
[ レポーター紹介 ]
山下 奈真(やました なみ )

2002年3月 東北大学医学部卒業
2002年4月 麻生飯塚病院(初期研修医、外科系後期研修医、外科医員)
2008年4月 済生会福岡総合病院 外科
2009年4月 九州大学大学院医学系研究科外科系専攻博士課程
2013年4月 九州大学大学院 消化器・総合外科 乳腺グループ
2015年4月 九州大学大学院 九州連携臨床腫瘍学
2017年4月 九州大学大学院 消化器・総合外科 乳腺グループ
2019年6月 Dana-Farber Cancer Institute(DFCI), Medical Oncology, Postdoctoral fellow
一般外科・乳腺外科での臨床医としての経験、大学院進学を経て、米国Dana-Farber Cancer Instituteに留学中の山下 奈真氏に、米国での研究環境、キャリア構築、ボストンでの生活などについてレポートいただきます。第1回ではご自身が留学を決めた経緯から、留学に備えて行った準備がどのようなものだったか、お伺いしました。
臨床医が研究をする意味とは?
臨床医である私が、なぜ研究をしようと思うようになったのか? 臨床医が研究するということの意義を少し考えてみたいと思います。もともと大学時代より基礎研究に興味がありました。ただし、ライフワークにできるかどうか? という点については懐疑的ではあったので、大学3年、6年時に海外での基礎研究とはどういったものなのかを体験する目的で米国のCold Spring Harbor Laboratory, Massachusetts Institute of Technologyに短期間でしたが研究留学をしたところ、当時の指導医のお陰もあり、基礎医学に対する畏怖の念はありつつも、いつか基礎研究を行ってみたいと思うようになりました。ただ、もう少し、臨床での問題点を自分なりに明らかにし、それを解決できたらと考えたため、臨床への道を歩み始めました。
臨床現場に出て、脇目も振らず一般外科研修に没頭した5年間。ある程度いろいろな業務をスムーズにこなせるようになった頃、30代のトリプルネガティブ乳がん患者さん2名が目の前で命を落としました。できうる限りのことは当時のスタッフで検討し行ったのですが、助けられませんでした。ただ、なぜ助けられなかったのか、何かを知っていたら、もっと良い治療ができていたのではないかという不全感。その時の自分には、その「なぜ」を解決する術、考えるresourceが何もないという壁に突き当たり、基礎研究をするために大学院に入学しました。
大学院ではトリプルネガティブ乳がんの多様性に焦点を当てた研究を行いました。研究をしたから普段の診療が急に変わる訳ではないですが、乳がんのbiologyを理解し、今後の乳がん診療の展望を意識しつつ、診療に従事することで臨床の奥行が出てくるのかと思います。臨床現場のclinical seedsの拾い上げ、benchでの検証、bed sideへのtranslation、この一連の流れは診療を続ける限り臨床医の使命だと今では考えています。
医師になって17年、突如やってきた留学のチャンス
大学院生活が終わり、7年間は細々と研究をしながらでしたが、大部分は臨床に従事する日々が続きました。リーダーシップ研修を含め臨床留学をしたいという思いもあり、2017年に応募した外科学会のISTPプログラムの最終選考に残りIELTS対策をしていた時のことです。2019年2月に突然、森教授よりDFCIでポストの空きが出たので研究してみないか? とご提案いただき、気がつけば5月には渡米しておりました。ということで、留学の機会は突如やってきました。医師となって早17年が経っておりました。

英語力の向上・維持のために実際に取り組んだこと
留学を視野に入れている方は、いつ留学してもいいように、日頃より英語力の向上、維持は必要です。私の場合は各学会での英語セッションでの発表、年最低一回海外学会での発表、ESMO/ASCO共催の研修プログラム、IELTS受験、オンライン英会話(Callan Method)を通じて、常に英語を必要とする状況を作るようにしていました。
留学に際しては、VISA、施設の雇用条件に英語技能のrequirementがそれぞれあるので、それに従い、英語検定試験を受ける必要があります。多くの場合、TOEFL、IELTS (英国臨床留学の場合はUKVI/academic module), Cambridge英検等が適応されます。いずれの試験も「Listening」「Reading」「Speaking」「Writing」4技能試験で、とくにoutputが苦手な日本人は「Speaking」「Writing」対策を行う必要性があります。








