため、どのように診断を円滑に進めるか、AIを活用した読影技術や新たな診断方法の開発にも関わっています。日本での経験を活かして、乳がん診断や治療に関わる研究を進められることは大きな幸運であり、40代後半で臨床医としての経験を積んできたからこそ、期待される役割を果たすことができると感じています。

ある日の帰宅時の空
風が強かったこの日は雲がなんとも言えない景色を作り出していました。localのお友達からも写真が送られてきた日でした

Cancer Centerからの夕日
この日は残って仕事をしていたところ、お隣のラボの人に「夕日を見に行ったほうがいい」と声をかけられました

留学生活の現実

ハロウィンのひとこま
ハロウィンの職場は気合いがすごい。カルチャーの違いを感じることは日々あり、それを楽しんでいます

 留学を決めた後、ハワイで生活を始めると、想像以上の挑戦が待ち受けていました。青空と透き通る海、美しい夕陽が日々の風景として広がる一方で、物価の高さやホームレス問題が深刻であることも実感しています。ハワイは楽園のような場所でありながら、現実の厳しさも抱えていることを、生活を通して学びました。また、かつて王国だったハワイという土地の歴史やその光と闇に触れる機会もあり、これらもまた留学生活の一部として貴重な経験となっています。

 

 

  

 

 

 


バックナンバー

3 海外研修留学便り【米国留学記(高橋 洋子氏)】第3回

2 海外研修留学便り【米国留学記(高橋 洋子氏)】第2回

1 海外研修留学便り【米国留学記(高橋 洋子氏)】第1回

ASCO2025 レポート 乳がん

提供元:CareNet.com

レポーター: 下村 昭彦氏
(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究センター病院 がん総合内科/乳腺・腫瘍内科)

 

 2025年5月30日~6月3日にかけて開催されたASCO2025は、”Driving Knowledge to Action:Building a Better Future”というテーマで実施された。昨年つらい思いをした円安も若干改善され(1ドル145円前後)、航空運賃の高騰は変わらないものの、若干参加しやすくなったと言えるだろうか(とはいえ、ハンバーガーとコーラで2,500円はつらい…)。

 乳がん領域では明日からの臨床が変わる演題が多数公表された。トラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)の試験は昨年に引き続き、Plenary session押し出しの早朝専用セッションが設けられていた。本稿では、日常臨床を変える4演題と、日本からの発表の1演題を概説する。

SERENA-6試験

 ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がんでは、内分泌耐性をどう乗り越えるかが重要な話題となっており、ASCO2025でも複数の演題が発表された。

 SERENA-6試験は、HR陽性HER2陰性進行乳がんにおいて、アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬(CDK4/6i)治療中に循環腫瘍DNA(ctDNA)で検出されたESR1変異を有する患者を対象とした盲検化ランダム化第III相試験である。この試験では、画像上の病勢進行(PD)前にAIを経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるcamizestrantに切り替えることで無増悪生存期間(PFS)の改善が得られるかを検証した。

 主要評価項目である主治医評価によるPFSは、16.0ヵ月vs.9.2ヵ月(ハザード比[HR]:0.44(95%信頼区間[CI]:0.31~0.60、p<0.00001)とcamizestrant群で有意に良好であった。副次評価項目のPFS2(次治療でPDとなるまでの期間)についてもHR:0.52(95%CI:0.33~0.81、p=0.0038)とcamizestrant群で有意に良好であった。また、EORTC QLQ-C30を用いたQOL評価では、QOL悪化をイベントとしたtime to deterioration(TTD)がエンドポイントとされ、TTD中央値が23.0ヵ月vs.6.4ヵ月(HR:0.53、95%CI:0.33~0.82、p<0.001)とcamizestrant群で有意に良好であった。Grade3以上の有害事象は33.2%にみられたが、忍容性はおおむね良好であり、ctDNAを用いた個別化介入の有用性を示した重要な結果といえる。なお、この結果はNew England Journal of Medicine(NEJM)に同日掲載された(Bidard FC, et al. N Engl J Med. 2025 Jun 1. [Epub ahead of print])。

 ctDNAでESR1変異の出現をモニタリングし画像PDとなる前に治療を変更する戦略は、すでにPADA-1試験でその有効性が示され期待されている(Bidard FC, et al. Lancet Oncol.2022;23:1367-1377. )。PADA-1試験ではSERDとして注射剤のフルベストラントが使用された。SERENA-6試験では経口SERDが用いられており、効果ならびに投与の簡便性の向上が期待される画期的な試験であると言える。その一方で、本試験の結果を日常臨床で用いるには多くの懸念点が残る。ESR1変異の出現をモニタリングして治療を変更する群と変更しない群を比較する試験というのは、治療戦略(画像PDを待つか待たないか)を比較する試験である。PADA-1試験ではAI継続群でフルベストラント+CDK4/6iへのクロスオーバーが許容されていたが、SERENA-6試験ではcamizestrant±CDK4/6iにクロスオーバーされているのはわずかに3%である。本来は「早く治療変更するか」「画像PDを待って治療変更するか」を比較するべき試験であるにもかかわらず、クロスオーバーされないということは戦略を比較する試験とはなっていない、と言わざるを得ない。ESR1変異はAI耐性の予測因子であり、AI群でPFSが短いことは当然の帰結である。

 PFS2の結果についてもcamizestrantへのクロスオーバーがなく他の経口SERDがどの程度使用されたか不明である以上、評価が困難である(camizestrant群では常に薬剤の使用ラインが多いため、比較できない)。本試験のデザインでは、真にこの戦略が有効であるかどうかは、全生存期間(OS)の結果を見なければ判断できないが、それも後治療に不均衡があれば評価できない。QOLについてもTTDがcamizestrant群で良好なのは当然で、AI群のほうが早く病勢進行するため、症状出現によるQOL低下で説明できる。

 さらなる問題はESR1変異を検出するctDNA検査を2~3ヵ月ごとに行うコストの問題である。本試験ではリキッドバイオプシーとしてGuardant360が使用されていたが、非常に高価である。ESR1に特化した独自アッセイの開発とバリデーションが必要である。またESR1のサーベイランスに参加した3,256例のうち、ESR1変異が検出されたのは548例(画像PDを伴うものを含む)、ランダム化されたのは315例と10%弱である。果たしてこの10%のために高価な検査を定期的に実施することが有効であろうか? またサーベイランス期間中にESR1変異が検出されず、PDともならなかった患者は1,949例である。CDK4/6i併用1次内分泌療法のPFSが30ヵ月程度と考えられる中で、全例にctDNAの評価をし続けるのか? 本試験結果を日常臨床に用いるには、OSを含めた「戦略の有効性」の証明と、ctDNAサーベイランスの対象となる症例群の絞り込みが必要であろう。

VERITAC-2試験

 内分泌耐性をこれまでと異なる作用機序で克服しようとしたのがVERITAC-2試験である。vepdegestrantはPROTACと呼ばれる薬剤であり、エストロゲン受容体(ER)のユビキチン化を促進してERを分解する新たな機序を有する。VERITAC-2試験は、vepdegestrantの2次治療における有効性を検証した非盲検ランダム化第III相試験である。ESR1にフォーカスしたSERENA-6試験と異なり、作用機序そのものが違う薬剤の効果を確認している。前治療として1レジメンまでの内分泌療法歴がある患者を対象に、vepdegestrantとフルベストラントが比較された。

 主要評価項目であるESR1変異陽性集団における盲検下独立中央判定(BICR)によるPFSは、5.0ヵ月vs.2.1ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.42~0.77、p<0.001)とvepdegestrant群で有意に良好であった。一方、もう1つの主要評価項目である全患者集団におけるPFSは3.7ヵ月vs. 3.6ヵ月(HR:0.83、95%CI:0.68~1.02、p=0.07)と両群間の有意差を認めなかった。主治医評価によるPFSも同様の結果であった。有害事象はGrade 3以上が23%vs.18%とvepdegestrant群でやや多い傾向であり、倦怠感の頻度が最も高かった。本試験もNEJMに同日掲載された(Campone M, et al. N Engl J Med. 2025 May 31. [Epub ahead of print])。

 PROTACはこれまでの内分泌療法とはまったく異なる機序で効果を発揮する薬剤で、今後が期待される。一方で、なぜERを分解する作用を有する薬剤にもかかわらず(ESR1変異の有無にかかわらず効果が期待できると考えられる)、ESR1変異を有する場合にのみフルベストラントに対する優越性を示せたのかは、現時点では不明である。また、今後臨床に応用するには試験デザインに課題が残る。CDK4/6i併用内分泌療法後の治療としては、PIK3CAAKT1PTENなどの変異の有無によって、SERDとAKT阻害薬(Turner NC, et al. N Engl J Med. 2023;388:2058-2070.)やPI3K阻害薬(Andre F, et al. N Engl J Med 2019;380:1929-1940.)、あるいはCDK4/6iの併用(Kalinsky K, et al. J Clin Oncol. 2025;43:1101-1112.)が行われる。CDK4/6i後の治療として内分泌療法単独が選択されることは多くなく、vepdegestrantも他の分子標的薬との併用療法の開発が期待される。

DESTINY-Breast09(DB-09)試験

 HER2陽性進行乳がんの治療は、2010年代はじめのペルツズマブ、トラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1)の承認で大きく変化したが(Swain SM, et al. N Engl J Med. 2015;372:724-734.Verma S, et al. N Engl J Med. 2012;367:1783-1791.)、2019年のT-DXdの登場はまた新たに大きく地図を塗り替えた(Modi S, et al. N Engl J Med. 2020;382:610-621.Cortes J, et al. N Engl J Med. 2022;386:1143-1154.)。T-DXdはHER2陽性乳がんに対する試験で既存治療と比較して圧倒的な有効性を示し、2次治療以降の標準治療となっている。一方で、血球減少や悪心、またT-DXdを特徴付ける有害事象である薬剤性肺障害(ILD)など、長期間有効であるからこそ悩ましい有害事象の管理が必要である。

 DB-09試験は、HER2陽性進行/転移乳がんの初回治療として、T-DXd+ペルツズマブ(T-DXd+P)併用の有効性を検証した非盲検ランダム化第III相試験である。対照群は標準治療であるタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(THP)で、主要評価項目はBICRによるPFSであった。

 結果は、PFS中央値40.7ヵ月vs.26.9ヵ月(HR:0.56、95%CI:0.44~0.71、p<0.00001)とT-DXd+P群がTHP群に対して圧倒的に良好な結果となった。主治医判定のPFSではTHP群のPFSが若干悪く(20.7ヵ月、95%CI:17.3~23.5)、非盲検化試験であることによるバイアスの存在が疑われるものの、傾向としてはBICRと同様であった。また、奏効率(ORR)は85.1%vs.78.6%で、PRの割合は70%と両群間で差がないものの、CRは15.1%vs.8.5%とT-DXd+P群で良好であった。OSはimmatureなものの、HR:0.84(95%CI:0.59~1.19)とT-DXd+P群でやや良好な傾向がみられた。後治療としてTHP群ではT-DXdやT-DM1などの抗体薬物複合体(ADC)が用いられている割合が多かったが、T-DXd+P群では抗HER2抗体を含むレジメンが多かった。2次治療までのPFSであるPFS2もHR:0.60(95%CI:0.45~0.79、p=0.00038)と、T-DXd+Pで良好であった。Grade 3以上の毒性の頻度は両群間で差はなかったが、 ILDの発現頻度は12.1%vs.1.0%とT-DXd+P群で多いものの大多数はGrade 2までであり、大きな安全性の懸念はないと考えられた。

 実臨床で使う中で、THPは非常に有効な治療であることは臨床医全員が実感していることだと思う。DB-09試験の結果から、T-DXd+P療法はHER2陽性初回治療の新たな選択肢となる可能性が示された。一方で、いくつかの懸念点が残る。DB-09試験ではペルツズマブを併用しないT-DXd群が設定されていたが、その結果はまだ発表されていない。ペルツズマブを併用しないことで、有害事象が軽減する可能性がある。また、T-DXd±P群では毒性によるT-DXd中止後に、抗HER2抗体による維持療法が許容されていたが、実際に維持療法が行われた症例はわずか8.7%であった。一方で、THP群の約70%は毒性もしくは別の理由(タキサンは通常6~10コースの投与後に中止する)でタキサンが中止されている。THP群でタキサン中止後はHP(ほとんど有害事象が気にならない)による維持療法を実施するが、現在は皮下注製剤があり投与時間も大幅に短縮されている。したがって、T-DXd+Pの有効性は圧倒的であるものの、有害事象が継続し、さらに時間毒性という点ではTHPに軍配が上がると言わざるを得ない。有効な治療でありPFSが非常に長いからこそ、いかに患者負担を減らすことができるかが今後の課題となる。

ASCENT-04試験

 PD-L1陽性進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)併用化学療法により予後が改善したが(Cortes J, et al. N Engl J Med. 2022;387:217-226.Schmid P, N Engl J Med.2018;379:2108-2121.)、それでも十分ではない。また、TNBCに対してはサシツズマブ・ゴビテカン(SG)(Bardia A, et al. N Engl J Med.2021;384:1529-1541.)や、HER2低発現に対するT-DXd(Modi S, et al. N Engl J Med.2022;387:9-20.)など、ADCの導入により予後の改善が期待される。では、PD-L1陽性進行TNBCに対してADCとICIの併用は有用なのであろうか。

 ASCENT-04試験は、未治療のPD-L1陽性進行TNBCに対して、SG+ペムブロリズマブ(P)併用の有効性を検証した非盲検ランダム化第III相試験である。比較対照は化学療法+Pで、主要評価項目であるBICR評価によるPFSは、SG+P群で11.2ヵ月 vs.7.8ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.51~0.84、p<0.001)と、SG+P群で有意に良好であった。主治医評価PFSも同様であった。OSはHR:0.89(95%CI:0.62~1.29)とSG+P群で良さそうな傾向はみられたものの、immatureで統計学的な差は認めなかった。ORRは60%vs.53%とSG+P群でやや良好な傾向がみられ、とくにCRが13%vs.8%とSG+P群で多かった。安全性については、Grade 3以上の下痢(10%vs.2%)がSG+P群で多かった以外に両群間に差はなく、好中球減少症(約65%)や過敏反応(約20%)など予測された毒性がみられたが、許容範囲内であった。本試験の結果をもって、SG+P療法はPD-L1陽性進行TNBCの初回治療における新たな標準療法となった。

CECILIA試験

 最後に日本から発表された試験を紹介する。タキサンによる末梢神経障害(CIPN)は対処の難しい有害事象であり、冷却や圧迫による予防が試みられている(Hanai A, et al. J Natl Cancer Inst. 2018;110:141-148.Tsuyuki S, et al.Breast. 2019;47:22-27.)。一方、冷却による苦痛で予防を継続できない患者も少なくない。CECILIA試験は、パクリタキセルによるCIPN予防のために四肢冷却装置を用いる際に、13℃と25℃の冷却温度における有効性を検証したランダム化比較試験である。パクリタキセルによる治療を受ける乳がん患者を対象に、13℃による冷却の25℃(最低限の予防効果が期待される冷却温度)に対する優越性を検証するデザインとなっている。主要評価項目はパクリタキセル終了時点でのPNQ(patient neurotoxicity questionnaire)スコアD以上の割合とされた。

 結果は、25℃群で29.3%(95%CI:19.4~21.0)、13℃群で33.3%(95%CI:22.8~45.2)、p=0.76と両群間の差は検出されなかった。他の評価項目であるパクリタキセル終了3ヵ月時点でのPNQスコアD以上は25℃で16.2%、13℃で32.0%(p=0.035)と25℃で少ない傾向を認めた。CTCAE、患者報告CTCAEによるGrade 2以上のCIPNは両群間に差がなかった。手足の表面温度は13℃群で低かった。これらから、CIPN予防として手足を冷却する際には25℃で十分な可能性があるが、あくまでも13℃の優越性を検証する試験で、優越性を示せなかったという結果であり、真の至適温度については今後も検討が必要である。


レポーター紹介

下村 昭彦 ( しもむら あきひこ ) 氏
国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究センター病院
 がん総合内科/乳腺・腫瘍内科

生存時間分析 その2【「実践的」臨床研究入門】第56回

提供元:CareNet.com

本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。

Cox比例ハザード回帰モデルの基本的な考え方 その2

 前回は、生存時間分析における基本的な概念である「ハザード」と「ハザード比」、また「比例ハザード性」の前提について説明しました。今回からは、筆者らが出版した実際の臨床研究論文1)のリサーチ・クエスチョン(RQ)に沿って、Cox比例ハザード回帰モデルの考え方を解説します。

 われわれは、以下のクリニカル・クエスチョン(CQ)とRQ(PECO)を立案しました。

・CQ:透析導入前腎専門医診療は透析導入後早期の予後を改善するか?
・P(対象):新規透析導入患者
・E(要因):透析導入前腎専門医診療あり
・C(対照):透析導入前腎専門医診療なし
・O(アウトカム):透析導入後早期(1年以内)の死亡

 このRQの背景を簡単に説明します。筆者は、初期研修以降「都市型」地域中核病院の腎臓内科に長らく勤務しておりました。そこでは腎臓/透析専門医が多く在籍し他科連携も良く、早期からの腎専門医診療は当たり前の環境で育ちました。米国留学直後、医局人事により地方型地域中核病院にいわゆる「ひとり医長」として赴任し、腎臓/透析専門医診療へのアクセス格差を実感しました。このような実体験に基づき、「透析導入前腎専門医診療は透析導入後早期の予後に影響するのでは?」というCQを着想したという訳です。

 それでは、透析導入前腎専門医診療を受けた群と受けなかった群の比較を考えたときに、透析導入後1年以内の早期死亡のハザード(瞬間的なイベント発生率)はどのような変数に影響されるかを考えてみます。まず、透析導入前腎専門医診療を受けたか否か、という変数です。次に考慮すべき変数は時間です。前回説明したとおり、ハザードは時々刻々と変化することが予想されるからです。実際、このRQで設定した透析導入後1年以内の早期死亡のハザードは、透析導入後半年以内という前半で高く、半年以降の後半は低くなることが先行研究で知られています。

そして、透析導入後1年以内の早期死亡のハザードは、透析導入前腎専門医診療の有無という変数と時間という変数の積(かけ算)モデルで規定できる、とします。この関連性を、以下の数式で表します。

ht|X)=h0t)×exp(b×X

 もし、透析導入前の腎専門医診療が「あり」ならX=1、「なし」ならX=0となります。それぞれの群の変化するハザードは、時間の効果である基準ハザード関数h0t)と、透析導入前腎専門医診療の効果であるexp(b×X)の積で決まるということです。データからbという回帰係数を推定することになりますが、これは統計解析ソフトが計算してくれます。

 この数式から、透析導入前腎専門医診療あり群のハザード、腎専門医診療なし群のハザードはそれぞれ以下に示したようになります。

透析導入前腎専門医診療あり群のハザード
ht|1)=h0t)×exp(b×1)=h0t)×exp(b

透析導入前腎専門医診療なし群のハザード
ht|0)=h0t)×exp(b×0)=h0t

よって透析導入前腎専門医診療あり群となし群のハザード比は
ht|1)/ht,0)=h0t)×exp(b)/h0t)=exp(b)

つまり、ハザード比はexp(b)となります。

 ところで、透析導入前腎専門医診療あり群となし群のハザードを示した数式をあらためて眺めてみると、どちらの式にもh0t)という時間の関数が含まれています。すなわち、いずれも時間の効果の影響を受けていることがわかります。しかし、ハザード比の数式では時間の関数h0t)が分子と分母で相殺されて消えているので、ハザード比は時間の効果の影響を受けていません。したがって、このハザード比の数式からも、ハザード比が時間によらず一定という比例ハザード性の前提が用いられていることがわかります。このように比例ハザード性の前提が用いられた回帰モデルのことを比例ハザードモデルと呼びますが、開発したCox博士の名前を冠して、Cox比例ハザードモデルやCox回帰モデルとも言います。

【 引用文献 】


講師紹介

harasense

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和医科大学臨床疫学研究所 所長・教授
昭和医科大学大学院医学研究科 衛生学・公衆衛生学分野/腎臓内科学分野 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授

[略歴]
1996年昭和大学(現昭和医科大学)医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。


バックナンバー

58. 生存時間分析 その4

57. 生存時間分析 その3

56. 生存時間分析 その2

55. 生存時間分析 その1

54. 線形回帰(重回帰)分析 その5

53. 線形回帰(重回帰)分析 その4

52. 線形回帰(重回帰)分析 その3

51. 線形回帰(重回帰)分析 その2

50. 線形回帰(重回帰)分析 その1

49. いよいよ多変量解析 その2

48. いよいよ多変量解析 その1

47. 何はさておき記述統計 その8

46. 何はさておき記述統計 その7

45. 何はさておき記述統計 その6

44. 何はさておき記述統計 その5

43. 何はさておき記述統計 その4

42. 何はさておき記述統計 その3

41. 何はさておき記述統計 その2

40. 何はさておき記述統計 その1

39. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その2

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生存時間分析 その1【「実践的」臨床研究入門】第55回

提供元:CareNet.com

本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。

Cox比例ハザード回帰モデルの基本的な考え方

 今回からは、生存時間分析における多変量解析について解説します。

 われわれのResearch Question(RQ)のプライマリアウトカムは末期腎不全であり、そのアウトカム指標は末期腎不全の発生率です(連載第40回参照)。仮想データ・セットを使ってExcel関数で末期腎不全の発生率を計算する方法を示しました(第41回参照)。ここで用いた仮想データ・セットには「打ち切り」(連載第37回参照)のデータも含まれています。この「打ち切り」という事象も考慮し、Kaplan-Meier法を用いた生存時間曲線を描き、さらに厳格低たんぱく食遵守群と非遵守群の2群でLog-rank検定を用いて比較するまでのEZR(Eazy R)の操作手順についても解説しました(連載第42回第43回第44回参照)。

 発生率やKaplan-Meier曲線は生存時間に関する記述統計です(連載第50回参照)。この項では、アウトカム指標(目的変数)の型が生存時間である場合に適応される多変量解析手法、「Cox比例ハザード回帰モデル」(連載第49回第50回参照)の基本的な考え方とその実際について述べていきます。まず初めに、生存時間分析において使用される「ハザード」と「ハザード比」、さらに「比例ハザード性」といった生物統計学の重要な概念について説明します。

ハザードとハザード比

 ハザードとは、「ある瞬間におけるイベント発生のリスク」のことであり、「瞬間的なイベント発生率」と言い換えることもできます。

 ハザードは時間とともに変化する(時間依存的)ことがあります。

例:透析導入直後は死亡のリスクが高く(ハザードが高い)、透析導入後ある程度時間が経過するにつれて安定しリスクが下がる(ハザードが低い)が、加齢に伴いリスクが再上昇する(ハザードが高い)、など。

 ハザード比(Hazard ratio:HR)は2つの比較群におけるハザードの比です。HRは、一方の群が他方の群と比較して、どの程度イベント発生のリスクが高いかを相対的に示しています。HRは単に「イベントが発生したかどうか」だけでなく、「いつイベントが発生したか」という「時間」の要素を考慮したリスク指標です。それゆえ、HRは時間経過が重要な生存時間分析において、治療効果やリスク要因の影響を評価する際によく使われ、主に「Cox比例ハザード回帰モデル」を用いて推定されます。

比例ハザード性

 HRを解釈するうえでの重要な前提条件の1つに「比例ハザード性」があります。「比例ハザード性」とは、異なる群間におけるハザードの比が時間によらず一定である、という仮定です。前述したように、ハザード(瞬間的なイベント発生率)自体は観察期間中に経時的に変化し得るものの、HRは観察期間を通じて一定である、ということです。生存時間分析において、「Cox比例ハザード回帰モデル」はこの「比例ハザード性」の仮定のもとにHRを推定します。

 Kaplan-Meier曲線は生存時間分析において、イベントが発生するまでの時間(生存時間)の分布を視覚的に表現するグラフでした(連載第42回参照)。主に、異なる群間の生存率(イベント非発生率)の時間経過に伴う変化を比較する際に用いられます(連載第43回第44回参照)。

 Kaplan-Meier曲線は「比例ハザード性」の仮定を視覚的に評価する簡便な手段でもあります。それでは、以前に仮想データ・セットからEZRで描画したKaplan-Meier曲線を確認してみましょう(連載第43回第44回参照)。

 この図のように、2つのKaplan-Meier曲線がおおむね平行に推移し、観察期間の途中で交差したり、曲線間の距離が大きく変化したりしていない場合は、「比例ハザード性」の仮定が成立している可能性が高いとされます。したがって、われわれのRQの生存時間分析の多変量解析手法として、「Cox比例ハザード回帰モデル」を適用することは妥当と考えられます。


講師紹介

harasense

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和医科大学臨床疫学研究所 所長・教授
昭和医科大学大学院医学研究科 衛生学・公衆衛生学分野/腎臓内科学分野 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授

[略歴]
1996年昭和大学(現昭和医科大学)医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。


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ASCO2025 FLASH 乳がん

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2025年5月30日~6月3日(現地時間)に開催の世界最大のがん学会、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)。ここで発表された旬な乳がんのトピックを、がん研有明病院の尾崎 由記範氏がレビューします。


レポーター紹介

尾崎 由記範 ( おざき ゆきのり ) 氏
がん研究会有明病院 乳腺センター 乳腺内科/先端医療開発科


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