San Antonio Breast Cancer Symposium 2024が12月10〜13日の間、ハイブリッド開催されました。100ヵ国を超える国々から計1万1,000人以上の参加者があり、乳がん治療の最適化、予防・早期発見、薬剤開発、トランスレーショナルリサーチ、バイオロジー等多岐にわたる視点から多くの発表が行われました。今年は、今後の診療に影響を与える興味深い結果も多く報告されました。話題となったいくつかの演題をピックアップして今後の展望を考えてみたいと思います。
本学会に参加して、多くの演者が“One size does not fits all.”とコメントしていたのが印象的です。早期乳がんに関しては局所療法のde-escalationが進む中、腫瘍のバイオロジー・リスクに応じた全身治療の最適化(de-escalation/escalation)が検討されており、治療選択肢も増えて混沌としてきています。転移・再発乳がんに関しては治療のラインに伴い経時的に変化しうる腫瘍の性質をいかに捉え、病勢をコントロールするかさまざまな薬剤の組み合わせ、シークエンスを含めたエビデンスの構築が必要です。安全に周術期治療、転移・再発治療の最適化を行うためにも、乳がんのバイオロジーの理解、多職種連携により包括的に患者の病態を捉え、治療を行っていく必要性があると考えられます。
2012年 3月 日本大学医学部 卒業 2012年 4月 聖路加国際病院 初期研修医 2014年 4月 聖路加国際病院 内科専門研修医 2015年 4月 聖路加国際病院 内科チーフレジデント 2016年 4月 聖路加国際病院 腫瘍内科フェロー 2019年 4月 国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科・先端医療科 がん専門修練医 2021年 4月 国立がん研究センター中央病院 国際開発部門・腫瘍内科 研究員 2023年 6月 Memorial Sloan Kettering Cancer Center, Department of Radiation Oncology, Research Fellow
Memorial Sloan Kettering Cancer Centerとは
Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)は米国を代表するがんセンターの1つであり、マンハッタンのアッパーイーストに位置しています。周囲は治安も良く立地にも恵まれており、セントラルパークも徒歩圏内です。病院と隣接して基礎研究棟があり、外来施設などのその他多くの施設がマンハッタン内に存在します。近隣にはWeill Cornell MedicineやThe Rockefeller Universityなどの優れた研究機関があり、人材の交流も盛んに行われています。
研究留学の場合はJ1ビザを所得することが一般的ですが、MDが研究留学する際には、臨床業務を行わないことを明記した「5 point letter」が必要となります。DS-2019に加えて、「5 point letter」の発行も依頼しましょう。受け入れ施設もこの書類の必要性を把握していないこともあるので、注意してください。
私は上記の「5 point letter」が不足していたため初回の申請でビザが下りませんでした。受け入れ施設に書類の作成を依頼しましたが前例がなく対応に時間がかかり、出国予定日を過ぎても書類は届きませんでした。待てども書類は届かず、最終的には自分でひな形を作成し、書類を作成してもらいました。ビザ取得までの約1ヵ月間は、住居も引き払っていたため、義理の兄弟の家に家族で泊めていただきました(大感謝です)。留学前から波乱に巻き込まれましたが、何とか無事にアメリカに入国し留学生活を開始しました。
2024年9月13日から17日まで5日間にわたり、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)がハイブリッド形式で開催された。COVID-19の流行以降、多くの国際学会がハイブリッド形式を維持しており、日本にいながら最新情報を得られるようになったのは非常に喜ばしい。その一方で、参加費は年々上がる一方で、今回はバーチャル参加のみの会員価格で1,160ユーロ(なんと日本円では18万円超え)。日本から参加された多くの先生方がいらっしゃったが、渡航費含めると相当の金額がかかったと思われる…。
それはさておき、今年のESMOは「ガイドラインが書き換わる発表です」と前置きされる発表など、臨床に大きなインパクトを与えるものが多かった。日本からもオーラル、そしてAnnals of Oncology(ESMO/JSMOの機関誌)に同時掲載の演題があるなど、非常に充実していた。本稿では、日本からの演題も含めて5題を概説する。