リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その3【「実践的」臨床研究入門】第28回

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本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。

 

 前回前々回で、下記のわれわれのResearch Question(RQ)の関連研究レビューのための検索式(例)を、P(対象)、E(曝露)それぞれの構成要素のブロックごとにPubMed Advanced Search Builderで実際に作ってみました。

P:非ネフローゼ症候群の「透析前」慢性腎臓病(CKD)患者
E:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守
C:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守
O:1)末期腎不全(透析導入)、2)eGFR低下速度の変化

 今回からは、さしあたり作成した検索式の検索能力を検証してみたいと思います。

検索式の検索能力の検証

 検索能力の高い検索式とはどのようなものでしょうか。筆者は、RQに関連する「Key論文」(連載第16回参照)が漏れなくヒットし、かつ関係ない論文(ノイズ)は拾ってこない検索式だと考えます。しかし、「漏れがない」ことと「ノイズを拾う」ことは相反する事象であり、なかなか両立しえません。まずは、「Key論文」が漏れなく検索できるように、とりあえず作成した検索式の検索能力を検証し、適宜修正を加えていく方針で検索式をブラッシュアップしていきましょう。

 PubMed Advanced Search Builderで検索式の検索能力を検証するのに先立って、連載第16回で引用文献としてお示しした、われわれのRQの「Key論文」のPubMed Unique Identifier(PMID)を調べます(連載第23回参照)。PMIDは個々の論文の「PubMedへのリンク」を開くと、論文題名の直下に示されています。以下は連載第16回の当該「Key論文」10編(引用文献11はPubMed非収載なので除外)それぞれのPMIDを[pmid]タグ(連載第23回参照)で指定してORでつないだ検索式です。

「Key論文」のブロック
・17943769[pmid] OR 19652945[pmid] OR 18779281[pmid] OR 19588328[pmid] OR 23793703[pmid] OR 26710078[pmid] OR 29914534[pmid] OR 30935396[pmid] OR 31882231[pmid] OR 33150563[pmid]

 前回前々回で作成した、P、Eそれぞれの構成要素のブロックの検索式も下記にまとめて示します。

Pのブロック
・Renal Insufficiency, Chronic[mh:noexp] OR ”chronic kidney disease*”[tiab] OR ”chronic renal disease*”[tiab] OR CKD[tiab] OR predialysis[tiab] OR pre-dialysis[tiab]

Eのブロック
・Diet, Protein-restricted[mh] OR ”low-protein diet*”[tiab] OR ”protein-restricted diet*”[tiab]

 前回解説したようにPとEのブロックをANDでつないでまとめます。この暫定的な検索式の検索能力を検証するために、さらに「Key論文」のブロックとNOTでつなぐと、本稿執筆時点(2023年1月)では、下の表のような結果になりました。

 残念ながら、暫定検索式では「Key論文」10本のうち7本がヒットしないという結果でした。次回からは、暫定検索式にかからなかった「Key論文」のMeSH terms(連載第21回参照)などをチェックし、検索式を手直しする方法を解説します。


講師紹介

harasense

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和大学統括研究推進センター研究推進部門 教授
昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門/衛生学公衆衛生学講座 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授

[略歴]
1996年昭和大学医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。


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32. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その7

31. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その6

30. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その5

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28. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その3

27. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その2

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3. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビューその2

2. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー その1

1. 臨床上の疑問とリサーチ・クエスチョン

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海外研修留学便り 【米国留学記(猪狩 史江氏)】第4回

[ レポーター紹介 ]
猪狩 史江いがり ふみえ

2007年 3月 獨協医科大学医学部医学科卒業
2007年 4月 順天堂大学医学部附属浦安病院 臨床研修医
2009年 4月 順天堂大学医学部附属順天堂医院 乳腺科 助手
2017年 3月 順天堂大学大学院医学研究科 博士(医学)課程 修了
2018年 1月 順天堂大学順天堂医院 乳腺科 助教
2019年 4月 順天堂大学順天堂医院 乳腺科 非常勤助教
      Cedars Sinai Medical Center Los Angeles U.S.
      Visiting Postdoctoral Scientist
2021年  6月  順天堂大学順天堂医院 乳腺科 助教
2021年10月  順天堂大学附属浦安病院 乳腺・内分泌外科 助教
2022年10月  順天堂大学附属浦安病院 乳腺・内分泌外科 准教授

 

専門医取得後の新たな目標として

 私の場合は、キャリアアップのために留学をしたわけではなかったので、皆様のご参考になるかわかりません。ですが、専門医を取得して、次の目標を見失いつつあった時期に留学ができたことで、留学前には思い浮かばなかった新たな道が開けたことが、帰国後のキャリアに繋がったことは間違いないです。duty workプラスαで、それらを今の仕事に生かせるようになりました。

 また、留学前は型にはまった乳腺外科医のイメージしかなかったですが、これからは自分の色を付けていく働き方をしたいと思うようになりました。

コロナに大統領選、治安の悪化…経験から得られたこと

 留学前よりも、目標が明確になりました。海外の方が、自分の意見を主張する場が多いからだと思います。目的が明確に言えるようになるには、理由があるからでもあります。目標設定後、達成に必要なことの優先順位も考える。他の人に伝えてディスカッションをすることで、新たな意見に気づく。簡単なことだけど、なかなかできていなかったなと気づきました。

 そして、何事にもチャレンジする。留学自体、自分にとっては大きな挑戦でしたが、この留学経験で得られたものは、本当に価値のあるものばかりでした。失敗もたくさんしましたが、すべて糧になり、大きな経験値となっています。

 私の留学中は、新型コロナウイルスの世界的流行、大統領選挙など、大きく国内外が動く出来事が多く、激動の情勢の中、その時米国で生活していたからこそ感じられたことも、経験としての財産となっています。コロナの影響で、治安が徐々に悪くなっていくのも肌で感じました。そんな中、全米に渡る人権問題が勃発し、さらに治安が悪化。いつも通っていた通勤路に州の軍隊が現れたり、夜間外出禁止令のアラートが出たりと、現実ではないような時期も経験しました。

 “Curfew”なんて単語、滅多に使わない。こんな状況、ロス暴動以来だとネイティブに言われたこともあります。そんな中で生活できたのも、周りの方々のサポートがあったからだと思います。日本人の留学同期をはじめ、留学先で出会った各国の友人達、職場の同僚達に本当に助けられました。自分だけでは本当に何もできない、支え合って日々の生活が出来ているのだと、1日1日を噛み締めて生活した日々でした。人と人との繋がりを日々大切にしていきたいと思うようになるきっかけになりました。

身をもって感じた“チャレンジはいつでも遅くはない”

 臨床の現場を経験させていただいたり、自分自身が病院を受診した経験から、日本における外国人への医療の提供について、医師の立場でできることや診療体制の整備など行っていきたいと思います。

 最後となりますが、少しでも留学を考えている方は、ぜひ現実的に動いて欲しいと思います。そして、その時期はいつでも遅くはないと思います。チャンスとチャレンジに年齢制限はありません。もし留学生活が色々な原因で失敗してしまったとしても、それはそれで他の誰も経験できなかった経験です。でも、踏み出さないと、何も変わりません。もちろんいいことばかりでなく、辛い経験もありました。ハンバーガーのデリバリーが届かなくて、私はこの国では、ハンバーガーさえきちんと注文できないのか、と悲しくなった日もありました笑。でもすべていい経験です。

人生のアナザースカイを探してみてはいかがですか?

その先には、きっと輝かしい世界が待っています。

研究棟を出てすぐに見える夕焼け:
実験が上手くいった日もいかなかった日も、変わらず美しい景色。
あと何回この美しい空の色を見れるのだろうと思いながら見惚れていました。

  


バックナンバー

4 海外研修留学便り【米国留学記(猪狩 史江氏)】第4回

3 海外研修留学便り【米国留学記(猪狩 史江氏)】第3回

2 海外研修留学便り【米国留学記(猪狩 史江氏)】第2回

1 海外研修留学便り【米国留学記(猪狩 史江氏)】第1回

デジタルパソロジーの現在と今後の展望【前編】(飯塚 統氏 / 中村 清吾氏)

 病理のデジタル化は現在どこまで進んでいるのか? 病理標本のデジタル化・環境構築のサポートや病理画像解析のAIモデルの開発を行っているメドメイン株式会社代表取締役の飯塚 統氏を迎え、現在の状況と今後の展望についてお聞きします(前編)。また昭和大学医学部乳腺外科の中村 清吾氏との対談で、がん診療の現場での活用についてお話いただきました(後編)。

 

 

[演者紹介]

飯塚 統 (いいづか おさむ)

メドメイン株式会社代表取締役


中村 清吾(なかむら せいご)

昭和大学医学部乳腺外科
昭和大学病院ブレストセンター長

 


 

バックナンバー

4 デジタルパソロジーの現在と今後の展望「飯塚 統 氏 / 中村 清吾 氏」【後編】

3 デジタルパソロジーの現在と今後の展望「飯塚 統 氏 / 中村 清吾 氏」【前編】

2 臨床応用近づく 乳房超音波診断へのAIの導入~展望と課題「林田 哲 氏 / 中村 清吾 氏」

1 乳がん診療における人工知能の活用について「中村 清吾 氏 / 高野 敦司 氏」

リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その2【「実践的」臨床研究入門】第27回

提供元:CareNet.com

本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。

 

 前回、下記のわれわれのResearch Question (RQ)に立ち返り、P(対象)の構成要素の検索式を作ってみました。

P:非ネフローゼ症候群の「透析前」慢性腎臓病(CKD)患者
E:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守
C:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守
O:1)末期腎不全(透析導入)、2)推定糸球体濾過量(eGFR)低下速度の変化

 今回はまず、Pと同様にE(曝露要因)の構成要素の検索式を作ってみましょう。

I(介入)またはE(曝露要因)の構成要素の検索式を作ってみる

 ライフサイエンス辞書で調べると低たんぱく食はlow-protein dietであり、そのMesH term(統制語)は

 Diet, Protein-restricted

でした(連載第21回参照)ので、タグ[mh]を付けて(連載第24回参照)

Diet, Protein-restricted[mh]

とします。

 ”Diet, Protein-restricted”というMeSH termで統制される類語は”Entry Terms”にまとめられていますが(リンク参照)、代表的な類語である

・”low-protein diet”
・”protein-restricted diet”

はテキストワードとしても検索式に加えましょう。

 ”diet”は”diets”と複数形でも表されるので、前回説明した前方一致検索(トランケーション)の機能を活用して語尾に*(アスタリスク)を付け、タグは[tiab]を指定します。

“low-protein diet*”[tiab]
“protein-restricted diet*”[tiab]

 以上より、Eの構成要素の検索式は下記のようになりました。

8.Diet, Protein-restricted[mh]
9.”low-protein diet*”[tiab]
10.”protein-restricted diet*”[tiab]
11.#8 OR #9 OR #10

PubMedで検索式を実行してみる

 それでは実際に、作成した検索式をPubMedで実行してみましょう。PubMedのトップページ画面中央の”Find”の見出しの下にある、”Advanced Search”へのリンクを開きます。PubMed Advanced Search Builderの画面に出てきた”Query box”に、Pの構成要素の検索語(下記、連載第26回参照)

1.Renal Insufficiency, Chronic[mh:noexp]
2.”chronic kidney disease*”[tiab]
3.”chronic renal disease*”[tiab]
4.CKD[tiab]
5.predialysis[tiab]
6.pre-dialysis[tiab]
7.#1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6

および、前述したEの構成要素の検索語(#8から#11)をそれぞれコピペして貼り付けて、”Add to History”をクリック、の手順を繰り返しましょう。#1から#11までの検索語が画面下部の”History and Search Details”に列記されていることが確認できたら、PとEそれぞれの構成要素の検索式(#7、#11)を下記の#12のとおりに”AND”でつないでまとめます。

12. #7 AND #11

 その結果、本稿執筆時点(2022年12月)では、515編の論文がヒットしました。

 


講師紹介

harasense

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和大学統括研究推進センター研究推進部門 教授
昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門/衛生学公衆衛生学講座 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授

[略歴]
1996年昭和大学医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。


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47. 何はさておき記述統計 その8

46. 何はさておき記述統計 その7

45. 何はさておき記述統計 その6

44. 何はさておき記述統計 その5

43. 何はさておき記述統計 その4

42. 何はさておき記述統計 その3

41. 何はさておき記述統計 その2

40. 何はさておき記述統計 その1

39. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その2

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33. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その8

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乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法(遠山 竜也 氏)【Chap2】

4年ぶりに全面改訂された「乳癌診療ガイドライン 2022年版」の改訂ポイントを中心に、乳がん薬物療法の最新の治療戦略を、同ガイドライン薬物療法小委員会委員長を務めた遠山 竜也先生(名古屋市立大学大学院医学研究科乳腺外科学分野)に解説いただきます。病期別・サブタイプ別に治療の流れを振り返りながら、改訂点をその背景とともに学べます。【Chap2】では、転移・再発乳がんに対する薬物療法について取り上げています。

Chapter 2:

[演者紹介]

遠山 竜也 (とおやま たつや)

名古屋市立大学大学院医学研究科 乳腺外科学分野 教授
名古屋市立大学病院乳腺外科 部長
名古屋市立大学病院乳がん治療・乳房再建センター センター長


Chapter一覧

Chapter 1 : 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法【Chap1】
Chapter 2 : 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法【Chap2】

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4. 遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン2024年版―多診療科、多職種および当事者でのコンセンサスー「山内 英子氏」

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2. 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法【Chap2】「遠山 竜也 氏」

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その1【「実践的」臨床研究入門】第26回

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本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。

 

 前回まで、著者らが出版したコクラン・システマティックレビュー(SR:systematic review)論文1)Appendixで公開されている検索式の実例を用いて、PubMedでの検索式構築の概要について解説してきました。今回からは、これまでわれわれがブラッシュアップしてきた、下記のClinical Question (CQ)とResearch Question(RQ)、 PECOに立ち返り(連載第21回参照)、関連研究レビューのための検索式(例)を実際に作ってみたいと思います。

CQ:食事療法(低たんぱく食)を遵守すると、非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか
P:非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病(CKD)患者
E:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守
C:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守
O:1)末期腎不全(透析導入)、 2)eGFR低下速度の変化

P(対象)の構成要素の検索式を作ってみる

 検索式を作る際には、MeSH(Medical Subject Headings)が有用でした(連載第21回参照)。それではまず、われわれのRQのPの構成概念である慢性腎臓病(chronic kidney disease)のMeSH term(統制語)を調べてみましょう。連載第21回で解説したとおり、PubMedトップページMeSH Databaseを開き、検索窓に”chronic kidney disease”と入力します。すると、

Renal Insufficiency, Chronic

が慢性腎臓病のMeSH termに該当することがわかります。”Renal Insufficiency, Chronic”の階層構造(連載第25回参照)をみてみると(リンク参照)、その下位概念に”Kidney Failure, Chronic”を含んでいます。”Kidney Failure, Chronic”は透析や腎移植を必要とする末期腎不全を示すMeSH termであり(リンク参照)、われわれのRQのPである「透析前」の慢性腎臓病にはあてはまりません。したがって、下位のMesH termは含まないように、[mh:noexp]の「タグ」を付け、

・Renal Insufficiency, Chronic [mh:noexp]

とします(連載第24回参照)。

 検索式では、MeSH termだけでなくテキストワードも併用すると良いのでした(連載第24回参照)。検索式に加えるテキストワードは該当するMesH termの類語(Entry termsとして列記されている)(連載第21回参照)や、連載第3回で紹介したライフサイエンス辞書を活用しましょう。

 ”Renal Insufficiency, Chronic”のEntry terms(リンク参照)をみて、

・”chronic kidney disease”
・”chronic renal disease”

をテキストワードとして追加することにします。ここで、前方一致検索(トランケーション)という便利な機能についても紹介しましょう。上記の”disease”は単数形だけでなく複数形で表されることもあります。このような語尾変化のある単語をまとめて検索したいときには、単語の最後に*(アスタリスク)を付けます。

・”chronic kidney disease*”
・”chronic renal disease*”

 ライフサイエンス辞書で慢性腎臓病を検索すると

・CKD

という略語も良く使われているようなので、テキストワードに加えます。

 また、「透析前」というキーワードをライフサイエンス辞書で調べると

predialysis

というテキストワードがヒットしましたので追加します。”predialysis”は”pre-dialysis”とハイフンをはさんで表記されることも多いので、こちらも検索式に加えましょう。”pre dialysis”とスペースをはさんで表記されることもありますが、PubMedではハイフンはスペースに置き換えても検索されるので、”pre-dialysis”だけでもカバーされます。

 テキストワードの「タグ」は[tiab]を指定します(連載第23回参照)。したがって、Pの構成要素の検索語を以下のように選定しました。

1.Renal Insufficiency, Chronic[mh:noexp]
2.”chronic kidney disease*”[tiab]
3.”chronic renal disease*”[tiab]
4.CKD[tiab]
5.predialysis[tiab]
6.pre-dialysis[tiab]

 最後に、これらの検索語をORでつないでまとめます。

7. #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6

 


【 引用文献 】

講師紹介

harasense

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和大学統括研究推進センター研究推進部門 教授
昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門/衛生学公衆衛生学講座 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授

[略歴]
1996年昭和大学医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。


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20. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その3

19. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その2

18. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その1

17. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その3

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14. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その3

13. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その2

12. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用その1

11. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用その2

10. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用その1

9. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その3

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6. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その3

5. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その2

4. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その1

3. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビューその2

2. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー その1

1. 臨床上の疑問とリサーチ・クエスチョン

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乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法(遠山 竜也 氏)【Chap1】

4年ぶりに全面改訂された「乳癌診療ガイドライン 2022年版」の改訂ポイントを中心に、乳がん薬物療法の最新の治療戦略を、同ガイドライン薬物療法小委員会委員長を務めた遠山 竜也先生(名古屋市立大学大学院医学研究科乳腺外科学分野)に解説いただきます。病期別・サブタイプ別に治療の流れを振り返りながら、改訂点をその背景とともに学べます。【Chap1】では、今回新設された「治療編 総説」と、早期乳がんに対する薬物療法について取り上げています。

Chapter 1:

[演者紹介]

遠山 竜也 (とおやま たつや)

名古屋市立大学大学院医学研究科 乳腺外科学分野 教授
名古屋市立大学病院乳腺外科 部長
名古屋市立大学病院乳がん治療・乳房再建センター センター長


Chapter一覧

Chapter 1 : 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法【Chap1】
Chapter 2 : 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法【Chap2】

バックナンバー

4. 遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン2024年版―多診療科、多職種および当事者でのコンセンサスー「山内 英子氏」

3. 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~外科療法「九冨 五郎氏」

2. 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法【Chap2】「遠山 竜也 氏」

1. 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法【Chap1】「遠山 竜也 氏」

海外研修留学便り 【米国留学記(猪狩 史江氏)】第3回

[ レポーター紹介 ]
猪狩 史江いがり ふみえ

2007年 3月 獨協医科大学医学部医学科卒業
2007年 4月 順天堂大学医学部附属浦安病院 臨床研修医
2009年 4月 順天堂大学医学部附属順天堂医院 乳腺科 助手
2017年 3月 順天堂大学大学院医学研究科 博士(医学)課程 修了
2018年 1月 順天堂大学順天堂医院 乳腺科 助教
2019年 4月 順天堂大学順天堂医院 乳腺科 非常勤助教
      Cedars Sinai Medical Center Los Angeles U.S.
      Visiting Postdoctoral Scientist
2021年  6月  順天堂大学順天堂医院 乳腺科 助教
2021年10月  順天堂大学附属浦安病院 乳腺・内分泌外科 助教
2022年10月  順天堂大学附属浦安病院 乳腺・内分泌外科 准教授

 

留学先での研究環境について

 私は留学前基礎ラボに所属した経験が短期間でしたので、研究初心者でも感じた日米の研究環境の違いと、日本で基礎研究者として働いていた留学同期から聞いた意見をもとにレポートさせて頂きます。

1専門性と効率の良さ

 研究分野に限らずですが、米国では、専門ごとの分業がはっきりなされています。だからこそ専門性が高く、その対価に応じて給料が支払われている社会です。私の所属していた研究所では、Research Core(例:Genomics Core, Biomedical imaging coreなど)という、研究部門別のスペシャリスト集団が存在し、費用はかかりますが、その分野に特化した専門的な実験をしてくれたり、研究の相談に乗ってくれます。日本では、1つの研究に対していろいろな分野の実験が必要になっても、自分達で全部行おうとする傾向があり、米国に比べて非効率的な気がしました。教育面も同様です。日本で大学に所属する研究職の先生方は、実習のみならず授業も担当し、自分の研究の仕事プラスで教育の時間を割いています。もちろん米国でも、ラボに学生が来てスタッフが実験の指導をすることは日常茶飯事ですが、ポスドクが授業を担当することは稀で、実験に集中でき、また指導した経歴は、教育歴としてCVに記載できるメリットもあります。

2他のラボやResearch Coreとの風通しの良さ

 日本でも、他のラボとの共同研究などは盛んに行われていますが、米国の方がより敷居が低い印象がありました。Research Coreのスタッフを通じて、他のラボの先生を紹介して頂くことも可能です。

 また勉強会などもとても盛んで、コロナ前は朝昼晩と何らかのセミナーが行われており、他の分野のnew&hot topicsを学ぶことができました。

3時間の使い方

 実は米国は日本より公休日が少ないので、意外と(?)ちゃんと働きます。ですが、時間はきっちりで、Grantの締め切りが近い場合や、結果を出したい時期以外は、いわゆるサービス残業はほとんどありません。プライベートの時間とはっきり分けていて、クリスマスあたりのHoliday Seasonは、Christianだと11月末のThanks Givingから年明けまで休暇を取る方もいます(アジア人のラボはそうでもないのが現状ですが)。1に記載したように、効率良く実験が進むシステムの構築がなされているのも、時間をうまく使える一因かと思います。

余暇の使い方:Trail、海にいくことが多かったです。
LAがこんなに自然に恵まれているところとは思いませんでした。
(左:初日の出@Hollywood Sign、右:海沿いの散歩コース@Santa Monica)

研究生活以外で経験したこと

1.臨床見学

 留学期間の最後の1ヵ月で、第2回でご紹介したDr.Giulianoにご指導頂き、主に外来・手術見学をさせて頂きました。まさに海外医療ドラマそのもの! と思うシーンが多々ありました。社会医療体制や人種の違いがある中で、海外の実際の医療現場を見学できたのは非常に貴重な経験でした。日本の乳腺外科医は、診断から治療まで行いますが、米国の乳腺外科医は、主に手術(術前・術後の診察はあり)のみ。術前の画像診断・生検は放射線科が行い、乳がんの診断がついてから外科に紹介となります。再発乳がんはもちろん、術後薬物療法でホルモン剤だけであっても、腫瘍内科医が担います。日本の乳腺外科医はオールマイティに診療していることを伝えると、信じられない! と。日本も少なくとも腫瘍内科医、乳腺内科医の拡充が必要かもしれません。

2.乳がん患者会の皆様との交流

 縁あって、米国を拠点とする日本人乳がん患者支援団体の方にお声かけ頂き、講演会や患者会に参加させて頂く機会がありました。日本で治療した後に渡米して通院をしている方、初めから米国で治療をしている方、さまざまな背景をもつ方々に出会いました。医療制度がまったく異なる中で、外国人医師との診察でのコミュニケーションの壁に難渋するなど、生のご意見を伺いました。こういった海外在住の患者さん達のために、私にできることはないかと考えさせられる、貴重なきっかけとなりました。

Cedars-Sinai Breast Surgery Department
(左:手術室のあるMain Building、右:Dr.Giulianoを囲んで。NP、外科fellowの先生方にもお世話になりました)

  


バックナンバー

4 海外研修留学便り【米国留学記(猪狩 史江氏)】第4回

3 海外研修留学便り【米国留学記(猪狩 史江氏)】第3回

2 海外研修留学便り【米国留学記(猪狩 史江氏)】第2回

1 海外研修留学便り【米国留学記(猪狩 史江氏)】第1回

リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その5【「実践的」臨床研究入門】第25回

提供元:CareNet.com

本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。

 

 前回、筆者らが出版したコクラン・システマティックレビュー(SR:systematic review)論文1)のP(対象)の構成要素の検索式の実例を用いて、その構造を解説しました。今回は引き続き、このコクランSR論文1)のI(介入)を示す検索式と検索式全体の完成形の実際例について解説します(連載第24回参照)。

Iの構成要素をORでつないでまとめる

 下記は、この論文のIである「アルドステロン受容体拮抗薬」の構成要素の検索式です。 

14.Mineralocorticoid Receptor Antagonists[mh]
15.Diuretics, Potassium Sparing[mh:noexp]
16.spironolactone[tiab]
17.eplerenone[tiab]
18.canrenone[tiab]
19.#14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18

 #14は「アルドステロン受容体拮抗薬」のMeSH term (統制語)である”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”です(連載第22回参照)。「アルドステロン受容体拮抗薬」は降圧薬の一種でK保持性利尿薬に分類される薬剤です。”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”というMeSH termの階層構造をみてみると、下記およびリンクのとおりとなります。

●Diuretics, Potassium Sparing
 ○Epithelial Sodium Channel Blockers
 ○Mineralocorticoid Receptor Antagonists

 #15では”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”の上位概念である”Diuretics, Potassium Sparing”(K保持性利尿薬)を[mh: noexp]の「タグ」で指定しています。”Diuretics, Potassium Sparing”の下位概念のうち”Epithelial Sodium Channel Blockers”という違う薬剤クラスは除外した検索式になっています(連載第22回参照)。その結果、”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”で拾えない”Diuretics, Potassium Sparing”をカバーしています。

 #16-18では、MeSH termで拾えない可能性のある「アルドステロン受容体拮抗薬」に含まれる薬剤固有名詞を、「タグ」でTitle/Abstractを指定したうえでテキストワードを列記し、検索式を補完しています(連載第23回第24回参照)。

 #19で#14から#19を”OR”でつなぎ、Iの構成要素の検索式が出来上がります。

最後にPとIの構成要素をANDでつなぐ

 PとIそれぞれの構成要素は、MeSH termやテキストワードで示される類似した語句同士なので重なりは大きいのですが、”OR”でつなげて、できるだけ検索漏れがないようにします。高校の数学で習ったはずの「ベン図」で表すと、下の図のようなイメージです。「ベン図」とは、ある概念で表されるグループ(集合)の関係性を視覚的に表した図でした。

 PとIの構成要素の検索式がそれぞれ完成したら、最終的にはPとIの「集合」の重なり部分を求めます。こちらも「ベン図」で示すと下図のようになります。

 Pの構成要素の検索式のまとめである#13(下記、連載第24回参照)と

13. #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12

CQ:アルドステロン受容体拮抗薬は維持透析患者の予後を改善するか
P:維持透析患者
I :アルドステロン受容体拮抗薬

 Iの構成要素をまとめた検索式#19を、#20(下記)のように”AND”でつなぐことで検索式が完成します。

20. #13 AND #19


【 引用文献 】

講師紹介

harasense

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和大学統括研究推進センター研究推進部門 教授
昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門/衛生学公衆衛生学講座 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授

[略歴]
1996年昭和大学医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。


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25. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その5

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23. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その3

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1. 臨床上の疑問とリサーチ・クエスチョン

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掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

 

海外研修留学便り 【米国留学記(猪狩 史江氏)】第2回

[ レポーター紹介 ]
猪狩 史江いがり ふみえ

2007年 3月 獨協医科大学医学部医学科卒業
2007年 4月 順天堂大学医学部附属浦安病院 臨床研修医
2009年 4月 順天堂大学医学部附属順天堂医院 乳腺科 助手
2017年 3月 順天堂大学大学院医学研究科 博士(医学)課程 修了
2018年 1月 順天堂大学順天堂医院 乳腺科 助教
2019年 4月 順天堂大学順天堂医院 乳腺科 非常勤助教
      Cedars Sinai Medical Center Los Angeles U.S.
      Visiting Postdoctoral Scientist
2021年  6月  順天堂大学順天堂医院 乳腺科 助教
2021年10月  順天堂大学附属浦安病院 乳腺・内分泌外科 助教
2022年10月  順天堂大学附属浦安病院 乳腺・内分泌外科 准教授

 

研究テーマは「血液検体による乳がん早期発見法の開発」

 私の所属していたラボは、主に乳がんのDNA instabilityに関する研究を行なっています。ゲノム解析技術の進歩により、2007年を境とした、NGSを用いたゲノムシークエンス解読の大幅なコストダウンをきっかけに、ゲノムを用いた研究・臨床応用が加速しました。留学中にも、外注したWGSがこの価格でできるのだと、この大きなコストダウンの波の恩恵を感じることが多々ありました。国際学会でも、リキッドバイオプシーは注目される分野で、数々の臨床試験の報告がなされています。海外では診断のみならず、遺伝情報を元にtargeting therapyまで積極的に行われています。リキッドバイオプシーは、今後乳がん治療において欠かせないツールとなることは間違いないでしょう。

 研究テーマは、血液検体による乳がん早期発見法の開発です。リキッドバイオプシーを用いた臨床応用は、患者さんの治療経過においてさまざまなフェーズで活躍できる実用性の高いツールですが、とくに腫瘍量が少ないと推測されるがんの早期発見にはいまだ問題点が山積しています。この問題点を打破すべく、ctDNAのある配列に注目し、それを増幅することで、早期がんで想定される極少量の腫瘍量からでも診断可能な解析法の開発を目指しています。

 Cedars-Sinai Medical CenterのBreast Surgeryと協力し、BioBankという臨床サンプルの保存・管理を統括して行うセンターを介して臨床検体の提供を受けました。この仕組みはトランスレーショナルリサーチを行うのにとても簡便でした。Breast SurgeryのChief Directorは、Z0011試験で活躍されたArmando E. Giuliano先生です。留学期間の後半で、臨床見学までさせていただき、とても貴重な経験となりました。この件は、後にレポートしていきます。

Cedars-Sinai Medical Center Barbara & Marvin Davis Research Building(左)、
留学同期との集合写真(右)

施行錯誤する日々、結果を出す難しさと研究の醍醐味

 私はまず、乳がん組織検体から抽出したDNAを用いて、われわれが開発したNGSを含む解析フローチャートで実証可能かを検討しました。組織検体からDNAの抽出を行い、ライブラリを作成。NGSを経て得られたデータを用い、バイオインフォマティクス解析を行います。Wet Lab techniqueは外科医であることもあり(?)、慣れてしまえばできるのですが、バイオインフォマティクス解析は、本当に気が遠くなる日々でした。データを出すだけで満足してしまいがちで、得られたデータからの考察が本当に大変でした。さらに、考察のもと、次の研究計画を立てるアイディアが思い浮かびませんでした。ラボの同僚やボスと相談しながら、方向性を間違えないよう舵取りいただき進んでいけたこと、そして基礎研究素人の私にも、ラボミーティングで毎回意見を求めていただいたこともありがたいと思いながら、研究を進めていきました。

 乳がん組織検体で、ある程度の結果が得られたので、次に血液検体を用いた解析に移りました。まずDNA抽出に関しても、組織検体と血液検体では、回収量やDNAフラグメントサイズにも差が出てきてしまい、なかなか思うように進みませんでした。途中で留学期間終了を迎えてしまいましたが、帰国後も臨床検体の収集を主に、継続研究をさせていただいております。

 大学院生活では、卒業や博士号取得のためにどうしても終わりを見つけなくてはいけませんが、本来基礎研究は終わりのないものです。上手くいくことが少ないながらも、毎日頭を使い、最新の情報をアップデートし、自分で手を動かして実験し、結果を出していく。研究費が取れないと、ラボの運営や自身の生活費にも影響が出る大きな重圧の中、本来研究の醍醐味である好奇心を忘れずに仕事をしている研究者にたくさん出会いました。これも日本との研究環境の違いなのかもしれないなと思いながら、日々刺激を受け続けた研究生活でした。

通勤路 美しい青空に映える鮮やかな木々に癒されていました
(左:初夏を告げる紫の花 ジャカランダ、右:色とりどりのブーゲンビリア)

  


バックナンバー

4 海外研修留学便り【米国留学記(猪狩 史江氏)】第4回

3 海外研修留学便り【米国留学記(猪狩 史江氏)】第3回

2 海外研修留学便り【米国留学記(猪狩 史江氏)】第2回

1 海外研修留学便り【米国留学記(猪狩 史江氏)】第1回